〜レイside〜
これから話すのは僕らが世界を巡った、世界を震撼させた大事件
4年前のディテクター事件
イノベーター事件から早数ヶ月。
一時は世界を震撼させたテロ事件は、すでに世間の大半に忘れ去られていた。
LEXや悠介さんの死。
辛い別れがあった。
今でも助けられなかった事を夢に見る。
イノベーター事件で変わったこともあった。
まず、父さんが5年ぶりに我が家に帰ってきた。
5年ぶりに帰ってきた際、母さんも驚いて泣いていた。父さんはどこかバツが悪そうな顔だった。
他にもオプティマが政府に認可されたこと。父さんが創ったエターナルサイクラーが新たなるエネルギー資源になったこと。
と、ここ数ヶ月で様々なことが起こった。
僕も色々あった。
何故か総理大臣である財前宗助氏と紳羅さん経由で対談したり、LEXの遺品を受け継いだり。
ブルーキャッツの地下にあるアングラビシダスから更に地下に、LEXがこれまでに調べた海道義光の事やイノベーターについて書かれた書類などが大量に保管されており、紳羅さんとともにそこの資料整理をしたりしてイノベーターの関係者捕縛の手伝いをしたりと。
そこには他にLEXが考え生み出した、幾つかの必殺技の書かれたものもあった。
地下への入口はLEXのCCMが鍵となっており、これが無ければ入れなかったとの事だ。
地下にはLEXの遺言書も置かれてあった。
そうなると、LEXが僕にこのCCMを託したのは、これを白日の元に晒して欲しかったからなのかもしれない。
紳羅さんたち警察庁がブルーキャッツに調べに入った後、ブルーキャッツはLEXが残した遺言で僕に譲渡されることになった。
もしかしたら、LEXは僕と兄さんが止めて勝つのを見越していたのかな。だから予め遺言書なんてものを・・・・・・。
LEXがなんで僕にこのCCMや自分の成果と言えるものを託したのかはまだわからない。
LEXが自身のCCMを渡したのはこれの鍵という理由だけじゃないはずだ。
現在ブルーキャッツは僕に保有権があるが管理などは拓也さんにお願いしてあり店は閉店している。
さすがに子供の僕じゃお店の管理とかは出来ないからね。
LEXが遺した必殺技はどれも強力なもので習得するのは困難を極めたが、何とか修得出来た。
オプティマが認可されルナが手術を受けられまだ入院しているが元気になった際はメアやキヨカと一緒に涙して喜んだ。
特にルナのお姉さんである里奈さんは感極まってた。
今はまだ入院で検査受けてるけど、もう少ししたら大丈夫との事だ。
そして―――
4年前
「んー。やっぱり長時間座ってると凝るなぁ」
あのイノベーター事件から半年が過ぎ、僕はA国に来ていた。
日本からA国に来た理由は世界を見て回るのと、もう一つ。ある人を探し出すため。
空港を出てNシティに降り立つ。
「取り敢えず観光名所を巡ってからLシティのオメガダインも観てみるか」
オメガダインについては少し気になっていた。
表向きはLBXの管理機構だが、裏ではクリスターイングラムと癒着していたりと、紳羅さんたち警察庁も気になっているようだし。
何より僕個人としても気になる。
「さてと・・・・・・行きますか!」
そうして世界を視て巡る旅が始まった。
それから僕はA国を初め、B国やイタリア、エジプト、中国、オーストラリアと・・・・・・様々な国をめぐり始めた。
母さんから旅をする条件として数日毎に連絡をするよう言われていたので、それぞれの国の文化遺産の前で写真を撮ったのを送ったりした。
もちろん、それはメアたちにも送り、メアたちの返信はいつもズルいー、とか今度は一緒に行こう!とかだったりする。
そうしてA国から始まった旅は半年を過ぎようとしていた。
で、今僕がいるのはイギリスのブリントンだ。
何故ブリントンにいるのかと言うと―――
「父さん」
「はい・・・・・・」
「いくら何でも、部屋の中ぐらい綺麗にしなよ」
「申し訳ありません」
「はぁ・・・・・・」
もう何度目か分からない程のため息。
今僕がいるのは、ブリントンにある父さんの研究所。
父さんは今、ブリントンにあるビルニッジ天文台で客員研究員としてここにいる。次世代LBXの開発をしているのだ。
で、何故僕がここにいるのかと言うと、それは単純に父さんに呼ばれたからだ。
丁度フランスからイタリアにいて、そのイタリアでちょっと事件に巻き込まれたけど、父さんに呼ばれてここにいる。
「しかも、マトモな食事摂ってないでしょ」
「それは・・・・・・」
「視線泳がせてる時点で答え言っているようなものじゃん」
僕の言葉に反論しない父さん。
目の前にいる父さんは床に正座している。
何故父さんが正座しているのかと言うと。
「あれ程、整理整頓はこまめにしとくようにって言っといたのに」
研究室はまだ綺麗だったが、父さんの私室はあちこちに脱ぎ掛けや皺になった服や散らかされた本などで汚かったのだ。
「父さんはそのまま僕が良いと言うまで正座!!反省してなさい!!」
「はい・・・・・・」
いい年した大人が子供に説教されてるのは他人から見たらなんとも言い難いだろうが知ったこっちゃないわ。
ふんっ!と鼻息をすると。
「あ、あー。その・・・・・・」
「ん?」
隅の壁際で二人の大人の男性がビクビクしながらこっちを見ていた。
「ああ。二人には掃除を手伝ってもらうから。ちなみに拒否権はない」
「「い、YES」」
ニッコリと言い僕は二人の男。
サングラスを掛けた長身の男がコードネーム【コブラ】。
短身で、猫のような尻尾をつけてる男がコードネーム【マングース】。
二人とも父さんの助手兼エージェントらしい。
ちなみに空港からビルニッジ天文台にまで連れてきてくれたのはマングースで、僕をイタリアから案内してくれたのがコブラである。
何故か犬猿の仲なのだが・・・・・・
コードネームそのまんまだ。
そうして僕は二人を従えて早速私室と研究室の掃除を開始した。
「えーと、まずは換気をして洗濯物を洗濯機の中に・・・・・・!」
アイロン掛けが必要なものは別で洗濯。
寝具とかも洗濯機に入れ洗剤に柔軟剤を入れて回す。
一応今日は一日晴れてるから外に干せば午後には乾くはずだ。
洗濯機を回してる最中にベットの掃除や床の雑巾がけと掃除機を掛けて・・・・・・
「コブラはこっちの資料の整理。マングースはそこの本棚をお願い」
「おう」
「わかった」
コブラとマングースに随時指示をしながらテキパキと慣れた手付きで掃除をする。
いくら何でも少しは整理してほしいと思わざるを得ない。
そうこうして、掃除を半日ほど掛けて終わらせ、部屋の中がピカピカになった頃には、掃除する前と大違いの光景が映った。
「ふぅ。終わったぁ〜」
まさか半日も掛かるとは思ってなかったので疲れた。
「コブラとマングースもお疲れ様。ご飯は僕が作るから休んでて良いよ〜」
「お、おう・・・・・・」
「あ、ああ・・・・・・」
グテーと倒れてる二人を労い。
「父さんもこれに懲りたら少しは整理整頓すること。いいネ?」
「はい・・・・・・」
「じゃあ正座解いていいよ」
父さんの半日ほど正座させた状態を解く。
「さてと・・・・・・父さん何か食べたいものある?」
CCMを操作して父さんに尋ねる。
時間はここイギリスの時間で18時前。
日本とイギリスの時差は9時間。
イギリスの方が日本より9時間遅れてるため、日本は現在午前2時だ。
メアや母さんからのメッセージを確認して返信する。
ついでに母さんに父さんについて書き記す。
「いや、お前に任せる」
長時間の正座で足が痺れているのか、這い蹲ったまま言う父さん。
んー、長すぎたか?
「ちょっと冷蔵庫とか確認するね」
そう言ってキッチンに移動して冷蔵庫の中身を確認する。
冷蔵庫の中にはそれなりに食料が備蓄されてあった。
が、父さんは料理が出来ないので備蓄されてる食料も減ってないのだろう。
「結構あるな・・・・・・ジャガイモにタラ・・・・・・玉ねぎ・・・・・豚肉」
イギリス産の食材もあるが、日本から輸入した食材も入ってあった。
この国際化の時代、食材の輸入量はどの国も高い。
特に日本の食材。野菜などは世界にも高評価だ。
「んー。イギリス料理の代表的なフィッシュ・アンド・チップスを丁度作ってみるか」
フィッシュ・アンド・チップスは作った事ないのでレシピをCCMからインフィニティネットで検索する。
「4人分だからそれなりにして・・・・・・」
疲れているからスタミナの付く料理にする。
「よし」
中を確認して献立を決める。
「父さんたちはご飯出来るまでのんびりしてて」
キッチンから顔を出して言い、作業に入る。
まずはお米を研いで、炊飯器にセット。
次に鍋にお水と昆布を入れてコンロの火をつけ水を沸かせる。
そして時間の掛かるフィッシュ・アンド・チップスのジャガイモの芽を取り除き、白身魚のタラの骨と皮を取り除き、ジャガイモを皮付きのまま6等分のくし切りにし、沸騰させてるのとは別で水を張ったボウルにジャガイモを入れて20分程さらして水気を切り、キッチンペーパーで水気を拭きとる。
さらしてる間に豚肉と玉ねぎを切り、切った二つをビニール袋に入れてそこに醤油やニンニク、味噌などを入れて揉み合わせ冷蔵庫に少し寝かせる。
次にタラを一口大に切って塩をふり、薄力粉をまぶす。
ボウルに衣を着けるための材料を入れて混ぜ合わせ、タラをくぐらせる。
で、20分経ったジャガイモの水気を切り、キッチンペーパーで拭き取る。
そしてフライパンに油を注ぎ、180℃に熱して水気を拭き取ったジャガイモを入れて8分程揚る。
こんがりとジャガイモが色づき、火が通ったら油を切る。
揚げてる間に昆布を取り出し、味噌を入れて溶かす。
味噌を溶かしたら豆腐と油揚げを入れて煮たせる。
これでお味噌汁は完成。
揚げてるジャガイモを見て火が通ったら油から上げる。
そして続けて衣を着けたタラを入れて5分程揚げる。
魚はジャガイモに比べて火が通りやすいから目を離さずに、火が通ったら油を切る。
油をよく切ったジャガイモとタラを大きな器に盛り付け、付け合せのケチャップと市販のタルタルソースをそれぞれ器に乗せる。
これでフィッシュ・アンド・チップスも出来上がり。
最後に、別のフライパンに寝かせていた豚肉と玉ねぎを入れて炒め、炊きあがったアツアツのご飯をどんぶりに盛って炒めた豚肉と玉ねぎを乗せ、その上に生卵を投下。
「よし!出来た」
お盆にそれぞれ器に盛り付けた料理を置き、父さんたちのいる部屋に向かう。
「はい、出来たよー」
「おぉ!いい匂いがするぜ!!」
「美味そう」
「レイの手料理は久しぶりだな」
三者三様の反応。
手際よくテーブルの上にお味噌汁と豚肉と玉ねぎのスタミナ丼を置き、中央にフィッシュ・アンド・チップスの盛られた大きな器と付け合せのケチャップとタルタルソースの入った小皿を置く。
「えーと、今日の献立は【豆腐と油揚げのお味噌汁】に、【豚肉と玉ねぎのスタミナ丼】。それとイギリスの名物料理【フィッシュ・アンド・チップス】。召し上がれ」
「んじゃ!頂くぜ!!」
「頂きます」
「頂くとしよう」
それぞれ椅子に座り料理を口にする。
「っ!?美味ぇー!!疲れた身体に染み渡るぜ!!」
「美味い。味噌汁は出汁が効いてるし、フィッシュ・アンド・チップスはそこまでしつこくない」
コブラとマングースはパクパクと食べる。
「美味い。さすがだ」
「えへへ」
父さんに褒めてもらい少し照れる。
まぁ、このお味噌汁やスタミナ丼って母さんから教えて貰ったものだし。
フィッシュ・アンド・チップスに限っては今日初めて作ったけど、上手くいって良かった良かった。
僕も椅子に座り、頂きますをしてフィッシュ・アンド・チップスを食す。
「うん。美味しい」
油のギトギト感も無く、しつこくない。
塩気が効いていて付け合せを付けなくても美味しい。
もちろん、ケチャップやタルタルソースに付けても美味しい。
お味噌汁も昆布の出汁が効いていて良い。
スタミナ丼の方もニンニクが効いていて、疲れた身体にピッタリだ。
たまにコブラとマングースの取り合いを見ながらご飯を食べ、食器を洗い全てやり終えた僕はようやく父さんに僕を呼んだ理由を聞いた。
「それで父さん。僕をイギリスに呼んだ理由は?」
「ああ。実は―――」
父さんから語られたのは新たな闇だった。
世界を覆い尽くす、イノベーターを超える大いなる闇。
そして、イタリアでの戦いで大破してしまった[カオス]の代わりになる、新たなるLBX。
カオスは父さんが修理してくれるそうで父さんに預けた。
そうして僕は父さんの指示でしばらく間行動を始めた。
コブラも日本に渡航し兄さんたちに会いに。
そして、それは父さんと会って一週間後、トキオシティから始まった。
まさか世界を揺るがすほどの事件に巻き込まれるとはこの時は思ってもみなかった戦いに、僕は身を投じたのだった。