〜レイside〜
「まずは、『ホワイトパレス』攻略お疲れ様。みんな、見事だったよ」
小さく手を叩いて階下のクラスメイトたちを労う。
「いや・・・・・・レイやメアのお陰だ」
「???」
首を横に振って言うカゲトラ。
はて?僕らは今回何もしてないけど?
「何もしてないという顔だな」
「何故わかった!?」
ギョッとしてシスイを見る。
隣にいるメアたちは何故か苦笑しあってるけど・・・・・・
「レイ、貴方と私たちはもう一年近くの付き合いがあるのですよ?」
「メアさんたちほどではありませんが、大抵のことは私たちにも分かりますよ」
オトヒメとシズカの言葉を裏付けるように他のみんなも連られて首を頷かせる。
えー・・・・・・・
唖然としている僕に―――
『くっ・・・・・・・ふふふっ・・・・・・』
ジンが通信のモニターの奥で笑うのを我慢していた。
てか、我慢隠せてないし!!
「さすがにコレは、レーくんも予想外みたい」
「あんな呆けた顔見るの久し振りかも」
「シャッターチャンスね」
パシャッ!
「あ、それ私にも送ってね!」
「私も!」
「もちろんよ」
って!ちょぉ!!
「いや!なんで写真撮っとるんや!?」
アレー?真剣な場面だったのになんで壊れるん???
『く・・・・・っ、ふふふふふっ・・・・・・!!』
「ジン!?何時まで笑ってるのかな!?てか、隠すなら隠せよ!!隠せてねぇし!!」
ヤバい、言動が可笑しくなってる。
『す、すまない。だが、キミがそんなに惚けるのは久しぶりに見たからな。つい・・・・・・くく・・・・・・っ!!』
ツボに入ったジン。
これ兄さんとかに見せたら面白そう。
ジェシカやアスカとかにでも見せたら爆笑もんだね。
ツボに入った原因は不本意だけど・・・・・・
「って!話が進まない〜〜っ!!」
頭を抱えたその場に蹲る。
真面目な話をしようとしたのにぃ〜〜っ!!
『とまぁ、レイ弄りも程々にして』
「僕弄り!?え!?今弄りって言った!?」
「まぁまぁ、レーくん。どうどう」
「僕はウマじゃないよ!?」
宥めて来るメアにツッコム。
なんだろ、もう疲れた。
「はぁー・・・・・・話を戻して、今回の『ホワイトパレス』攻略作戦で第5小隊を出撃させなかった理由は、今回の作戦がみんなへの試練だからだ」
「試練?」
「どういう意味です?」
フウとスイの姉妹が尋ねてくる。
「僕抜き。いや、僕ら抜きで高難易度のミッションが成功出来るかどうかのね」
「俺様たちを試したということか?」
「悪い言い方にすればそうなるねギンジ」
皮肉めいた言い方をしてギンジに言う。
「結果は予想していた通り。みんなは僕ら抜きでも今回の高難易度な作戦を達成出来た」
「予想ね・・・・・・もしLDやバンデットが出てきた場合はどうするつもりだったの?」
「その時はフランとルナに
タケルに片目を瞑って言う。
まぁ、遭遇する確率は低いはずだったからね。
「でも、まぁ・・・・・・カゲトラとシスイは何となく僕の思惑に勘づいていたんじゃないかな?」
不敵な笑みを浮かべ片目を瞑ったままカゲトラとシスイに問い掛ける。
「まぁな」
「ああ。俺たちは全員、無意識の内にレイへ依存している」
肩を竦めて答えるシスイに、目を瞑り頷いて返すカゲトラ。
「『フェンレス雪原』の時や『ニーズシティ』の時。『グラシアレスシティ』でのオトヒメたち第3小隊の救出といった、どれも高難易度な作戦はすべてレイがいたから成せたようなものだ」
「確かに・・・・・・言われてみればそうですわね」
「そうだな・・・・・思い返してみれば、俺様たちにとって重要な作戦はすべてレイやフラン、ルナがいたな」
カゲトラの言葉に思い返すオトヒメとギンジ。
他のみんなも、そう言えば確かに、と言った表情だ。
「もしレイたちがいなかったら、今頃俺たちはどうなっていたか分からない。俺たち、ハーネスで最強の存在はレイだ。そして、ルナやフラン。メアの4人はハーネスにとって要とも言える存在だ」
「カゲトラの言う通りだ」
カゲトラの言葉を引き継ぎ言う。
「みんな、気付かない、無意識の内に高難易度の任務では僕らを頼ってる。別に頼るのは構わないさ。・・・・・・けど、頼ってるだけでは自己の強化には繋がらない。逆に低下するだけだ。僕は、みんなにはもっと強くなってもらわないと困る。これから先、どんな事が起ころうとも対応出来る強さにね。それこそ、僕らに頼るんじゃなくて、自分たちで・・・・・・いや、僕らに並び立てるほどにね」
それは数時間前にジンに言ったことと同じ言葉。
「まぁ、酷いこと言うと、僕らに並び立てるのはジンとかぐらいなんだけど、ね」
苦笑して言う。
だが、それを実感してるのかカゲトラたちからの反論はない。
「けど、なんで僕がこんなこと言うか判る?」
左腰に左手を当てた姿勢でみんなに問う。
「僕がみんなに期待してるからだよ」
「期待?」
「うん。期待してるからこそ、この作戦を立案してみんなに任せたし。期待してるからこそ、その新型機を託した。なにより、信頼してるからこそ話してる」
期待と信頼は同じだ。
「これが、今回の作戦でフランとルナを出撃させなかった理由。そして何より・・・・・・これでみんなに本当のことを話せる」
「それは・・・・・・さっき言ってたセカンドワールドの真相とやらか?」
「ああ」
シスイの問いに答え、間を置いて話す。
「ねぇ。みんなは、この学園の事・・・・・・どう思う?」
唐突の質問にカゲトラたちは呆気に取られたような表情をする。
「ど、どう思うって・・・・・・」
「そんなこと急に言われてもなぁ・・・・・・」
「んーー・・・・・・」
みんななんて答えたらいいのか悩んてる様子だった。
「僕はね、この学園は異常だと思う」
「異常?」
みんな、僕の"異常"という単語に怪訝そうにする。
「みんなは、この学園に、何しに来たの?」
「それは、プロのLBXプレイヤーになりに・・・・・・」
「一人前のメカニックになりに・・・・・・」
僕の問いにそれぞれ答える。
「そうだよね。じゃあ・・・・・・この学園の、プレイヤーはLBX、メカニックはクラフトキャリアが破壊されて、ロストしたら退学ってシステム・・・・・・どう思う?」
専門校なのに、専門校として機能してないシステム。
ロストしたら即退学。
「どう思うって言われても・・・・・・」
「それがこの学校のシステムですし・・・・・・」
予想通りの反応が返ってきた。
誰も違和感を覚えない。
この学園の、歪んだ狂気に蝕まれている。
だから―――
「じゃあ・・・・・・教えてあげる。この学園で行われてるウォータイムの真実を」
視線が僕に集まる。
僕は一息置き、息を吐いた告げる。
「―――この学園で行われてるウォータイム、それは国家の存亡を賭けた戦争だ。僕らは代理戦争・・・・・・本物の戦争をさせられてる」
この学園が隠し続けるウォータイムの真実を。
延いては、この学園の運営―――国連統合政府のERP計画についてを。
「ほ、本物の戦争・・・・・・?」
「な、何言うてんのやレイ?」
「そうだよ。代理戦争って・・・・・・」
「これはシミュレーションのはずですわよ?」
「ああ。そんな話聞いたことねぇぞ?」
「そうだね。ここで行われてるのは世界平和のためのプロジェクトのはずだ」
みんな僕の言葉に戸惑った反応をした言う。
ザワザワと困惑するみんなに。
「違う!」
「「「「「「っ!!?」」」」」」
少し大きな声を上げた僕の声が部屋に響く。
「セカンドワールドでの戦いは、現実世界に反映される。これは、国家の存亡を掛けた、本物の戦争だ!!」
僕もここに来る前に告げられたこの事実に、今の目の前のみんなと同じだった。
有り得ない。そう思った。
「現実世界に反映されるって・・・・・・」
「そんなわけないよ!」
「いくらレイでも、そんなこと言われても・・・・・・」
「嘘だとしか聞こえません」
今目の前にいるみんなは1年前の僕だ。
「嘘じゃない。これは真実だ」
「・・・・・・ジンさん、レイの言っていることは事実なのですか?」
シスイがモニターに映るジンに聞く。
カゲトラたちも視線をジンに向け―――
『・・・・・・事実だ』
ジンは一息置いて答えた。
ジンが認めた事でざわめきがさらに大きくなる。
無理もないか。急にこんなこと言われたんだから。
「どうして今まで私たちに黙っていたんですの?」
「そうよ!嘘を教えて戦わせてたんでしょ!?」
「レイが知っているということは・・・・・・メアにフラン、ルナの3人もこの事実を知っているのでしょう?」
批難を浴びせてくるオトヒメたち。
そのオトヒメたちにメアたちは。
「知っていたよ」
「ええ。知ってたわ。この世界の真実」
「うん。私たちは初めから知ってこの学園に来た」
そう告げた。
「何故そんなことを?」
『それは、現実世界での争いを無くすためだ』
カゲトラの投げかけにジンが答える。
「レイ、ジンさん。セカンドワールドは本当に世界平和のためにあるんですか?」
続けて問い掛けるカゲトラ。
「戦争とは、国家間に生じた問題が話し合いで解決されない時、武力行使による勝敗で導き出そうとする、外交の最終手段」
カゲトラの問いに僕が答える。
「その結果が、領土や経済。文化、そして思想などに影響を与えるのは、既に歴史が証明している。そして、なにより多くの悲劇が流れる事もね。その悲劇を無くすためにERP・・・・・・【
「調停システム・・・・・・」
「そう。別名、【静かな戦争】」
「事実、セカンドワールドが運営されてからは、この3年間、ERP加盟国では戦争は起きていない」
そう。このシステムが運営されてからはERP加盟国内では戦争は起きてない。だが、それはERP加盟国ではだ。
現在、ERPに加盟している国は世界の9割を占める。
それは、世界各国が戦争を根絶したい、と物語っているようにも見える。
「この島は外界と切り離され、もたらされる情報はごく限られてる。それは何故か知ってる?」
僕の問いにカゲトラたちは無言の沈黙を持って返す。
「必要以上に外界の情報を与えないため。それ故に、インフィニティネットも制限され、連絡手段もほとんど無い」
「け、けど、実際に反映された事なんてあるん?」
「あるよ」
スズネに疑問に即答する。
「みんなは数ヶ月前に消滅した仮想国『マタニア』と『ニルベリス』を覚えてる?」
「確か、『マタニア』はロシウスに。『ニルベリス』はアラビスタに堕とされて、それぞれその2国に吸収されたはずだけど・・・・・・」
僕の問いにタケルが記憶を思い出させて言う。
「かつてセカンドワールドにあった仮想国、マタニアとニルベリス。その現実世界でのモデルはそれぞれ、マタニアは『モーリタニア』。ニルベリスは『ニカラグア』だ。その2カ国は、セカンドワールドでそれぞれ本拠地が堕ちた途端、すぐさま現実世界に反映され、それぞれロシウスのモデルの『ロシア』、アラビスタのモデルの『A国』に取り込まれてる。表向きは、自国政府の解散と国号の改正とされてね」
「そんなバカな・・・・・・っ!!」
「ありえませんわっ!!」
「事実だよ。現に、この島でも放送されてたでしょ?その2カ国が堕ちた後、取り込まれたって」
「確かに、そんなニュースもあったが・・・・・・」
「た、ただの偶然じゃないん?」
「偶然じゃない」
スズネの偶然じゃ、という言葉に首を横に振って言う。
「レイ。君たちは何故こんな機密情報を知ってるんだ?メアがさっき、初めから知ってこの学園に来たと言っていた。つまり、入学する以前から知っていたという事だろ?」
「さすがシスイ。その観察眼はお見逸れするよ」
シスイに苦笑して言い、一拍置いて告げる。
「僕らはこの学園に入学する半月前、ある人からこの事を知らされた」
「ある人・・・・・・?」
「そして、僕らはその人からある依頼をされてここに来た」
「依頼?」
「ああ。それは―――
この神威島とセカンドワールドの実態調査」
僕らが来た目的を話した。
「神威島とセカンドワールドの・・・・・・」
「実態調査・・・・・・」
その目的にみんな戸惑ってる。
シスイですら同じ感じだ。
「僕らにこの事を依頼したのは、A国にある次世代国際宇宙局。通称【NICS】だ」
「「「「「「なっ!?」」」」」」
僕のその発言にカゲトラたちはド肝を抜かれたように動きを止めた。
A国に拠点を置き全世界のインフィニティネットや、自国のA国の通信網の監視、管理を行っている次世代国際宇宙局。通称【NICS】。
4年前のディテクター事件の際、僕らが拠点としていたA国にある重要施設だ。
「いや、より正確にするなら、僕らにお願いしたのはA国現大統領、クラウディア・レネトン大統領だね」
「だ、大統領!?」
「A国の大統領がレイに依頼を・・・・・・!?」
「NICSといい、A国大統領といい・・・・・・レイの人脈は一体どうなってますの!?」
まぁ、普通大統領から依頼されるなんて考えられないよねぇー。
あはは、と苦笑を浮かべて、この島に来る前の。半月前の事を思い返す。
―――回想―――
神威大門統合学園へ入学するのをあと半月に控えたある日、僕とメア、ルナ、フラン、そしてキヨカの5人は久しぶりにA国に来ていた。
「うーんっ!!A国、久しぶりに来たぁー」
「あははは」
メアの手を伸ばして言う言葉に苦笑をする。
普通、僕らぐらいの子供がそう頻繁に海外なんて行けるわけないんだけどね・・・・・・?
まぁ、一応お金はいろんな大会での賞金とかあるし、結構あるんだけど・・・・・・
「それで、このままNICSに行くの?」
「いや、それが、今回はNICSじゃなく・・・・・・」
フランの質問に、端末に表示されてる文章を見て言葉を濁す。
何せ、その場所は本来なら有り得ない場所が綴られてるからだ。
空港から出て、迎えが来ているはずのターミナルに行く。
ターミナルに行くと―――
「ハァーイ!!みんな!」
「ジェシカ!?」
私服姿のジェシカがいた。
「正月以来ネ!!」
「ふギュッ・・・・・・!!」
抱き着くジェシカにバタバタする僕。
これ、ホント慣れない。
「ジェシカさん久しぶり!!」
「メア!久しぶりね。ルナもキヨカも。フランも」
「うん!」
「ええ」
「そうねジェシカ」
ジェシカに挨拶するルナたち。
それはいいんだけど・・・・・・!!
「
ジェシカの抱擁が会う度に強くなってる気がするんだけど気の所為かな!?
「あら、ゴメンなさい」
ようやく離してくれたジェシカの抱擁。
さすがに疲れる。
「さ、行きましょう。パパたちが待ってるわ」
「行くのは良いけど、本当にこの場所で合ってるの?」
息を整え、目的地をジェシカに聞く。
「ええ。何せパパ曰く、重要な話みたいだし」
「ふうん」
重要な話と言われても、全くわからん。
ジェシカに促されるように僕たちは、止まっていた車。
リムジン車に乗った。
てか、迎えにリムジン車で来るか!?
昔、ジンが戦闘機登校した事があるらしいが・・・・・・
そう思いながらリムジン車に乗り込み、目的地へ向かった。
道中、ジェシカから色んなことを聞かれた。
特に僕たちのことについて。
どんだけ知りたいのよ・・・・・・
ジェシカ曰く、アミ姉からちょくちょく聞いてるみたいだけど。
そんなこんなで話してると、目的地に着いた。
リムジン車から降りると、そこはA国政府にとっての最重要施設。
大統領府が目の前にあった。
そのまま係の人に案内され、僕たちは奥の部屋へと向かう。
奥の部屋に着き、中に入るとそこには2人の男女がいた。
その内の一人、男性が立ち上がり挨拶をしてくる。
「久しぶりだねレイ君」
「お久しぶりですカイオス長官」
3年前にもお世話になったNICS長官のオーウェン・カイオスさんがいた。
「メア君たちも、息災で何よりだ」
「お久しぶりですカイオス長官!」
メアたちも挨拶をし。
「ここまで御足労ありがとうございます。お久しぶりですね、みなさん」
もう一人の女性も挨拶をしてくる。
その人はこのA国の大統領である、クラウディア・レネトン大統領だ。
「クラウディア大統領。お久しぶりです。息災で何よりです」
僕も大統領へ挨拶をする。
「ええ。挨拶はここまでにして、取り敢えず座ってください」
「ええ」
大統領に促されて室内にあるソファーへとそれぞれ座る。
「今回、レイ君達を呼んだのは他でもありません。貴方方にあるお願いをしたいのです」
「お願い・・・・・・ですか?」
大統領直々のお願いに顔を見合わせる僕ら。
「はい。貴方方は半月後には神威島にある神威大門統合学園へ入学する予定ですよね」
「え?はい」
確かに僕ら5人は半月後には神威大門統合学園へ入学するが・・・・・・
「その神威島と、神威大門で行われてるセカンドワールドと呼ばれるものの実態調査をお願いしたいのです」
「・・・・・・はい?」
大統領のお願いの内容にポカンとする。
「えっと・・・・・・実態調査、ですか?」
「ええ」
「えーと・・・・・・何故その調査を私たちにお願いするんですか?」
メアの疑問は確かにだ。
本来ならそういった調査は政府の機関が行うはずだ。
それを一般人。しかも子供である僕らにお願いするなんて。
「ERPを知っているだろうか?」
「ERP・・・・・・国連統合政府と現日本の総理大臣東郷義一が推進した【
「そうだ。そして、神威大門の地下にあるセカンドワールドで行われる、ウォータイムと呼ばれるものは世界平和のためのシミュレーションだということは知っているか?」
「ええ。事前に調べたので」
カイオス長官の問いに予め調べていたと伝える。
「ですが、それは表向きです」
「表向き?」
「ええ。セカンドワールドで行われるものはシミュレーションではなく、ERP加盟国の代理戦争。そこに在籍する生徒を利用した、本物の戦争です」
「なっ!?」
レネトン大統領の告げた真実に息を止めた。
メアたちも僕と同じような状態だ。
「現に、そのウォータイムで消滅した国々が幾つかあります」
大統領の言葉に信じられないと思った。
セカンドワールドで行われる戦闘が現実世界に反映されるなんて・・・・・・
「信じられないと思うが、これは事実だ」
「カイオス長官!?」
大統領だけでなく、カイオス長官までもが認めてる。
という事は、これは本当なのだろう。
「何故、そんな機密情報とも言えることを私たちに話すの?私たちは政府の機関に所属してる訳でもない、ただの子供よ?」
フランが臆することなく2人に尋ねる。
「我々A国もERPに加盟しています。それ故に表立って動けないんです」
フランの疑問に大統領が答える。
その声には歯痒いとでも言うのか、そんな感情が含まれていた。
「いくら我々でも神威島に出入りすることは厳しい。国連が認可しないだろう」
「それで私たちに白羽の矢が立ったのね」
「そうだ」
「そうなります」
相変わらずのフランに苦笑を浮かべる。
だが、フランのお陰で僕たちが呼ばれた理由がわかった。
「私としてはレイたちを巻き込ませるのは反対だったんだけどね」
カイオス長官の隣に座るジェシカが肩を竦めて言う。
「ジェシカ・・・・・・」
「だってそうでしょ?レイたちはまだ12歳の、子供も子供なのよ!?それを私たちの事情に巻き込むのは・・・・・・幾ら一緒に世界を救ったとはいえ、本当なら普通に学園生活をすごして欲しいわよ。特にフランには」
「ジェシカ・・・・・・」
ジェシカのその言葉は本心なのだろう。
最後の方、目線を下にずらして言う。
「ありがとうジェシカ」
「フラン・・・・・・」
「レイ。今回のこの依頼、私は受けたいと思うわ」
「「「っ!?」」」
「この場にいる全員は私の過去を知っているのでしょ?なら、私のとるべきことは一つよ。そんなシステム、ぶっ壊してやるわ!」
おぅ・・・・・・
フランが物騒な事言ってる。
いや、まぁ、フランの気持ちも分からんでもないけど・・・・・・
確かにフランの事を知っているのはごく限られた人のみ。
レネトン大統領やカイオス長官も色々協力してくれたからフランの戸籍があるし・・・・・・
そう考えると結構な借りがあるんだよなぁ・・・・・・・
「メアたちはどうする?」
「私は受けたいと思うな。だって、それ、私たちと同い年の子たちが知らず知らずの内に戦争をやらされてるって事だよね?だったら、みんなを救いたい」
「そうね。私もメアと同意見だわ」
「うん。私も」
メア、キヨカ、ルナは受けるようだ。
「レイ君はどうだろうか。受けてもらえないか?」
この部屋にいる全員の視線が僕に集まる。
《どうするの?受けるのこの依頼?》
頭の中に声が響く。
僕以外の誰にも聞こえない、僕だけに聞こえる声だ。
「(・・・・・・神威大門はLBX専門校として世間には認知されてる。つまり、この代理戦争には父さんが生み出したLBXが使われてるということになる)」
《そうなるでしょうね。人ではなく、ロボットを使うなんて・・・・・・考えたわね。でも、貴方からしたらこれは許せないんでしょ?》
「(当然。LBXを使った戦争・・・・・・そんなの、絶対に阻止しないと。父さんが生み出したLBXの本来の使い方はこんなんじゃない。大人も子供も楽しく遊べる、ホビーとして創ったんだから)」
《なら、答えはひとつね》
「(無理させるかもだけどいいの?)」
《何を今更?私と貴方は一心同体。全てを共有してるのよ?》
「(それもそうだったね)」
思念で会話をし、しばしの沈黙の後―――
「クラウディア大統領。カイオス長官。その依頼、受けさせてもらいます」
そう答えた。
「ありがとうございます。私たちに出来うることなら、可能な限りサポートしますので」
「分かりました」
A国のトップとカイオス長官がバックに居てくれるならなんとかなる。
そう思ってると。
「ジェシカ、メア君たちを連れて外に出ていてくれないか?」
「パパ?」
カイオス長官がジェシカにそう言った。
首をかしげるジェシカに、カイオス長官は無言で返す。
「わかったわ。4人とも行きましょう」
「え、あ、うん」
ジェシカに促されてメアたちは部屋の外に出る。
扉が閉まり、中に残ったのは僕、レネトン大統領、カイオス長官の3人のみとなった。
「すまないが、ここから先はレイ君。君だけに聞いてもらいたい」
「僕だけに?」
「そうだ。大統領」
「ええ。これから話すのはERPでも極限られた人が知る情報です」
「っ!」
大統領のその言葉で余程重要な話だと感じた。
「まず、セカンドワールドには秘匿されてるロストエリアと呼ばれる、セカンドワールドの運営を管理するエリアがあります。そのロストエリアには、世界各国の軍事情報を記録しその内容をリアルタイムに更新し続けていくメモリーチップ【アンダーバランス】と呼ばれるチップがあり、それを掌握したら世界の軍事バランスは崩壊を辿ることになるでしょう」
「アンダーバランス・・・・・・」
まさか代理戦争だけでなく、軍事情報をリアルタイムで更新・記録する、とんでもないモノが隠されていようとは・・・・・・
「山野博士が創り上げた、【エターナルサイクラー】同様、使い方を誤れば世界の崩壊を招く可能性のあるものです」
確かにこんな情報おいそれと知られるわけにはいかない。
「な、何故その情報を僕に・・・・・・?その情報はERPにとっての最重要機密情報・・・・・・トップシークレットのはず」
「ええ。ですから、これは私とカイオス長官の独断です」
「っ!?!?」
「私は、ディテクター事件やミゼル事変を解決し、世界を救った貴方方を信頼しています」
「この依頼をするのも、信頼に置けるものがレイ君たちしかいなかったからだ。ジェシカたちには頼むのも難しいのでな」
「なるほど・・・・・・」
確かに、ジェシカは今年で19歳になるはず。
兄さんやアミ姉も18で、大学進学を決めている。
そうなると、自然に年齢にあって神威大門に入学する予定のある僕らに頼むのも当然か。
「今回のこの依頼、タイニーオービットの宇崎氏にも協力を仰いでいる」
「拓也さんにもですか?」
「そうだ。神威大門では君たち本来のLBXは使えない。学園が用意したものを基本使用する。そのため、バックアップとして宇崎氏たちに協力をお願いした」
僕らのことを知ってる拓也さんたちタイニーオービットがサポートしてくれるならより動きやすい。
「大統領。長官、幾つか質問が」
「なんでしょう?」
「まず、そのロストエリアへ入るための場所は判明してるんですか?」
「いえ、それを知っているのは恐らく運営側のみ。ですが、ロストエリアに入るためには【パラサイトキー】と呼ばれるプログラムキーが必要です。そしてその鍵はセカンドワールドで稼働するLBXのどれかに入っていると」
「ふむ・・・・・・そのプログラムキーは幾つあるんですか?」
「確認した限りでは3つです」
「3つ・・・・・・」
鍵が3つということは、そのプログラムをひとつにまとめないとロストエリアへの扉は開かないと推測出来る。
まぁ、プログラム系は父さんやオタクロス譲りだからなぁ。
「ふたつめ。神威大門で僕ら本来のLBXを使用することは大統領や長官の権限で可能ですか?」
「・・・・・・大統領」
「恐らく、私の権限で可能だと思われます。ですが・・・・・・」
カイオス長官と大統領は難しそうに顔を見合わせる。
「別に、セカンドワールドで使用するわけじゃないです」
「では、なんのために?」
「万が一。何かあった時のために」
「っ!?」
「レイ君。君の眼は何処まで見えてるんだ?」
「いえ、視えたわけじゃないです。ただ、嫌な予感がするんです。今の話を聞くと」
そう。世界の軍事情報が記されたメモリーチップを狙わない輩がいないとは限らない。
その予防策として。
「3つ。僕らを一緒に生活させることは出来ますか?」
「それなら問題ないでしょう」
僕、メア、キヨカはともかく、ルナとフランは他の一般人と一緒に過ごさせる訳にはいかない。
フランはもちろんのこと、ルナの身体はオプティマのお陰で動いてる。
それ故に何かあった際、僕らの誰かが一緒にいなければ・・・・・・
「4つ。この事を学園で信頼における者に話すのはいいでしょうか?」
「貴方が信頼における者なら。ですが、それは最初のセカンドワールドについてのみでお願いします」
「分かりました。僕が聞きたいことは以上です」
目を閉じ、ふぅ・・・と息を吐く。
「レイ君。君は相変わらず歳に似合わず大人びているな」
「ふふっ。そんなことないですよ」
クスッと笑みを漏らしてカイオス長官に言った。
―――現在―――
そうして僕らは大統領から依頼を受け、神威大門に向かった。
それからしばらくしてハーネスの司令官の地位を受け、今に至る。
神威大門に来る半月前のことを思い出し、みんなに話す。
「僕の人脈については、過去で得たものだからね。それと、今言ったこと他言無用だからね?」
人差し指を口に当てて言う。
カゲトラたちは静かにうなずき。
「それで、みんなに聞きたい。この事実を聞いてみんなは、これからもセカンドワールドで戦い続ける覚悟がある?」
一番僕がみんなに聞きたいこと。
それは、この話を聞いてみんながこれからも戦い続けていられるかどうか。
「そ、それは・・・・・・」
「・・・・・・」
僕の問いに口淀む者が多い。
そんな中。
「私は戦い続ける」
シスイだけが口を開いて告げた。
「レイ。君たちがここに来た目的はなんだ?」
「僕がここに来た目的?それはさっき―――」
「そうではない。君自身の目的はなんだ?」
「っ!?」
たまにシスイの眼は恐るべき鋭さを持つ。
まさに虚を突かれた。
「僕の目的か・・・・・・僕の目的は、この学園の変革と解放。LBXをあるべき姿に戻す。それが、LBXを開発して生み出した、山野淳一郎の息子である僕本来の目的だ!」
「や、山野淳一郎!?」
「山野博士がレイの父親・・・・・・」
そう言えばみんな、僕が山野淳一郎の息子だって知らないんだっけ?
別に言うことじゃなかったし。
「どうりでLBXについて詳しいわけだ・・・・・・」
「開発者が父親・・・・・・」
まぁ、世間で父さんはLBXの生みの親にして第一人者。エターナルサイクラーの開発者として記録されてるからなぁ。
「なら、私は君のその目的に協力しよう」
「シスイ・・・・・・」
「私は、君が望んだ未来が見てみたい。私たちは君がいなければ既にここにはいない。なら、恩返しではないが、せめて君が望む未来の手助けはしたい」
シスイの瞳には一切の曇りもなく、本心で言っていると伝わった。
「俺も戦おう」
「カゲトラ・・・・・・」
「シスイの言う通りだ。俺たちはお前が導いてくれたから今、ここにいる。ハーネスはお前が守り続けてきた場所だ。そして、俺たちのリーダーであるお前がその未来を望むなら、俺はお前に手を貸す!なにより、このまま利用されるのは気に入らない」
「そうや!うちも戦うわ!」
「僕も!」
「俺様も戦うぜ!」
「ええ!」
「おう!」
「イェース!!」
「レイ、私たちは貴方について行きますわ!」
「そうだよ!」
「はい!」
「うん!」
「ふふっ。そうだね!」
「うん」
「おうよ!」
「みんな・・・・・・」
カゲトラに蜂起されたのか、みんな次々に声を上げていく。
『レイ。これは君がここに来て築いた絆だ』
「ああ」
ジンの言う通りだ。
これは"絆"。僕がここで紡いできたものだ。
「レイ」
「レイ」
「レーくん」
ルナ、フラン、メアに呼ばれ頷く。
「ありがとう、みんな!!」
本心では、もっと非難や戦わない者がいるかと思った。
けど、それは覆り、クラスが一致団結して僕の望んだ未来に協力してくれると言ってくれた。
僕でもこの未来は視えなかったよ。
自虐気味に心の中で言い、僕はみんなに向き直り、今後のことを話した。