ダンボール戦機 英雄の弟   作:ソーナ

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これからと追憶

 

〜レイside〜

 

久しぶりに来た。

思い出したくない僕の記憶。

視界が明るくなり、目の前にタイニーオービット社エントランスの階段と、5年前の僕とアタッシュケースを抱え銃を持つ霧島さん。そして、5年前の僕の隣には今は亡き宇崎悠介さんの姿があった。

 

 

『何をしているんだ霧島さん?!そのケースをこちらに返すんだ!』

 

悠介さんの言葉に霧島さんは返事を返さない。

 

『あなたはそれがなんなのか、わかっているのか!』

 

5年前の僕は悠介さんの隣に立ち、霧島さんを見る。

震えている霧島さんが振り向くと、その手にはアタッシュケースの他に右手に拳銃持っていた。

 

『邪魔をするなぁ!!!』

 

『っ!!』

 

拳銃を見て身構える。

悠介さんはスっと5年前の僕の前に出て、僕を庇うように僕に背を向ける。

 

『止めるんだ霧島さん。あなたはこんなことをする人ではない』

 

『だ、黙れっ!お、お前のせいで、私は・・・私は・・・・・・!!』

 

 

ダメ、この先は・・・・・・!!

視たくない。

視たくない光景は瞼を閉じても見せられる。

 

 

『く、来るなっ!』

 

少しずつ下がる霧島さんに、少しずつ前に出る悠介さん。

霧島さんの銃を持つ右手はブルブルと震えている。

霧島さんが階段の影部分に着くと。

 

『っ!?なに!?』

 

横からかっさらうように霧島さんから、青いスーツにサングラスを掛けた男がアタッシュケースを奪い去った。

 

『あれは・・・・・・・!イノベーターの青の部隊!』

 

スーツの男はかっさらったアタッシュケースを持ち、歩道から道路を横断し、霧島さんも慌てて後を追う。

その霧島さんの目の前に突然トラックが走ってきた。

 

『霧島さん!!』

 

 

ダメ・・・・・・ダメダメダメダメ!!!

お願い、行かないで!!

手を伸ばすが過去の記憶には触れることすら出来ない。

 

 

『ゆ、悠介さん!!』

 

悠介さんは立ち止まる霧島さんをトラックに引かれないよう押し出した。

霧島さんは悠介さんに押され、トラックの前からズレる。

だが、代わりに悠介さんがトラックの進行上に。

 

 

「ぁ・・・・・・ぁぁぁ・・・・・・っ!!」

 

5年前の僕と同じように悠介さんがトラックに轢かれた光景が眼に。脳裏に深く刻みつけられる。

少し離れたところにはジンと兄さんが。

血濡れで倒れる悠介さんに駆け寄る5年前の僕。

止血しようとハンカチなどで血を押さえるが、流れ出る血は全く止まらない。

やがて場面は切り替わり、悠介さんと僕ではなく、僕と兄さんそしてLEXの姿が映る。

 

 

『レイ!』

 

『LEX?うわっ!』

 

LEXが自身のCCMを投げ渡す。

 

『LEX!』

 

5年前の僕はLEXのCCMを掴み、どういう意味なのかLEXに聞こうとしていた。

その瞬間

 

『っ!』

 

ハープーンの接続部がサターンと切り離される。

慌てて兄さんと傍の手摺りに掴む。

 

『なんでだよ!!』

 

手を伸ばして兄さんの問い掛けが響く。

 

『ゲームオーバーだ』

 

LEXから聞いた、最後の言葉。

兄さんと僕の乗ったエクリプスは、そのままサターンから離れ上昇し、逆にサターンは雲の下へと潜っていき、LEXの姿が小さくなっていく。

 

 

「LEX・・・・・・!!」

 

悠介さんと同じで手を伸ばしても触れられない。

僕の懇願虚しく、LEXは自爆していくサターンとともに雲海に呑まれ消えていく。

やがて大きな爆発が雲の中で起こる。

涙が止まらない。

虚しさに悔しさ。哀しさ、虚無感。様々な感情が行き交う。

負の感情が襲い来るそんな僕に。

 

「大丈夫よ。貴方には私が・・・・・・いえ、私たちがついてるわ」

 

闇を払うように、優しく温かい声と暖かな温もりが僕を包み込んだ。

 

「―――」

 

「全く。また無茶をして。あの娘たちを悲しませたいのかしら」

 

少し怒っている感情が伝わる。

 

「でも、まぁ。貴方の行動で誰かが救われるのはいつもの事ね。私と同じように」

 

「・・・・・・」

 

「少しはゆっくりと、休みなさい」

 

それが聴こえると意識が急激に遠くなった。

しばらくして―――

 

「ん・・・・・・」

 

意識が浮かび上がり覚醒した。

ゆっくりと瞼を開ける。

 

「ここは・・・・・・・・・・保健室か」

 

場所から学園の保健室だと断定する。

上体を起こし覚醒しつつも頭がボーッとする中周りを見渡す。

壁に掛けられた時計の時刻は既にウォータイムが終了してから数時間が経っている。

窓の外の風景は既に暗く、夜を示してる。

 

「っ・・・・・・」

 

久しぶりに使ったからか頭が少し痛い。

そのままボーッとしてると。

 

「っ!レーくん目が覚めたの!?」

 

パーテーションの影からメアが出てきた。

 

「メア・・・・・・?」

 

軽い頭痛がする中メアの名前を呼ぶ。

 

「だ、大丈夫!?久しぶりアレ使ってたけど、何か身体に異常とかある!?」

 

「あー、うん。大丈夫。たぶん」

 

僕よりアタフタしているメアを見て冷静になる。

 

「えと、お水飲む?それとも何か甘い物食べる?!」

 

「えーと・・・・・・少し落ち着いてメア」

 

「あ、うん、そうだよね」

 

僕に促されて冷静を取り戻したメア。

そこに。

 

「レイ、目覚めたの!?」

 

「大丈夫かしらレイ!?」

 

「大丈夫!?」

 

トーテムポールのように上からルナ、フラン、キヨカが顔をパーテーションの影から覗かせて来た。

怖っ!

思わずギョッ!?とする。

 

「あー・・・・・・大丈夫かレイ」

 

「あ、ジンもいたんだ」

 

なんとも言えない表情で心配してくるジンを見て、僕もスンとなる。

 

「倒れたのは疲労が原因らしいが、身体に異常は?」

 

「んー、特に今のところはないと思うけど・・・・・・」

 

にしても倒れたのは疲労が原因か〜。

まぁ、ここ最近ゆっくり休めて無かったしなぁ。

ストレスとか溜まってたのかな。

いや、溜まってたな。

特にジェノック関連で。

 

「そうか・・・・・・それは良かった」

 

安堵したように言うジン。

 

「もし何かあったら彼女たちに殺されかねんからな」

 

「はい?」

 

は?いや、え?!

どういう意味??!!

ぶるっと震えて怯えるように言うジンに呆然とする。

 

「え、いや、はい??え、どういう意味??」

 

ジンに尋ねるがジンは目線を逸らして何も言わず、メアたちは何故か苦笑していた。

いや、待って。

僕が知らない内に何があったのさ!!?

 

「それはさておき」

 

「いや、めっちゃ気になるんだけど!?」

 

ジンが話を続けようとし思わずツッコミを入れる。

滅茶苦茶気になるんだけど!?

 

「まず、レイ。アレを使ったのは間違いないな?」

 

「ん?ああ、うん。ホントは使う気はなかったんだけど、向こうが使ってきたからねぇ」

 

「なに?」

 

僕の言葉に衝撃を受けるジン。

 

「え、レーくん。相手もオーバーロードを使ってきたの?」

 

「ウソでしょ?」

 

メアとキヨカは信じられないと、目が言ってる。

僕も信じられなかったけど。

 

「あの速度はどう考えてもオーバーロードだよ。まぁ、アラタと同系統のオーバーロードだろうけど」

 

僕やフラン、ヒロのようなオーバーロードではない、アラタと同じ系種のオーバーロード。

オーバーロードには独特のエネルギーがある。

感覚の鋭い者ならこれが感じ取れる。

5年前、これに目覚めてから何度も使用したため僕の五感は鋭く、深く研ぎ澄まされている。

ヒロの反射神経も然り。

 

「よく、オーバーロードを相手に圧倒していてたな」

 

「んー・・・・・・なんとなく視えたから」

 

「視えた?」

 

「そう」

 

言葉に表すと難しい。

僕は基本感覚派だからなぁ。

 

「相手の動きが全部止まって視えたし、動きが読めた」

 

「相変わらずキミのオーバーロードは特殊だな」

 

「あははは・・・・・・」

 

呆れたように言うジンに僕は苦笑して返す。

そう言われてもなぁ。

 

「それで、占領ポイントごと消滅した『デスフォレスト』の所有権はどうなるの?」

 

「デスフォレスト周辺一帯は未だにロシウスの管轄のままだ」

 

「やはりそうか・・・・・・」

 

拠点制圧は、占領ポイントにて拠点制圧をしなければならない、とセカンドワールドの規則(ルール)に書かれてあった。

デスフォレストが、占領ポイント事消し飛んだ時点である程度予測はしていたが・・・・・・

 

「占領ポイントが消滅した以上、デスフォレストの強奪は不可能になったか」

 

「ああ。だが、ようやくたどり着くことが出来た」

 

「うん」

 

ようやく僕らの探していた場所への入り口。

『ロストエリア』への入り口を見つけた。

 

「ロシウスも、しばらくは今回の戦闘で損失した分の補填やデスフォレストの調査に入るだろうね」

 

「恐らくな・・・・・・」

 

今回のは戦闘は僕らにも、そしてロシウスにも多大な被害が出た。

特にロシウスは配備されていたプレイヤーの大半がロストしている。

いくら仮想国の中でも大国とはいえ、資源には限りがある。

しばらくはその補填に勤しむはずだ。

 

「メア、キヨカ」

 

「うん?」

 

「なに?」

 

「二人から見てドットフェイサーの状態はどう見る」

 

メカニックの二人に意見を聞く。

 

「たぶん、コアボックスまでダメージがいってるはず」

 

「私も同じよ。それにあの機体はオーバーロードに耐えるほどの強度はないわ」

 

「だよね」

 

二人とも僕と同意見だ。

 

「となると、アラタ専用に新しいLBXを。それもオーバーロードに耐えるほどの機体じゃないと・・・・・・」

 

僕の場合は父さんによるハンドメイドLBXだったから良かったけど。

 

「ジン。タケルとサクヤに造らせるけど、構わないよね?」

 

「それは構わないが・・・・・・どうするつもりだ?」

 

「二人に新たな設計図を渡す」

 

「そんなのあるのか?」

 

「これから作る。メアとキヨカの手伝いがあれば明日には終わる。なにより、僕とフランというオーバーロード保持者の戦闘データを。何より[コスモスオリジン]の設計データを少し使えばアラタ専用の、オーバーロードに耐えるほどの機体が出来るはずだ」

 

無から何かを作り出すのは少し難しいが、既にあるデータから作り出すならそう難しくはない。

コスモスオリジンは一応僕のオーバーロードに対応出来る機体となっている。

普通の機体じゃ、僕の操作速度や処理速度でCPUがオーバーヒートしたり処理落ちしたりしてしまうから。

現にそれで最初の[DCブレイバー]がお釈迦になったから。

 

「さすが山野博士の息子か・・・・・・」

 

ドン引きしなくてもいいじゃん。

てか、父さんと比べられてもなぁ。

LBXや、エターナルサイクラーを一から生み出すわ、たった数時間で新型機を作るわ、天才を超えてる自慢の父さんだけど。

 

「ベースはドットフェイサーを使う。ドットフェイサーでのアラタの戦闘記録からタケルとサクヤなら作れるはずだ」

 

あの3機のひとつ。

ドットフェイサーを使ってきたアラタなら新型機でも上手く対応できるはずだ。

もっとも、その新型機はドットフェイサーの数倍以上はスペックが高いが。

 

「でも、レーくん。そうなると、一日二日で終わらないよね?」

 

「たぶんね。恐らく、ハーネスとジェノック二つのラボをフル稼働しても二日は掛かるかな」

 

「レイたちが作ったらダメなの?」

 

首を傾げてルナが聞いてくる。

まぁ、確かにメアやキヨカはダイキさんや結城さん、オタクロスとかからメカニックについて教わってて神威大門でもトップクラスのメカニックだけど。

 

「さすがに細かな調整とかはタケルとサクヤに任せた方がいいわ。なにより、サクヤならアラタの動きの癖とかを知り尽くしてるから」

 

「なるほどね」

 

「それに、メアとキヨカにはそれとは別でやってもらいたいことがあるし」

 

「「ん??」」

 

少し意地の悪い笑みを浮かべみんなに話した。

それは―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

保健室でメアやジンたちと、これからの事を話し終え僕らはダック荘へと帰っていた。

一応保健医の日暮先生から許可も出てはいる。

ちなみに日暮先生は何故か窶れてた。

メアたちの表情からなにかした事は間違いないのだが、自業自得という事で特に気にすることも無かった。

寮に着くなり寮母のトメさんに心配された。どうやらカゲトラたち経由で聞いていたようだ。アラタの方も特に問題はなかったようだし。

その後部屋に戻ってから食堂で遅めの夕食を食べそれぞれお風呂に入り、終わった頃にはもう時刻は22時を過ぎていた。

あとは寝るぐらいなんだけど―――

 

「えーと・・・・・・」

 

「ん〜?なにかな〜レーくん?」

 

何故か僕は今、メアの部屋のベットの上で正座をしています。

ベットの上での理由は、床だと痛いし疲れるでしょ?との事らしい。

いや、それ以前の話である気が。

 

「今日という今日は、レーくんにO・HA・NA・SHI♪するからね!」

 

「はい・・・・・・」

 

目の前で腕を組んで怒り奮闘なメアの前では流石の僕も意気消沈で返事をするしかない。

 

「メア、レイは病み上がりなんだから程々にしてね」

 

「大丈夫だよルナちゃん。そんなに長くしないから」

 

そんなにって・・・・・・

一体どのくらい長いんだ?

メアの長さ基準が曖昧だ。

ちなみにだが、部屋の中にはルナだけでなく、キヨカとフランもいる。

 

「まぁ、私たちに心配かけた罰ね」

 

「そうね」

 

「うぐっ・・・・・・」

 

「さぁーて・・・・・・レーくんには心配させたバツを実行するからねぇ〜」

 

「お、お手柔らかにお願いします」

 

メアの笑顔だが、暗い笑みを見て思わず引いてしまったのは仕方ないと思う。

で、始まったメアのO・HA・NA・SHI♪だが、病み上がりを考慮してか思った以上に長くなく、30分も掛からなかった。

内容は、大半が無茶ばかりすることへの苦言や自分を大切にして、とかの事だった。残りはメアたちへ心配かけたバツとして4人への奉仕という名のお願いであった。

そんなメアからのO・HA・NA・SHI♪が終わり。

 

「これからのことを話そう」

 

正座を解き、僕は4人と話す。

隣にはメアとフランが。向かいのベットにはキヨカとルナが座ってる。

 

「保健室で話した通り、これからアラタ専用のドットフェイサーの強化したLBXの設計図を作る。もっとも、作製するのはタケルとサクヤに任せる」

 

「ええ。でも、それをアラタは使いこなせるの?」

 

「使いこなしてもらわないと困る。何よりオーバーロードはたった一人で戦況を覆すほどの能力だ。学園支給のLBXじゃ耐えられない」

 

「そうね。幾ら私とレイのより劣るとはいえ、LBXとの一体化による超高速戦闘は同じだもの」

 

保持者たる僕とフランは実体験を含めて話す。

 

「アラタには僕が稽古を付ける。いや、ジェノック全体を強化するため、ジェノックの強化特訓をする。4人にも手伝ってもらう」

 

「ええ」

 

「うん!」

 

「分かった」

 

「了解よ」

 

正直、バンデットの方にもロストエリアへの入口の存在を知られたため、これからの戦闘は激戦になるに違いない。

現状のジェノックのレベルではついてこられないはずだ。

少なくとも僕らハーネスと同等のレベルになってもらわないと。

問題は幾つかあるけど。

特にジェノック第1小隊とゲンドウ、ユノ、第3小隊には強くなってもらわないと。

第3小隊は言わずもがな、ゲンドウとユノにはジェノックを引っ張って貰わないと。

 

「にしても、全体の強化とか懐かしいね」

 

「ああ、確かに」

 

ルナの言葉に思い返すように返す。

 

「ヒロさんたちもしたんだよね?」

 

「あはは。あー、あれかぁ〜」

 

ヒロたちと強化特訓と言ったらあれが一番思い浮かべる。

 

「ジェシカさんとランさんは予想通りだったけど。聞いた限りじゃ」

 

「あ、そっか。僕だけだっけ?あれ知ってるの」

 

「なんの話し?」

 

そう言えばフランは知らないんだよね。

 

「ディテクターと戦ってる最中の話だよ」

 

「気になるわね・・・・・・この間、イノベーター事件のことは聞いたけど、ディテクターやミゼルのことは少しだけ聞いただけだから」

 

「あははは。じゃあ、まずはディテクター事件のことから話そうか」

 

苦笑しながら僕は部屋を出て、寮のキッチンから人数分のお茶菓子と紅茶を持ってきて、話す準備を始める。

 

「と言っても、僕も途中から加わった感じだから、最初の方は兄さんやヒロから聞いただけなんだけどね」

 

思い懐かしむように振り返る。

もう4年前の事がついこの間のように感じる。

 

「それじゃあ、まずはディテクターが引き起こしたトキオシティでのことから話そうか」

 

そうして僕は過去の追憶を懐かしむように語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これから語られるのは僕の記憶。

 

それは世界を揺るがすほどの大事件にして、世界を巡り様々な人との絆を紡いだ物語。

 

 

 

 

 

 

 

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