〜レイside〜
ユノとゲンドウにこの学園の真実を話した後、僕は一人でテラスのベンチに座っていた。
すでにこの場には僕一人。
キヨカはユノとゲンドウと一緒にダック荘に戻ってる。
ベンチに座る僕に海からの風が吹き渡る。
視線の先には、本土の夜景。街明かりが遠目から視える。
テラスを照らすのは街灯がひとつだけ。
そのため、本土の灯りや空に輝く夜空の星々がよく見える。
都会と違い、明かりが少ないからこそ視える光景だ。
《それにしても、あの事あの二人に言ってよかったの?》
僕以外誰もいないテラスに声が響く。
「あの二人になら問題ないよ」
僕は何ともないように答える。
この声が聞こえているのは僕だけ。たとえ他の人がいても他の人には聞こえない。
《まぁ、貴方がそれでいいなら、私はそれに準じるわ》
「ありがとう」
静かに返す僕に彼女はクスッと小さく笑った。
それと同時に隣に誰かが座るような気配が生まれた。
もちろん、隣には誰もいない。
《綺麗ね。ここからの景色》
「うん。この神威島に来て良かったって思うひとつが、この風景だよ。灯りが少ないから星も見えるし」
《そうね》
そのままテラスで彼女と会話をし―――
翌日。
「見て、山野くんよ」
「何時見てもかっこ可愛いわ〜」
「それに聞いた?彼、ハーネスの司令官らしいわよ」
「嘘!?学生が司令官になれるの!?」
「見ろよ、山野レイだ」
「学園最強なだけじゃなく、一国の司令官もって・・・・・・チーターかよ」
「止めておけ。俺たちじゃアイツには勝てない」
「にしても、本当アイツ俺たちと同じ学生かよ?」
「ていうか、あの3人に囲まれてる時点で羨ましいんだけど」
通学の最中や学園に来てからもあちこちで僕の話が絶えてない。
あちこちで聞こえるその話はスルーしたくても耳に入ってくる。
羨望や憧れ、嫉妬、妬み・・・・・・など、様々な感情が向けられる。
もっとも、アルテミスとかの大会でこういう視線は慣れてるけど。
「うわぁ〜、早いねぇ〜。情報が回るのって」
「そうね。レイがハーネスの副司令ってのは今日公開されたばかりなのだけど」
「学園からの通達で回ってるみたい」
一緒に登校しているメア、フラン、ルナが言う。
ちなみにキヨカはすでに学園に向かってる。
「へぇ」
対する僕はそれほど関心がないのでいつも通りに返す。
「へぇ、って・・・・・・」
「レーくんは相変わらずだなぁ〜」
やれやれと肩を竦めて呆れるメア。
相変わらずだって言われてもなぁ・・・・・・
「それで、今日のミッションの
「一応ね」
フランからの問いに苦笑して答える。
決めてはあるが、何が起こるのか分からないのがセカンドワールドのウォータイム。
ハーネスのみなら幾つにでも計画案が立てられるが、今回はジェノックとの混成軍。
イレギュラーが起こり得る可能性も捨て切れない。
「それに、アラタたちが今日話すだろうね」
昨日話すなと言い、話してない以上、今日話す可能性は大。
それを聞いてアラタたちとユノ、ゲンドウ以外が。
いや、より正確にはキヨカとユノ、ゲンドウ以外のジェノックがこれから戦えるかが分からない。
「レイとしてはどう視えるの?」
「さぁ」
ルナの質問に首を横に振って返す。
正直言って、彼らが真実を知ってどう動くのか判らない。
「ところでなんだけど・・・・・・」
「ん?」
「なに?」
「どうしたの?」
「なんでルナとフランは僕の腕を掴んでるのかな?」
そう。
左をルナが。右をフランが掴んでいて少し動きにくい。
メアはいつものにこやかな表情だし。
「他の人からの色仕掛け対策?」
「なんで疑問形なの・・・・・・」
ルナの言葉に微妙な表情を浮かべる。
てか、色仕掛け対策ってなに・・・・・・
掴むのはいいんだけど、距離が近いから服越しとはいえ二人の感触が伝わってくる。
「まぁ、いいけど、ね」
苦笑しながら奇異の視線や好奇の目で見られながら学園に登校した。
学園では着くなり、これまたいろんな人から見られクラスへ向かう。
クラスに入ると―――
「相も変わらず重徳登校だな」
「まぁ、いつもの事やし」
「あはは。昨日は昨日で大変だったけどね」
入るなり、カゲトラ、スズネ、タケルの3人に言われた。
「ふふーん♪」
「メアさん、さすがにそこは胸を張るところでは無いのですが・・・・・・」
アラアラ、と右手を頬に添えて言うシズカ。
「まったく。ジェノックは恐れ知らずすぎますわ!私たちがどれだけ大変でしたか・・・・・・!!」
「うん。ゴメンねオトヒメ」
憤るオトヒメに謝る僕。
いや、昨日はホント迷惑かけたよ。
「レイが謝ることではありませんわ。メアたちの気持ちは私たちにとってもよく分かりますし」
オトヒメの言葉にハーネスの女子全員が頷く。
うぅーむ・・・・・・女子には女子にしか解らないものがあるのだろうか
「レイ、今日の混成軍。どのような配置で行くつもりだ?」
「一応、各仮想国ごとで行く。具体的な作戦内容はウォータイム前のブリーフィングで伝える」
「了解した」
「タケル。ジョニー。フウ。コヨミ。それぞれのLBXの修理は問題ない?」
「大丈夫」
「オールオッケーデース!」
「いけるよ」
「問題ないよ〜」
各小隊のメカニックに尋ねるとそれぞれ返事を返す。
「よし」
4人の返事に頷き、席に鞄を置く。
「みんな、改めて言うけど、僕らハーネスは今日から正式にジェノックと同盟を組む。でも、別に何かが変わるということは無い。ジェノックのプレイヤーから学べる事があるなら、学んで盗め。そして、それを自分のチカラに変えろ。君たちは僕が認める、最高のプレイヤーとメカニックなんだから」
「「「「おう!!」」」」
「「「「ええ!!」」」」
「「「「はいっ!!」」」」
「さぁ、僕らの戦いを始めようか・・・・・・!!」
チャイムと同時に宣告する。
みんな、僕の目的のために手を貸してくれてる。
なら、その期待は裏切れない。
その事を胸に刻み、席に着いてホームルームを受けた。
数時間後。いつも通り午後の授業が終わり、ウォータイムが始まる。
ウォータイム前のブリーフィングをジェノックと合同で行いたいのだが・・・・・・
「あー、やっぱりか」
一応午後の授業終わりからウォータイムが始まるまで一時間近く時間があるけど。
「仕方ない・・・・・・・・・・ん?」
端末に着信を知らせるサウンドが小さく響き端末を見る。
端末にはキヨカからの着信が届いていた。
通話をONにして耳に当てる。
端末から聞こえてきた声はキヨカではなく、ハルキのものだった。
話の内容からどうやらジェノック全体にセカンドワールドの真実を話してるようだ。
「はぁ・・・・・・仕方ない・・・・・・ジン、今回の作戦の概要と詳細を話しといて」
「了解した」
遊技場ではなく、今この場にいるジンに話して僕はハーネスの司令室を出てジェノックの教室。2年5組へと向かう。
あ、ちなみに司令官時の黒衣のコートを着ている。
耳にインカムを付けて端末とリンクして、端末から聞こえるジェノック内での会話を聴きながら歩く。
美都先生の戦争についての話しは以前僕がカゲトラたちにしたのとほとんど同じ。
そのあとの、ロイ・チェンの実体験については結構驚いた。
確かに、セカンドワールドのお陰で戦争は無くなったかもしれない。けど、それが正解かどうかは・・・・・・
以前NICSから送られてきた資料に目を通した際、旧イグアニア国についても読んだ。
そのまま歩いていると、インカム越しにロイ・チェンの東郷義一からの伝言が耳に入った。
「は?」
それを聞いた僕は思わず、は?と声に出した。
僕らに協力を要請??何、ふざけてんの?
そう思わざるを得ない。
そんな気持ちを抱きながら2年5組の扉の取手に手を掛け、2年5組の中へと入る。
「パラサイトキーが入っているから、でしょ?」
と、ロイ・チェンの言葉を遮り、引き継ぐように告げて。
キヨカを除く全員の驚きの視線が集まる。
「なっ!?れ、レイ!?」
「やっほー、ハルキ。遅いから迎えに来た」
右手を軽く振ってハルキに挨拶し、扉を閉めて告げる。
「それで、東郷リクヤのLBXにパラサイトキーが入っているからジェノック全体どころか、僕らにも協力を要請・・・・・・だっけ?」
視線をロイ・チェンと篠目アカネに向ける。
ビクっとした二人は少し怯えながら頷く。
「ま、待ちなさい!パラサイトキーですって!?それがリクヤのLBXの中に入っているって言うの!?」
美都先生が目を見開き驚愕の表情で言う。
「はい」
美都先生の言葉にロイ・チェンが肯定する。
「美都先生?」
美都先生の驚き様にキャサリンが首を傾げる。
「美都先生、パラサイトキーってなんなんです?」
キャサリンの問いに美都先生は少し躊躇したのち、溜め息を吐き。
「生徒には秘密にされていることよ。それを十分に理解したつもりで聞いて。―――"パラサイトキー"とは、セカンドワールドのシステムを管理する場所。通称、"ロストエリア"と呼ばれる場所に入るために必要なプログラムキーの事よ。鍵は3つ存在し、セカンドワールドで稼働するLBXのどれかに入ってると言われてる。ロストエリアに入るためには、3つ全てを揃え、"グランドマスターキー"にしなければならない」
「なんで、そんなモンがリクヤのLBXに入っているんだ?」
まぁ、アラタの疑問はもっともだろうね。
「全てはセカンドワールドを守るために父が計画したものです。私はこの学園に入学する時にこう言われました。―――"パラサイトキーがあれば、セカンドワールドのシステムをコントロールし世界情勢を思うがままにコントロールすることが出来る。そんなことは絶対にあってはならない。リクヤ、お前に私が管理している3つの内の1つを託す。必ず守るのだ"と。それなのに、なんで今更・・・・・・?!」
葛藤する東郷リクヤ。
なるほどね。そういう事か、やっぱり。
東郷リクヤの言葉を聞き全ての辻褄が合わさった。
「つまり、バンデットはそのパラサイトキーを集めて、現実世界を操ろうとしているのか?!」
「そうなるわね」
「あの左手の攻撃はプログラムスキャンをするため・・・・・・」
「鹵獲しようとした機体が自爆したのも、それを悟らせないようにするためか・・・・・・」
サクヤとハルキの言葉に僕も同意見だった。
だが、本当にバンデットが現実世界を操ろうとしているのかは疑問だ。
「でも、変ね」
「え?」
「パラサイトキーには、ある特殊な性質がある。それは、パラサイトキーが入っているLBXが完全破壊されそうになると、その直前に別のLBXに移動してしまうこと」
そう。パラサイトキーはその名の、
しかも取り憑かれた当人は取り憑かれていることにすら気づかない。
「ええ。バンデットがパラサイトキーを狙っているのならこれまでの行動は・・・・・・」
「その事を知らないのでは?」
ハルキの言葉に僕はどうだろうか?と思った。
これまでやってきたのなら恐らく知らないはずはないのだが。
だが、それより―――
「あのクソ野郎、自分の息子まで利用するか」
「「「っ!!?」」」
僕のボソッと呟いた一言に全員が驚く。
自分の身では護れないからと、息子の東郷リクヤに鍵を預けた。
その事に腹が立っている。
「レイ、何故貴方はリクヤのLBXにパラサイトキーが入っている事を知っているの?」
美都先生が何故?と聞いてくる。
「逆に美都先生は疑問に思わなかったんですか?こうも第3小隊のプレイヤーがすぐに変わることに」
美都先生に逆に何故疑問に思わなかった?と聞き返す。
司令官にして担任なら普通疑問に思うけど?
「それは・・・・・・」
微妙な表情を浮かべる美都先生。
まぁ、それはどうでもいい。
「で、僕がなんで東郷リクヤのLBXにパラサイトキーが入っているか?だっけ?」
アラタたちの視線が僕に集中する。
「理由は簡単。調べたから。いや、正確には、第3小隊を調べた際に偶然予測したって所かな?まさか、本当にパラサイトキーが入ってるとはね」
「調べたって・・・・・・どうやって調べたんだよ」
「色々だよ」
アラタの質問に素っ気なく返し。
「第3小隊のプレイヤーのロスト率は異常だ。それを調べた時、その背後に東郷義一が絡んでる事が判った。ここまで介入しているという事は東郷リクヤに何らかの秘密が隠されてる事が解る。そして、東郷義一はこのセカンドワールドというシステムを作り上げたひとり。つまり、パラサイトキーを保有している可能性は大。ということは、そのパラサイトキーが東郷リクヤのLBXに隠されてる可能性が捨てきれない」
と言う。
「それで、僕らの協力を要請って言うけどさ、それは僕らが何処から来てるのか。それを知って言っているわけ?」
ギロっと鋭く睨みつける。
「は、はい」
「もちろん、し、知っています!」
ロイ・チェンと篠目アカネがビクつきながら言う。
「ん?どういう意味だレイ?」
「・・・・・・・・・・はぁ。これから話す事は絶対に他言無用。特にアラタ!」
「お、俺!?」
なんで!?って顔してるけど当たり前でしょ。
アラタ口軽いし。
極秘任務の事を大勢の人がいる場所で話すし。
ハルキの疑問に僕は溜め息を吐く。
あの野郎。ホント余計なことしかしない・・・・・・!!
「僕らはある人から依頼されて、この学園を調査するために派遣されて来た」
「ある人?」
「僕らを派遣したのは、ネオ・インターナショナル・コズミック・セクション。通称、NICS。A国にある次世代国際宇宙局だ」
「「「「「「っ!!?」」」」」」
僕の告げた言葉にキヨカとユノ。ゲンドウにロイ・チェン、篠目アカネ以外の全員が驚愕の表情を浮かべる。
「A国?!」
「つか、NICSってなんだ?」
だが、アラタやキャサリンといった一部は驚きながらも疑問符を出してる。
「NICSはA国にある政府施設。世界中にあるトップクラスの高性能コンピューターは軍事利用を避けるため、すべてがNICSの管理下に置かれる。4年前のディテクター事件の際、僕らはNICSを活動拠点として動いていた」
僕の語りに全員固唾を呑む。
あ、キヨカは別だけど。
「そして、僕らに依頼したのはA国大統領、クラウディア・レネトン。依頼内容は、この神威島とセカンドワールドの実態調査」
「だ、大統領からの依頼・・・・・・!?」
「嘘・・・・・・」
「なんだと・・・・・・」
はぁ〜。
ホントはユノとゲンドウ以外のジェノックの面々には話すつもり無かったのに。
驚きで声が出ないアラタたちを見て内心溜め息を吐き出す。
あの野郎のせいで話すことになった。
しかもどういうつもりなんだあの野郎?
都合がいいにも程がありすぎる!!
「わかった?僕らに協力を要請するということは、僕らを派遣したNICSや依頼した大統領に手を貸してくれと言っているようなもの」
怒気を含ませて告げる。
その間にキヨカが僕の側に歩み寄り、僕の隣に立つ。
「それでも、僕らに協力を要請する?ロイ・チェン。篠目アカネ」
「はい!お願いします山野レイさん!!ジェノックのみなさんも、どうか、リクヤさんを護るためにチカラを貸して下さい!お願いします!!」
「お願いします!!」
アラタたちジェノックや僕とキヨカに頭を下げる、ロイ・チェンと篠目アカネ。
懇願は敬意を評する。けど―――
「―――戦おうぜ」
口を開こうとしたら、アラタが戦おう、と言い出した。
「戦おうぜ、これからも。だって、セカンドワールドは現実世界の戦争を無くしてるんだろ?だったら、俺たちが守るしかない!バンデットのヤツらから!」
アラタはこの発言の意味が解ってるのか?
僕はアラタの発言に呆れが出た。
ヒカルやサクヤ、キャサリンといった面々はアラタに同意してるけど、ユノとゲンドウは微妙な表情を浮かべてる。
現実世界の戦争を無くしてるセカンドワールドで戦うということ。それはつまり―――
「ありがとうございます、みなさん!」
「レイも一緒に戦おうぜ!!」
礼を言うロイ・チェン。
僕に向かって一緒に戦おうぜと言うアラタ。
でもね―――
「は?ヤダよ?」
僕は断る。
「はぁ!?」
勢いよく言ったアラタは、断られるなんて予想してなかったのか素っ頓狂な声を上げる。
「悪いけど、ロイ。アカネ。私もレイと同じよ」
キヨカも隣から二人に向かって言う。
「な、なんでですか!?」
「そうだぜキヨカ!なんでだよ!!」
アラタたちはみんな何故か?と理解出来ないと顔を書いてある。
「はぁ・・・・・・アラタは美都先生がセカンドワールドの真実を話したのを聞いてなかったの?セカンドワールドは、現実世界における代理戦争。この世界・・・・・・セカンドワールドで戦い続けるということ、それはつまり、僕らは永久的に世界の平和のためにこの学園で戦いという犠牲を生じなければならないということ」
そう。
セカンドワールドは僕らの犠牲の上に成り立っている。
「それに、セカンドワールドの結果が全て公平にして平和という訳じゃない。現に、ロイ・チェン。君の祖国のイグアニアは、イグリットとカリアスという二つの国に分かれて戦争は無くなった。けど、経済や生活はどうなった?戦争の時に比べて裕福か?幸せになっている?」
「それは・・・・・・」
「逆に、戦時中以上に貧しい国になってるよね。確かに戦争は無くなって良かったかもしれない。けど、戦争は終わっても根本的な解決にはなってない」
「っ・・・・・・・・・・」
この二国は戦時より遥かに貧しくなっているとNICSからの情報で知っている。
そうなると、必然的に食料や生活の争いがまたその国で引き起こされる。
根本的な解決ではない。
今度は視線をアラタに合わせ、アラタに問う。
「アラタ、君はこの学園に何しに来たんだ?」
「そりゃ、プロのLBXプレイヤーになるために決まってるだろ?」
「ヒカル、ハルキ、キャサリン。君たちは?」
「僕もアラタと同じだ」
「ああ」
「私はアスカ様のようなプロになるためよ!」
「他のみんなも、それぞれ違いはあるだろうけど、決してここに戦争をヤリに来てるわけじゃないよね?なのに、ここの学園のシステムは、入学条件も宛ら、ロストしたら即退学・・・・・・どう考えても可笑しいと思わないの?」
「それはそうだが・・・・・・」
僕の言葉にアラタたちはそれぞれ困惑気味だ。
正直言って、ここは教育機関としては成り立っていない気がする。
それになにより―――
「それに、父さんが生み出したLBXを戦争のために使うなんて、ハッキリ言って御免だ!!」
父さんはLBXをこんな事のために生み出したんじゃない!!
大人も、子供も、楽しく遊べるためのホビーとして生み出したんだ。
もちろん、宇宙や海の中と言った、ヒトが行けないところを探索することや、ジェラート大尉たちのように国防のために使うのは構わない。社会の役にたって居るから。
だが、戦争で使うのだけは大反対だ。
LBXが一番栄えるのは、セカンドワールドではない。
誰かと競い、戦い、社会の役に立つ。
常日頃の、日常の中なのだ。
「と、父さん?え、どういう意味だ?父さんが生み出したって・・・・・・」
「父さん・・・・・・山野・・・・・・っ!レイ、君はまさか!」
困惑するアラタに、何かを察したヒカル。
「レイのお父さんは、LBXをこの世に生み出した、山野純一郎博士よ」
静かに告げるキヨカ。
キヨカの言葉でさっきの比じゃないほどの衝撃がアラタを襲う。
一番衝撃を受けているのは俯いていた東郷リクヤだった。
「レイが、山野純一郎博士の息子・・・・・・」
「LBXの生みの親・・・・・・」
信じられない者を観る目。
まぁ、僕や兄さんが父さんの息子だって事はほとんど知られてないし。
「何より、東郷義一当人が僕らに面と向かって頭を下げるのなら、少しは、考えるけど、ロイ・チェン。篠目アカネ。君たち二人に伝言を託して、要請しろっていうのは、間違ってるよね?」
ま、例えあのクソ野郎が頭を下げても絶対に引き受けないけどね!!
「そもそも、奇跡的にジェノックとハーネスは同盟を結んだけど、同盟を結んでなかったらどうなの?ハーネス所属にして第5小隊の隊長兼副司令官の僕やメアたちに協力を要請するって無理な話だ」
「そんな・・・・・・」
「っ・・・・・・!」
僕の拒否とも言える否定に悔しそうな顔をする。
はぁ・・・・・・でも、まぁ、彼らは気づかないのかな。
僕は東郷義一からの要請は拒否するとは言ったけど―――
「けど、今僕らは敵国ではない。同盟国だ」
諭すように語る。
「同盟国なら、話は別じゃないか?そして、僕は不本意ながら両国同盟国の総司令だ。なら・・・・・・ね?」
左手を腰に充て姿勢を取る。
これだけ言えばすぐにでも分かるよね?
「っ!そ、それはつまり・・・・・・」
ようやく気付いたのか、篠目アカネがバッとこっちを見る。
「ロイ・チェン。篠目アカネ。キミたちに覚悟を問おう」
目を鋭くして二人を見る。
気配が変わったことに誰もが気づき、固唾を呑んで見守る。
「キミたちがここに来たのは何の為だ?東郷リクヤを護れと東郷義一に命じられたからか?そこにキミたち自身の意思はあるのか?東郷義一の命ではない、自分たちの意思はなんだ!キミたちの覚悟はなんだ!」
もし手元に剣があったならダンっ!と床に突き刺してただろう。
僕の問いに二人は―――
「山野レイさん。お願いします、僕らとともにリクヤさんを護るため協力をしてください!」
「これは東郷義一さんから命じられたからって訳じゃありません!私とロイ、二人からのお願いです!」
必死に頭を下げる二人。
みんなそれを静かに見る。
しばしの後。
「分かった」
僕は威圧感を解き、優しく告げた。
「「っ!!」」
「それがキミたちの懇願なら引き受けよう」
「「ありがとうございます!!」」
ホッとしたように礼を言う二人。
「なんでさっきと反対の言葉を言うんだ?」
アラタが、ん?と言った表情で言う。
えーー。いや、結構ヒントだしてたけど!?
「アラタ。レイは東郷義一からの要請は拒否すると言ったけど、ロイやアカネからの要請は拒否するとは一言も言ってないわよ」
「え?・・・・・・あ!そういうことか!!」
ようやく分かったのか。
キヨカの一言で全員理解したのか、そういう事かと声を漏らす。
そう。東郷義一からの要請は拒否するが、二人からの要請もといお願いなら別だ。
そして同盟国なら、尚更ね。
「レイ、リクヤはこれからのウォータイム出撃させない方がいいんじゃないか?」
ハルキからそう言われる。
確かに、護るという事ならそれが一番だろう。
「いや、それはダメだ。東郷リクヤを出撃させないということは、東郷リクヤのLBXに何かが隠されているとバンデットに推測される」
「っ!そうか」
「それに、昨日言った通り今回の【デスフォレスト攻略】は両仮想国の今後を決める重要な作戦。全小隊全員参加のオーダーは変えない」
そう言うと同時に鐘の音が響く。
セカンドワールド開始10分前のチャイムだ。
「時間だ。ブリーフィングは省略。指示はコントロールポッドから直接出す。全員、コントロールポッドルームに移動せよ!!」
「「「「「了解!!」」」」」
宣言にアラタたちはそれぞれコントロールポッドルームに移動する。
「美都先生はジェノックの司令室に」
「分かったわ」
美都先生も教室から出て、残ったのは僕とキヨカだけになった。
「随分と優しかったわね」
「そう?」
自分では結構意地悪だった気がしたけど?
「東郷義一から、ではなく彼らからということにしたのでしょ?」
「まぁね。あの野郎からの要請なんて絶対にお断りだし」
「そうね」
世界を救った僕らにとって、この学園のシステムは許容できるものではない。
LBXを戦争の道具にするなど。
「行こうキヨカ」
「ええ。でも、その前に・・・・・・」
「ん?んんっ!?」
突然キヨカが抱き着き、キスしてきた。
いや、誰もいないから良いけど!?
「き、キヨカ!?学園でキスは・・・・・・」
「いいでしょ」
「う、うん・・・・・・」
キヨカからの上目遣いに、赤面しながらも頷く。
学園でなんて・・・・・・初めてだし・・・・・・
「さ、行きましょレイ。みんながあなたを待ってるわ」
「っ。ああ。行こう」
顔を小さく振って意識を戻し、キヨカとともにコントロールポッドルームへと向かって行った。
【デスフォレスト攻略作戦】。ハーネスとジェノック最初の合同作戦任務が、今始まった。