ダンボール戦機 英雄の弟   作:ソーナ

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ハーネスVSジェノック(戦闘―sideハーネス)

 

〜レイside〜

 

ジェノックとの模擬戦の場所であるジェノック領内にある『ジョウトシティ』に降り立った僕らハーネス。

[コスモスオリジン]の背中に装備された【RD(ライディング)ウィング】によって宙に浮き、カゲトラたちに指示を送る。

 

「第1小隊とルナはポイントα(アルファ)へ。第2小隊はポイントγ(ガンマ)へ移動。第4小隊はそれぞれ所定のポイントへ。第3小隊は合図をするまでポイントβ(ベータ)で待機!」

 

『『『『『了解!』』』』』

 

僕の指示に従い各自移動を始める。

 

『レイ、私たちはどうするの?』

 

残ったフランが質問してくる。

 

「フランはこのまましばらくここで待機。ジェノック第1小隊が動いたら先回りして」

 

『なるほどね。わかったわ』

 

各自移動と準備に入る中、ジェノックの動きを確認する。

 

「予想通りだな」

 

ある程度ひとつに固まってフラッグを防衛している。

ハーネス程度、なんの事でもないと思ってるんだろうね。

 

『第4小隊各員、所定ポイントへ到達。何時でも始められる』

 

シスイからの報告が来る。

 

『了解。さぁ、始めようか・・・・・・!!』

 

ニヤリと笑みを浮かべ。

 

「第3小隊、行動開始!」

 

『『『了解!!』』』

 

第3小隊が動き出し、ジェノックの前に姿を現す。

 

「第3小隊はそのままジェノック第4小隊をポイントΔ(デルタ)へ誘き寄せろ。第4小隊はジェノック第4小隊を追わさせないよう狙撃!」

 

『『了解!』』

 

案の定、第3小隊の近くにいたジェノック第4小隊が動き、後退した第3小隊を追い掛ける。

ジェノック第4小隊を追い掛けるようにジェノック第1小隊や第5小隊も動こうとするが、彼らをシスイたち第4小隊による狙撃が襲う。

 

「第4小隊はそのままジェノック第5小隊を孤立させ、残ったジェノック第1小隊、第2小隊、第3小隊をその場から分断させろ」

 

目の前の画面には『ジョウトシティ』全体の地図が展開され、ジェノックとハーネスそれぞれのLBXの位置がリアルタイムで確認出来る。

尚且つ、空に上がっているためよく見える。

 

『目標達成(クリア)ジェノック第5小隊と交戦に入る』

 

シスイから通信が来て、第4小隊による第5小隊への攻撃が始まる。

そして同時に。

 

『第3小隊、ジェノック第4小隊を所定ポイントまで誘い込ませましたわ』

 

オトヒメからも来る。

 

「OK。オトヒメ、スイ、シェリーはジェノック第4小隊をその場で足止め。他に援護に回らさせないように立ち回れ」

 

『了解しましたわ!』

 

『了解!』

 

『わかった!』

 

オトヒメたち第3小隊もジェノック第4小隊と交戦に入る。

第5小隊と離れるようジェノック第1小隊、第2小隊、第3小隊はあちこちに小隊ごとに散らばる。

 

「フラン、ジェノック第1小隊の予想進路はここだ」

 

『分かったわ。すぐ行く』

 

フランの操作する[アステリローザ]が機動力をフルに発揮させてジェノック第1小隊の先を行く。

 

「カゲトラ、ギンジ。後10秒後にジェノック第3小隊と第2小隊と遭遇(エンカウント)する」

 

『了解した』

 

『おう!』

 

僕の予測通り、10秒後、第1小隊とルナはジェノック第3小隊と。第2小隊はジェノック第2小隊と遭遇した。

ジェノックの動きから、ジェノックは虚を突かれた様子だ。

大方、地の利はこっちにあるからって油断してたんだろうね。それと慢心か。

 

「各員に通達。目の前の敵を排除次第、フラッグに向かえ」

 

『ん?ブリーフィングでは無理にフラッグを狙う必要は無いと言ってなかったか?』

 

カゲトラの疑問は尤もだ。

当初の予定では別に、無理にフラッグを取る必要は無かった。

だが―――

 

「予定変更。確実にこの拠点を落とす」

 

『その理由はなんですの?』

 

「相手していて気づいたことは?」

 

オトヒメの質問に質問で返す。

 

『なんて言いますか、あまり歯応えがありませんわ』

 

『そうですね。僕たちのところに一人、強いプレイヤーはいますけど目の前のジェノック第4小隊、全体ではそこまでの強敵とは思えません』

 

『私もオトヒメとスイに同意かな。なんて言うか、予想外?』

 

質問に第3小隊が次々答える。

 

『私の方も同じだ。これでは一方的にもほどがある』

 

『・・・・・・うん。これなら、アラビスタを相手にしていた方がもっと良い』

 

『何つーか、よくここまで生き残ってこれたなって感想だぜ?ポルトンでももっと工夫してくるだろ』

 

続けて第4小隊も答え。

 

『俺さまの所は結構強いぜ!!油断も全然してねぇし、おもしれぇ!』

 

『ギンジさんの言う通りですわね。私たちの方は中々楽しめますわ』

 

『けど、正直俺たち相手には役者不足だな』

 

第2小隊も答える。

どうやらギンジを相手にしているのはゲンドウらしいね。

ゲンドウは見た目で判断しない。

人の上に立つ器がもう成っているのだ。

観察眼も優れているため、ジェノックの中でもそれなりに強者に部類される。

 

『こちらカゲトラ。東郷リクヤは予想通り早々にエスケープスタンスで離脱した』

 

『なんなんやアイツ!自分だけ逃げよってからに!!味方はどうでもいいってか!』

 

カゲトラからの報告で東郷リクヤは予想通りエスケープスタンスで離脱したらしい。

エスケープした東郷リクヤにスズネは御立腹みたい。

 

『これならカゲトラとスズネだけでも問題ないかな。私何もしてないし』

 

苦笑とともにルナの声が聞こえる。

 

「それだけ僕らハーネスとジェノックには差があるってこと。そして、ジェノックには一度徹底的に分からせる必要がある。"完全なる敗北"というものをね」

 

ここ最近のジェノックの拠点攻略任務は全戦全勝。

ゆえに、一部のジェノックメンバーには慢心が付いている。

"敗北を知っているからこそ、更なる力を身につけ、勝利へと繋ぐ道標となる"

LEXが僕に遺した言葉のひとつ。

敗者とは、必ずしも敗者とは限らない。

敗北を通してこそ繋がるものもある。

【敵を知り己を知れば百戦してあやうからず】。孫子の言葉のひとつだ。

意味は【敵の実力や現状をしっかりと把握し、自分自身のことをよくわきまえて戦えば、なんど戦っても、勝つことができるものです】 。

ジェノック全体の戦力と実力は把握済み。

自分自身。つまり、僕らハーネスの事は僕らが一番知っている。

そして何より、この一年僕は彼らと共に戦い抜いてきた。癖や動きなど、その全てを把握してる。

逆に、ジェノックは僕らハーネスについては全くの未知数と認識している。

知っているのは僕やルナ、フランと言ってトッププレイヤーのみ。

情報が常に更新し続けるのと同じで、カゲトラたちみんな日々進化している。

僕らがいなくても高難易度任務の『ホワイトパレス』を制圧したという自信も在り、常々言っている慢心をするなという言葉を理解している。

弱者には弱者なりの戦い方があるのだ。

 

「各員、当初の予定通り、対応の相手を撃破せよ。撃破した小隊はそのままフラッグへ向かえ」

 

『『『『『了解!!』』』』』

 

「さてと・・・・・・」

 

指示を送り、僕も動き出す。

 

『レイ、ジェノック第1小隊と遭遇したわ』

 

「分かった。僕も行く」

 

フランからの通信を聴き、フランの方へと飛んでいく。

フランとジェノック第1小隊。アラタ、ヒカル、ハルキが相対しているのを視てゆっくりと舞い降りる。

3人とも全く動かず、呆然としている。

 

「フラン。アラタの相手は僕がしてもいい?」

 

『良いけど?何故?』

 

「今のアラタがどんなもんかちょっと見てみたい」

 

『そう。じゃあ、私は残った2人を相手すればいいのね』

 

「うん。あ、でも、本気でやらないでよ?」

 

『分かってるわよ。"アレ"も使わないわ』

 

「いや、使ったらオーバーキルだから」

 

『冗談よ』

 

フランと個別チャットで会話する。

フランがこういう風に冗談とか言えるようになったのは嬉しい。

色々あるけど、この学園での生活がフランにいい影響を与えてる。

 

「それにしても、全然動かないね?」

 

『ホントね。それじゃあ・・・・・・』

 

「ああ・・・・・・」

 

「『行くよ!!』」

 

一瞬でアラタのLBX[ドットフェイサー]と距離を詰める。

光翼による推進で神速と見紛うほどだ。

メアが少しカスタマイズしたって言ってたけど・・・・・・

距離を詰め、コスモスオリジンの武装『ルミナスソード』の双剣の右の剣で斬り付ける。

ドットフェイサーは反応出来ずに攻撃を喰らい、背後の建物の壁にぶつかる。

ヒカルの[バル・スパロス]がアラタに手助けに入ろうとするが、

 

『させないわよ』

 

フランのアステリローザがバル・スパロスの行く手を遮り、装備してる細身の片手剣『ローズセイバー』でバル・スパロスとハルキの[オーヴェイン]を相手に大立ち回りを繰り広げる。

 

「さぁ、瀬名アラタ。ムラクを相手にしたキミの実力、見せてもらうよ!」

 

宣告するや、意識を集中させてドットフェイサーを攻撃する。

ドットフェイサーも反撃してくるが全く掠りもしない。

3次元をフルに利用し、縦横無尽に舞いドットフェイサーを攻めていく。

フランもバル・スパロスとオーヴェインを相手にしてもまだまだ余力がある。

フランは僕らの中で、僕と同等の実力の持ち主だ。

そして、フランは僕と同じ能力を持ってる。

これを知っているのは僕らとジンだけ。

それを抜きにしても、フランの操作スキルは高い。

ヒカルとハルキなど、制限を掛けていても相手にならないぐらいに。

 

「遅い」

 

MGS(マルチギミックサック)で武装を槍と盾にしてドットフェイサーが迫ってくるが、如何せん遅い。

ドットフェイサーのポテンシャルを考えればもっと速いはずだ。

なのに遅い。

理由はいくつかあるが、そのひとつはアラタがドットフェイサーを理解していない(・・・・・・・)ってことだ。

今のアラタはただドットフェイサーを操作しているだけ。

初心者が最強の機体を与えられて戦ってるのと同じ。

機体の事を理解していない。

まぁ、この学園でLBXを操作するのは基本的にコントロールポッドからだから仕方ないけど。

次々と僕の攻撃がヒットしていくのに対して、ドットフェイサーの攻撃は掠りすらもしない。

 

「・・・・・・こんなもんか」

 

正直に言って、ガッカリだ。

あのムラクにダメージを与え、仲間の協力があったとはいえ勝ったと言うのに。

これなら、ムラクの方がまだまだ強い。

ムラクは僕らがいなければ学園最強かもしれない程のポテンシャルを持ってる。

そして何より、ムラクは自身のLBX[ガウンタ・イゼルファー]の能力を十全に引き出してる。

今のアラタとは天と地ほど差がある。

 

「けど、まぁ。その諦めない姿勢だけは、評価しよう」

 

何度やられても立ち上がってくるドットフェイサー。

それだけでも賞賛を送ろう。

フランの方も、バル・スパロスもオーヴェインも瀕死の状況に対してアステリローザは全くの無傷。

それでも、諦めるという言葉が無いのか何度も立ち向かってくる。

 

「面白い・・・・・・!」

 

ニヤリと笑みを浮かべる。

そこに―――

 

『こちら第1小隊。ジェノック第3小隊の殲滅を完了。フラッグの制圧に向かう』

 

『コチラも終わりましたわ』

 

『俺さまの方も終わったぜ!』

 

『我々も完了だ』

 

カゲトラたちの報告に、もう?と思った。

どうやらみんなは僕が予想していたよりも強くなっているみたい。

クスッと微笑みフランへ。

 

「フラン、フラッグの制圧に向かって」

 

『わかったわ。後はよろしく』

 

「うん」

 

フランをフラッグに向かわせて、1対3。

僕対アラタ、ヒカル、ハルキの状況にする。

―――にしても。

 

「フラン、やり過ぎ・・・・・・」

 

バル・スパロスもオーヴェインもボロボロ、というか損傷がスゴい。

これは、今夜サクヤ徹夜かも・・・・・・うん、ゴメンね。

余程、今回のこととか腹に据えてたんだろうなぁ、フラン。

もしここにルナやメアもいたら3人ともロスト確実だろ。

 

「残ってるのはキミたちだけ。さぁ、ラストダンスを始めようか!」

 

地面に降り立ち、一気に接近する。

前衛をドットフェイサーとバル・スパロスが。後衛をオーヴェインが行う。

なら、まずはオーヴェインを―――

 

「ふふっ!」

 

武装を『ルミナスランス』と『ルミナスシールド』の槍盾にしてオーヴェインの砲撃を躱してオーヴェインを攻撃。

一撃でブレイクオーバーさせ。

 

「左右からの挟み撃ちか」

 

右からバル・スパロスが。左からドットフェイサーが迫り来る。

バル・スパロスの短剣(ダガー)とドットフェイサーの片手剣が同時に向かってくる。

バル・スパロスの短剣を『ルミナスソード』で、ドットフェイサーの片手剣を『ルミナスシールド』で受け止める。

そのまま滑らせるようにしてコスモスオリジンを後退させ、ドットフェイサーとバル・スパロスを同士討ちさせる。

そしてその隙を逃さず、『ルミナスランス』でバル・スパロスを突き飛ばしブレイクオーバーにする。

そのままドットフェイサーの背後に回り込み、武装を『ルミナスソード』の双剣にして斬り払い、こちらもブレイクオーバーにする。

ドットフェイサーがブレイクオーバーになるのと同時に、セカンドワールドのシステムアナウンスが流れた。

 

 

 

《―――拠点制圧完了。ジョウトシティの所有権は、ジェノックよりハーネスに移ります。戦闘を直ちに終了し、ジェノックの登録機体はジョウトシティの敷地内より退去してください》

 

 

「終わったか」

 

掛けていたバイザーを外し呟く。

 

「さてさて。ジェノックの連中はこの結果をどう受け止めるかな?」

 

セカンドワールドのアナウンスが今日のウォータイム終了を告げ、コントロールポッドの景色が緑の起動前に戻り、コントロールポッドが開く。

ポットから降り、ジェノックの連中を見る。

ジェノックは全員声に出ないほど呆然としていた。

 

「レイ」

 

フランが。

ルナやカゲトラたちが僕を見ていた。

僕はジェノックを一瞥し、

 

「行こう」

 

と告げた。

そのまま司令室へ向かう後をフランたちがついてくる。

司令室へ戻ると、日暮先生が珍しくいた。

 

「観てたんですか?」

 

「ああ」

 

椅子に掛けてあったコートを再び着て日暮先生に尋ねる。

 

「それで、観た感想は?」

 

「・・・・・・はぁー。やり過ぎだ、お前たち」

 

ため息を吐いて日暮先生が告げた。

 

『ご苦労だったなレイ』

 

横からジンさんが空間ウィンドウ越しで言ってくる。

 

「ジン。ジンから観て、今回の感想は?」

 

『日暮先生がさっき言った通りだと思うが?』

 

「それはつまり?」

 

『やり過ぎだ』

 

呆れたように僕らに向かって言うジン。

ジンと日暮先生に言われカゲトラたちは苦笑して僕を見る。

 

『ジェノックの心を完全にへし折る気か。いくら何でもジェノックに同情するぞ?』

 

「そう?これでも結構手は抜いてたけど・・・・・・」

 

本気でやればジェノック全員ロストしているし。

 

『あのなぁ・・・・・・』

 

「それに、彼らはみんなを舐めていた。それが一番の敗因なのはジンも分かるでしょ」

 

『それは、な』

 

はぁー、と肩を竦めて言うジン。

 

「それじゃあジン、僕は予定通り」

 

『ああ、分かった』

 

コンソールの上に置いてある仮面を取り、司令官席から降りる。

 

「レイ、どこに行くんだ?」

 

カゲトラの問いに僕は首を傾げ。

 

「んー、ジェノックのところ」

 

と言った。

 

「みんなはそのままそこにいて。ジンが話すから」

 

そう言って僕はハーネスの司令室を出てジェノックの司令室へと向かった。

耳にはインカムを着けて、ジェノックで行われてる会話を聴いている。

歩きながら仮面を被り、ジェノックの司令室へと歩く。

インカムからは美都先生の声とアラタたちの声が聞こえる。

少し歩き、目的地の場所にたどり着く。

ジェノックの司令室の扉のロックを解除し中に入り―――

 

「―――今回の模擬戦、キミたちはどう見えたかな?」

 

と、ジェノックへと訊ねた。

 

 

 

 

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