ダンボール戦機 英雄の弟   作:ソーナ

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回想 W―ディテクター編 IV それぞれの国で

 

〜レイside〜

 

「―――ありがとうございます。まさかICPOの方が手を貸してくれるとは思いませんでした」

 

コブラから連絡を受けた翌日の昼。

僕はフランスのルテティアにある一区画の通りのカフェにいた。

目の前のテーブルには注文したミルクティーとモンブランケーキ。

そして、対面にいる相手の方にもコーヒーとショートケーキが。

 

「気にしないで。ユキトから連絡を貰った時は急にどうしたのかしら?と思ったけど」

 

ふふっ。と不敵な笑みを浮かべるのは紺のスーツを着た女性。

歳は里奈さんに近く、OLのような女性だ。

名前はクリステル・リースフェルトさん。

国際刑事警察機構、略称はICPO。通称インターポールに所属する女性だ。

なんでも、紳羅さんの古くからの友人らしい。

何故、らしい、というのかと言うのかは・・・・・・

 

「ふふふふ」

 

いや、だって紳羅さんの話をするとなんか悪い笑みを浮かべてるし。

 

「それで、昨日渡した情報で足りたかしら?」

 

「ええ。僕一人じゃ何年掛かったことか」

 

ミルクティーを飲みながら告げる。

実際僕はまだ10歳になったばかりの子供。

いくら警察庁所属の紳羅さんの協力者とはいえ、それにも限度がある。

僕の探している人を見つけ出すためにはもっと広範囲に影響を持つ人じゃなければならなかった。

そこでまたしても紳羅さんの助けがあり、目の前の女性。クリスさんが手を貸してくれた。

 

「まぁ、分かったのはそれだけで今どこにいるのかは分からないんだけどね」

 

やれやれ、と肩を竦めて言うクリスさん。

その所作は演技がかっていない普通の動作なのに、精練されていて周囲の人々を魅了している。

いや、僕には効かないけど。

 

「最後に分かったのは、足取りが1年前からつかないという事。そして最後にいた場所が・・・・・・」

 

「A国・・・・・・」

 

「ええ」

 

A国。

今兄さんたちがメアたちを助けるために向かってる国だ。

 

「まぁ、私には逮捕権も捜査権も無いからこれしか出来ないのよね〜」

 

「あははは・・・・・・」

 

苦笑するしかない僕。

それを僕に言われても・・・・・・

いや、まぁ、確かにICPOは行方不明者には黄手配書、指名手配者には赤手配書と呼ばれる国際警告を発行して、ICPO加盟国と協力して捜査を行うが、各国へICPO職員を送ってその個人を逮捕したり、逮捕状を発行したりする権限は、ない。と調べて知ってる。

 

「それにディテクターの事も各国と共有しないといけないし」

 

「あー」

 

すでに一昨日日本のトキオシアで発生したディテクターによるLBXを使ったテロは全世界に知らされている。

LBXによるテロと断定され、日本警察からICPOに情報がもたらされているとか。(昨夜の紳羅さん談)

 

「それと、少し気になることがあるのよね」

 

「え?」

 

クリスさんが真剣な眼差しで手に持つコーヒーの揺らめく波を見て告げる。

気になる事?

 

「あ、レイ君の事とは無関係だから気にしないでね!」

 

「???」

 

あははは、と取り繕うクリスさん。

 

「レイ君はこの後どうするの?」

 

「そうですね・・・・・・取り敢えずA国に行こうかなと。あ、でもその前に日本の実家に帰りますね」

 

もう半年も帰ってない。

母さんに姿ぐらいは見せないと。

それにルナやキヨカ。郷田やダイキさんにも会っておかないと。

 

「でも、まぁ、明日はすでに予定があるんですけどね」

 

苦笑する僕に、クリスさんはああ、と言い。

 

「あの大会ね!頑張って、明日は観に行くわ」

 

「あ、あはははは」

 

歳上のお姉さんの色香を醸し出すクリスさんに苦笑するしかない僕。

てか観に来るんですね。

そうしてクリスさんと話をして行き―――

翌日。

 

 

『―――お待たせしました!!只今よりLBX欧州地区(ヨーロッパエリア)チャンピオンを決める大会!!『ブリュンヒルド』を開催致します!!』

 

 

僕はフランスで開催された、LBXの大会に出場していた。

 

 

〜レイside out〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃A国では

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜バンside〜

 

 

拓也さんの用意したタイニーオービット社の社長専用機でコブラ、ヒロ、ランとともにA国に渡航した俺は、渡航の最中、機内で自律稼動型LBXの襲撃に遭うがヒロとランとともに何とかこれを撃退。

無事飛行機はA国に到着。

到着するなり、NICSから迎えに来たジェシカ・カイオスと俺とで戦いになるが、ジェシカ曰くテストに合格しNICS長官のオーウェン・カイオスさんとコンタクトを取る事に成功。

アミたちを助け出す協力を得られたその時、突如NシティでディテクターによるLBXの暴走が起き、今、俺とヒロ、ラン、そしてA国で新たに仲間になったジェシカで、それぞれ二組に別れて探していた。

 

 

 

「―――こういう時レイがいてくれたら、いい案を出してくれるんだけど」

 

今俺はLBXの暴走が起きた中央公園にペアになったランと向かっている。

ディテクターが要求した、大統領の即時辞任の要求期限の18時まであと3時間もない。

今の時間はA国表示で15時半。

既に発生から3時間半が経過しようとしている。

LBXの暴走が発生したのは今向かってる中央公園と57番街、リバー通り、東タウン一丁目の4ヶ所。

俺とランは中央公園と57番街。

ヒロとジェシカはリバー通りと東タウン一丁目を調査している。

 

「レイって、バンの弟だっけ?」

 

「ああ」

 

俺の思わずでた愚痴にランが聞いてくる。

 

「あたしまだ会ったこと無いんだけど、そんなに凄いの?」

 

「そりゃもちろん。LBXの腕も頭も俺なんかと比べ物にならないくらいだよ」

 

レイのあの頭の良さはたぶん父さん譲りだと思う。

だって俺にも予測出来ないことを平気でやるからな。

それにLBXプレイヤーとしてのスキルも高い。

 

『確か今フランスにいるんですよね?』

 

聞いてきたのはCCMで通話しているヒロだ。

 

『ああ。レイは今、フランスのルテティアにいる。それは一昨日本人に連絡して確認した』

 

ヒロの問いに答えたのはNICS本部でサポートしているコブラだ。

 

「ルテティアか・・・・・・」

 

取り敢えずレイの無事が取れたことには安堵した。

レイまでディテクターの手に堕ちたら、俺だけじゃレイに勝てる可能性がないからな。

レイの恐ろしさを知っているからこそ言える。

恐らくだが、ヒロとラン、ジェシカでは正直レイを相手に出来ないと思う。

もしアミ、カズ、メアとかレイの動きを知り尽くしている人がいるなら話は別だ。

もっとも、それでも勝てる見込みがあるかは分からない。もしジンがいてくれたら確率は上がるんだけど・・・・・・

友人にして好敵手(ライバル)を思い出す。

 

『山野レイね・・・・・・一時期A国で噂になってたわね。とんでもない強さを持ち、連戦連勝をする東洋人プレイヤーがいるって』

 

『それがレイさんなんですか?』

 

『さぁ?私は会ったことないから。でも、使うLBXは黒くて、武装は二刀流だったらしいわよ』

 

黒いLBXに、二刀流。

たぶんレイだ。

A国で噂になるほどって一体何をしたらそうなるのか、兄として疑問が尽きない。

 

「ねぇ、バン。バンと弟のレイってどっちが強いの?」

 

「え?」

 

唐突のランの問いに歩みを止めた。

俺とレイ、どっちが強いか、か・・・・・・

 

「たぶん、レイの方が強いと思う」

 

サンサンと照らす太陽を見て答える。

 

「アルテミスチャンピオンのバンより強いの!?」

 

「うん」

 

もしレイがいたら、LBXを操ってる指令コンピューターの位置なんてすぐ分かるんだろうな。

正直、兄としての威厳がたまに霞んで見えるのだから。

いや、まぁ、俺の自業自得の所もあるんだけど・・・・・・

 

『何時かレイさんとバトルしてみたいです!!』

 

『そうね。でも、その為にもまず、指令コンピューターを見つけ出さないと。そっちの方は何かあった?』

 

「いや、何も無い」

 

「そっちはどう?」

 

『ダメです・・・・・・電波の反応すらありません』

 

『刻限まであと3時間か・・・・・・』

 

正直手をこまねいている状況が続いてる。

けどこれだけ探して見つからないなんて・・・・・・

 

『あんま使いたくねぇが、アイツに頼るしかねぇか?』

 

コブラが苦渋の決断のような顔で言う。

 

『A国とフランスとの時差は+6時間。フランスだともう夜21時だからな、多分大丈夫だとは思うが』

 

そう言うとコブラは自身の端末を取り出しどこかへ連絡を取った。

フランスということは、相手は―――

 

『―――はいはーい。なに、コブラ?』

 

気の抜けた声に思わずコケる俺とラン。画面越しにヒロとジェシカも同じ感じだった。

 

『ワりぃ、今忙しかったか?』

 

『30分前に掛けてきたら出られなかったけど今なら大丈夫だよ〜』

 

コブラと連絡相手、レイの声がコブラの端末を越しに聞こえる。

久しぶりに聞くレイの声。

 

「な、なんか間延びした声だなー。これがバンの弟の声?」

 

「あ、ああ」

 

怪訝な顔をするランに俺は微妙な感じで返す。

 

『早速だが、A国のNシティでディテクターによるLBXの暴走が起きた』

 

『みたいだね〜』

 

『バンたちが二組に別れて指令コンピューターを捜索してんだが全然見つかんねぇんだ』

 

『ふぅん・・・・・・つまり手を貸してほしいって、こと?』

 

『ああ』

 

コブラの肯定に声からレイの空気が変わったのを感じた。

 

『そっちの今の時間は?』

 

『あ、ああ。もうそろそろで16時になる』

 

コブラが緊張したような感じで言う。

 

『あと2時間ね・・・・・・LBXの暴走が発生した場所を教えて』

 

『中央公園、57番街、リバー通り、そして東タウン一丁目の4ヶ所だ』

 

『ん?誰?コブラじゃないよね?』

 

『すまない。自己紹介が遅れた。私の名前はオーウェン・カイオス。NICSの長官だ』

 

『あらら。これは失礼を。僕は山野レイです。僕についてはコブラか兄さんから聞いてください。それで、LBXの暴走が発生したのはその4ヶ所ね・・・・・・発生した順番は?』

 

『中央公園から始まり、57番街、リバー通り、そして東タウン一丁目の順です!』

 

レイの問いにNICSのオペレーターの一人が答える。

 

『ふむ』

 

何か調べてるのか、カタカタという音が微かに聞こえる。

 

『コブラ、兄さんたちにも繋げられるよね?』

 

『あ、ああ。ちょっと待ってろ』

 

コブラが自身の端末を少し操作し、俺とラン、ヒロとジェシカにレイと通話が繋がった。

 

『もしもーし。聞こえる?』

 

「ああ、聞こえるよレイ」

 

『久しぶり〜兄さん。色々と話したい事が山ほどあるけど、それはまた別の機会にね』

 

「ああ」

 

ビデオ通話ではなく、声だけ。SoundOnlyと書かれた文が表示される。

なんて言うか・・・・・・兄なのに、レイの事が分からなくなって来た。

 

『他にも3人いるよね?はじめまして〜。山野バンの弟、山野レイです』

 

「は、はじめまして!花咲ランです!!」

 

『大空ヒロと申します!お会いできて光栄です!!』

 

『ジェシカ・カイオスよ。よろしくね』

 

『ヒロにランにジェシカね。よろしく〜。とまぁ、自己紹介はこの辺にして、本題に入るよ』

 

間延びした声が無くなり、凛とした声がスピーカーから響く。

 

『兄さんが今いる場所は?』

 

「俺は今ランと一緒に中央公園にいる。さっきまで57番街を調査してた」

 

『ふむ。となるとヒロとジェシカは残りのリバー通りと東タウン一丁目を調べていたということかな?』

 

『ええ。今いるのは東タウン一丁目よ』

 

『それで、捜索したけど全然指令コンピューターが見つからないと?』

 

「そうなんだ。しかも時間もない。このままじゃまたLBXが暴走を!」

 

『落ち着け兄さん。焦ると見えるものも見えない』

 

「そうは言うけど・・・・・・」

 

相変わらず冷静なレイ。

本当に10歳なのかと疑いたくなる。

 

『あちこちもう探したんでしょ?』

 

『ええ』

 

「ああ」

 

『ふむ・・・・・・』

 

レイへそう言うとしばしの沈黙の後。

 

『カイオス長官。確か暴走が発生した場所の地下にはNシティの地下鉄が通ってませんでした?』

 

レイが突然カイオス長官にそう尋ねた。

地下鉄?どういう意味だ。

 

『確かに通ってるが・・・・・・』

 

『それとなんの関係があるんだ?』

 

コブラの質問に俺たちはレイの答えを待つ。

 

『簡単だよ。指令コンピューターは地上ではなく、地下。しかも乗り物。地下鉄に取り付けられてるんだ』

 

「なっ!?」

 

「えっ!?」

 

レイの推理に驚く俺とラン。

ヒロとジェシカも同じだ。

そこに。

 

「うわっ!?」

 

「ふぎゅっ!?」

 

地面から物凄い風が吹き上げて来た。

地面からの突風にCCMを持った手で顔を抑える。

すると。

 

「「っ!?」」

 

ピッピッピッピッ、と電波の探知音が鳴った。

 

「電波の反応!?」

 

周囲を見渡すが何も無い。

その探知音も徐々に弱まってる。

やがて探知音が消え。

 

「ジェシカ、今のこの風って」

 

『Nシティ名物の、地下鉄の風よ。けど、それと同時に電波の反応があったということは・・・・・・!!』

 

『まさか、本当に地下鉄に指令コンピューターが!?』

 

『まさか地下鉄にあるとはな・・・・・・』

 

レイの推理した通り地下鉄に指令コンピューターがあった!?

 

『Nシティの地下鉄はすべて中央制御システムで管理・運行されている』

 

『つまり無人運転つうことか?』

 

『ああ。しかも、中央制御システムはA国すべての鉄道制御システムにリンクしていてセキュリティも万全だ。侵入できるとは思えないが・・・・・・』

 

『制御システムがハッキングされた形跡はないようです』

 

NICSのオペレーターが通話越しからそう言うのが聞こえる。

そのオペレーターにレイが。

 

『なら、運行中の車両それぞれにアクセスしてみて』

 

と言った。

 

『わ、分かりました』

 

俺の弟の頭の構造は一体どうなってるのかホント気になる!

 

『ありました!路線点検用のドクター車両にハッキングの形跡!』

 

『それだ!』

 

『ブレインジャックプログラムを消去できるか?』

 

『やってみます。―――ダメです。制御システムからの書き込みを拒否しています』

 

どうやら遠隔での操作は不可能なようだ。

となると。

 

『直接乗り込んで駆除するしかないな』

 

『そのようだ。ドクター車両を、本線から補助路線に切り替えて、最寄りの駅に停車させろ』

 

『わかりました。ウエストゲート駅、補助路線ホームに停車させます』

 

『到着時刻は?』

 

『17時15分ジャストです!』

 

『聞いたか?ウエストゲートはジェシカとヒロ。お前たちの方が近い。すぐに向かえ』

 

『分かったわ』

 

『了解です』

 

『ドクター車両の、ドアロックを解除する。コードを出せ』

 

『はい!―――解除コードは、52D703F8795E、です』

 

『無理です、覚えられません』

 

さすがに俺でも覚えられない。

ヒロの苦言はもっともだ。

 

『CCMに転送する』

 

『お願いします』

 

『バンとランは本部に戻れ』

 

「「了解!」」

 

『じゃあ僕はこれで失礼するね〜』

 

『ああ。忙しいところ悪かったな』

 

『イイよ〜。ああ、それとしばらく僕とは連絡つかないと思うからそのつもりでね。じゃあね〜』

 

そう言うとレイは通信を切った。

俺とランもコブラたちとの通信を切り言われた通りNICSへ戻る。

 

「レイって一体何者?あたし達でさえ見つけられなかった指令コンピューターをあっという間に見つけるなんて・・・・・・!」

 

NICSに戻る道を走りながらランが言ってくる。

 

「いつもの事だ」

 

「え?」

 

「レイは情報収集能力や洞察力が高いんだ。それに、レイはNシティには一度来ているからな。恐らくその時に地下鉄の事を知って、覚えていたんだろう。さすがに俺も地下鉄まで予想していなかった。ずっと地上にあると思ってたからな」

 

そう。4ヶ所も発生させたのだからきっと地上の何処かにあると思っていた。

恐らく、この4ヶ所という先入観から俺たちは地上にあると思い込んでいたのだろう。

地理、地形、交通など全てを把握して、あらゆる事を予測していればもっと早く見つけられたのかもしれない。

それに指令コンピューターのヒントはすでにあったのだ。

中央公園から始まったLBXの暴走。

中央公園、57番街、リバー通り、そして東タウン一丁目の順番。

ほぼ同時刻とはいえ、同時に発生したわけじゃない。

この4ヶ所の発生した時刻は時間差があった。

恐らくこの時間差は地下鉄がその周辺に着くまでのラグ。

レイはこれらの情報から、指令コンピューターが地下鉄にある可能性があると導き出したのだろう。

イノベーター事件の時もそうだった。

俺たちの先を行ってる。

今回もしレイの助言がなかったらもっと苦労していたと思う。

後はヒロとジェシカに任せるしかない。

俺はランとともにNICS本部へと通じる道を走りながらそう思ったのだった。

 

 

 

 

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