〜レイside〜
カゲトラたちみんなに、このセカンドワールドの真実を話し、僕の望む未来に協力してくれると言ってくれた翌日。
「貴方が呼び出すなんて始めてね」
「ええ」
ホームルーム前の保健室で、僕は美都先生と密会していた。
保健室には僕と美都先生に、日暮先生もいる。
「それで、要件は何かしら?」
美都先生の問いにポケットからひとつのUSBメモリを取り出し渡す。
「これは?」
「ドルドキンスの声が入ってます」
「どういうつもり?」
「ジェノックとハーネスの同盟を正式に取り付けるに当たって、ジェノックにはちょっとした試練を受けてもらいます」
「試練?」
「ええ」
僕がジェノックに与える試練。
それは―――
「ドルドキンスに直接会い、同盟の橋渡しをすること」
「なるほど」
これだけ言えば、聡明な美都先生もわかるだろう。
「でも、何故それが貴方ではないの?橋渡しなら"ゼロ"である貴方でも構わないのでは?」
「理由は単純に、ゼロである僕より、ドルドキンスであるジンの方がはるかに楽だから」
「楽?」
「ええ。そのUSBメモリには、ジンがいる場所が隠されている。なら、僕を探すより、ジンを探した方が早い」
「確かに、お前は基本一箇所に留まってないからな」
「それ褒めてます?日暮先生」
茶を飲みながら言う担任に呆れた眼差しを向ける。
一箇所にいられないのはこの人が大半の原因なんだけど?
「まぁ、何よりお前がハーネスの司令官なのは極秘中の極秘だからな」
「ええ」
ハーネスの司令官は外部には秘匿している。
理由は小国なのもあるが、一番は知られると面倒だから。
「もっとも、ジェノックが僕に直接来るのも構いませんけどね」
意地の悪い笑みを浮かべて言う。
まぁ、無駄だと思うけど。
「分かったわ。橋渡しをする生徒は私が選んでいいのかしら?」
「ええ。もっとも、多分橋渡しをするのは彼らだと思いますけど」
「?」
昨夜ムラクからメールが来た。
彼にこの世界の真実を話したと。
そして、その直後のダック荘の食堂での行動。
恐らく、今日にでも聞いてくるだろうね。
訳が分からなそうな顔をする美都先生。
「日暮先生」
「なんだ?」
「日暮先生にもちょっと協力してもらいますよ」
「なに?」
珍しく少し驚いた顔をする日暮先生。
「もしジェノックの誰かがドルドキンスについて尋ねてきたら、手段は任せますけど、さりげなくドルドキンスの所に案内してください」
「・・・・・どういうつもりだ?」
「ヒントですよ」
不敵な笑みを浮かべたまま言う。
「はぁ・・・・・・ほんと、お前の頭の構造や眼はどれだけ先を見てるんだ?予知にも程があるだろ?」
「そう言われても・・・・・・」
苦笑しながら返す。
昔の経験が今ここに生きているからなぁ。
「さぁて・・・・・・この現実に、君たちはどう反応するのかな?―――瀬名アラタ」
保健室の窓から空を見上げ言う。
瀬名アラタ。
ジェノックは今アラタを中心に回ってると言っても過言ではない。
それ故に、アラタの・・・・・・いや、ジェノック全体の反応が気になる。
もっとも、キヨカから逐一連絡を受けてるけどね。
キヨカと僕の関係は美都先生も知らない。
何故なら言ってないから。言う必要が無い。
美都先生を横目で見ながら、僕はこれからの行動を考えた。
そうして、極秘の朝の密会は終わり、僕は教室の2年3組へと戻った。
戻り、クラスに入ると―――
「なぁなぁレイ!!」
「うわっ!?な、なにスズネ!?」
切羽詰まった様子でスズネが泣きついて来た。
いや、え!?何事!?
「何があったの!?」
慌てる僕にスズネは。
「昨日の課題、アレ難しすぎるわ!!」
と言ってきた。
「昨日の課題・・・・・・あ、【地形の変化によるLBX運用の違いを挙げよ】ってやつ?」
「そうやぁ!!」
た、確かに昨日ジンが出した課題、アレはさすがに中学2年生には難し過ぎないかと思ったが・・・・・・
あの人たまに常識外れなことするからなぁ。
まぁ、LBXでリニアを止めるわ、地下鉄を止めるわ、戦車をハッキングして止めるわ・・・・・・・・・あれ?今にしてもこれ、常識外れじゃね?
ジンの過去の戦績を思い返してそう思う。
「えーと、ちなみにこれまだやってないとか、途中の人っている?」
扉を閉めて聞いてみると―――
「あ、うん。マジですか」
クラスの大半が手を挙げていた。
「え、えーと・・・・・・あとどのくらいで出来る?」
引き攣り笑いをしながら聞いてみると。
「ウチは無理や!」
「俺はあと少しだな」
「あははは。僕もかな?」
スズネ、カゲトラ、タケルがいい。
「・・・・・・・・・・」
「私たちの隊長は屍のようになっておりますわ」
「ギンジさん、頭使うの苦手ですからね」
「隊長、しっかりするでース!」
屍のようになっているギンジに、あらあらと微笑むシズカ。やれやれという風のテッペイに、ギンジを励ますジョニー。
「わ、私はジン様の与えてくれた課題なら何がなんでもやり遂げますわ!!」
「はいはい。フラフラになりながら言っても意味ないよ」
「と、こんな感じです」
「オトヒメのジンさんへの思いはホント熱すぎるわ」
熱でもあるのではないのかという風にフラフラのオトヒメに、オトヒメを宥めるフウ。現状報告するスイに、呆れたように言うシェリー。
「私は既に問題ない」
「・・・・・・僕は後ちょっと」
「お、俺はまだ・・・・・・」
「ふふ。僕もあと少しで終わるかな」
冷静沈着で淡々というシスイに、オドオドして言うムネモリ。目線を逸らして言うオオジに、相変わらず微笑みながら言うコヨミ。
で、僕らはと言うと。
「私はもう終わってるよ〜」
「ええ」
「あははは・・・・・・昨日の夜パパっとね」
メア、フラン、ルナは案の定終わってる。
てか、昨日の夜やったし。
というか・・・・・・うん。
「えーと・・・・・・期限・・・・・・伸ばしてもらおうか?」
「「「「「「お願いします!!!」」」」」」
わぉ・・・・・・
スズネやギンジを筆頭に、ほとんどのクラスメイトが懇願してきた。
ジン、さすがにこれは予想外だよ・・・・・・
「ホームルームを始めるぞー」
間延びしたやる気のない声で担任の日暮先生が入ってきた。
「ん?なんでお前たちレイに頭下げてんだ?」
「あははは・・・・・・まぁ、色々あって」
「???」
訳が分からないという顔をする日暮先生。
いや、まぁ、うん。
色々あるんです。
そうして本日も一日が始まり、いつも通りの日常が過ぎウォータイムの時刻になった。
「各小隊、LBXの調整はどう?」
昨日の激しい戦いで問題があったら大変だ。
司令官席からそれぞれの小隊のメカニックに問う。
「第1小隊は問題ありません」
「同じく第2小隊もダイジョウぶデース」
「第3小隊問題ありません」
「第4小隊も大丈夫だよー」
「了解。今回の任務は、制圧した『ホワイトパレス』の改修を第2小隊と第4小隊で行う。第1小隊は『リバーエンドブリッジ』の。第3小隊は『フェンレス雪原』の哨戒任務。フランは第1小隊に。ルナは第3小隊とともに、ライディングソーサで任務に当たってくれ」
「「「「「了解!!」」」」」
任務を言い渡し、みんなコントロールポッドルームへと行きミッションを始める。
「メア、今開発してる"アレ"進捗はどう?」
「昨日の今日だからね。一応、レーくんと考えた設計プランを組み込んで今日のウォータイムから開発してみるよ」
「わかった」
メアには対空戦力としてあるものをお願いしてある。
セカンドワールドにあるラボなら完璧に仕上るはずだ。
そうして始まったウォータイム。
バンデットも現れることなく、ミッションはそれぞれ完了し、明日の予定を話し各自解散した。
みんながいなくなり、僕はカゲトラたち小隊長に提出してもらったレポートを読み、後始末をする。
後始末をしていると。
「もしもし、美都先生?」
美都先生から連絡が来た。
『貴方、このことを読んでいたの?』
「何がです?」
『瀬名アラタが、セカンドワールドの真実について聞いてきたわ。昨日のウォータイムの最中、非常回線で法条ムラクから聞いたそうよ』
「へぇー」
『ハーネスとの橋渡しを瀬名アラタたち第1小隊に任せたわ』
「分かりました。ジンにも言っておきます」
『ええ。それと、貴方についても教えといたわ』
「というと?」
『ハーネスの司令官"ゼロ"として、"ドルドキンス"と同じようにね』
「なるほど。でも、まぁ、彼らが僕に辿り着くのは無理だと思いますよ?」
『その根拠は?』
「普通、生徒が一国の司令官に着いてるわけないから」
『貴方がそれを言うと、皮肉に聞こえるわよ?』
「そうですか?」
『ええ。取り敢えず、期限は明日の夕方。彼の居場所は何時ものあそこでいいのよね?』
「ええ」
『分かったわ。明日の夕方、私もそこに向かいます。貴方はどうするの?』
「僕は通信で話しますよ。正体を明かすのは、明後日」
『明後日?』
「ええ。美都先生、明後日のウォータイム、ハーネスとの模擬戦でも構いませんよね?」
『理由は?』
「いきなり合同任務なんてどう考えても不可能です。なら、少しでも同盟相手の実力を知ってもらった方がいい」
『貴方って、たまに凄い無茶振りなことするわね』
「普通ですよ」
『まぁ、良いわ。明後日のウォータイム、ハーネスとの模擬戦を承諾します』
「ええ。では」
『ええ』
美都先生との通信を切り、部屋の電源を落とし、ジンにさっき美都先生と話したことを話す。
「さぁて・・・・・・ついに動くか」
司令室を後にし、キヨカにメッセージを送る。
メッセージを送ってすぐに、キヨカから了解の二文字が送られてきた。
それを見て、端末を内ポケットに仕舞ってその場を後にした。
〜レイside out〜
〜ハルキside〜
ウォータイムが終わり、夕日が照らし時間も午後6時になろうとしている黄昏時。
俺、アラタ、ヒカル、サクヤの4人は、学園の屋上で美都先生に昨日の夜、ダック荘のアラタとヒカルの部屋でアラタから聞いた、セカンドワールドの真実について尋ねた。
「―――あの時、非常回線を使ってそんな話をしていたわけね?」
「はい。ムラクの言っていることは本当なんですか?」
「貴方はどう思うの?」
アラタの質問に、美都先生は質問で返してくる。
「わかりません。話が凄すぎて頭が追いつかないって言うか・・・・・・今外の世界がどうなっているのかもサッパリだし・・・・・・」
俺もアラタと同じだ。
なにより、敵である法条ムラクから聞いたと言われても真実味が無い。
それにだ。この情報が限られた島で、得られる外の情報は限りなく少なく、世界がどうなっているのかすら分からない。
「ふぅ・・・・・・そんなことを考える暇があったら、これからの戦いに目を向けるべきではないかしら。何があっても、私たちはセカンドワールドで勝ち続けなければならないんだから」
ため息を吐き、呆れたように告げる美都先生。
「『ギガントの壁』を制圧した今、次のターゲットは『デスフォレスト』。ロシウスも全力で死守しようとしてくるはずよ」
確かに。
美都先生の言う通りだ。
ロシウスもデスフォレストに勢力を集中している。
「ギガントの壁からの増援は無いとしても、今のジェノックの戦力だけで、デスフォレストを攻略するのはやはり難しい。そこで同盟を結びたい」
「同盟を?」
美都先生が告げた言葉に驚く。
「ええ。相手はハーネスよ」
「ハーネス?」
「学園最強の山野レイや、川村メアたちがいるハーネスですか!?」
「ええ」
サクヤの問いに淡々と美都先生は告げる。
この学園にはトップクラスのプレイヤーが何人かいる。
その中でも飛び抜けてトップに。頂点に君臨するのがハーネス所属の山野レイだ。
そして、彼の仲間である3人も彼に追ずるように、この学園のトップ五本指には入る。
「現在ハーネスは、着実に領土を広げているけど、元々国力は低い。彼らにとっても、同盟は好都合のはず」
確かに、ハーネスの小隊の数は俺たちジェノックの同じく5小隊。
ロシウスやアラビスタに比べたら国力は低いが・・・・・・。
「ですが、ハーネスには学園最強の山野レイや、彼に並ぶほどの強さを持つフラン・フルーリアに、石森ルナがいます。同盟を結ぶとは思えません」
「そうかしら?」
俺の疑問に美都先生は疑問で返す。
「いくら学園最強と言えども、複数の拠点を防衛するのは不可能。例え彼一人で1小隊分の戦力を補えたとしても、どうあっても戦力は足りないはずよ」
美都先生の答えに俺はハッ!した。
確かにそうだ。
例え学園最強といえども、山野レイは一人。
複数の拠点を防衛するのはまず不可能だ。
「我々ジェノックと利害が一致するという訳ですか」
なら、俺たちジェノックと同盟を結べば、その負担は大きく減ることになる。
「そう。だから貴方たちには、同盟の橋渡しをしてもらいます」
「「「「え!?」」」」
美都先生の橋渡しという単語に驚く俺ら。
まさか、そんな重要な役目を生徒である俺たちにさせるとは・・・・・・
驚く俺たちを他所に美都先生は告げた。
「極秘でハーネスの司令官に会い、交渉をしてきなさい」
「なんでそんなことを俺たちが?!」
「成功したら、さっきの質問に答えてあげてもいいわ」
美都先生のその言葉は、俺たちにとって重要な事だと把握した。
この答えが分かるなら、引き受けるべきだろう。
「分かりました」
「任せたわよ。でも、問題がひとつ。それは、司令官の正体が分からないということ」
「司令官は、3組担任の日暮先生では?」
基本司令官はクラスの担任が務めることになる。
俺たち2年5組の担任は美都先生だ。
ジェノックは2年5組のみで構成されているため、自動的に美都先生が司令官となる。
同じくハーネスも2年3組のみで構成されているため、担任である日暮先生が司令官のはずだが・・・・・・
「違うわ。司令官のコードネームは"ドルドキンス"。諜報班の捜査で分かったことよ」
「ドルドキンス・・・・・・」
日暮先生ではなく、ドルドキンス・・・・・・
一体何者だ?
そう思っていると。
「そして、もうひとり」
「っ!?ハーネスには司令官が二人もいるんですか!?」
「ええ」
司令官が二人もいる仮想国なんて聞いたことない。
驚く中美都先生は告げる。
「その司令官のコードネームは"ゼロ"。諜報班の捜査でも、コードネームしか分からない、正体不明の謎の人物」
「ゼロ・・・・・・」
正体不明の謎の人物、ゼロ。
まさか諜報班の捜査でも分からないとは・・・・・・
「明日の夕方までに、ドルドキンス。またはゼロの正体を突き止め、ジェノックとの同盟を申し入れること」
「明日の夕方までか・・・・・・」
期限は24時間・・・・・・
「ここにハーネスとドルドキンスの通信を傍受したものが」
美都先生が渡してきたのはひとつのUSBメモリだった。
「データを解析すれば、何か手がかりが掴めるかもしれないわ」
「待ってください。ゼロの通信を傍受したものはないんですか?」
「ないわ。これは第1小隊に下された、極秘任務です。その事を忘れないよう」
話は終わりと言うふうに言われて念を押された俺たちはそのまま学園を後にした。
手掛かりは美都先生が渡したこのUSBメモリのみ・・・・・・
「ドルドキンスは、作戦と用兵の天才と呼ばれてるらしい。ハーネスの大躍進は古城タケルのメカと山野レイの戦力、そしてドルドキンスの指揮で成し遂げられたとか」
ダック荘へ帰る最中、ドルドキンスについて軽く調べたサクヤが教えてくれた。
「そうなんだ?そうなると会いたくなってきたな」
「だが、ゼロについては分からない」
「うん。ゼロについては一切が謎のまま」
「ゼロか・・・・・・ドルドキンスよりも情報が少ない。一体何者だ?」
ハーネスの司令官のひとり、ゼロについて考える。
だが、考えたくても情報が無いに等しいのでは考えても頭が回らない。
「とにかく今は、ドルドキンスについてだけでも分かればいいか」
「だが、正体が分からなければ探し用がない」
「手掛かりはコレだけか・・・・・・」
アラタとヒカルの言葉を聞き、美都先生から受け取ったドルドキンスの情報が記録されてるUSBメモリも見る。
「明日のウォータイム中に、メカニックルームで調べてみよう」
「ああ」
明日のウォータイム中に見つかるかどうか・・・・・・
せめてもう少し情報があれば・・・・・・
そう歩きながら考えてると。
「ん・・・・・・あっ!手掛かりなら、ここにもあるぜ!!」
「アラタ?」
突然アラタがスワローを見てそう言い放ち、スワローの中へと入っていった。
そのままアラタはスワローで何かの課題をしているハーネスの生徒に近づいた。
その内の一人は以前、アラタにテストプレイヤーをお願いした古城タケルだった。
アラタは一直線に古城タケルに近づき。
「タケル、頼みがある」
タケルに話し掛けた。
「え?」
「おい!お前なにを!?」
アラタのやろうとしてる事が分かりアラタを問い詰める。
が。
「ドルドキンスに会わせてくれ!」
「は、はぁ?」
極秘任務だと言うのを忘れたのか、それとも極秘任務の極秘の意味を知らんのか、アラタは率直に極秘任務の内容を言った。
しかも、ハーネス相手に。
「"極秘任務"じゃなかったのか?」
「まぁ、アラタらしいけど」
呆れるヒカルに苦笑するサクヤ。
まさかここまでバカとは思わず頭が痛くなる俺。
そんな俺たちを他所に、アラタはハーネスの生徒に話す。
「俺たち、ハーネスの司令官に会わなくちゃならないんだ」
「なんの用や?」
「それは言えない」
「なんやそれ?」
「会わせるわけにはいかない」
古城タケルの反対側に座っている女子と男子がアラタのお願いを拒否する。
「ならせめて、ドルドキンスが誰かなのか教えてくれ!」
「ダメだ」
「何故ハーネスは、司令官を秘密にしてるんだ?」
俺はふと、不思議になったことを聞いた。
基本司令官は公表されているものだが・・・・・・
「ウチは小さな国や。大国に何されるか分からんやん?隠せるもんはなるべく隠さんとな。どうしても話せと言うなら、それなりの見返りを貰わんと。タダで情報貰おうなんて甘いわ」
「なら、ドルドキンスじゃなくても、ゼロについて教えてくれ!!」
「なんだと?」
アラタのゼロと言った単語に明らかに3人とも反応した。
何故知っているとでも言いたげだ。
「ゼロは一体誰なんだ?!どこに行けば会えるんだ?!」
「ゼロについて、やと・・・・・・?」
「尚更話すわけにはいかない。ゼロは、俺たちハーネスとって最重要機密だ。なにより、こんな他人もいるところで話すバカがどこにいる?」
「そ、それは・・・・・・」
アラタは今更思い出したのか、言葉を濁す。
「なにより、司令官の情報を与えて俺たちになんのメリットがある?もし提供するとしても、なにかその見返りに相応しいものがあるのか?」
冷静に言う彼の言葉にぐうの音も出ない。
自国の司令官の情報に見合うものなんて、あるはずがない。
「これ以上の会話は不要だ」
そう言うと、彼はこちらに視線を向けることなく、机のノートと睨めっこを続けた。
「ほんなら」
女子もそう言い彼と同じように机に向かった。
「あはは。ゴメンね」
「いや、こちらこそすまない。邪魔をした。行くぞアラタ」
「でも・・・・・・!」
「アラタ、少しは考えろ」
「っ・・・・・・!」
ヒカルに促され、アラタは渋々とスワローから出る。
そのまま俺たちはダック荘へ戻り、自室で着替えてから談話室に移動する。
「全く・・・・・・後先考えないその性格、なんとかしろ!」
「いやぁ、直接聞いた方が早いと思ってさ・・・・・・」
「極秘任務って言われただろ?」
「ご、ごめん・・・・・・」
「以後、慎重に進めよう」
もう今更な気がするが、これ以上広める訳には行かない。
「わ、分かった・・・・・・」
これからどうするかかんがえていたところに。
「もう遅いって!」
階段を登ってきたユノが俺たちにそう告げた。
「聞いちゃった、スワローで。情報筒抜けだよ」
「ハーネスの司令官ってドルドキンスって言うんだ」
「あとゼロね」
最悪だ。
まさか第4小隊に聞かれていたとは・・・・・・
これでは極秘任務の意味が無い。
そう思って悩んでると。
「取り敢えず分担を決めましょ」
「え?」
ユノがそう言った。
「探すんでしょ?ドルドキンスとゼロ」
「これは第1小隊の任務だ」
第4小隊に任務は任されてない。
故にやる理由がない。
「もうバレちゃったんだし、黙ってれば先生にはわからないわ」
「しかし・・・・・・」
「
「ほら!大きな収穫だって!」
キヨカの端末に映し出されたタロットに興奮して言うユノ。
苦渋に悩ませてると。
「あ、あのさ・・・・・・もうこの際、第4小隊に協力してもらうしかないんじゃない?」
事の元凶たるアラタがそう言った。
「仕方ない・・・・・・」
深い溜息を吐き俺も承諾する。
「よし、決まり!」
「せぇーの!」
「ドルドキンス&ゼロ大作戦!「「「開始っ!!」」」」
「なんだそれ・・・・・・」
なんかよくわかんないポーズを取る第4小隊。
「観てない?少女スパイX!凄腕女スパイが世界のピンチを救う!」
「第4小隊では最近、少女スパイXがきてるのよ!」
「あ!始まる!」
そう言って第4小隊は談話室に設置されてるブラウン管のスイッチを入れ、飲み物やポップコーンを机の上に置き、始まったドラマらしきものを見始める。
「はぁ・・・・・・」
頭が痛い・・・・・・
俺は頭痛がするような感じがして頭を抑えた。
〜ハルキside out〜
〜レイside〜
「レイ。ジェノックがゼロとドルドキンスのことを探ってるぞ」
カゲトラからの緊急招集で、ダック荘の会議室にハーネスの部隊長である俺、カゲトラ、ギンジ、オトヒメ、シスイが集まる。
席に着くなり、カゲトラがそう告げた。
「それで、情報は教えたの?」
「いや、一切何も教えてない」
「OK〜」
カゲトラの答えに頷く。
「まさか単刀直入に聞くとはな」
「ああ。いきなり瀬名アラタが来たから驚いた」
シスイの呆れに、カゲトラも同じ感じだ。
「あなたの予想通りですわね」
相変わらず、とでも言いたげなオトヒメな発言に苦笑する。
「ったく。お前に聞いた当日にコレかよ」
呆れたように僕を見るギンジ。
「まぁ、アラタのその行動は予想外だったよ。聞いてくるにしても、明日だと思ってたからね。まさか、今日聞いてくるなんて・・・・・・」
足を組みながら言う。
さすがの僕も、アラタのこの行動は予想外だった。
「それで、俺たちは引き続きジェノックに聞かれても答えなければ良いんだな?」
「うん。ただし、ジェノック第2小隊隊長のゲンドウには気をつけて。彼は頭が回るし、洞察力も高いから」
注意すべきはゲンドウだろう。
風陣カイトは自分の利益のみにしか目がないから興味は無い。
東郷リクヤはどう動くか分からないが、一番の注意はゲンドウだ。
磯谷財閥の御曹司として、幼少期から社交界など出ていたゲンドウは相手の視線や動きで察知する、人を見る目が高い。
口も上手いので、乗せられやすい。
「ですが、本当にジェノックと結びますの?」
「うん。ジェノックとは半年以上前から。ドルドキンスが来た時から秘密裏に協定を結んでいたからね」
今日のウォータイム終了後、僕はみんなにジェノックとの同盟について話した。
聞いた当初はみんな驚いていたけど、これからの事を話したら受け入れてくれた。
その際、僕とジン。ゼロとドルドキンスの事を聞かれても答えないようにと念を押した。
「でもよぉ、今の俺さまたちにジェノックが相応しいのか?」
「確かにそうだな。先日の『エンジェルピース』の際に【バイオレットデビル】こと法条ムラクをブレイクオーバーさせたらしいが・・・・・・」
「正直不安しかありませんわ」
「そうだな。ウォータイム後は納得したが、小隊長として不安が過ぎる」
「そうだよねぇ・・・・・・」
そう、そこが悩ましいのだ。
「【仲間殺し】の東郷リクヤが一番問題ですわ」
「平気で仲間を見捨てるなんて、隊長の風上にもおけねぇぜ!」
東郷リクヤについては学園でも大きく噂になってる。
故にオトヒメとギンジの二人が反感を示すのは理解出来るが・・・・・・
「まぁ、彼にも事情があるんだろうね」
先日ある仮説を立てて以降、少し気になっていた。
だが、確証が全くない。
「レイ、君の眼から見てジェノックは俺たちに見合うのか?」
シスイの問いにカゲトラたちもこっちを見てくる。
「まだ僕らハーネスには及ばなくても、いずれは並び立つだろうね。そして、その中心点にいるのはアラタだ」
「随分と瀬名アラタを買ってるんだな」
「ちょっとね。彼が来てからジェノックは変わったし」
僕がそう言うと、カゲトラたちは納得したように頷いた。
「でも、まずは、ジェノックがセカンドワールドの真実を知っても立ち上がれるか」
人差し指を立てて告げる。
近いうちに彼らも知ることになるだろうしね。
真実を知ったハルキたちが黙っているわけない。
「それと、予め言っておくけど、明後日のウォータイム、ジェノックとの模擬戦を行うから」
「模擬戦だと?そんなこと可能なのか?」
「同盟国で、互いの司令官が承諾してるなら可能だよ」
ジェノックは美都先生。ハーネスはジンか僕が承諾すれば問題ない。
なにより、美都先生からも先程許可は貰ったからね。
「それで、模擬戦でどうしろと言うんだ?」
「ふふっ。簡単だよ」
笑みを止め、冷たい眼差しをして告げる。
「本気でジェノックを叩き潰せ」
「「「「っ!?」」」」
「もちろん、ロストさせろと言ってるわけじゃない。ハーネスの。いや、僕らの力を見せてやれ。全力で、だ」
ジェノックは僕やメアたち以外を舐めている節がある。
故に思い知らせる。
ハーネスがここまで来たのは僕や、ジンのお陰ではなく、それぞれ各々が強くなっているからと。
「それがお前の指令なら了解した」
「おうよっ!俺さまたちの力、見せてやろうじゃねぇか!!」
「ええ!全力でお相手いたしますわ!」
「了解だ。私らも、狙撃手として本領を発揮しよう」
カゲトラたちの力強い返しに満足して、冷たい眼差しから一転、元の笑みを浮かべた。
「お願いね」
「「「「了解っ!!」」」」
その後軽く打ち合わせをして解散し、僕らは自室に戻った。
戻った際、キヨカからの連絡で、アラタたちとともに僕とジン。ゼロとドルドキンスを捜索すると来た。
キヨカに了解と返信し、彼らの行動の連絡をお願いした。
「さてさて・・・・・・どうなるかな」
不敵な笑みを浮かべて僕は机に座り、司令官としての仕事を片付け始めた。