ダンボール戦機 英雄の弟   作:ソーナ

44 / 120
語り継がれるもの

 

〜レイside〜

 

神威大門統合学園はLBX専門学校とはいえ、れっきとした学校だ。

そのため、もちろん試験がある。

そして明日、僕ら学生にとって大事な試験が始まる。

始まるのだが、何故か、ウォータイムは通常通り行われる。

それ故に、学園生のみんなはこうした放課後などで勉強に励んでる。

かく言う僕も、今日のやる事(主に日暮先生のやる仕事)を終え、学園からダック荘へと帰ろうとしていたのだが―――

 

「―――レイ!丁度いい所に!!頼む!論文の勉強を教えてくれ!!」

 

昇降口から出た途端、丁度帰るところなのか前にいたアラタが大きな声で言ってきた。

 

「は、はぁぁ〜〜!?!?」

 

いきなりの懇願に呆然唖然とした声が僕から出る。

いや、いきなり論文の勉強教えてくれって言われても・・・・・・

さすがの事に困惑気味だ。

そこに―――

 

「ちょっとアラタ!いきなりレイに・・・・・・他クラスの人に勉強教えてくれなんて失礼よ!!」

 

「しかも、丁度いい所にって言ってたしね」

 

アラタと一緒にいたユノとサクヤがアラタを叱った。

 

「だってよ・・・・・・」

 

「だってもなにもじゃない!」

 

相変わらずのユノのアラタに対するツッコミが凄い。

ハリセンでも持ってたらバシンっ!って叩いてたんじゃないかな?

漫才でもやらせたら面白そうかも。

朝から色々あり、さすがに超疲れた頭の中ではそんなことを思い浮かべていた。

 

「あー・・・・・・で、論文の勉強教えてくれ、だっけ?」

 

「おう!」

 

「アラタ!ゴメンねレイ。アラタがまた・・・・・・」

 

「まさかとは思うけど、試験に論文があるのを今日知ったとかじゃないよね?」

 

「ぅぐ」

 

あ、これ当たりだわ。

今日知ったな。しかも多分ついさっき。

アラタの反応からそう判断する。

にしても、論文の勉強教えてくれって言われてもなぁ・・・・・・

 

「何教えればいいんだろ」

 

論文のテーマである『LBXが世界にある理由』について、なにを教えればいいのやら・・・・・・

 

「一応聞くけどアラタ」

 

「なんだ?」

 

「他の科目は大丈夫なんだろうね?」

 

「ぅっ・・・・・・!」

 

「えぇー」

 

大丈夫かアラタ試験。

思わずそう思ってしまった。

 

「まぁ、授業を真面目に受けて聞いてればテスト勉強しなくても大丈夫だけどね」

 

実際僕はそうだ。

てか、忙しすぎてテスト勉強してない。

してないのではなく、出来ない。(主に日暮先生のせい)

いや、寝る前に少しやるぐらいかな?

あ、でも、報告書作成したりしないといけないからなぁ。

 

「その点はどうなの二人とも」

 

「アラタの授業態度かー・・・・・・」

 

「お世辞にも、いいとは言えないよね」

 

「サクヤ!?ユノまで!?」

 

うん、二人の反応から想像出来たわ。

 

「はぁ。取り敢えずスワローに行くよ」

 

溜め息を吐いて僕はアラタたちとともにスワローに向かった。

スワローに着くと、店内はすでに学園生で満席状態だった。

丁度一つテーブル席が空いていたため、そこを確保する。

ユノとサクヤは飲み物を、アラタは何故かパフェを頼む。

僕はと言うと―――

 

「マスター、僕は水でいいよ」

 

「おや、いいのかい?」

 

「うん」

 

怪訝そうに見て聞いてくるマスターに僕は水を頼む。

正直、今疲れてるから水でいい。

それに、眠い。

で、始まったアラタたちの試験前勉強。

僕はただ見てるだけ。

質問されたら答えるだけ。

ちなみに、答えを答える訳ではなく、考えさせて答えさせる。

そうじゃないと意味無いし。

 

「レイはやらなくていいの?」

 

「あぁ、ゴメン。今やっても頭に入らないと思う」

 

元々僕はあまりテスト勉強をしないタイプだ。

昔のことがあったからか記憶力が今となっては良過ぎるのだ。

記憶力が良いため、ウォータイムの時とか様々な戦略を立てられるんだけどね。

 

「その・・・・・・目元すごい隈が出来てるわよ?」

 

「色々あってね。主に日暮先生のせいで」

 

「「あー・・・・・・」」

 

ユノとサクヤは納得、というような反応を返す。

マスターが持ってきてくれた水を飲んで意識をクリアにするが、すぐに元に戻る。

うん、ヤバい。

ここまでのは、結構久しぶりだ。

今眼を閉じれば数時間は起きないと思う。

 

「アラタは周り見てないで勉強〜」

 

「わ、分かってるよ」

 

「テストが悪かったら〜、シルバークレジットが減らされる上〜、赤点補習者には〜、猿田教官の特別補習が〜、発生するからね〜」

 

「と、特別補習!?」

 

「そ〜う。だから〜、頑張らないとね〜」

 

「・・・・・・なんか、レイの喋りいつもと違わないか?」

 

「そんなこと〜・・・・・・ない、よ〜〜・・・・・・ふぁっ〜〜〜」

 

あ、うん。

メアみたいな喋りになってる。

これ相当ヤバいな。

 

「も、もしかして眠い?」

 

「That's Right〜〜」

 

「お、おう。・・・・・・よし。すみませーん!パフェもう一つ!」

 

「え!?なにそれ」

 

「甘いもの食べれば、頭の回転が良くなるって言うじゃん!」

 

「単純すぎ」

 

「単純だね〜」

 

「それくらい焦ってるの!」

 

「自業自得だね〜」

 

「うん。自業自得」

 

アラタの動きに僕とユノは、別に示し合わせたわけじゃないけど同じ言葉を口にした。

 

「でも、今回は論文が難しいから」

 

「テーマがテーマだからね。テーマが『LBXが世界にある理由』だし」

 

「ったく、ホントなんだよそのテーマ。LBXが世界あるのなんて当たり前だろ」

 

「だから困ってるんだ。正解があるのかどうかも分からないし」

 

「あーあ。こんな時にインフィニティネットが使えればなぁ・・・・・・」

 

「仕方ないわ。この島じゃネットは制限されてるんだから」

 

「レイはどう思う?」

 

「ん〜?」

 

意識が微睡みの中に入りかけていた所にサクヤから質問が来る。

 

「論文のテーマ」

 

「『LBXが世界にある理由』〜?」

 

「うん」

 

サクヤだけでなく、アラタやユノ。

チラッチラッと他のところで勉強している他の仮想国の生徒まで見てくる。

 

「そうだね〜」

 

水を飲み、意識を微睡みから覚ます。

 

「今、僕らの世界にはLBXが当たり前のようにあるけど、10年くらい前。つまり僕らが小さな頃には存在しなかったからね。さっきアラタが言った、【LBXが世界にあるのは当たり前】というのは不正解だね」

 

「なっ!?」

 

「例えるなら、僕らの今生きているこの瞬間にも時間や空気は当たり前のように存在するけど、そもそも空気や水がなかったら僕ら人は生きていないからね」

 

「確かに・・・・・・今の私たちにはLBXが当たり前と認識してたけど、以前はLBXなんて存在すらなかった物ね」

 

「そう。LBXの開発がタイニーオービット社で始まったのが2042年。そこから1年の歳月をかけて試行錯誤して出来て生まれたのがLBX。正式名称、【Little(リトル) Battler(バトラー) eXperience(エクスペリエンス)】意味は『小さな戦士の体験』。通称―【LBX】が発売されたのは2043年。発売当初は爆発的ブームになった。・・・・・・けど、2045年に、遊んでいた子供がLBXで怪我を負う事故が発生したことにより、LBXの存在意義が一転して批判的なものになり、一時は販売停止までになった」

 

「え!?そうだったのか!?」

 

「あー、そっか。今のアラタたちは知らないか」

 

10年以上前のニュースだ。

今の西暦は2055年。ちょうど僕が3〜4歳ぐらいの頃のかな。

今となっては知っている人は余りいない。

それが消えるほどに今のLBXの評価は爆上がりなのだから。

 

「けど、翌年の2046年にアスカ工業と呼ばれる会社が【強化ダンボール】と呼ばれる梱包資材を発明。内外の衝撃を80%も吸収する【未来の箱】と当時は画期的な発明と話題になったね。流通業のインフラに、まさに革命をもたらしたとされているよ。ちなみに、通常のダンボールの強度は、ライナーと中芯の複合構造によって実現されているのに対し。『強化ダンボール』の強度は、高度なナノテクノロジーにより分子レベルで構築されているんだ」

 

「へぇー。そうだったの。はじめて知ったわ」

 

「まぁ、普通の人はそこまで興味無いからね」

 

苦笑しながらユノに返す。

この【強化ダンボール】があるからこそ、今のLBX業界は機能していると言っても過言ではない。

作ったのは霧島さんだ。

まぁ、5年前まで色々あったからね〜。

今は、タイニーオービットで結城さんに並ぶ技術者として開発発明に没頭してるらしいし。

結城さんとよく新技術について議論してるらしい、と霧野さんや拓也さんから聞いている。

 

「そこから、様々なことが義務付けられて再販。タイニーオービットだけでなく、プロメテウスやサイバーランス、クリスターイングラムといった多くの企業が開発に乗り出して、今に至る。かな」

 

一旦話すのを止め、水を飲む。

ふぅ、と息を吐いて。

 

「一応、長くなったけど、参考になったかな?」

 

重要な答えは教えず、ヒントだけを与える。

これに関しては、僕は厳しいよ?

もっとも、答えを教えても、理解出来ないだろうしね。

 

「まぁ、ぶっちゃけると・・・・・・この論文に完全な正解はない!」

 

「「「えっ!!!?」」」

 

ギョッとして店内にいるマスターを除いた全員が僕の方を見てくる。

 

「当然だ。ある理由なんて、人それぞれなんだから。もっとも、教師のヤツらがそれを理解しているかどうかは別だけどな」

 

元々、この論文のテーマ自体が意味不明なのだ。

学生がやるテーマですらない。

LBXが世界にある理由。父さんのLBXに込めた願いを僕や兄さんたち以外誰も知らないんだから。

書籍は出してはいるけど、それは他人に分かりやすいようにしたものだ。

これの答えと言われる答えを知っているのは、僕らだけ。

 

「じゃあ僕は帰るね」

 

「えっ!?」

 

「ここからは僕に聞くんじゃなくて自分で調べないと。古書店にでも行ってみたら?何かあるかもしれないし。まぁ、無いかもしれないけど」

 

席から立ち上がりカバンを手にする。

 

「それじゃ。マスター、また今度メアたちと来るね」

 

「ええ。待ってるよ」

 

「じゃあね」

 

パチンっ!と片目をつぶって言いスワローから出る。

スワローから出て、学園の方をむく。

 

「ホント・・・・・・何考えてだしたんだこのテーマ。僕らに戦争をさせてるヤツらが(・・・・・・・・・・・)・・・・・・」

 

そう呟いて僕はダック荘へと帰った。

途中綾部さんと会い、今回の論文のテーマについて少し会話をした。さすが年の功、人生を長い間生きている人ならではの話を聞けた。

 

〜レイside out〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ユノside〜

 

 

「行っちゃった・・・・・・」

 

「元々僕らが無理やりお願いしていたからね」

 

「それもそうね」

 

男女問わず魅了するような表情を見せて帰ったレイを見送った私たちは再び机の上の参考書に視線を向ける。

 

「それにしても、レイって天然なのかしら」

 

私はさっきの表情を見て声に出した。

つい私も見蕩れてしまうほどの笑みの表情。

しかも、意図してるんじゃなくて無意識にしてる。

 

「サクヤ?アラタ?」

 

返事がなく二人を見ると、何故か二人とも顔を赤らめていた。

 

「どうしたの二人とも。顔赤くして」

 

「あ、いや・・・・・」

 

「なぁ、ユノ」

 

「なに?」

 

「レイって・・・・・・男だよな?」

 

「そうよ?」

 

アラタの質問に何を当然と返す。

 

「なぁ、サクヤ。アレで男って反則じゃね?」

 

「あー・・・・・・あはははは」

 

二人の言いたいことがいまいちよく分からないけど、たぶんレイの最後の魅了するような表情に見蕩れていたんだと思う。

店内には他にもレイの魅了するような表情を見て見蕩れてた生徒がいて、みんな一様に惚けていた。

私でさえ少し見蕩れてたのだ。

 

「魔性というか・・・・・・天然というか・・・・・・」

 

友達ながらやれやれと苦笑する。

 

「それはさておき、どうする?古書店に行ってみる?」

 

「そうだね。もしかしたら何かあるかもしれないし」

 

「そうね」

 

私とサクヤはテキパキと机の上の参考書類を片付ける。

 

「え!?もう行くのかよ!?」

 

「善は急げって言うでしょ。ごちそうさま!」

 

「行くよアラタ!」

 

マスターに一言言ってから店を出る。

出た直前、丁度アラタが頼んだパフェがアラタの元に届いた。

なんか後ろからアラタが言ってるけど無視ね。

私とサクヤはそのまま商店街にある古書店に向かった。

古書店に着くと、アラタが走ってやってくる。

が、その顔はどこか苦しそう。

まあ、パフェを食べたあとに走ったらそうなるわよね。

呆れながら古書店に入る。

古書店はそんなに広くない。そもそも、この島にある商店街で大きなお店なんぞ、さっきまで居た喫茶スワローや遊技場ぐらいだ。

それでも何か試験の手掛かりがあるかもしれないと思い探す。

途中アラタがハルキに【部下に気に入られるリーダーになるために】とかいう本を買ってこうぜとか、サクヤに言ってたけど。

探すが、LBX関連の本は全くない。

逆に古い古書ならあるのだけど。

それから少しして。

 

「なんだこれ?LBX回顧録・・・・・・山野淳一郎?」

 

「え・・・・・・!?山野淳一郎博士の!?」

 

「誰それ?」

 

聞いたことの無い名前だ。

 

「二人とも知らないの?」

 

「「うん」」

 

えー、と呆れたように聞くサクヤにアラタと同時に頷いて返す。

そんなに有名な人なのかな?

 

「LBXを最初に開発した人だよ!その山野博士の本なら、きっと論文に沿ったことも書かれてるはずだ!」

 

「じゃあ買おうぜ!」

 

そう言ってアラタは値札を見ようとするが、何故か値札が貼ってなく、いつも寝ている店主のお爺さんを起こして値段を聞いた。

お爺さんのあの世への永眠はさすがに冗談だとは思うけど、お年寄りにはビックリするほどの大きな声だったわね。

お爺さん曰く、買い取ったばかりの新品らしく、状態もいいのでこの本の値段は5000クレジットらしい。

さすがの高額に絶叫を上げる。

三人合わせても合計4030クレジット。

1000クレジットほど足りない。

しかも、値引きとかは一切無しだそうだ。

 

「ど、どうしよう・・・・・・」

 

「う、うーん・・・・・・」

 

私とサクヤが悩んでるとアラタが。

 

「あ!レイにお願いしたら・・・・・・」

 

「アラタ!!」

 

「アラタ、いくら何でもそれは無いよ」

 

よりにもよって、まさかのレイ頼みを提案してきた。

私とサクヤはアラタを非難する目で視る。

しかも、これは金銭取引の関係だ。いくら何でも、他の仮想国のレイに頼めるわけない。

というか、さっき教えてもらったのだってギリギリなのだから。

 

「じょ、冗談だよ・・・・・・けど、アイツなら一括で買えるんじゃないかなぁ〜って・・・・・・」

 

「アラタには一度レイへの付き合いについて教える必要が有りそうね!!」

 

「アラタ、さすがにそれは冗談として言っていいレベルじゃないよ。ただでさえさっき教えてもらったのだって、本来はダメなんだから」

 

「えぇー・・・・・・」

 

確かにレイは他の仮想国の生徒達にも人望がある。

それは実績もだけど、困っていると手を差し伸ばしてくれるからだ。

先日のハーネス対アラビスタ対ロシウスの『フェンレス雪原』での三竦みによる戦闘で改めてレイへの認識が確認された。

ロシウスの【バイオレットデビル】こと法条ムラクとの一騎打ち。

ウォータイム終了後、美都先生からその戦闘映像を見た私たちは声が出なかった。

それほどまでに高レベルな戦闘だった。

そんな中、アラタだけは違った。

あの目はレイへの認識を甘く見ていた。

レイを以前から知っている私たちからしたら脅威としか言えない。

レイが学園最強にして、最凶と最恐と言われる所以、他を寄せつけない圧倒的な実力。

そしてそれに追ずるフランやルナたち。

ハーネスの要であるレイ。

レイについてはこの学園に来る前から噂されてた。

ミゼル事変を解決した英雄の一人。

世界大会アルテミスを史上初二連覇したプレイヤー。

数々の異名。その中でも《黒閃の双剣》というのが流通していた。

私はこの学園に来るまでレイと相対したこと無かったけど、この学園で会った時、私は彼が私たちと次元が違うと思った。

まるで未来を見据えてるような眼に、男女問わずに魅了するような優しい表情。男子なのに、女子にも見える中性的な顔立ち。

なにより、圧倒的に高レベルな操作スキル。

それが彼をはじめて見た時、私が感じたことだ。

彼と友達になったのは、確か一年の時の期末テスト勉強のとき。

放課後の教室で、副委員長の仕事のあと軽く勉強していた時だった。

 

 

――― 一年前―――

 

 

「え、えーと、ここは確か・・・・・あれ、違う?」

 

「?まだ誰かいるの?」

 

「っ!?」

 

突然した声にビクッとした。

バッと視線を声のした方に向けると、そこには一人の男子生徒がいた。

 

「キミは確か・・・・・・1年5組の副委員長、鹿島ユノだっけ?」

 

「や、山野レイ・・・・・・?」

 

突然視界に最強のプレイヤーが現れ、私はビクつく。

その私に彼は苦笑しながら。

 

「期末テストの勉強?」

 

と聞いてきた。

 

「え、ええ」

 

「どこかわからない所あるの?」

 

「え、えーと・・・・・・」

 

害意もない、純粋な問い。

机の上の参考書に視線をやり。

 

「えーと、どれどれ・・・・・・」

 

教室に入ってきた彼はそのまま私の机の上の参考書に目をやる。

彼はそのまま問題を見て。

 

「ああ、それはこの公式を使えばいいよ」

 

サラッと教えた。

私は彼の教えた公式を元に式を当てはみ。

 

「あ・・・・・・解けた」

 

さっきまで苦労していた式がスラッと解けてしまった。

 

「他にわからない所ある?良ければ教えてあげられるけど」

 

「じゃ、じゃあ・・・・・・」

 

私はそのまま彼に分からなかったところを聞いた。

彼はその全てを答え、分かりやすく教えてくれた。

教える時、公式だけを教えるんじゃなくちょっとした豆知識や例を出すので、みるみるうちに吸収した。

 

「あ、ありがとう」

 

「別にいいよ。同じ学園の生徒だし」

 

そう言って彼は窓の外を見る。

私も連れられて見ると外は暗くなりかけていた。

 

「あ、もうこんなに暗く。そう言えば貴方はどうしてまだいたの?」

 

「僕?僕は担任の日暮先生の仕事を代わりにやってたんだよ」

 

「え?」

 

なんか今普通の学生が言わない言葉を言っていたような・・・・・・

 

「まったく。あの人適当すぎ。あの人がやっても適当だし・・・・・・」

 

な、何かわからないけど滅茶苦茶苦労しているみたい。

 

「鹿島ユノ、キミはこの学園をどう見る?」

 

「え?」

 

突然の質問に困惑する。

この学園をどう見るって・・・・・・

 

「少し変わった学園だと思うけど?商店街もそうだけど」

 

「少し変わった学園、か」

 

彼は私の答えを聞くと目を閉じた。

 

「僕からしたら【異常】だと思うかな」

 

「い、異常?」

 

彼の言った異常という言葉に私は訳が分からなかった。

確かにこの学園、インフィニティネットとか制限されてるし変だけど。

 

「何時か、分かる日が来るかもね。鹿島ユノ」

 

意味深な台詞。

私は目の前にいる男子が本当に同年代の男子なのかすら分からなかった。

大人びているという程ではないけど、自分と同じ今を見てないような。そんな気がした。

 

「さてと。それじゃあ帰ろうか」

 

「え、あ、うん」

 

帰り支度をし、急いで昇降口に行く。

すでにほぼ全ての生徒が下校しているため、人に全く出くわさなかった。

 

「あ、あの!」

 

「ん?」

 

「私のことはユノって呼んで」

 

学園から出た私は、彼にそう言った。

 

「じゃあ、僕のこともレイでいいよ。ユノ」

 

「ええ。よろしく、レイ」

 

彼・・・・・・レイの差し出した右手を取り握手をした。

 

 

こうして私とレイは友達になった。

ハーネスとジェノック。敵対する仮想国だけど、友達。

その後もよく話したりして、メアたちとも知り合いになった。

その事を思いだしアラタに言う。

 

「あのね、アラタ。いくらレイが優しいからって、今回のこれはあんまりだと思わないの!?」

 

「だ、だけどさぁ・・・・・・」

 

「だけど、じゃない!それに私たちジェノックにはレイに大きな貸しがあるのを忘れたの?!」

 

「っぐ!」

 

そう。ジェノックにはレイへ大きな貸しがある。

目の前にいるアラタと、ヒカルのせいで。

今のジェノックはレイの優しさで生き残ってるもんだ。

レイがその気になったら私たちなんてあっという間に殲滅させられるのだから。

その事実を改めてアラタに解らせるため、軽くお説教し、結局ヒカルに頼ることになった。

―――のだが、一度ダック荘へ戻りヒカルとともに古書店に戻ってくると、カイトが回顧録を手にし購入するとお爺さんに言っている場面に出くわし、アラタとカイト、どっちが本を買うのかお爺さんの提案でLBXバトルで決めることになった。

計算して攻めていくカイトに苦戦するも、カイトの[DCブレイバー]の動きを読んだアラタが何とか逆転して勝ち、ヒカルの協力もあり、無事LBX回顧録を購入することが出来た。

回顧録を買い、ダック荘に戻ってきた私たちは、2階の談話室でさっそく回顧録を読んだ。

代録として私が読み、回顧録の文をアラタ、サクヤ、ヒカルに話す。

書籍には、LBXの開発過程やこれからの未来について書かれている。そして、そこには喫茶店でレイが言っていた内容も含まれていた。

これ読んで、私はLBXがとても奥深いものだと感じた。

大人から子供まで、楽しく。ホビーの域を超え、さらなる未来へと繋がる無限の可能性が存在することを。

読み終えた私は自室に戻り、机を前にして一年前レイが言っていたあの言葉を思い出した。

 

「この学園は異常・・・・・・」

 

あの時は意味が全くわからなかった。

異常とは何か。

けど、回顧録を読んだ今、私の中で不確かな疑問が浮かんだ。

この学園は山野博士が望んだLBXの在り方なのか、と。

 

「あれ。そう言えば、レイの苗字って山野だよね。山野博士と同じ苗字・・・・・・」

 

まさかね。と首を横に振り、私は明日のテスト対策のため勉強をした。

―――で、翌日の論文で・・・・・・

 

 

「う、嘘だろォォォ!!!?」

 

 

「はぁー」

 

試験終了5分前に美都先生に起こされたアラタの絶叫を聞いて、アラタは補習確定だなぁ、思ったのだった。

 

「アラタのバカ・・・・・・」

 

昨日あれだけあったのにまさかの居眠りで台無しとは・・・・・・

呆れてものが言えない。

なにより、レイに申し訳が立たない。

はぁー・・・・・・・

 

〜ユノside out〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜レイside〜

 

「アッハハハハハハッ!!!」

 

今日一日が終わり、ダック荘の自室に帰った僕は部屋にいたキヨカからアラタの論文の試験を聞いて笑いが止まらなかった。

 

「ハッハッハ〜〜・・・・・・えー、マジなのキヨカ?」

 

「クスッ。ええ」

 

キヨカも珍しく笑っている。

それほどまでにアラタのが面白かったのだろう。

 

「普通試験中に居眠りする?」

 

「ありえないわー」

 

「あはははは」

 

部屋にはフラン、メア、ルナもいて、僕ら5人勢ぞろいしている。

 

「レイがそこまで笑うなんて久しぶりね」

 

「あははははっ。あー、うん。昨日、試験対策勉強したのにね」

 

「あぁ、なるほど」

 

「私たちの方は全員問題ないわよね?」

 

「多分ね」

 

試験中ほぼ全ての時間居眠りしていたアラタは確実に猿田教官の補習は確定だ。

たいしてコッチは問題ないと思う。

 

「それで、レイ今回の論文なんて書いたの?」

 

「僕?LBXの存在する理由だったから、LBXの未来と可能性かな。LBXは決して戦争で使うものでは無いと書いてね」

 

「滅茶苦茶書いてたね」

 

「確か10枚くらい書いてなかったかな?」

 

「さ、さすがね」

 

メアとルナの言葉に驚くキヨカ。

僕として時間があればもっと書けたんだけど・・・・・・。

書く用紙が作文用紙なんだもん。あんなの、すぐに埋められるわ。

試験時間は1時間半だけどね。

父さんの願いや、LBXに込めた思い。

今までの経験など全てを書き記すとしたら10枚では足りん。

 

「メアたちも結構書いてたよね」

 

「まぁ、ね」

 

メアたちも何気に結構書いていた。

試験監督の日暮先生が微妙に面倒そうな顔をしていたが無視。

普段から僕にやらせてる事を味わうがいい!!

 

「それで、真面目な話をするとして」

 

「うん」

 

足を組み、4人に話す。

 

「まず、ヒロが行方不明らしい」

 

「っ!?ヒロさんが!?」

 

ヒロが行方不明だということを告げられ目を見開くメアたち。

 

「行方不明になった場所はA国。捜査当局が今探してるらしいけどね」

 

アレ以降、ヒロに関する情報がないため現状はわからない。

何か分かれば連絡がつくようにしてるけど・・・・・・

 

「それと、バンデットに関して」

 

「バンデットね・・・・・・」

 

「こっちも有力な手掛かりはないけど、学園の中にバンデットのプレイヤーがいるのは間違いない。ヤツらが何をしたいのかすら分からないから、十分気をつけて」

 

僕の言葉に4人とも静かに頷く。

 

「キヨカ、ジェノックの方は?」

 

「私の目から見ても、まだまだ未熟。けど、気になるプレイヤーが幾つかいるぐらいね」

 

「そう」

 

「中でもアラタの奇抜な発想はレイに似てるわね」

 

「そう?」

 

アラタと似てると言われ微妙な感じだ。

 

「さて・・・・・・これからさらに忙しくなるね」

 

「まぁ、大丈夫よ」

 

「そうね。私たちなら」

 

「なんとかなる!」

 

「あははは。レーくんがいれば私たちは平気だよ」

 

「ありがとうみんな」

 

クスッと微笑んでみんなに礼を言う。

さてと、これからどうなるかな?

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。