ダンボール戦機 英雄の弟   作:ソーナ

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ハーネスVSジェノック((ゼロ)

 

〜ジンside〜

 

数分前まで行われた我々ハーネス対ジェノックの模擬戦。

その様子を商店街にある遊技場から観ていたが・・・・・・

 

「やり過ぎにも程があるだろ・・・・・・」

 

さすがにジェノックに同情してしまうほど呆れていた。

機動力の高い第3小隊で、同じく[セイレーン]を使うジェノック第4小隊にぶつけさせ、第4小隊でジェノック第5小隊を孤立。

ジェノック第1小隊、第2小隊、第3小隊を、第4小隊と第5小隊から引き離させ、それぞれ第1小隊とルナはジェノック第3小隊を。第2小隊はジェノック第2小隊を。

そしてジェノック第1小隊をフランとレイが相手する。

良くもまぁ、ここまで相手にとって相性の悪い戦略を立てたものだ。

しかも、レイ自らが現地で指揮を執ってるため、動きも素早くいつも以上に全員俊敏に動いてる。

さすが、僕が来るまでハーネスで司令官をしていた事はある。

今は僕がハーネスの司令官。レイが副司令官だが、実際のところ逆だと僕は思ってる。

レイの弱点のひとつは自己意識が低いという事だ。

はっきり言って、レイは【天才】と言うより、才能に愛されてると思う。

無意識に仲間を引き寄せ、次々と輪に加えていく。

昔からレイのこの輪のお陰で助かった事が幾つもある。

本人は気付いてないようだが、僕からしてみればレイは"神の祝福を受けた申し子"みたいだ。

久しぶりにこの島で再会した時もその才は変わってなかった。

クラスメイトの中心に立ち、他のクラスの子にも人望が有る。

だが、その分僕はレイが心配になる。

いくら彼でも、歳はまだ僕より歳下。14にも満たない子供だ。

その子供がここまでの重圧に耐えられていること自体異常とも言えるが、レイは5年前のイノベーター事件の時からあちこち動いて、常に僕らの先を行っていた。

公安の捜査官と知り合いになってたり、オタクロスやハッカー軍団とも交流を持つ・・・・・・今にしても、有り得ないとしか言えないほどだ。

それから、『ジョウトシティ』をレイたちが余裕で制圧し、ジェノックは全員がブレイクオーバー。

ジェノックは完敗にも等しい敗北だ。

司令室へ戻ってくるなり、レイは珍しく司令室にいた日暮先生に観た感想を聞くが、日暮先生はため息を吐いて、やり過ぎだ、と告げた。

うん。どうやら日暮先生も僕と同じ感想のようだ。

続けて僕にも聞いてきたので日暮先生と同じ言葉を返す。

 

「やり過ぎだ。ジェノックの心を完全にへし折る気か。いくら何でもジェノックに同情するぞ?」

 

『そう?これでも結構手は抜いてたけど・・・・・・』

 

まぁ、確かに結構手は抜いていた気はするが・・・・・・

微妙な表情を浮かべざるを得ない。

 

「あのなぁ・・・・・・」

 

『それに、彼らはみんなを舐めていた。それが一番の敗因なのはジンも分かるでしょ』

 

「それは、な」

 

確かに、映像から見てもジェノックの大半はハーネスを甘く見ていた節がある。

甘く見ていたのが敗因。レイの言う通りなのだが・・・・・・

 

『それじゃあジン、僕は予定通り』

 

「ああ、分かった」

 

レイはそのままコンソールの上に置いてある例の仮面を取り、司令官席から降りた。

 

『レイ、どこに行くんだ?』

 

『んー、ジェノックのところ』

 

カゲトラの質問にそう言うとレイは。

 

『みんなはそのままそこにいて。ジンが話すから』

 

と告げてハーネスの司令室から出ていった。

 

「はぁー・・・・・・」

 

何故か分からないがため息が出てしまう。

 

「改めて、諸君模擬戦ご苦労だった」

 

『ありがとうございます』

 

「模擬戦での評価だが・・・・・・あー・・・・・・・・」

 

なんて言ったらいいのか迷う。

 

「まず、やり過ぎだ。いや、レイに言われたからってのは分かるのだが・・・・・・」

 

あの一方的な戦闘を観て歯切れが悪くなる。

いくら、ジェノックのプライドをへし折るって言ってもだなぁ・・・・・・!限度があるだろ!?

レイへツッコまずにはいられない。

そのままカゲトラたちに模擬戦についての話をしていたのだが―――

 

『ジン』

 

急にレイが通信で出てきた。

レイが出てきたということは、ジェノックの司令室へ入ったという事だ。

僕も通信チャンネルを合わせジェノックへ面通しをする。

 

『キミたちが今回負けた敗因、それがなんなのか解る?』

 

うわぁー。レイ、さらにジェノックへ畳み掛ける気だな。

いや、まぁ、ジェノックがこれまでレイへ掛けてきた迷惑の対価としたら安いほうか。

遠い目をして僕は、僕たちの弟分の話す姿を観るのだった。

 

〜ジンside out〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜キヨカside〜

 

 

予想通りの結果と成り、クラスメイトであるみんなへ呆れながらウォータイム後のブリーフィングを行うため司令室へ向かう。

他のみんなは元気もなく、静かに歩いている。

まぁ、当然ね。

だって一方的に。まともな戦闘すらなく敗北。完膚なきまでに負けたんだから。

あの煩いアラタも静かに、神妙な表情をしている。

全員、全く歯が立たなかったのだ。意気消沈するのも無理はない。

ま、まあ、レイのアレはやり過ぎかも〜、とは思ったけど。少しだけ。

そのまま司令室へ着くと。

 

「戻ったわね」

 

特に変わることなく美都先生が私たちに言う。

 

「それで、何か言いたいことはあるかしら?」

 

美都先生の視線がユノやアラタたちに降り注ぐ。

 

「いえ・・・・・・」

 

「なにも・・・・・・ありません・・・・・・」

 

美都先生はそのままアラタたちを見渡し、ため息を吐く。

 

「これで判ったかしら?小国だと嘗めていたハーネスに一方的にやられて、完全敗北」

 

美都先生の言葉に誰も反論できない。

 

「貴方たちは山野レイ、彼さえどうにか出来れば他は楽だと思ったのでしょうけど、違ったようね」

 

美都先生の容赦ない言葉。

そこに、

 

「―――今回の模擬戦、キミたちはどう見えたかな?」

 

施錠していた扉が開き、一人の人物が入ってきた。

仮面を被り、黒いロングコートを着て裾をたなびかせてる。

 

「誰だいキミ?」

 

「ここはジェノックの司令室よ。部外者は今すぐ立ち去りなさい!」

 

カイトとキャサリンが敵意を露わにして言う。

 

「お、お前は・・・・・・!」

 

「ゼロ!?」

 

「え、ゼロって、ハーネスのもう一人の司令官!?」

 

アラタ、ヒカル、ユノの会話で室内にどよめきが起こる。

その人物は私のよく知っている人で、大切で、大好きな人だ。

入ってきた人―――いや、レイがジェノックの司令室の中に入りクラスメイトに問うた。

 

〜キヨカside out〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜レイside〜

 

 

「―――今回の模擬戦、キミたちはどう見えたかな?」

 

ジェノックの司令室へ入りジェノックへ質問する。

 

「誰だいキミ?」

 

「ここはジェノックの司令室よ。部外者は今すぐ立ち去りなさい!」

 

風陣カイトとキャサリンは僕に向かって強い口調で言ってくる。

2人に釣られて他の人も同じように見てくるが、

 

「お、お前は・・・・・・!」

 

「ゼロ!?」

 

アラタとヒカルが目を見開いて言った。

 

「え、ゼロって、ハーネスのもう一人の司令官!?」

 

ユノの言葉でみんな言葉を終いだ。

 

「改めて聞くけど、今回の模擬戦。僕らに負けた感想は?どう見えた?」

 

アラタたちを無視してそのまま美都先生のいる司令官席へと歩を進める。

歩を進めながら改めて訪ねる。

 

「ねぇ、答えてよ。さっきまで威勢の良かった風陣カイト。キャサリン・ルース」

 

冷たい瞳で仮面越しに2人に問う。

 

「そ。それは・・・・・・」

 

「ど、どう見えたって聞かれても・・・・・・」

 

2人共口を淀して答えない。

 

「答えないんじゃなくて、答えられないんでしょ?何も出来ずにやられたんだから」

 

バカにするように言う。

だが、事実のため反論も出来ない。

 

「随分とやってくれたわね」

 

「言ったはずですよ。本気で叩き潰すって」

 

美都先生の苦言に肩を竦めて言い返す。

 

「ゼロ、お前は一体誰なんだ!なんで俺たちにあんな事を!!」

 

アラタが階下から詰め寄って聞いてくる。

 

「アラタ。君はその行動がどれだけ周りに迷惑が掛かってるか理解しているか?」

 

「っ!」

 

「僕を探す際ももうだ。スワローで極秘任務をいきなりバラす。極秘任務の意味をもう一度調べたら?」

 

段々と視線が冷たくなっていく。

 

「でも、まぁ、僕相手に粘ったご褒美として教えてあげるよ」

 

「ご、ご褒美だと?それに一体何を言っている」

 

「ゼロの正体、それは―――」

 

仮面を掴みゆっくりと外す。

 

「っ!?」

 

他のみんなも(キヨカ以外)驚愕に目を見開いて息をするのも忘れてる。

仮面を外し、素顔をさらけ出す。

 

「僕だよ」

 

口をパクパクと魚のような真似をするアラタ。

ふふ。面白い。

他のみんな。キヨカ以外そんな感じだし。

いや、もう一人。ゲンドウだけはやはりか、って感じだ。

 

「現ハーネスの副司令ゼロ。その正体はハーネス所属の僕、山野レイだ」

 

コートの前ボタンを外し、ハーネスの紫の制服を露わにする。

僕の宣告に沈黙が走る。

少しの後―――

 

「あ、ありえないでしょ!?生徒が司令官なんて!」

 

キャサリンが声を荒らげて言う。

いや、まぁ、普通そうだよねぇ〜。

 

「デタラメなこと言うな。キミが司令官だと?有り得ないね」

 

風陣カイトは何を言ってるんだとでも言いそうだ。

 

「なら、その有り得ないと思う根拠はなに風陣カイト?」

 

「当然だ。例えキミが学園最強だとしても、普通学生が一国の司令官を務められるなんて有り得ない!デタラメにも程がある」

 

風陣カイトの言葉に同調するように周囲のジェノックの連中も、確かに、そうだよね、とか言っている。

てか、風陣カイト・・・・・・言葉には気をつけた方がいいよ?だって―――

 

「(チラッ)」

 

視線をチラッとキヨカに向ける。

キヨカは案の定、ポーカーフェイスをギリギリ保ちながら、鋭い目線で風陣カイトを観ていた。ていうか、今にも殴り掛かりそうだし!

キヨカにハラハラしながら会話を続ける。

 

「なら、僕が言っていることがデタラメかどうか、美都先生に聞いてみようじゃないか」

 

「なに?」

 

「なんですって?」

 

僕はそのまま美都先生に尋ねる。

 

「美都先生、僕が言ったことは全て、デタラメですか?」

 

美都先生は静かに自分のクラスを観て、小さくため息を吐く。

 

「デタラメじゃないわ。本当のことよ」

 

「「「「「っ!!?」」」」」

 

美都先生の宣告に面白いように衝撃が走ってる。

 

「で、では、本当に彼が・・・・・・山野レイがハーネスの司令官のひとり、ゼロなんですか?」

 

ハルキが恐る恐る聞いてくる。

 

「ええ」

 

ハルキの問いを肯定する美都先生。

 

「彼はこの学園に入学後、入学約3カ月でハーネスの司令官の地位に着きました。以後、コードネーム"ゼロ"としてハーネスを率いています」

 

「さ、3ヶ月!?」

 

いや、うん。いつの間にか取得してたんだけど、これ多分だけど長官か大統領が工作したと思うんだよなぁ。

だって早すぎるもん。

 

「美都先生、喋り過ぎ」

 

それは言う必要ないと思うんだけどなぁ。

 

「貴方を彼らに納得してもらうためには話した方がいいでしょう?」

 

「まぁ、確かに」

 

肩を竦め美都先生に同意する。

 

「それで、美都先生が話してもまだ、僕がゼロだと信じない?」

 

「「「「「・・・・・・・・・・っ」」」」」

 

僕の問いに沈黙を持って答える。

 

「さて、話を戻そう。アラタ、なんで俺たちにあんな事を!!って聞いたよね」

 

「あ、ああ」

 

驚きがまだ治まってないのか、動揺を隠せないまま返す。

 

「なら、教えてあげる。―――おまえ達のその下らないプライドをへし折るためだ」

 

口調を変え、視線を絶対零度の如く冷たい眼差しにして告げる。

 

「おまえ達は僕らハーネスの事を舐め過ぎだよ。ハーネスは僕がいなければ弱小国だと思ってたようだけど・・・・・・くっ、ふふふっ!!ハッハッは!!!・・・・・・甘いよ」

 

笑いながら告げる。

 

「ハーネスは僕が率いてる国だよ?弱いわけないでしょうが」

 

「で、でも実際そうだったじゃない!!」

 

キャサリンが震える声を上げて言う。

実際そうだった、か。確かに、そうだった、ね。

でも―――

 

「それは何時の話?」

 

「それは・・・・・・」

 

新型機が導入された今となっては、以前よりも遥かに。数倍以上強くなってる。

 

「ジン」

 

僕が呼ぶと、隣の空間にウィンドウが現れそこにジンが映る。

 

「キミたちが今回負けた原因、それがなんなのか解る?」

 

ここから先はハーネス、ジェノック合同で話す。

 

「美都先生。美都先生から観て、今回のジェノックの動きはどうでした?」

 

視線をジェノックに向けながら美都先生に尋ねる。

 

「そうね。まず、第4小隊はハーネスの策にまんまと乗せられていたわね」

 

「「「っ!」」」

 

「第5小隊も言わずがな、他の小隊もハーネス。いえ、貴方の掌の上で踊らされていたのでしょう?」

 

「ええ。もう少し張合いがあるかと思ったんですけど」

 

事実、あそこまで簡単に戦術にハマるとは予想外だった。

念のために計画(プラン)をいくつも立てていたんだけど、まさかメインで終わるとは。

 

「そして、ハーネスの最新の戦力を貴方たちが認識していなかったこと」

 

さすが美都先生。

その辺も理解していたか。

 

「っ!ちょっと待てよ?」

 

唐突にアラタが声を出して止めてきた。

 

「ん?」

 

「いや、まさか、今回のウォータイム、全部お前が・・・・・・」

 

「あ、やっと判ったんだ」

 

どうやら、今回のウォータイムでの動きは全て僕が指示していた事にようやく気づきたみたい。

遅。

 

「今回のウォータイムで作戦指揮を執っていたのは僕。キミたちの動きを予測して動いていたけど・・・・・・まさかああも簡単になるとは」

 

やれやれだった。

 

「今回のウォータイムで評価に値するプレイヤーは、ユノ、ゲンドウ、タイガ、セイリュウ、ハルキ、ヒカル。そしてアラタ、キミだ。他は正直ガッカリ」

 

ジェノック全体がここまで低いとはなぁ。

 

「が、ガッカリだと?」

 

「うん。ガッカリ。特に、隊長であるキミとキャサリンにはね」

 

風陣カイトに半目で告げる。

 

「はぁ!?なんで私もなのよ!」

 

「『そんなの無視よ!どうせレイたち以外強くないんでしょうし。私たちの相手じゃないわ』。『レイさえ撃破してしまえばハーネスは総崩れする。なら、第一目標はレイの撃破だ。キミのワガママに付き合うどおりは無い!』、だっけ」

 

「「なっ!?」」

 

キヨカから聞いた二人の会話をそのまんま返す。

 

「本来、隊長というのは部下より思慮深くなければならない。なのに、キミたちのこの会話は、自分たちへの慢心からでている」

 

「な、なんでアンタがその会話のこと知ってるのよ!」

 

「お、落ち着いてよキャサリン」

 

「落ち着きなって!」

 

キャサリンが声を荒らげて聞いてくるが無視。

ハナコとユノが宥めようとするけど全く効果なし。

あー、ヤバい。これ少し楽しくなってきた。

 

「アラタ、キミはこのジェノックで自分が一番強いと思ってるでしょ?」

 

「ああ!」

 

僕の言葉にアラタは何を当然、と言うふうに返す。

 

「残念だけど、このクラスで一番強いのはキミじゃない。もちろん、ヒカルやハルキでもない」

 

そのまま視線を彼女に向けて言う。

 

「ね、―――キヨカ」

 

「ええ、そうね」

 

僕の言葉に何時ものように答える。

 

「き、キヨカ?」

 

ジェノック全員の視線がキヨカへと集まる。

 

「レイ、もういいの?」

 

「うん」

 

「そう。分かったわ」

 

何時も通り返すキヨカ。

そこに。

 

「ど、どういうことだ?なんでキヨカがレイと・・・・・・」

 

「まさか、レイと繋がっていた・・・・・・」

 

「僕らを裏切っていた、ということかい?」

 

「ちょっとキヨカ!どういう事か説明しなさい!」

 

あちこちからキヨカへの戸惑いと疑いの声が上がる。

 

「ヒカル、【箱の中の魔女】の異名を持つプレイヤーを知っている?」

 

「【箱の中の魔女】だと?」

 

唐突に質問されたヒカルは思い返すように、同じ言葉を呟く。

やがてヒカルはバッと表を上げ。

 

「っ!お、思い出した!仙道キヨカ【箱の中の魔女】、キミのチームメイトか!いやそれだけじゃない、【ミゼル事変の英雄】の一人!」

 

信じられない物を見たとでも言うような表情を浮かべた。

 

「【ミゼル事変の英雄】・・・・・・キヨカが・・・・・・?」

 

「それに、【箱の中の魔女】って言ったら、トップクラスのプレイヤーじゃない・・・・・・!!」

 

「うそ・・・・・・」

 

自分のクラスメイトにしてチームメイトのまさかの真相に驚きやも戸惑いを隠せないユノ、キャサリン、ハナコ。

 

「ちょっと待てよ!【箱の中の魔女】ってプレイヤーだろ?なんでこの学園でメカニックをしてるんだよ!?」

 

アラタが割り込み聞いてくる。

それに答えたのは僕ではなく―――

 

「私は基本的にはメカニックの方が向いてるの。だからこの学園でメカニックの方を選んだ。それが理由」

 

キヨカが淡々と答える。

メカニックとプレイヤー。得意の方がどちらかと言えば、キヨカはメカニックの方が得意だ。

まぁ、だからと言って―――

 

「プレイヤーとしてのレベルが低いわけないからね。むしろ、キヨカのスキルは僕らと同等」

 

である。

 

「つまり、キヨカは俺たち全員を相手にしても余裕があるという事か?」

 

「正解」

 

ハルキの確認に僕はニッコリと笑って返す。

 

「それと、キヨカは別に裏切ってる訳じゃないよ。キヨカの役目はキミたちの監視とサポートだからね」

 

「監視とサポートだと?どういうことだ、レイ」

 

珍しくゲンドウが聞いてくる。

 

「監視はそのままの意味。サポートは昨日のようなことのだね。あとは、僕とジェノックへの橋渡しさ」

 

「つまり、俺たちの情報はすべて筒抜けだったということか」

 

「んー、それは半分正解」

 

「半分だと?」

 

「うん。だって、ほとんど予測していたから」

 

予測というより、推測に近い。

もし自分がジェノックの立場だったらどう動くのか思考し考察し、実行する。

 

「・・・・・・相変わらずお前の頭の構造はどうなってるんだ?」

 

僕の言葉に呆れてモノが言えないように返すゲンドウ。

 

「いや、そう言われても・・・・・・」

 

ゲンドウにそう言われても僕は苦笑して返すしかない。

だって僕自身わかんないし。

これだって過去にあんなことがあったから身につけられたと思うし(多分)

 

「あ、ゲンドウ、ゴメンね昨日は」

 

「構わん。お前にはお前の事情があったわけだし、俺としても不用意に聞いてすまなかった」

 

相変わらずゲンドウって器が出来てるよねぇ〜

財閥の御曹司とはいえ、この年齢でここまでの貫禄を身に付けられるのは只者じゃないよ。

さすがだ。

 

「さて、話を元に・・・・・・「まだ話は終わってない」・・・・・・なに風陣カイト?」

 

話を元に戻そうとしたら風陣カイトが割り込んできた。

 

「彼女がキミの仲間なのは分かった。だが、裏切っていたには違いないだろう」

 

まだ、言うか。

風陣カイトの頭の悪さは僕の予想を超えていた。

 

「ジェノックの情報を漏洩したことに変わりはない」

 

「だったら?」

 

「なに?」

 

「情報漏洩をしていたって言うなら、アラタもそうだし、美都先生もそれに当てはまるよね?」

 

「それは・・・・・・っ!」

 

美都先生はともかく、アラタに関しては完全に問題だと思うけどね。

 

「それでもまだ何か言う?」

 

視線を風陣カイトに合わせると、風陣カイトは怯えたように後ろに下がり。

 

「っの、化け物め・・・・・・」

 

「っ!」

 

 

 パシンっ!!

 

 

一瞬で移動したキヨカが思い切り風陣カイトに向かって右手で平手打ちをかました。

 

「っ、キヨカ!」

 

キヨカの予期してない行動に驚きながら慌てて下に降りる。

 

「き、キヨカ・・・・・・?!」

 

ユノもキャサリンもハナコも。

ジェノックの全員がキヨカのその行動に驚愕していた。

なんなら、美都先生も同様で、通信先にいるジンもだ。

 

「なにをするんだ!」

 

「誰が・・・・・・化け物・・・・・・ですって・・・・・・!」

 

プルプルと震えて長い前髪で顔を隠して言うキヨカ。

 

「カイト、貴方今レイの事なんて言ったの?」

 

「そ、それは・・・・・・!」

 

「化け物って言ったわよね。どこの、誰が、化け物なのかしら」

 

キヨカの言動からマジでヤバいと感じ取り急いでキヨカの動きを止める。

 

「待てキヨカ!!」

 

少し強い口調で言いキヨカの振り上げた右手を押さえる。

 

「離してレイ」

 

「離さない!少し落ち着け!僕は平気だから!!」

 

「レイが平気でも私は平気じゃないの。一度痛い目に合わせないと気が済まないわ」

 

「ストップ!ストーップ!!」

 

グッ、と振り払おうとしてきた手をさらに強く握り押さえる。

 

「・・・・・・・・・・分かったわ」

 

やがて、ふぅと息を吐き落ち着きを取り戻したキヨカは力を弱め振り上げていた手を下ろした。

危ない危ない。

キヨカがここまで怒るなんて・・・・・・

キヨカのストレス値を思いっ切り見誤ってたよ。

いや、待って、キヨカがここまでということは・・・・・・・・・・

イヤーな予感が頭を過る。

 

「ジン!メアたちをその場から出さないで!!」

 

キヨカがこれなら、これを聞いているメアたちも聞いているわけで・・・・・・

ジンに指示を出すまでの間、約1秒。

 

『も、もうやってる!落ち着けメア、フラン、ルナ!!』

 

ジンが慌てたように返し、案の定メアたちが暴れてるらしい。

 

『お、落ち着け3人とも!』

 

『落ち着くんやメア!ルナとフランも落ち着き!!』

 

『れ、レイ!こっち帰ってきて3人を収めて!!』

 

『やべぇ!いつも以上に手がつけられねぇ!』

 

『落ち着きなさいまし3人とも!!レイが平気だと仰ってましたわよ!!?』

 

『すまないがレイ、至急こっちに帰ってきてくれ!!』

 

『へ、ヘルプミー!です!!』

 

声だけだがマジでヤバい状況なのが分かる。

で、メア達はと言うと―――

 

『離してみんな!レーくんを化け物呼ばわりした人にはO★HA★NA★SHI★するの!!』

 

『大丈夫。一度キツーいO★HA★NA★SHI★するだけだから』

 

『私は冷静よ。ええ、冷静だから離して』

 

うん。ぜんっ!ぜんっ!冷静じゃねぇーー!!!

 

「え、ぁ、もう!!なんでこうなるのよぉーー!!!」

 

頭が痛い。

キヨカをこのままここに置いておくと絶対風陣カイトにまた張り手をやりかねないし!

 

「美都先生!ちょっと失礼します!!」

 

「え、えぇ」

 

「ユノ!ハルキ!キヨカをお願い!」

 

「え、え!?」

 

「は、はい!?」

 

キヨカの事をユノとハルキに任せ、一度ハーネスの司令室へ戻る。

戻ると案の定メアたちをオトヒメたち女子勢が中心に押さえていた姿があった。

それを見るなりため息を吐いて、

 

「もう!3人とも落ち着いてぇ!!」

 

と声を上げたのだった。

うん、これで大丈夫なのかなぁ・・・・・・・

不安になりかねない日々はまだ始まったばかりなのだが・・・・・・

 

 

 

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