〜レイside〜
「『タンデムの港』にバンデットが襲撃。ロシウス、ジェノック、ともにロストが出た、と。ジェノックは第3小隊の二人か」
昨日今日で行われた『タンデムの港』攻略作戦の情報をウォータイムの終わった司令室で一人読む。
「不意打ちとはいえ、[ガウンタ・イゼルファー]の右腕を切り飛ばした、か」
まさかムラクにダメージを与えるとは。
それにしても―――
「機体に自爆機能がついてるとはね」
ジェノックでロストしたプレイヤーの一人はこの自爆に巻き込まれたのだ。
その自爆の威力は、見た感じ半径3mの物を巻き込む程で、巻き込まれた物は一溜りもないほどだ。
「自爆の目的はこちら側に情報を与えないため・・・・・・厄介だな」
これではこちら側に情報が入らない。
手加減してブレイクオーバーして機体入手しようものなら自爆でアウト。
ブレイクオーバーではなく、破壊してもアウト。
「ぁー。こういう時に相手の自爆を無効化する道具とかあればなぁ・・・・・・」
4年前のブレインジャックやゴーストジャックがあれば問題ないのだろうけど・・・・・・
「ブレインジャックはMチップ。ゴーストジャックは[ベクター]がマニピュレータを介して接触して、LBXのコントロールを奪取して友軍化するというものだからなぁ・・・・・・。前者はともかく、後者はミゼルが居ないと使えないし・・・・・・やっぱり地道に調べるしかないか」
苦肉だが、地道に調べるのが一番手っ取り早いようだ。
『タンデムの港』での情報を閉じ、セカンドワールドのマップを表示する。
「『タンデムの港』を制圧したことにより、ジェノックはこれで海運航路が出来るようになった。となると、ロシウスはこれを機にジェノックが領土を拡大のため攻めてくると考えるはず。イワン・クロスキーなら、これを逆手にとって、ここからジェノック本土へと侵攻してくるはず。そう考えると、ジェノックの次の手はやっぱりここしかない、か」
マップのある一点にが赤く染まる。
「ロシウス領内東端にある要塞・・・・・・『エンジェルピース』」
ジェノックからそう離れてない、現実世界での北方領土辺りだ。
「けど、ジェノックにここを制圧出来るかな?」
『エンジェルピース』には、【バイオレットデビル】こと法条ムラクと同様に恐れられてる異名を持ったプレイヤーがいる。
【グレイビースト】の異名を持つアンドレイ・グレゴリーが、守備隊長としてそこにいる。
アンドレイ・グレゴリーは白兵戦の猛者と呼ばれるほどのプレイヤーであり、長い間『エンジェルピース』を防衛している。
『エンジェルピース』に配置される前に、一度彼と戦ったことがあるが、中々の強敵だ。戦闘から豪胆かつ柔軟な性格が伝わってきた。
ハーネスがロシウスと戦うのは何も『フェンレス雪原』が初めてではない。
たまに戦うほどだ。
ちなみにであるが、何故かそのほとんどが僕ら第5小隊が任務についている時である。
「それに、ロシウスも開発してるみたいだしアレを」
ジェノックが『エンジェルピース』を制圧出来るのか楽しみな僕は不敵な笑みを浮かべる。
「これはジン経由で美都先生に伝えるとして。まぁ、美都先生も同じこと考えていると思うけど」
肩を竦めてマップをハーネスの方へと移動する。
「明日どうするかなぁ・・・・・・メリッサ先生泣きついてくるし・・・・・・ポルトンに攻める?いや、でもポルトンの領土をこれ以上削る訳にはなぁ・・・・・・やっぱり哨戒任務かな」
ま、この辺はジンに丸投げしようっと。
も〜う疲れた。
それからカゲトラたちから渡された報告書を読み、職員室の日暮先生の机の上に置き下校した。
ダック荘に帰ると、トメさんから手伝いを頼まれ急いで支度をして厨房に入りトメさんの手伝いをする。
で、夕飯を食べお風呂にも入り自室に戻り報告書を書いて転送する。
いや、うん。よく僕過労死してないな。よく思うけど。
そう思いながら眠りにつき―――
翌日
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
何故か目の前にフランがいた。
あれぇ〜!?!?
フランもパチクリと瞬きして驚いている。
あれ、ここ僕の部屋じゃ・・・・・・
目線を部屋に向け室内を確認する。
―――のだが、する前に・・・・・・
「あれ、レイがいる」
ルナの声が後ろから聞こえてきた。
ということはこの部屋って・・・・・!!
「あ、もしかして夜這いに来たの?」
「いや!今、朝だから!!」
ばっと起きてルナにツッコム。
「じゃあ、朝這い?」
「違うよ!?」
「そうなの?お姉ちゃんがそう言ってたけど」
里奈さん、貴女自分の妹に一体なにを教えてるの!?!?
何故かサムズアップしてにこやかな表情をしてる里奈さんの姿が脳裏に浮かんだ。その後ろには何故か苦笑いしてる拓也さんの姿が。
あの人ダイキさんと同じくらいシスコンって程だし。まぁ、たった二人だけの家族だからわからなくもないけど。
ってか、それより、うん。誰か教えてください。幼馴染みたちが最近アホになってきているんです。誰かこれの治し方を教えてください。
そう懇願していると。
「レイ」
「あ、はい」
ベッドに横になったままのフランに呼ばれシュンとなる。
多分これ、また寝惚けて間違えたんだと思う。
何故、また、なのかというと前にもあったからだ。
超疲れたていた時、部屋を間違えて熟睡してしまったことがある。
「その・・・・・出来れば夜這いする時は、事前に一言言って欲しいわ」
赤面して言うフラン。
あ、うん。可愛い。
じゃなくて!
「夜這いじゃないよ!?!?」
フランまで夜這いと勘違いしてる!!
「でも、お義母さんが夜、女子の部屋に男子が来ることは夜這いだって言ってたけど」
「母さんっ!!??」
母さんまで何言ってるの!?
いや、それより、母さんたちのもっとやっちゃえ、みたいな看板を掲げてる姿が何故か見えるんだけど!?気の所為だよね!?
そう葛藤しているとさらに―――
「ルナちゃん、フランちゃん。レーくん何処にいるか、しらぁ・・・・・・な、い・・・・・・・・・・?」
メアが部屋に入ってきた。
僕とフランを見て固まるメア。
やがて、何かを察した表情を浮かべて。
「も、もしかして、事後!?」
「「違う(わ)!!」」
メアに僕とフランのツッコミが響き渡ったのだった。
「なら私も混ざるよ!!」
「ちょっ!!なんで部屋に入ってくるなり服を脱ごうとするのかなメアさん!?」
寝巻きの袖に手をかけ捲り上げ、メアの白いお腹が露わになる。
「だってこれから4人でヤるんでしょ?」
「やらんわ!!てかこれから学校だよ!!」
「学校が無かったらヤるの?」
「いや、ヤらないから。僕らまだ13、4だからね」
ルナの問いに素早く返す。
「メア、違うわよ」
「フラン・・・・・・」
良かった。フランがまともで。
「ヤるならキヨカも一緒によ」
「ジーザスッ!!!!」
ダメだ。まともな人が誰もいない。
キヨカが居てくれたら・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、ダメだ。
絶対この雰囲気に当てられるわ。
あ、頭が痛い・・・・・・・・・。
メアたちの攻めに僕は頭痛がし、そんなこんなで朝の事から数時間過ぎ、ウォータイムとなり。
「―――流氷作戦か・・・・・・妥当だな」
司令室のモニターからジェノックの『エンジェルピース』攻略作戦を観ていた。
ちなみに今回は哨戒任務で、それぞれの指揮はジンに任せてある。
そして僕は司令室でジェノックとロシウスの戦いを見ながら、クラスメイトたちの様子をモニターで確認していた。
「流氷作戦を考えたのはアラタかな?『エンジェルピース』には長距離砲の大口径
正直、彼らがこの作戦を提案するとは思えなかった。
けど、あのアラタなら可能性はある。
そしてその結果はご覧の通りだ。
接近され過ぎて砲撃は撃てず、長距離砲と対空砲はジェノック第4小隊に真っ先に潰されてる。
にしても―――
「ムラクたちがいるとはね」
『エンジェルピース』にムラク率いるロシウス第6小隊がいるとは予想だ。
「さて―――」
ジェノックだけでなく、こっちも見ないとね。
「問題ないね。まぁ、ジンが指揮してるからか」
各小隊ともそれぞれ問題なく防衛している。
あ、第5小隊は出てない。
メアなんかまた造ってるし。
この間対LD武装造ったってのに。
あれ、結構ヤバい武装だったなぁ・・・・・・試運転してみたけど、アレ使いこなせる人いるか!?
ジンには報告してあるけど微妙な表情されたし。
いや、まあ、LDの装甲をぶち抜くにはそれくらいしないとダメなのかな?
そんなことに頭を悩ませてると。
「自国の戦いを指揮しながらジェノックの作戦も観るか。流石だな」
ハーネスの司令室のドアが開きそこから一人の人物が入ってきた。
「・・・・・・なんのようです猿田教官?」
入ってきたのはどこの国にも属さない猿田教官だ。
本来なら司令室には部外者は立ち入り禁止のはずなのだが・・・・・・
「いや、なに。ハーネスの戦いを観ようと思ってな」
「それなら下の観覧室で観ればいいじゃないですか」
「たまには良いではないか。ハッハッハッハ!」
「はぁ〜」
なんか美都先生曰く、最近はジェノックにも出没してるらしい猿田教官。
猿田教官は僕がハーネスの現副司令だということを知っている一人だ。
僕が元総司令にして現副司令なのは周囲には秘密にしてる。
このことをハーネスとキヨカ、美都先生以外で知っているのは猿田教官や学園長。そしてムラクのみだ。
ムラクに関しては互いに協力関係であるので話した。もちろん、釘は刺してある。
「言っときますけど、僕がハーネスの司令なのは秘密ですからね」
「分かっておる」
まぁ、猿田教官口硬いから大丈夫だとは思うけど・・・・・・
「それで、お前さんから見てジェノックは勝てると思うか?」
唐突の質問に僕は特に慌てることも無く。
「現状での勝率は約4割。ロシウス第6小隊が配属されてますし、今日中に決着がつくのは不可能。となると、明日に持ち越しとなり、明日には増援が来る。『エンジェルピース』を墜とすなら、残りの第2小隊と第5小隊も加わらなければならない。それに、ムラクを倒せるのはジェノックでもギリでアラタのみ。そのアラタもムラクに勝てる確率は2割弱。操作の腕はまだまだ未熟だしね。奇抜な発想は評価するけど」
と言う。
もしキヨカがこの戦列に加わるならば勝率は格段と上がる。
ムラクでもキヨカに勝てるかどうか分かんないだろうし。
まぁ、キヨカの操作テク僕らと同等だし。
修羅場潜って来てるから僕ら全員。
「ホントに思うが、お前の眼は何処まで視えているのだ・・・・・・」
「予測してるだけですよ」
これくらいジンやメアたちにも予測出来るだろうし。
「それはさておき・・・・・・まさかロシウスがライディングアーマーを開発していたとはなぁ」
画面にはライディングアーマーを装備したアラタの[ドットフェイサー]と、同じくライディングアーマーを装備したアンドレイ・グレゴリーの[グレイビースト]が戦っていた。
「・・・・・・東郷リクヤ、一体何を隠してる」
僕の口から漏れた一言。
その理由は、今日ジェノック第3小隊に入ったばかりの転入生二人が今、グレイビーストのライディングアーマーの弾丸の雨を受けロストしたからだ。
しかもその2機は東郷リクヤのLBXを庇うように。盾になるようにしてロストした。
当の東郷リクヤはエスケープスタンプで戦場から離脱してる。
「さすがに当日ロストは初めてだぞ・・・・・・」
猿田教官も唖然の声を漏らしてる。
僕も記憶にある限り、転入した初日で退学はこれが初めてだ。
「猿田教官。いくらなんでも、これは早すぎません?」
「あ、ああ。ジェノック第3小隊は幾度となくプレイヤーが入れ替わっているが・・・・・・今回は早すぎる」
そう。
東郷リクヤのジェノック第3小隊は隊長とメカニックを除き、プレイヤー二人の入れ替わりがこれまで幾度となくあった。
覚えてる限りでも今回を入れて10組。計20人。
しかもプレイヤーの補充も遅くても数日。早いと翌日にはされてる。
どう考えてもおかしい。
しかも全員、東郷リクヤのLBXを護ってロストして、当の東郷リクヤは全てエスケープスタンプで離脱してる。
このことから彼についた異名が【仲間殺しのリクヤ】だ。
それからしばらくして、ジェノックは『エンジェルピース』内部へと侵攻したが、途中でムラクに阻まれそこでウォータイム終了のサイレンが鳴り、決戦は明日に持ち越されることになった。
「レイ、お前さんから視てどう見る?」
「ふむ・・・・・・」
猿田教官の問いに僕は少し沈黙し―――
「明日に期待・・・・・・ですね」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべて答えた。
猿田教官は疑問符を浮かべて首をかしげながら立ち去った。
多分だけど、サクヤが打開策でも考えてるんじゃないかな?
まぁ、もっとも、"仲間を信じる"をちゃんと理解してればだけど。
絶対、風陣カイトとか信じてなさそう。
正直、僕が見た限りジェノックの隊長としての資質では風陣カイトと東郷リクヤは最下位に入る。逆にハルキやゲンドウは評価する。
キャサリンに関しては・・・・・・微妙なんだよなぁ。
順位にするなら、ハルキとゲンドウが同率。キャサリンが3位。風陣カイトは4位。東郷リクヤは5位ってところか?
これで今後大丈夫か不安になってきた。
近い内にそろそろ同盟を組むことになると思うし。
正直なところ、ジェノックは秘めたる原石の持ち主は何人かいるが、それは開花すらしてない。
僕らのハーネスは、それぞれ各個のスキルを伸びしてるため、もしジェノックとぶつかることがあっても、負けることは無いと自負してる。
カゲトラたちは僕が認めたプレイヤーだ。
いや、より正確に言うならば、ハーネスは僕が最強と認める仮想国だ。
ま、まぁ、癖がかなり強いのは今更だけど。
その後しばらくしてカゲトラたちが戻ってきて、明日のことを伝え解散。日暮先生から頼まれてる書類仕事やらをして学園を出たのは夜7時過ぎだった。
ダック荘に帰る最中僕は明日のジェノックの動きが楽しみだった。
「さぁーて。ジェノックは『エンジェルピース』を制圧できるのかな」