〜レイside〜
「レイ、次はこっちを頼んだよ!」
「はい!あ、こっちはすでに出来てます!」
「了解!」
「レーくん!オーブンのスポンジあと少しで出来るよ!」
「わかった!メアはデコレーションを!フランはルナと食堂の飾り付けをお願い!」
誰かが言った。
毎日戦場となる場所があると。
「時間まであと2時間ちょいだよ!」
「よっしっ!あと少し!踏ん張って行こうじゃないか!」
「はい!!」
作り手によって感じることが違う。
人の気持ちが伝わるものがあると。
「はい!完成!!次っ!!」
西暦2055年。
何時の時代があろうと、それは変わることは無い。
その戦場の名は―――
「はい!クリーム完成!」
「こっちも出来たよ!」
調理場!
人が生きていく中で重要な施設である!!
―――――――――
どうも。
主人公の山野レイです。
今僕らが何をしているのかと言うと・・・・・・
「だぁあ!!人手が足りないっ!!」
「けど、他の人呼んでも邪魔なだけでしょ!?」
「そうだけどぉ!!」
「キヨカを呼んでくる!?」
「さすがに今僕らとキヨカの事を知られるのは不味いからいいよ!」
今キヨカと僕らのことをジェノックや他の人に知られると後々の予定が狂う。
いや、正直、キヨカもいて欲しいんだけどね!?
幸いにもキヨカのことはあまり周囲には認知されてないし。ダイキさんの妹だって事も知られてない。
まぁ、メディアに出てた僕と違ってキヨカは裏方だったからなぁ。
実力的にはこの学園でもトップクラスなのに。
ジェノックでも、メカニックとしての腕は平凡とかそのくらいしか出てないみたいだし。
「そうね。でも、私たちだけで足りるかしら・・・・・・」
「すまないねぇお前さんたち。今日はクリスマスなのに」
で、今何をしているのかと言うと。そう。クリスマスの準備をしているのだ。
ダック荘の食堂には僕、メア、ルナ、フランに寮長のトメさんがいる。
5人でダック荘の住人のクリスマス料理や食堂の飾り付けを作っていたりするのだ。
本当なら島の裏側の山にでも行こうかな、と思っていたのだがトメさんが一人で朝から忙しそうにしていたので、手伝いに来て今に至る。
作業してすでに5時間は過ぎて―――
「や、やっと終わったぁ〜」
終わったのは17時少し手前だった。
「ホントに助かったよ。ありがとさん」
「いえ、トメさんには僕らので色々便宜を図ってもらってますから」
テーブルに突っ伏す僕らに、お茶を持ってきたトメさんが労う。
あと一時間もしないうちに、ダック荘に住む生徒がやってくる。
なので、ほんの少しだけでも休んでいるのだ。
「それにしても、トメさん毎日こんな量一人でやってるんですか?」
メアがヘトヘトになりながらトメさんに聞く。
「まぁね〜。あたしはここの寮母だ。寮母ということは、ここにいる全員の母親さ。例え、ほんの少しだけだろうとも、一歩このダック荘に足を踏み入れたのなら、その瞬間からソイツはあたしの家族だよ。家族になったからには、あたしはみんなを護らなければならない。その義務があるからね」
まさに寮母の鑑だ。
僕らの、この学園での親代わりである。
「まぁ、あたしはこの学園の在り方に、疑問を持ってるがね」
「っ!?」
トメさんのその一言に僕らは目を見開いた。
「と、トメさん!?」
「今その言葉は・・・・・・!」
「誰にも聞かれてない・・・・・・よね?」
トメさんの今の言葉を誰かに聞かれていたら絶対反感を持たれてた。
トメさんの一言は、学園の存在意義に関わるものだ。
「安心しな。誰も聞いておらんよ」
扉の方を向きながら気だるげに言うトメさん。
「あたしはね、ここに来てから何人も入れ替わって来たのを知ってる」
このダック荘に泊まってる生徒は、僕らのハーネスの他にジェノック。それとポルトンの三国だ。
どの国も弱小で、それほど人は居ない。
「もう一年も終わりだ。この一年を退学せずに済んだ生徒が何人いる?」
「・・・・・・・・・・」
トメさんの言葉に何も言い返せない。
ここは世間的にはLBX専門養成学園と認知されてるけど、実際は国家間の戦争を代換えする、代理戦争学園だ。
この事実を知っている生徒はまず殆どいない。
教師陣は全員知ってる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と思う?
いや、ポルトンの司令官のメリッサ先生を見てると・・・・・・ね。
メリッサ先生、幾らポルトンが最弱国と認知されてるからってあの扱いは、なぁ・・・・・・・・。
たまにメリッサ先生の泣き言とか聞いてるし。
いくらポルトンに重要拠点がないからってなぁ・・・・・・。
僕の目から見てもポルトン、強いのに。
この学園で教師陣で信頼できるのは美都先生と日暮先生を除けば、猿田教官ぐらいだ。
学園長は学園長で食わせ物だし。
てか、あの人ホント適当すぎる!!
「まぁ、アンタらがこの島に来たのがアイツらの、運の尽きさ」
僕ら4人を順に見て学園の方向を向いて言うトメさん。
その顔はニヤッと不敵な笑みを浮かべており。
「アンタらが変えるんだろ?この歪んだ島や学園を」
「そのつもりです」
「アンタたちは、あんニャロから聞いてるからねぇ〜。まさか、あたしの所に来るなんて、なんて巡り合わせだろうね」
「あんニャロ・・・・・・?」
初めて聞いたトメさんの言葉に僕は疑問符を浮かべた。
メアたちも互いに顔を見合わせており。
「ふふ。機会があったら教えてあげるさ。あんニャロについてね」
トメさんはそのまま、どこか懐かしむように言いながら厨房に戻った。
その場に残った僕らはトメさんの言葉の意味を相談する。
「レーくん、トメさんの言ってたあんニャロって・・・・・・」
「ん〜〜。僕らのこと聞いてたみたいだし・・・・・・・僕らの知り合いかな・・・・・・?」
「でも、それって誰なのかしら?」
「トメさんのあの言い方、まるで仲がいい悪友みたいな感じだったね」
「うん・・・・・・考えられるのは・・・・・・・・・・・・・あぁ、ダメだ。候補が多い」
頭の中でいくつか候補を上げようとするが、候補が多く頭が痛くなってきた。
その十数分後、ダック荘の食堂には生活している生徒がやって来て、クリスマスなので一応それなりに豪華な夕食を食べて行った。
もちろん、僕らもトメさんクリスマススペシャルVerディナー(僕らも手伝った)をカゲトラたちと一緒に食べた。
夕食を食べた後―――
「やっぱり、この島からはよく星が見えるね」
ダック荘から出た僕は近くの海岸にいた。
12月ゆえ、肌寒いので黒のマフラーに黒のロングコートといった防寒装備だ。
月は満月で、都会と違い光があんまりないため星が良く見える。
「今年もあと少し・・・・・・か」
潮風に吹かれる。
眼を閉じ、この一年の。
この島に来てからの事を思い返す。
「色んなことがあったなぁ・・・・・・」
正直、色んなことがありすぎて疲れた。
そのまま星を眺めていると―――
「ホントに、色々あったよね〜」
後ろから砂を踏む足音とともに声が聞こえてきた。
「メア・・・・・・」
眼を閉じていても、見なくても誰なのか分かる。
5人の中で、幼い頃からずっと一緒にいた幼馴染みだから。
「私は、ここに来て良かったって思うな」
「ええ。私もよ」
「奇遇ネ。みんな同じなんて」
続けて来たのは。
「ルナ、フラン。キヨカも」
それぞれマフラーとコートを着た3人だった。
「ごめんなさい。私も手伝えれば良かったのだけど」
「しかたないよキヨカちゃん。今私たちと関係があるって知られる訳にはいかないし」
「うん。みんなもうダック荘にいるから会えるし」
ダック荘で、密会する時も人目に気をつけてトメさんから教えて貰ったルートを通ってキヨカは来てる。
「ルナ、体調は大丈夫?無理しちゃったけど今日」
「大丈夫だよ」
朗らかに笑って返すルナ。
「よかった」
「レイ、貴方こそ大丈夫なの?身体、無理してない?」
「問題ないよキヨカ」
眼を閉じて、空を見ながらキヨカに返す。
海を通して冬の冷たい潮風が撫でる。
「風が気持ちいい・・・・・・」
海の水と砂浜から引く音のコントラストが良い。
ザザー。ザザー、と静かなこの場所を包む。
そのままそこにしばらく居て。
「うぅっ。寒っ・・・・・・」
「そうね・・・・・・少し、肌寒くなったわ」
「レーくん、私たち先に戻ってるね」
「え、あ、うん。わかったよ」
メアたちが砂浜から立ち去るのを見送る。
ダック荘に入ったのを見て、再び月夜の海を眺める。
立っているのも疲れたので、近くの岩に腰掛ける。
「・・・・・・・・・・」
何もせず。
ただ、ボーっと。
「冬空に、凍てつく海の、星夜かな」
なんとなく頭に思い浮かんだ言葉。
意味も何も無い、ただ、ふと思い浮かんだ羅列。
そこに―――
《そろそろ戻ったらどう?》
誰もいない海岸で誰かに声をかけられた。
「そうだね」
僕はその言葉に何ともないように返した。
《今年ももう終わり。貴方にとって、この一年は有意義な年だった?》
「なにを当然の事を。僕の中から観てたんだからわかるでしょ?」
《ええ。けど、貴方から聞きたいの》
「そうだね・・・・・・」
腰掛けていた岩から立ち上がり、空を見上げる。
「色々あって、大変だったけど、この一年はとても有意義だったよ」
《そう・・・・・・それなら、良かったわ》
「うん」
星を見上げながら僕は一人問いた。
「悠介さん。LEX。観てる?二人の託した世界を、僕は創って、護れているかな」
悠介さんから託された願い。
LEXが託した世界。
それを僕は果たせているのだろうか。
何時も。常にそう思ってる。
「この学園を変える。それが新たな世界を作るための一つ」
この異常な学園を変え、LBXを兵器から本来の
父さんが願い込めて生み出したLBX。
《レイ。貴方なら出来るわ。その為に私やあの子たちがいるんだから》
「そうだね・・・・・・ありがとう」
優しく包み込むような声に返事をする。
「戻ろうか」
《ええ。私もそろそろ寝るわね》
「うん」
そう言うと声は聴こえなくなった。
僕は少し苦笑して、ダック荘へと戻る。
ダック荘に戻ると丁度トメさんがいた。
トメさん曰く、洗い物が終わったらしい。
自室に戻る際、昼間のお礼としてトメさん特製手作りケーキを貰った。
いや、うん。あんなに忙しかったのに、いつの間に作ったんですトメさん?
ますます不思議に箔が付くトメさんに驚きながら、有難く貰い自室に戻った。
メアたちにはすでに渡しているらしい。
いや、うん。トメさんってホント何者???
絶対ただの寮母じゃないと思う!!
そう思いながら、ハッハッハと笑って去るトメさんの後ろを見て自室に戻った。
自室に戻ると、机の上にある端末に定期連絡の返答のメールが届いていた。
メールをザッと見て、端末の電源を落とし、本棚にある本を手に取った。
それは僕がこの島に来る際に持ってきた本の一冊。
タイトルは『LBX回顧録』
著者は『山野淳一郎』
つまり父さんだ。
表紙は少し汚れてしまってるが、綺麗な状態だ。
もう何度も読み、内容が頭の中に全て入ってる。
けど―――
「やっぱり、何度読んでもいいよね」
傍に置いてあったメガネを掛け回顧録を読む。
最近、本を読む時メガネを掛けるのが癖になってる。
そのままトメさんの特製手作りケーキを食べながら回顧録を読む。
あ、もちろん、汚さないようにしてるよ?
そのまましばらく読んでいると。
「っ!?」
突然眼が何かに被われた。
突然の自体に困惑してると。
「だぁーれだ」
「・・・・・・メア」
「ムゥー・・・・・・」
被われた手が無くなり、後ろを振り返ると不貞腐れた顔のメアがいた。
「なんですぐ分かっちゃうのよ〜」
「いや、分からない方がおかしいから」
伊達に十年近く幼馴染みじゃない。
「てか、どうしたの?まだ起きてるなんて」
てっきり三人とも寝たと思ってた。
キヨカは女子寮の方だし。
「フランちゃんとルナちゃんはもう寝てるよ。今何時だと思うの?」
「え?22時じゃ・・・・・・」
「残念でした。23時過ぎだよ」
「えっ!?」
慌てて時計に目をやる。
時計を見ると、既に時刻は23時を過ぎていた。
どうやら回顧録を読むのに夢中になっていて時間を忘れていたらしい。
「またそれを読んでいたの?」
机の上の回顧録を見てメアがため息を吐いて聞く。
「読むのはいいけど、時間だけは気にしてよ?レーくん、本を読むと時間が経つのを忘れちゃうんだから」
「うっ・・・・・・気をつけるよ」
僕の数少ない弱点を言われぐうの音も出ない。
「メアはなんでまだ起きてるの?」
ふと疑問に思ったことを聞く。
「あはは。私もちょっと本読んでて」
「おい・・・・・・」
人のことを言えない幼馴染みに半目で見やる。
「とまあ、それはそれとして」
「それはそれって・・・・・・」
メアの言葉に呆れ半分で苦笑する。
「レーくん。レーくん、溜めてない?」
「っ!」
いつもと違い、真剣な眼差しで僕を見るメア。
メアの言葉に僕は息を飲んだ。
「なんでって顔をしてるね。分かるよ・・・・・・幼馴染みだし。レーくんの事なら誰よりも知ってるし、分かってるんだから」
目の前にいる幼馴染みに空笑いを浮かべるしかない。
ホント、僕のことを観てる。
「レーくん。今ここには私とレーくんだけだよ」
そう言って僕を抱き締めるメア。
座ってる僕と立っているメア。身長的に丁度メアの胸が僕の顔を包む。
キヨカと同等並の胸の柔らかさに顔が紅くなる。
けど、それもだけど、なんでかメアに包まれてると心地よく思った。
メアの優しい言葉に僕は溜めていたモノを吐き出す。
「ねぇ、メア」
「うん?」
「僕は上手くやってるのかな」
ここに来てずっと溜めていた、自己嫌悪になりそうな程の疑念。
下手したらストレスになりかねないほどだ。
「カゲトラたち、クラスメイトを今日までロストさせないで来れた。けど、僕が司令官になる前にロストした人もいた」
僕は今まで、もう誰もロストさせないようにしてきた。
けど、それは僕が司令官の地位に着いてから。
司令官の地位に着く前にロストして行ったクラスメイトは何人もいる。
それは僕のチカラが足りなかったから。
今のクラスメイトになったのも、何人か入れ替わってからだ。
初期からいるメンバーなんて僕ら以外に何人いる?
カゲトラやタケル、シスイと言った面々ぐらいだ。
それに、他の仮想国もそうだ。
みんな、プロのLBXプレイヤーやメカニックになるためにこの学園に来たのに、ロストして退学。
この島を去っていく人が数多いる。
そんな、何も出来ない自分が悔しい。
「大丈夫だよ。レーくんはちゃんとやってる。レーくんが駄目なら、誰がハーネスを。私たちを支えるの?」
「メア・・・・・・」
「レーくんは私やルナちゃん、フランちゃんが支えるから。レーくんはいつも通りにやってよ」
あやすように告げるメア。
吐露する僕にメアは優しく話す。
「もう私たちは弱くないよ。彼らも、レーくんが手伝ったから個々の能力を高められてるし。ま、まぁ、みんな、癖が強いんだけどね」
「ははっ。そうだネ」
自分たちもだけどね。
「安心して。私もルナちゃんもフランちゃんもキヨカちゃんも、レーくんの味方だから。私たちは、レーくんが居たからここに居るんだから。ね」
「うん・・・・・・」
メアが居てくれて良かった。
何時もそう思う。
幼い頃から知っているから、嘘偽りなく話せる。
「メア」
「ん?」
「その・・・・・・今日、一緒に寝ない?」
ちょっと恥ずかしいけど、メアに提案する。
「もちろん、良いよ♪」
「即答!?」
提案しておいてなんだけど、少しは躊躇いをね?
あ、今更か。
「って、速っ!」
いつの間にかベットにインしてるメア。
あれ、メアってアレ保有してたっけ?
幼馴染みの速さに困惑する。
てか、いつ入ってきたんだろ部屋に。
今更に思い出す。
「ほらほら、レーくんも早く♪」
「あ、うん」
壁際にメア、通路側に僕といった感じだ。
何時もは逆なんだけど。
いや、メアたちが潜り込んでくるからなぁ・・・・・・
「ぁ〜。落ち着く〜」
「僕は清涼剤とかじゃないんだけど・・・・・・」
ベットに入るなり抱き着くメアに微妙な顔で言う。
「お願いだから服脱がないでよ?」
今のメアの服はピンクのパジャマ姿だ。
そう簡単に脱げるもんじゃないんだけど・・・・・・
「・・・・・・・・・・・せっかくだから〜」
「ん?っんむ!?」
「このまま、一線を超える?」
「ぷはっ!はい?!」
いきなりキスしてきて驚く僕にメアが普段の表情で言う。
いや、一線を超えるって・・・・・・それは・・・・・・
キスもだけど・・・・・・
「ダメに決まってるでしょ・・・・・・」
「え〜」
「当たり前でしょうが。それにここ寮だよ?」
「寮じゃなかったらいいの?」
「なんでやねん・・・・・・」
メアの言葉にツッコム。
そもそもまだ僕ら13歳なんですけど!!?
「とにかく、一線は超えないからね」
「はぁーい。でも、何時かヤるからね!」
「なんでそんなに漢らしいセリフ言ってるんやねん。てか、誰の入れ知恵よ!?」
「え?お姉ちゃん」
「アミ姉ぇ〜・・・・・・」
真面目なんだけど兄さんと付き合ったことにより、以前からあったはっちゃけにさらに箔が付いたアミ姉。
どうやらその影響は妹のメアにも伝染していたらしい。
「兄さん大丈夫かなぁ〜」
実の兄であるバンが心配になってきた。
アミ姉に搾り取られてなきゃいいけど・・・・・・
そう思いながら僕はメアと眠りに着いた。
翌日、フランとルナに起こされた際、メアのパジャマが大胆にもはだけて、僕も色々あって一悶着あったけど・・・・・・それはまた別の話で。