〜メアside〜
『―――今回のウォータイム、諸君にはロシウス領内北東にある拠点。『ホワイトパレス』を攻略してもらう』
ウォータイム前のブリーフィングで、ここ最近と同じ遊技場からの通信でジンさんが告げる。
それより、レーくん何処だろ?
朝、ダック荘から学園に行く際今日は午後から行くって言ってたけど・・・・・・
私がレーくんの居場所を思案している中、ジンさんが作戦概要に説明する。
『『ホワイトパレス』はロシウス領内北東にある城塞基地だ。城塞基地の通り、外壁には対空砲に大型砲撃砲が配備されてる』
床のモニターに映された画像は今まさに話している『ホワイトパレス』。
『ホワイトパレス』、その名の通り白い城に氷が張り付いている古城要塞。
周囲は雑木林に囲まれ、雪に覆われたエリアだ。
「ジン様、何故『ホワイトパレス』を攻めるのですか?」
オトヒメちゃんがモニター越しのジンさんに訊ねる。
他のみんなも同じような顔だ。
『『ホワイトパレス』を攻める理由は、ロシウス領内へ攻め込むための前線基地を確保するためだ』
床のモニターにセカンドワールドの地図が映される。
『現在、我々がロシウス領内へ攻め込むには『フェンレス雪原』や『リバーエンドブリッジ』を経由して行かなければならない。だが、『ホワイトパレス』を制圧すればロシウス領内進行への最前線拠点として使える』
もし『ホワイトパレス』を抑えられたら確かにロシウス内陸部への進行がしやすくなるし、近い内に結ばれるジェノックとの同盟での作戦行動もしやすくなるかもね。
けど、それをカゲトラ君たちには言わない。
レーくんに口止めされてるわけじゃないけど、言う必要がないから。
「ですが、ジンさん。『ホワイトパレス』内部への侵入は困難かと?」
『それなら問題ない。メア』
「ん?私?」
唐突に話を振られた私はポカンとする。
『以前開発したあの武装は使えるか?』
「え?対LDを想定した武装、『スターブレイカー』のこと?」
『そうだ』
視線が私に集まる。
んーー
「けど、アレ。レーくんとかじゃないと扱えないよ?」
私が以前開発した対LD用武装『スターブレイカー』。
武装種類は両手銃の狙撃型。
4年前、結城さんが対ベクター用に開発した『ルミナスシューター』をベースにした、貫通力と威力に特価した狙撃銃。それが『スターブレイカー』。
意味は【星砕くもの】
レーくんが使う、ある必殺ファンクションの名前を使わせてもらった。
レーくんや私たちが使うことを想定していたため、並のプレイヤーでは扱うことが困難なピーキーな武装になってしまった。
最初、試運転でレーくんが使った際、あの微妙な表情を浮かべたレーくんの顔はまだ新しく覚えてる。
「まぁ、一応使えないことも無いけど、実戦投入では少し難しいかも」
『れ、レイから聞いていたがそんなにか』
画面の奥でジンさんが引き攣った顔を浮かべてる。
「うーん・・・・・・あ!」
『何かあるのか?』
「うん。試作機のひとつの『アストロシューター』なら・・・・・・・・・・・・・ん、あれ?ジンさん、ひとつ聞いていい?」
『なんだ?』
言い掛けてふと不思議に思った事を聞く。
「今日のミッション、もしかして私たち第5小隊って出撃しないの?」
『ああ、すまない。言い忘れたな。メアの言った通り、今日のミッションは第5小隊を除いた4小隊で行う』
「「「「「っ!!?」」」」」
あー、やっぱり。
ってことは、これ考えたの・・・・・・
「これ考えたのレーくんね」
「レイね、これ」
「レイかな?」
私とフランちゃん、ルナちゃんはほぼ同時にレーくんの名前を口にする。
朝のことを思い出して口に出す。
大方、カゲトラ君たちへの試練のつもりなんだろうなぁ。
そう思ってると―――
「お待たせ」
司令室のドアが開き、外からレーくんが入ってきた。
「レーくん!?どこ行ってたの!?」
レーくんに詰め寄って訊ねる。
「え、えーと・・・・・・色々・・・・・・」
目線をズラして言うレーくん。
「色々ってなに?」
グイッと顔を近づけて聞く。
「ひ、日暮先生の所へ書類届けたり、学園長と話したり・・・・・・」
「ふぅん・・・・・・」
ジーッとレーくんを視る。
『コホン』
そこにジンさんが咳払いをした。
視線をジンさんに向けると、ジンさんはなんとも言いにくそうにしながら。
『メア、レイへのお話は後でしてくれ。今はこっちを頼む』
と懇願してきた。
「はーい。あ、で、『アストロシューター』誰にもたせるの?」
さっきまで話していたことをジンさんに聞く。
『シスイ、行けるか?』
「問題ありません」
確かに、このクラスの中で狙撃と言えば、シスイ君がレーくんに匹敵する。
なら『アストロシューター』を持たせても大丈夫かな。
でも、アレ試作機だからなぁ・・・・・・
一応完成形も思案してるけど・・・・・・
「うーん、じゃあちょっと取ってくるね。あ、それと一応
『なにィっ!?』
「「「「「「なにィっ!?!?」」」」」」
うわっ!
ビックリしたぁ。
カゲトラ君たちはともかく、ジンさんが
驚いた声を出したの、滅茶苦茶久しぶりに聞いたかも。
「もう、天才メカニックって名前、メアに上げてもいいんじゃないかな・・・・・・」
タケル君の呟きに同意するようにみんな頷くけど、私としてはタケル君の方が天才だと思うけどなぁ。
だって、アスカさんの使ってる[ヴァンパイアキャット]をチューニングだけであそこまでの性能に引き上げたんだから。
それに、私の中で天才って言ったらあの二人なんだよなぁ・・・・・・。
片方はレーくんのお父さんでLBXの生みの親の山野博士だし、もう片方はオタ道の伝道師、オタクロスだからなぁ。
片や1日で新型LBXや無限稼働機関エターナルサイクラーを創り出すし、片や伝説のハッカーにしてアキハバラやオタ道では知らぬ者のいないオタ道の伝道師。LBXが販売された当初にフルスクラッチして自己LBX造りだしたからなぁ・・・・・・
あの二人に比べたらまだまだだよ。
他にもダイキさんや結城さん、キリトさんと言った人たちがいるし。
苦笑しながらそう思ってると。
「【天才】じゃなくて、【天災】に、ならないといいけど」
レーくんが苦笑しながらボソッとそんな事を言った。
それを聞いた私はムスッとして。
「レーくんの方が【天災】、だからネ!!」
脚の脛を軽く蹴って、武装類を取りに仕舞ってある私たちのメカニックルームに向かう。
向かう道中、今日の夜レーくんを襲おうかなという考えが頭に過ぎったが・・・・・・
「絶対足りないよね」
と呟いてメカニックルームに向かった。
え?何が足りないのかって?
それは〜〜〜秘密です。
〜メアside out〜
〜レイside〜
メアから【天災】と言われながら脛を蹴られ少し痛い。
僕、【天災】じゃないと思うけどなぁ。
とまぁ、それは置いといて―――
「ジン、どこまで話した?」
『『ホワイトパレス』内部への侵入についてと、第5小隊を参加させない、ってところまでだ』
「OK。じゃあ、残りもさっさと話そうか。時間が無い」
意識を司令官の時のに切り替え、司令官席に立つ。
「さて。聞いた通り、今回の『ホワイトパレス攻略作戦』第5小隊は出撃しない。理由はこの作戦が成功したら話す」
「成功したら?まるで成功しないわけない、って感じだが・・・・・・」
「そうだよ?むしろ、みんなが成功できないわけないでしょ?」
何を当たり前なことを。
この1年、僕はみんなのことを見てきた。
だから解る。
「キミたちの実力は僕が認めてる。何処に恐れる必要がある?自信を持て」
僕のその一言にカゲトラたちはハッ!とした顔でこっちを見る。
「今回の作戦指揮はジンが執る。僕は一切口を出さない」
非情かも知れない。
けど、カゲトラたちみんなを信用して、信じているからこそだ。
「まぁ、不安かもしれないけど、ひとつアドバイスするね」
一旦間を置き、
「初志貫徹。『仲間を信じろ』」
と告げる。
そう言い終えると同時にメアが入ってきて。
「はい、シスイ君」
銀色のアタッシュケースを渡した。
「感謝する」
シスイも礼を言い、アタッシュケースを受け取り中を開く。
『よし。時間だ、各員準備に入れ!』
「「「「「了解!!」」」」」
ジンの号令に返事をしてカゲトラたちは司令室から出ていく。
部屋には僕らだけが残った。
「それでレーくん」
「ん?」
みんなが居なくなって少ししてメアが半目で聞いてくる。
「私たちは出撃しないってどうして?」
「メアなら予想してるでしょ?」
「はぁー・・・・・・やっぱり」
「ふふ」
メアたちも判っていたようで呆れた溜め息を吐く。
「まぁ、いいけど。ジンさん、今回の作戦にRDアーマーは使わないでしょ?」
『ああ。それはまだ隠しておきたい』
「了解」
「そう言えば、シスイに何渡したの?」
「『アストロシューター』だよ」
「アストロ・・・・・・ああ、アレか」
メアの言った単語に僕は頷いた。
対LD武装『スターブレイカー』の試作機である『アストロシューター』。
まぁ、シスイなら上手く使えるだろう。
『アストロシューター』の意味は【星射貫くもの】
確か、貫通力に特化した
『ホワイトパレス』内部と外部を隔てているのは鉄製の扉。
普通の狙撃銃なら射貫くことは不可能だろうけど、メアの造った『アストロシューター』なら可能だ。
そしてさらにそこに、シスイの必殺ファンクションを組み合わせれば問題ない。
シスイの狙撃の腕はムサシに並ぶほどだし。
「私たちはここでみんなの活躍を観ればいいの?」
「観覧室で観てもいいし、メンテナンスルームで観てもいいよ?」
ルナの問いに答える。
僕はここからカゲトラたちのに加え、ジェノックのを観ないとならないし。
キヨカからジェノックが『ギガントの壁』を攻めることは聞いてるからね。
「さぁ、零から始めて零で終わらせようか」
その一言は変革の現れ。
僕らを先へと導く言葉。
そして、自分自身へのトリガー。
司令官席から床のモニターに視線をやり戦況を観る。
やがて始まったウォータイム。
カゲトラたちはクラフトキャリアで『ホワイトパレス』へと向かった。
〜レイside out〜
〜カゲトラside〜
『『ホワイトパレス』を確認。降下予定ポイントに到達』
「了解した。各自作戦通りに行う!」
『『『『『了解!!』』』』』
『慎重かつ大胆に行け。諸君らの健闘を祈る』
ジンさん。ドルドキンスからの激励に俺たちは士気を高める。
『第4小隊、降下開始!』
狙撃手たる第4小隊が先に降下し、『ホワイトパレス』に配置されてる大型砲撃砲を狙撃で潰す。
『目標
「了解した。ギンジ。オトヒメ、行くぞ」
『おうよ!』
『分かってますわ!』
シスイの通信で俺たち3小隊が降下する。
ほんの数秒で降下完了し、
「『ホワイトパレス攻略作戦』を開始する!」
俺の号令とともに各自動き出す。
シスイ率いる第4小隊が砲撃砲を狙撃で潰し、俺たち第1小隊、第2小隊、第3小隊が外部に配置されてる敵LBXを排除する。
今回の『ホワイトパレス』では三方向に分かれてる。
正面と左右に分かれて攻め入る。
入口は正面にしかないので合流するが、外部に配置されてる敵LBXには撹乱にもなる。
「スズネ、あまり前に出過ぎるなよ?」
小隊メンバーであるスズネに一言注告する。
『大丈夫やって!【バイオレットデビル】が居る訳や無いんやし!』
「それでもだ」
もし【バイオレットデビル】。法条ムラクに出会った場合、反撃出来るかどうか分からない。
法条ムラクはロシウスどころか、仮想国内でトップに入るプレイヤー。俺たちハーネスで彼と互角に相対できるのは恐らくレイたちのみだろう。
先日、法条ムラクをジェノックの瀬名アラタがブレイクオーバーしたらしいが・・・・・・
レイ曰く、アレで調子に乗らないと良いけど、との事らしい。
まぁ、俺にとって敵であるジェノックの内情などどうでもいいが・・・・・・
ただ、俺たちのリーダーであるレイが気にしてることからジェノックに何らかの期待を寄せてるのは判る。
クラスの学級委員長は確かに俺だが、裏の学級委員長はレイだ。
ジンさんが来る前からレイは仕事をしない日暮先生の代わりにアレコレやっていたからな。
ここに入学当初、俺はレイについて噂でしか聞いてなかった。
俺と同じ歳で【ミゼル事変の英雄】であり、LBX世界大会アルテミスで史上初の2連覇を遂げた。
彼と同じクラスになったと知った時、俺は息をするのも忘れるぐらい呆然としていた。
メアやルナ、フランと言った彼の仲間たちの覇気が只者じゃないと直感で感じたからだ。
正直、彼が噂通りの人なのか半信半疑であった。一体何をしたらそこまでの貫禄が身に付くのか・・・・・・
そしてその半信半疑はすぐに真だと知った。
初陣のウォータイムで、まるで先の先。未来が見えているように指示を出すのだ。
本当に俺と同い年の男子なのかと疑心暗鬼だった。
入学して少ししてレイは新たにLBXを創り出し以降それを使用し、メアたちも同じく。
まぁ、レイの操作に支給されたLBXの方が悲鳴を上げてたからなぁ。
それからしばらくして、レイはハーネスの司令官の地位に就いた。
本人は少ししか驚いてなかったけど、俺たちからしたら天地がひっくり返る程だった。
まぁ、日暮先生の雑務とかやっていたから、マジかー、という気持ちも無かった訳では無い。
そこからレイの采配により、俺たちハーネスは領土を着実に広げて行った。
それと同時に、レイが司令官の席に着く前にあったロスト者がゼロになった。
レイの采配は何事も味方の無事が優先されている。
だが、何事も万全と言う訳では無い。それ故にイレギュラーも起こり得る。
レイが司令官の地位について出撃した回数は、ジンさんが来る前だと数えるほどしかない。
だが、出撃したその全てにおいて勝利を収めてる。
それらの過去のことを思い踏まえ、俺は今回の任務の意味を理解した。
これは恐らくレイから俺たちへの試練なのだろう。
俺たちは全員、無意識の内にレイへ依存していた。
『フェンレス雪原』の時や『ニーズシティ』の時。
『グラシアレスシティ』でのオトヒメたち第3小隊の救出も、すべてレイがいたから成せたようなものだ。
もしいなかったら、今頃俺たちはどうなっていたか分からない。
それはメアやフラン、ルナにもいえる。
俺たちハーネスで最強の存在はレイだ。
そして次点にルナやフランが来る。
恐らくメアもこの2人並に強い。
全員アルテミスに出場する程だからな。
言い換えれば、第5小隊が崩れればハーネス全体の士気が下がるし総崩れを引き起こす。
今回のこの作戦は恐らくそれを乗り越えるためだと思う。
たぶん、シスイも同じ事思ってるのだろう。
アイツは頭の回転が早いからな。
自身のLBX[BCライアン]を操作しながら思考を回す。
レイに常に言われてる、一つのことに集中するのはいいけど周りを疎かにするなと。
隊長である俺やギンジ、オトヒメ、シスイには常々言われ続けてきた。
確かにそうだ。一瞬でも気を抜いたら殺られる。
この場所は戦場なのだから。
『
「了解。タケル、外部の残存勢力は?」
『今第2小隊がやってるので最後だ』
「よし」
これで『ホワイトパレス』外部の敵は一掃出来た。
後は内部のフラッグを制圧するのみ。
『シスイ、必殺ファンクションにて扉を破壊せよ!』
『了解。必殺ファンクション!!【アタックファンクション!フォノンレーザー!!】』
バイザーから自身のLBXが視てる光景を見る。
ジンさんからの指示により、シスイの[HCオウル]が狙撃銃を構える。
狙撃銃の尖端に純白の複雑怪奇な魔法陣が描かれ、そこから極大な砲光が放たれる。
放たれた必殺ファンクションはそのまま『ホワイトパレス』の内部と外部を隔てる扉を貫き、扉を破壊する。
「扉の破壊を完了。作戦通り、第1小隊と第3小隊が内部に侵入する。第2小隊と第4小隊は増援の警戒だ」
『分かりましたわ!』
『おう!』
『了解』
俺の指示でそれぞれの小隊が動き出す。
第4小隊と第2小隊が合流し、ロシウスの増援を警戒する。
俺たち第1小隊と第3小隊は『ホワイトパレス』内部に侵入して奥にあるフラッグを目指す。
『もぬけの殻・・・・・・ですわね』
「ああ」
通信からオトヒメのそんな声が聞こえる。
内部に侵入して先行しているがまだ敵と
となると。
『恐らく、フラッグの守りを固めてるのでしょう』
『そう思うな』
『ウチも同意見や』
スイとシェリー、スズネが言う。
だが、警戒は必要だ。
『気を抜かずに、落ち着いて行け。
ジンさんの言う通りだ。
相手はセカンドワールド最大の仮想国ロシウス。
武力も兵力も俺たちとは数が違う。
なら、どうするか?
決まってる。レイが言っていた。
初志貫徹。仲間を信じる!!
胸にそう刻み込むのと同時に、『ホワイトパレス』の奥部へと着き、目の前の行方を阻むシャッターが上へと上がる。
それと同時に、ミサイルや銃弾、光弾といった遠距離攻撃が矢のように放たれた。
咄嗟に壁に隠れやり過ごし、止んだと同時に一気に部屋の中へと攻め入る。
『カゲトラ。コイツらは私たちが引き受けますわ!貴方方はフラッグを!』
「了解!スズネ!」
『わかったで!』
俺とスズネは目の前のロシウスのLBXを第3小隊に任せ、一目散にフラッグへと迫る。
だが、その行く手を簡単に通すロシウスではない。
もちろん、妨害してくる。
第3小隊が相手してるロシウスのLBXは6機。そして、フラッグを守備してるのは3機。計9機、3小隊が防衛についている。
「行くぞスズネ。油断するなよ!」
『わかってるって!』
スズネの[TCパイロン]が一気に敵LBXへと接近する。
『せぇぇやっ!!』
その光景に驚いたのか、動きが止まるグレイリオと[ガウンタ]。
それを逃さず、
「はぁあああっ!!」
ランチャーを持つ、もう片方のグレイリオをBCライアンが持つ片手剣『ブレイヴソード』の一撃でブレイクオーバーさせ、
『これで終いや!!』
スズネと同時に、ガウンタへと交差するように攻撃を叩き込む。
こちらもブレイクオーバーとなり、フラッグを防衛するLBXが居なくなった。
「フラッグに侵入!カウント開始!!」
《拠点制圧カウント、開始》
セカンドワールドのシステム音声が響き、フラッグの頭上に占領カウントが開始される。
フラッグの制圧カウントはフラッグの枠内にいるLBXの数によって速度が変わる。
1機なら遅いが、2機や3機なら少し早くなる。
逆に、相手の守備LBXが多い場合、フラッグに侵入してカウントはされるが結構遅い。
故に、基本的にフラッグの防衛は最優先とされてる。
スズネと背中合わせに警戒してカウントを待つ。
『こちら第3小隊。敵の排除完了しましたわ』
『第2小隊、増援の連中も蹴散らしてやったぜ!!』
『同じく問題ない』
どうやらロシウスのLBXはすべて排除完了したようだ。
それから少しして―――
《―――拠点制圧完了。ホワイトパレスの所有権は、ロシウスよりハーネスに移ります。戦闘を直ちに終了し、ロシウスの登録機体はホワイトパレスの敷地内より退去してください》
セカンドワールドのシステムアナウンスが拠点制圧完了の放送を流した。
それと同時に、セカンドワールドのアナウンスが今日のウォータイム終了を告げ、コントロールポッドの景色が緑の起動前になる。
「ふぅー・・・・・・終わったか・・・・・・」
緊張の糸が切れ、溜まっていた疲れが息とともに漏れ出る。
今回の作戦、メアの武装『アストロシューター』が無ければ内部への侵入は出来なかった。そして、このBCライアンたち新機体が無ければ攻略出来なかった。
結構のところ、俺たちはレイたちに助けられてばかりだ。
何時もそうだが、レイは一切口を出さないと言っておきながら、俺たちに助言をミーティングで言うし・・・・・・
正直言って、不甲斐ない。
アイツらの助けが無ければ俺たちは弱い。
ジンさんの指揮も無ければ、俺たちはもうとっくに消滅していても可笑しくない。それはレイにおいてもだ。
もっと、強くならないと。
俺はコントロールポッドから降り、そう胸に抱いたのだった。
〜カゲトラside out〜
〜レイside〜
「―――やはり、操作の技術ではムラクの方に軍杯が上がるか」
ハーネスの司令室で司令官席からジェノックの『ギガントの壁攻略作戦』を観ていた。
ムラクはなんと近接武装ではなく銃系の遠距離武装を装備している。
右手にビームライフル。左手に大きな
もちろん、ミサイルをこの間の『エンジェルピース』時は装備してたし驚くほどでは無いが、こうも主武装としての遠距離武装は初めて見る。
『ギガントの壁』のフラッグのある屋上で片やガトリング砲。片やビームライフルの激しい打ち合いが繰り広げられている。
それと併用してカゲトラたちの『ホワイトパレス攻略作戦』も観てる。
『ホワイトパレス』の方は、まさかの奇襲だったのかロシウスの守備が低下してる。
シスイたち第4小隊により、砲撃砲は無効化され外部に配置されてるLBXは次々とカゲトラたちの手でブレイクオーバーしていく。
「『アストロシューター』も上手く使いこなせてるね」
横で観てるメアが満足そうに言う。
メアたちは結局ここで観ることにしたらしく、僕の横で観てる。
「あの必殺ファンクション、レイが教えたの?」
「【フォノンレーザー】のこと?」
「うん」
ルナの問いに頷いて返す。
「と言っても、僕は引き継いだだけだよ・・・・・・LEXのね・・・・・・」
最後を悲しげに俯いて言う。
僕の必殺ファンクションの幾つかはLEXから引き継いだものだ。
もちろん僕が作ったのもあるが。
【ヴォーパル・ストライク】や【スターバースト・ストリーム】はLEXから伝授した必殺ファンクション。
あの天空での最終決戦の後、色々あって引き継いだのだが、それはまた今度。
「シスイには必要だと思ったんだ」
切札と言える必殺ファンクション。
フォノンとは固体における原子振動を量子化することで現われるエネルギー量子。比熱や熱伝導はフォノン間の相互作用として、金属の電気抵抗や低温での超伝導はフォノンと電子との相互作用として説明される。または音響量子。音子とも言う。
シスイに教えたのは超振動のレーザーを放つ【フォノンレーザー】。狙撃を得意とするシスイだから使える。
「カゲトラたちにもそれぞれ教えてるのでしょ?」
「まぁね。カゲトラたちはもっと強くなれるからね」
ハーネスのみんなは僕が見込んだプレイヤーたちだ。
そして信頼してるし、信用してる。
兄さんやアミ姉、ジンたちへの信用と信頼と同じ程に。
視線を『ギガントの壁』の方に向ける。
「ん?」
視線を向けると、丁度セカンドワールドで見たことないLBXが、どんよりとした空から姿を現したところだった。
「アレは・・・・・・」
「なにあれ・・・・・・」
「光学迷彩を搭載してるの・・・・・・?」
メアたちがそれぞれ声に出す。
何も無いところから突然現れた。周囲の風景と同化していたということはつまり、あのLBXには光学迷彩が搭載されている。
そのLBXは特徴的なマントのような外装を付け、蝙蝠の様な姿をしてる。
そのまま翼状に展開し、右手には二重螺旋の槍が握られていた。
それを見た僕は目を大きく見開いた。
「あのLBX・・・・・・まさかっ!!」
僕の記憶が確かなら、今のムラクとアラタではアレには勝てない!
「レーくん?」
手摺りを掴んで前のめりになる僕をメアが不思議そうに見る。
記憶が確かなら、アレのマントにはビーム砲兼飛行用のスラスターが内蔵されている。そして何より機動力が高い。
僕の記憶を裏付けるように、そのLBXはムラクの[ガウンタ・イゼルファー]の攻撃をものともせずに、一方的に攻撃していく。
「不味い・・・・・・!このままじゃムラクが!!」
あのまま一方的にあの攻撃を受けていたらムラクがロストする。
だが、今の僕には手が出せない。
「レイ、どうしたの?あのLBX知ってるの?」
フランが震える手を握って聞いてくる。
「・・・・・・知ってる。4年前、イタリアで見た。いや・・・・・・実際に戦った」
4年前世界を巡っていた時に遭遇したLBX。
あの時は見逃されたような感じで何とかなった。が、敗北した。
あの強さは半端ない。
当時でそれなのだ、今ではさらに強くなってる可能性がある。
「なんで今ここに・・・・・・!!」
もし僕本来のLBXを使えば勝てるだろうけど、今使ってる[コスモスオリジン]はこのセカンドワールドで使うために設計開発した機体だ。
スペックや性能では本来のLBXにやや劣る。
「くっ・・・・・・!」
今何も出来ない自分が歯痒い。
画面の中ではガウンタ・イゼルファーは既に瀕死に近い。
次に受けたら間違いなくロストする。
だが、最後の一撃の前にアラタの[ドットフェイサー]が立ち塞がり、ムラクを庇う。
そいつはそのままドットフェイサーごとガウンタ・イゼルファーを『ギガントの壁』の間に造られた谷間に落とし、何もせずに再び蝙蝠のような姿となって消えた。
「ふぅ・・・・・・アラタのおかげで何とかなったか・・・・・・」
今ここでムラクを失うのは痛い。
ムラクはこの世界の真実を知ってる数少ない生徒の一人だ。
それにプレイヤーとしての実力もトップクラスだ。
もし失ったらその部の損失は大きい。
「まさかアイツが出るなんて・・・・・・空戦戦力が必要か」
空戦ではRDソーサがあるが、あれは空戦をやるにしては微妙だ。
スラスターなどが搭載されてるLBXなら問題ないが・・・・・・
「メア、普通に空戦が出来るようになるような外部装甲ない?」
「え。うーん・・・・・・考えてはいるんだけど・・・・・・あと少しなんだよね・・・・・・」
「メアって、レイの事第一だよね」
「そうね、阿吽の呼吸とでも言うべきなのかしら?」
「そりゃそうだよ〜」
メアの返しに苦笑を浮かべる。
僕もやることやらないと。
視線を『ホワイトパレス』の方に向けると、丁度フラッグを制圧している最中だった。
少しして『ホワイトパレス』を攻略したアナウンスが流れる。
「Congratulation」
小さく手を叩いて拍手を送る。
「ジン、いいね?」
『ああ。キミに任せる』
「ありがとう」
約束通りみんなに言おう。この世界の真実を。
それから程なくしてウォータイムが終わり、みんなが戻ってきた。
ジェノックも『ギガントの壁』を制圧出来たみたいだし。
「お疲れ様。見事だったよ」
下にいるみんなにそう言う。
「約束通り、みんなに話そう。今回の作戦と、この世界・・・・・・セカンドワールドの真相を―――」