〜レイside〜
みなさん、新年明けましておめでとうございます。
主人公の山野レイです。
さて、僕は今どこに居るでしょう?
答えは―――
「はい、甘酒だよレーくん、フランちゃん」
「あ、ありがとうメア」
「ありがとう・・・・・・」
近所にある神社。
ミソラ神社に来ていました。
しかも、何故か僕も振袖姿です。
うん。なんで?
時は少し前に遡り―――
数時間前
山野家
「―――母さん、ちょっと待とうか」
「なぁにレイ?」
「僕の性別は男ってこと知ってるよね」
「ええ」
「なのに、なんで僕も振袖を着ないといけないのかな!?」
振袖とは基本女子が着るものだ。
決して男子が着るものでは無い。
無い・・・・・・はずだ・・・・・・!!
「ほらほらレーくん。早く着てみてよ」
「レイ。お義母さんも言ってるから。それに私も見てみたい」
「メア!?フランまで!?」
メアはともかくとして、まさかフランまで言うとは思わずギョッとする。
だが、何としても振袖だけは回避しなければ!
「ほぉらレイ。二人も言ってるんだから」
「いやいやいや!そういう問題じゃないよ!?」
「大丈夫よ。レイは私に似てて女顔だから」
「問題大ありだわ!!」
何故新年早々ツッコミをしなければならないのか・・・・・・。
しかも新年早々振袖姿なんか見せた暁には、郷田とかから絶対何か言われる!!
「兄さん!父さん!何か反論!!」
バッとソファに座る兄さんと父さんに母さんへの反論をお願いするが。
「す、すまんレイ。ああなった真理絵を私は止められん」
「父さん!?」
申し訳なさそうに視線を逸らして言う父さん。
「あー。えーと・・・・・・俺、カズたちと待ち合わせしてるから」
そそくさと出て行こうとする兄さん。
「兄さん!?どこ行こうとするのかな?!かなっ!?」
ギュッ!と兄さんの腕を掴んで引き止める。
「は、離せレイ!俺まで巻き込むなぁ!!」
「逃がすかぁ!!」
逃げる兄さんにそれを引き止める僕。
筋力的には兄さんに軍杯が上がるが―――
「って!チカラ強!?なんで!?」
てこの原理を利用して兄さんを引き止めてる。
のだが―――
「はいはい。バン兄は置いといて、レーくんはこっち来てね」
「っ!?メア!?」
「ほら、大人しくしてレイ」
「あ、アミ姉!?何時から居たの!?」
いつの間にかいたアミ姉とメアの姉妹によって兄さんから引き剥がされ。
「さぁーて、レイにはどれが似合うかしらね」
「え、ちょっ!!待っ―――!!」
母さんに連れられて奥の部屋に行き、母さんの手で男子なのに何故か振袖を着ることになってしまった。
後に調べたら、昔は男も振袖を着ていた、とのことらしい。
で、母さんの手で振袖に着替えさせられた僕は窶れた表情で、近くのミソラ神社に初詣に来ていた。
で、時間は戻り―――
僕らはメアとフランとともに甘酒を飲んでいた。
寒い身体に温まるね。
それにしても、さすが新年。
神社の境内はたくさんの人で溢れている。
溢れているのはいいんだけど・・・・・・!!
「知り合いにバレないようにしないと・・・・・・!!」
新年早々振袖を着ている事がバレないようにしなければ!!
「いや、多分それは無理だと思うわよ?」
右隣にいる、これまた振袖姿のフランが言う。
フランの振袖は、ピンクと白を基調とした桜の絵柄の振袖だ。
ちなみにこれの着付けをしたの、全部母さんである。
てか、母さんいつの間にこんなに振袖を・・・・・・・・
「あはは・・・・・・お姉ちゃんがもう拡散してるんじゃないかな」
で、左側には、同じく振袖姿のメア。
メアの振袖は、赤と白を基調とした牡丹の絵柄の振袖だ。
二人ともよく似合っている。
って!そんなことより!!
「え!?アミ姉が拡散したってどう言うこと!?」
メアの発言にギョッとしてメアに問い詰める。
「家を出る前、お姉ちゃん端末をいじってたから」
その言葉で背中に冷たい汗が滑る。
「ってことは・・・・・・!!」
僕がイヤーな予感がしたその瞬間―――
「あ、本当に振袖着てた」
「うん!レイの振袖が見られるなんて!」
真後ろからとても聞き慣れた声が二人分耳に入った。
恐る恐る振り返ると。
「明けましておめでとう。レイ、メア、フラン」
「三人とも明けましておめでとう。今年もヨロシクね!」
「キヨカちゃん!ルナちゃん!二人とも明けましておめでとう〜。今年もよろしくね」
「えっと・・・・・・キヨカ、ルナ。明けましておめでとう。今年もよろしく」
こちらもまた振袖姿の二人。
キヨカとルナがいた。
キヨカの振袖は淡い紫を基調とした菊の絵柄の振袖。
ルナの振袖は水色と白を基調とした椿の絵柄の振袖だ。
「キヨカ。ルナ。明けましておめでとう。二人ともよく似合っているよ」
「ありがとうレイ」
「えへへ。お姉ちゃんのお下がりだけど、レイにそう言ってもらえて嬉しいな」
少し頬を赤らめて返すキヨカと、照れくさそうに笑みを浮かべるルナ。
「そういうレイもよく似合っているよ。ね、キヨカ」
「ええ。全く違和感ないわよ。振袖姿」
「うっ・・・・・・・」
ちなみに、僕の着ている振袖は黒と白を基調とした、フランと同じく桜の描かれた振袖だ。
「全然、嬉しくない」
男の僕としては、嬉しくない言葉だ。
何故、新年早々、半女装みたいな事をせにゃあかんのか・・・・・・
化粧とかは特にせず、素のままだ。
まあ、確かに?よく女子と間違われるし?
自分でも、顔立ちは中性的というより、やや女子っぽいけど。
母さん似で。
兄さんは父さん似なんだけどね。
そう思ってると。
「なんで新年早々そんな格好してんだレイ」
「っ!?ダイキさん!?」
遅れて何時もの服のダイキさんがやってきた。
そうだよね。シスコンのダイキさんがキヨカと一緒にいないわけないよね!
しかも―――
「んお!?レイか!?」
「ご、郷田!?」
ダイキさんと犬猿な仲とはいえ仲のいい郷田まで来た。
まあ、さすがに何時もの上半身裸に学ランのスタイルではなく、ちゃんとした服装だけど。
てか、こんな寒い中あの格好だったら即お説教もんだよ!?
「おまっ!なんで振袖姿なんだ!?」
「それは聞かないで!色々あったんだよ!!」
「お、おう・・・・・・」
僕の気迫に圧された郷田は引き気味に返す。
「とりあえず、お参りに行くなら俺たちの側を離れるな。こんだけ人混みが多いと逸れるぞ」
「仙道、俺たちって俺もか!?」
「当たり前だ。コイツらはまだ子供だぞ?」
「お前なぁ・・・・・・お前、コイツらに対して過保護すぎだろ」
「何か問題があるか?」
「否定しねェのかよ・・・・・・」
新年早々仲のいいことで。
二人のもう見慣れた口論に僕らは暖かい目をする。
その後、ダイキさんと郷田たちとともにお参りに行き、御守りと御籤を引いた。
で、その後―――
「疲れた」
「なんていうか、その、新年早々苦労してるなレイ」
「拓也さん・・・・・・」
場所は移り、僕らはタイニーオービット社にいた。
元々、お昼からタイニーオービット社の新年会に行く予定だったのだ。
着替える時間も無かったため、しょうがなく振袖姿でここに居る。
会場内には、タイニーオービット社員にシーカーの面々。
兄さんやアミ姉たち、関係者が総勢いる。
「3ヶ月後には彼処に行くのだろう?」
「ええ」
ここに居る全員、僕、メア、ルナ、キヨカ、フランの5人が数ヵ月後にはLBX専門学校の神威大門統合学園に行くことを知っている。
神威島は日本近海に造られた神威大門統合学園のための人工島だ。
日本本土との人や物の連絡は基本的にフェリーで結ばれている。
調べたところ、神威島は町並みをはじめ、島内のインフラは日本の1960年代・高度成長期を模して建設されているとの事らしい。
島内での生活そのものも、原則として1960年代以降に作られた物は存在しないよう統制されているとのことらしい。
この時点で僕はこの島に大きな違和感を覚えた。
今の西暦は2054年。
この神威島が出来たのは一昨年。
そして同年に、【
そして、その重要な場所こそ神威大門統合学園だ。
学園への入学条件は、公式大会での3回以上の優勝と厳しい。
専門学校と言う割には、色々とおかしな点がある。
僕が軽く調べただけでこの結果なのだ。
他の人もこの学園にはおかしな点があると分かるはずだ。
「まぁ、お前たちなら問題もないだろう。特にお前はな」
「買い被りすぎだよ拓也さん」
事実、僕だって負けたことあるし。
そのまま拓也さんと話してると。
「レイ。あの島に行くなら気をつけろ」
「紳羅さん?」
険しい表情で告げる紳羅さん。
「あの島は何かを隠してる。とにかく、気をつけるんだ」
「ええ」
神羅さんの忠告に僕も気を引き締める。
拓也さんと紳羅さんから離れ、兄さんたちのところに向かう。
「明けましておめでとうございます、レイさん!」
「明けましておめでとう、ヒロ」
兄さんと話していたヒロが、僕に気づいて挨拶してくる。
「ハァーイ。振袖姿似合ってるじゃないレ〜イ!」
「ジェシカ!?」
A国にいるはずのジェシカに驚く。
「アミやランに誘われて来日してたのよ」
「あー、なるほど」
ウチの女子って何故か全員行動力が高いんだよねぇ・・・・・・
アミ姉然り、ジェシカやラン、アスカも。
「ちなみにジンは来てないわよ」
「え!?ジン来てないの!?」
道理で見かけないわけだ。
「忙しいみたいよジン」
「あー、そう言えばジン、A国の大学に進学したんだっけ」
兄さんの言葉に、そう言えばそうだったと思い出す。
「ってか、なんでそんなに振袖が似合ってるのよ」
「ラン・・・・・・」
不満そうに言ってくるラン。
僕の方が知りたいわ。
「それで?」
「ん?」
「メアたちとはどうなのよ」
「はい!?」
唐突のジェシカの質問に変な声が出た。
ジェシカの声が聞こえていたのか、周囲の女子。
アスカや矢沢さん、三影さんたち面々が集まって来る。
「レイ君。教えてくれるかしら?ルナの保護者として、家族として。なにより姉として私は聞く権利があるわ!」
「里奈さん!?」
詰め寄ってきた里奈さんの迫力に引き気味になる。
ってか、顔怖いし近い!!
男子勢は遠くから眺めてるし。
てか、兄さん!
兄さんはアミ姉を止めてよ!!
アミ姉と彼氏彼女の関係になっている兄さんに視線を送るが、兄さんはその視線に捕えられないように顔をずらす。
薄情者ぉーー!!
正月でも女子にとって恋バナは休み無しなのか、ひっきりなしに聞いてくる。
みんな、顔をずいっ!と出して聞いてくるから怖い。別の意味で怖い。
逃げようにも、激しい動きがしにくい振袖姿なので満足に動けん。
まさか母さん、この事を予測して着せたのか?
いや、多分着せたかったから着せたな。
女子勢からの質問にてんやわんやしながら、僕はもう諦めの境地に入っていた。
やれやれ・・・・・・なのです。
〜レイside out〜
〜フランside〜
この世界の時代に来て初めてのお正月。
お義母さんには何時もお世話になっているわ。
この着付けも、お義母さんがしてくれたもの。
私の世界の時代には、着物とかそういうのは無くなってるし、お正月に神社に御参りという行事すらも存在しない。
そもそも、神社とかすらない。
いや、より正確にいうなら、無いのではなく、無くなってしまったのだ。
改変した世界は争いもなく、平和な世界だけど、私の記憶には改変する前の、争いの絶えない白黒な世界が脳裏に焼き付いてる。
そう思うと、この世界のこの時代は平和だ。
もちろん、外国では争いはあるけど、私の身の回りにはない。
当初、この世界に来た目的は、もう一度だけ私を救ってくれたレイ。山野レイに会うためだった。
けど、レイに会って今までの事が溢れ出て、離れたくない気持ちが込み上げこの世界に留まる事を選んだ。
もしかしたら、サンとアスタはこの事を予想していたのかしら。
今でも二人の事が気掛かり。
あの研究所で、兄弟のように過ごして来たから。
でも結果、改変前の世界で生き残ったのは私だけ。
改変後の世界ではお母さんもお父さんもサンもアスタも、みんな生きているけれど。
その時、私の瞳に鮮やかな色が映った。
白黒の何も無い色から、鮮やかな色彩に。
これも、天馬たちやレイたちのお陰。
なにより、レイが私を闇からすくい上げてくれたから。
遠巻きにレイたちを見ながら感傷に浸ってると。
「どうしたのフランちゃん?」
「あ・・・・・・お義母さん」
この世界での保護者にしてお義母さんである、真理絵さんがやってきた。
「何か悩み事?」
「いえ・・・・・・その・・・・・・」
私は言いにくげに視線を逸らす。
けど、視線はチラチラとレイの方に向いている。
「ふむ・・・・・・なるほど・・・・・・」
「へ?」
お義母さんは何か察したように頷いてる。
「フランちゃんは、レイの事が本当に好きなのね」
「フェっ!?」
唐突の言葉に変な声が出てしまう。
「視線がさっきからレイに向いてるし、何時もレイの後ろ姿を追ってるもの」
「〜〜〜///」
さすがレイのお義母さんなだけあって、洞察力がレイ並。
いや、これは女性特有の感覚なのかしら。
恥ずかしくなり赤面する私。
「けど、レイは天然だからねぇ〜」
「はぅ・・・・・・」
「それに、メアちゃんを始め、ルナちゃんやキヨカちゃんもあの子の事好きだから」
「ぅ〜・・・・・・」
恋敵が多い。
もしかしたら他にもいるかもしれないと思うと鬱になる。
「でも、あの子があんなに一生懸命お願いしてきたのは初めてだったわ」
「え・・・・・・」
「フランちゃんを
「レイがですか?」
「ええ。あの子は昔から何処か常人と掛け離れていた存在だったのよ。たぶん、お父さんがいなかったから、ってのが関係してるんでしょうね」
詳しくは聞いてないけど、お義父さんはレイが小さい頃攫われて行方不明だったらしい。
帰ってきたのは2年半前位だとか。
「何時も物事を違う目線で見てたからか、自分のことはどうでもいいって思う節があったの。でも、あの子が壊れたりしなかったのはメアちゃんのお陰ね」
「メアの?」
「ええ。何時もあの子の傍にメアちゃんが居てくれたから、あの子は今もああして、少し他の同年代の子とは違うけど過ごせてると思うの。私も、母親としてもう少しあの子のことを気にかけておくべきだったのでしょうね」
他の女子に詰め寄られてるレイを遠巻きに眺めながら言うお義母さん。
私もレイを見る。
他の女子に問い詰められていてあたふたしている。
「そんなあの子が、フランちゃんの事に関してはいつも以上に一生懸命なの」
「わ、私の?」
「ええ。フランちゃん。貴女に関して私はレイから聞いただけだけど、貴女は決して悪い子じゃない」
「っ!」
私は一度、私の目的のためにこの世界と天馬たちの世界を壊し、破壊した。
それは、未来の世界を救うため。
救うためといっておきながら、結局は救ってない。ただ、世界を破壊しようとしただけ。
最後は私の持てる力を使って、時空ごと消しさろうとした。
けど、それを天馬たち。レイが命を懸けて止めた。
あの時のレイはまだ11歳。
私と2歳の差。
あの中で誰よりも幼かったレイに。レイの優しさに私は救われた。
私の哀しみと絶望を受け止めた。
私は彼らに負けたのもある。けど、一番は、レイの優しさに負けたのだ。
この世界で過ごしてまだ1年も経ってない。
でも、今日までレイは色んなことを私に教えてくれた。
メアやキヨカ、ルナたちと触れ合わせ、バンたちとも交流。
お義母さんやお義父さんから色んなことを教わり、他国や他県にも連れて行ってもらって、文化を学べた。
どれも、私のいた未来の世界では有り得なかったこと。
「私にとって、貴女はもう私たちの家族の一員だし、大切な娘よ。だから、遠慮なんかしなくていいの」
「お義母さん・・・・・・」
お義母さんの言葉が嬉しかった。
こんな、世界を滅ぼしかけた得体の知れない私のことを娘だって言ってくれたことが。
まだ1年も過ごしてないのに。
「それに、あの子にとってフランちゃんは必要みたいだからね」
「・・・・・・はい」
レイに必要とされてる。
その一言がなにより、今の私に突き刺さった。
お義母さんからの言葉もだけど、レイに必要されてる事実に私は嬉しかった。
レイのためなら、私はなんでもする。
レイが望むならなんでも。私の命はレイのためにあるから。
「フラン、助けてぇ!!」
なんかお義母さんと話してる間に凄いことになっているレイが助けを求めてきた。
「あらあら。ふふっ。行ってらっしゃいフランちゃん」
「うん。お義母さん!」
振袖姿で少し動きにくいけど、私はレイの元に向かった。
「大丈夫、レイ?」
私の大切な。
一番好きな人のもとに。
〜フランside out〜
〜レイside〜
「あーー。つっかれたぁ〜」
目まぐるしい一日が終わり、僕は自室にいた。
あの後、余興として元旦タッグトーナメントが行われ、僕はフランと組んでトーナメントに参加した。
メアはルナと。キヨカはダイキさんと。兄さんはアミ姉。郷田はヒロと。ジェシカはランと。カズ兄は八神さんと。ユウヤはアスカと、ジン以外来れる人が総勢揃ってのバトルだ。
優勝は兄さんとアミ姉に持ってかれたけどね。
決勝まで進んで、決勝で兄さんとアミ姉に負けた。
絶対に何時かリベンジしてやる。
負けて悔しかったので僕はそう誓った。
「去年も色々あったけど・・・・・・」
窓の外に映る夜空の風景を観て。
「さて・・・・・・今年は一体どんな年になるのかな」
笑みを浮かべて、楽しみながら呟いた。
この時の僕はまだ知らなかった。
神威島に隠された秘密を。
そして、世界を揺るがすほどの事件がその島で起きようとすることを。