〜レイside〜
LBX
『―――以上が現在までに俺たちが把握している情報だ』
「なるほどね〜」
「・・・・・・・・・・」
『こちらで、ディテクターが引き起こしたLBXの暴走については先日転送した情報の通りだ』
「その件についてはすでに各国のICPO加盟国に通達済みよ。昨日のA国で起こったLBXの暴走も情報が入り次第送るわ」
『感謝するクリス』
「気にしなくていいわよ雪斗」
「・・・・・・・・・・」
さっきから画面越しに二人の男女が火花をバチバチとぶつけ合ってる。
顔は笑っているのに全く笑ってない。てか怖っ!
「あのー、クリスさん?なんで僕はここにいるんでしょうかね?」
「あら、だってレイ君も昨日の件は知っているでしょう?」
「いや、まぁ、僕も一枚噛んでるのでそうですけど・・・・・・」
『相変わらずの巻き込まれ体質だな・・・・・・・・・・』
な、何故か紳羅さんには同情のような目で見られてる。
「じゃなくて!なんで僕はICPOのルテティア支部にいるんですか!?」
朝チェックアウトしようとしたら何故かロビーにクリスさんがいて、チェックアウトしてそのまま荷物ごとここに連れてこられたのだ。ちなみに移動手段は車である。
ワケワカメのままICPOのルテティア支部の一室に連れてこられ3人で会議を行ってる。
ええーっ、である。
「だって外じゃ話せないしね」
「いや、それはそうですけど・・・・・・」
た、確かにディテクターの事は外部においそれと話せない事案であるが・・・・・・
「それで、僕はなんでここに呼ばれたんです?」
正直とてつもなく場違いな気がするんだけど?
そう頭の中で過ぎるが・・・・・・
『レイ、タイニーオービットの事は知ってるか?』
「え?あ、うん。知ってるよ」
紳羅さんの問いにそう返す。
タイニーオービットについては昨日のニュースで知った。
『クリスターイングラムはオメガダインとも繋がっていると噂されている。タイニーオービットに拓也君の代わりに、沢村宗人を送り込んできたということは何かしらの理由があるはずだ』
「ええ。沢村宗人は元タイニーオービットの役員の一人。無関係のはずない」
『ああ』
なにより沢村宗人はイノベーターのスパイだった。
疑わないはずが無い。
『タイニーオービットの監視は俺たちがする』
「なら、オメガダインは僕が。拓也さんからNICSが協力してくれてるって言ってたし」
行けるならNICSに行ってくれって言ってたしね。
兄さんたちもそこにいるだろうし。
「じゃあ、私はクリスターイングラムを調べようかしら?」
「え?」
クリスさんの言葉に、え?と出る。
『いいのか?』
手を貸していいのか?と尋ねる紳羅さんにクリスさんは。
「ええ。私としても気になっているのよ。神谷重工を傘下に加えたクリスターイングラムのことを」
「っ!」
イノベーター事件の後、神谷重工はクリスターイングラムに吸収され、クリスターイングラム『神谷重工部門』という1ブランドとなっている。
1ブランドとなってはいるが、真実クリスターイングラムの傘下。子会社と言ってもいい。
それにそもそもクリスターイングラム自体が、A国にある軍事企業のセントラル・インテリジェンス・サービス。通称CISの子会社だ。
つまりは大元はこのCISという事になる。
「それにICPOが捜査出来ないってのはそろそろ時代錯誤らしいし」
「『は?』」
クリスさんの言葉に目が点になる。
え?どゆこと?
「ふふん。ついさっき上からディテクターについて捜査しろって通達が来たのよ」
「え?」
『マジで?」
「マジよ」
唖然とする僕に眼をパチクリして聞く紳羅さん。
そしてその紳羅さんにドヤ顔で返すクリスさん。
あっれー?
ICPOって捜査とか出来ないんじゃなかった!?
あれ?もしかして体制が変わったの!?
「まぁ、ICPOという権限はまだ使えないのだけど」
いや、それ僕に話していいの?
そう思ってしまうが・・・・・・・
取り敢えずこれで僕はオメガダイン、紳羅さんはタイニーオービット、クリスさんはクリスターイングラムについて調べるということになった。
『ま、まぁ、それは置いといてだ。何か情報があったら随時情報交換するとしよう』
「はい」
「ええ」
そうしてディテクターやオメガダイン、クリスターイングラムについて話していると。
「?なにか騒がしいわね」
唐突にクリスさんがドアの方を見て呟いた。
「何かあったのですかね」
僕も怪訝そうに見ると。
「クリスさん、大変です!!」
紺のスーツ姿の男性が一人、ドアをバタンと勢いよく開けて入ってきた。
「シリウス、一体何事?今重要な話をしていたんだけど?」
少し怒って聞くクリスさん。
シリウスと呼ばれた人はすみません!と謝罪すると。
「そ、それより大変です!!LBXの暴走がルテティア地区の
「なんですって!?」
「っ!?」
言われた言葉にガタンと立ち上がる。
クリスさんはすぐに室内の液晶テレビを起動させる。
テレビに映し出されたニュースにはリアルタイムでフランスのルテティア地区の惨状が映し出されてた。
『―――ご覧の通りつい先程急にLBXが暴走を始めました!暴走したLBXはルテティア地区各地で起こり被害は尋常です!!』
ニュースのアナウンサーは恐らく高々度から撮られた映像をバックにそう告げる。
「ディテクター・・・・・・!!」
まさか昨日の今日でやってくるとは・・・・・・!!
そう思ってると、急に画面にノイズが走り、次の瞬間には別の画像に切り替わった。
切り替わった映像には一人の仮面を付けた男が映し出されていた。
『フランスの諸君、はじめまして。我々はディテクター。世界をこの手にする者だ』
「この仮面の男が・・・・・!」
僕とクリスさん、そしてシリウスと呼ばれた男性はその映像を食い入るように見入る。
『ルテティア地区一帯に存在する全てのLBXは、すでに我々の手に墜ちた。観よ、この惨状を。我々は全てのLBXを思うがままに操ることが出来る。今やルテティア地区は我々の手の中にあるのだ』
映し出された映像はさっきのニュースよりも遥かに鮮明に映し出されてる。
数日過ごしたルテティアの綺麗な街並みが、暴走したLBXによって180度変わってる。
建物にはヒビが入り、窓ガラスは割られ、車は大破。街路樹とかも幾つか折れていたり倒されていたりしてひどい惨状だ。
そしてそれをしているのはルテティアにいるLBXプレイヤーのLBX。
『これ以上の破壊を止めたければ要求を聞け。農産品の輸出を即時止めよ』
「なっ!?」
「農産品の輸出の即時停止!?」
仮面の男の要求に衝撃を受けるクリスさんとシリウスさん。
フランスの農産品の輸出は世界随一だ。もし輸出が止まりでもしたら世界中に混乱が引き起こされること間違いない。
『考える時間を与えよう。リミットは5時まで。それまでは攻撃を中断する。だが、時間内に解答がなかった場合、今度はフランス全土がルテティア地区と同じになるだろう』
そう告げると仮面の男は画面から消え、テレビには元のルテティア地区の惨状が映し出された。
「5時・・・・・・」
今の時刻はフランス時刻で午後の1時前。
仮面の男の告げたリミットの5時まで後4時間しかない。
「クリスさん、すぐに行動に移ります!」
「待って!さすがにレイ君1人だけじゃ無理よ!」
「くっ・・・・・・!」
さすがに兄さんたちの援軍を待つ時間はない。
ならここは僕だけで解決しないと。
けど、クリスさんの言葉にも一理ある。さすがに広大なエリアを僕一人では探索しきれない。
せめてエリアを絞れれば・・・・・・!!
落ち着け!
昨日兄さんたちに言っただろう、『未知を既知に。油断大敵』だと。それを忘れるな。
自分に言い聞かせるようにして冷静を取り戻す。
「クリスさん、指令コンピューターの探査プログラムを送るので手分けして探しましょう」
「そうね・・・・・・シリウス、手伝いなさい」
「は、はい!?え、どうするつもりですか!?」
「決まってるでしょ。LBXの暴走を阻止するのよ!」
「え、えぇぇーーっ!!?」
あ、なんだろ。
目の前のシリウスさんが苦労人に見えてきた。
未だに卓上の空間ウインドウに映る紳羅さんは呆れたように溜息を吐いてるし。
「リズとレアにも手伝ってもらうから呼んできて」
「ちょっ!クリスさん!?!?」
次々と指示を出すクリスさんにツッコミの悲鳴をあげるシリウスさん。
僕が口を挟む間も無い。
『慣れろレイ。クリスの無茶振りは疲れるぞ』
「ぇー・・・・・・」
諦めたように告げる紳羅さんの言葉に唖然として答える。
『コッチも情報収集をする。気をつけろ』
「ええ。分かってます」
紳羅さんとそう会話して、紳羅さんとの通信を切る。
CCMを取り出し、昨日シーカー本部から送られてきた探査プログラムを起動させる。
「クリスさん、今から探査プログラムを送ります」
「わかったわ」
クリスさんも端末を取り出し、僕は通信で探査プログラムをクリスさんに送る。
少しして、窶れたような表情のシリウスさんに連れられて二人の女性。
金髪にセミロングのキリッとした白のレディーススーツを着た女性と、腰まで長い赤髪の優しそうな感じの黒のレディーススーツを着た女性が入ってきた。
「リズ、レア。二人ともシリウスから事情は聞いてるわね?」
「ええ」
「はい」
返事をした順に、金髪の人がリズさん。赤髪の人がレアさんなのだろう。
「3人とも端末を取り出しなさい。今から暴走してるLBXを操ってるコンピューターを探査するプログラムを送るわ」
凛と、さっきまでとは違い上に立つ者の風格を見せるクリスさん。
クリスさんは端末を操作して3人に僕が送った探査プログラムを転送する。
「それぞれ各地に別れて探索するわ」
「「「了解!」」」
「レイ君、なにか案はあるかしら?」
クリスさんを筆頭に3人の視線が集まる。
テレビを観て。
「この4区だということは、4区の何処かに必ずあるはずです。まとまって動くより、散開した方がいいかと」
「そうね。一応二人組に別れて動きましょう。リズとレアはXV区とⅩⅥ区。レイ君とシリウスはⅦ区とⅧ区で。私は上に連絡して政府にギリギリまで回答を待ってもらうよう伝えるわ」
「分かりました。見つけたら直ぐに連絡下さい」
「ええ。それじゃあ各員散開して捜索を始めて!」
「「「了解!」」」
クリスさんの指示の元、僕はシリウスさんと。
リズさんとレアさんの二組に別れて僕らは指令コンピューターを探しに街に出たのだった。
〜レイside out〜
〜バンside〜
「―――えっ!?ディテクターが今度はフランスで!?」
中国。シャンパオのタワー型遊園地ドラゴンタワーの屋上で、ディテクターに連れ去られたアミをスレイブ状態から助け出し、ディテクターがLBXをブレインジャックする前に、パンダ像の中にあった指令コンピューターを正常化させることに成功した俺たちは、ダックシャトルに戻り中にいたコブラからディテクターが今度はフランスでLBXの暴走を引き起こしたことを話した。
「ああ」
「大変じゃない!!急いでフランスに向かわないと!」
慌てるジェシカにコブラは。
「落ち着け。もう既に解決してる」
と告げた。
「え?」
「もう解決してるって?」
意味が分からないって顔をするヒロとラン。
「まさか、レイが?」
「ああ」
ジンの問いにコブラが頷いて返す。
「え?レイがって、どういうことバン?」
そうだった。
アミはレイが父さんの指示で動いていることを知らないんだった。
俺はレイが既に動いていることを知らないアミに、あの後のトキオシアからの事を話した。
「あ、あの子、相変わらず早過ぎない!?」
「あははは」
呆れたように。驚きながら言うアミ。
溜息を吐いて言うアミに俺は苦笑しかなかい。
「いや、イノベーターの時もそうだったけど・・・・・・」
頭に手をやって俺を見る。
「バン、あの子に会ったら無茶しないよう言っといて」
「ああ」
と言っても、俺たちもイノベーターの時とか色々無茶したからなぁ・・・・・・
遠い目をして思い返す。
総理暗殺阻止やエンジェルスターの件とか・・・・・・・あれやこれや。
あれ、無茶をしてた俺が言っても説得力ないんじゃ。
そんな俺の心情を察したのか。
「ま、まぁ、何時も無茶してる私たちが言っても意味ないかもだけど」
と同じく遠い目をしてアミが言う。
そんな俺とアミを見てジンは微妙な表情をし、ヒロ、ラン、ジェシカは疑問符を浮かべていた。
「とりあえず、俺たちは一旦日本に戻るぞ」
そうして俺たちはダックシャトルを発進させ日本に帰投。
アミを里奈さんたちシーカーにお願いする。
そのまま俺たちはNICSに戻ろうするのだが、なんと拓也さんも来るらしい。
そしてさらにもう一人。
去年のアルテミス決勝で戦ったイノベーターの灰原ユウヤが仲間に加わったのだ。
気配や様子が全く変わった灰原ユウヤに驚きながらも俺たちは拓也さんとユウヤとともにNICSへと戻った。
その後、俺とジン、ユウヤ、拓也さんはオメガダインへ潜入任務。
ヒロ、ラン、ジェシカ、コブラ、オタクロスはエジプトのカイルで新たに発生したディテクターによるLBXの暴走を止めに行動を移した。
結果的に俺たちの任務は政府に介入されて半ば失敗。
オメガダイン総帥のアラン・ウォーゼンと面会は出来、目的地の部屋は確認出来たが、そこにあったのはMチップの製造ラインでコンピューターとかシステムとかあった訳ではなかった。
ヒロたちの方は何とかLBXの暴走を止めることに成功したそうだ。
それぞれ役割を終えNICSで合流することとなり、分かれて1日経ち俺たちはNICSのエントランス付近で互いの再会を話し合っていた。
そこに。
「―――ええ。今着きました。―――はい。クリスさんは彼から聴けるようになったら事情聴取をお願いします」
「え」
聞き覚えのある。
久しぶりの生声を聞いた。
視線を声のした方に向けると視線の先には、黒の長ズボンに白のシャツ。そして白のシャツの上に膝まであるほどの長いコートを着て左手はキャリーケースを引き、右手は端末を持ち、通話してるのか耳に当て会話している人物がいた。
ガラガラとキャリーケースのタイヤの音が響く。
ヒロたちもその人物の方を向く。
その人物は俺たちに気づいてないのか、まだ通話を続けてる。
「うん。了解です」
そう告げ、その人物は通話を終えたのか端末をコートの内側に仕舞う。
「ん?」
そこでようやく俺たちに気づいたのかその人物は俺たちの方にやってきた。
「やっほー」
右手を振って挨拶してくる。
「え、えっと・・・・・・」
「だ、だれ?」
困惑するランとジェシカ。
「バンさん、お知り合いですか?」
「あ、ああ。知り合い、ていうか・・・・・・」
「山野レイ・・・・・・」
「山野レイ?それって・・・・・・!!」
「俺の弟、だ」
「「「えぇーーーっ!!!??」」」
ヒロ、ラン、ジェシカの驚きの声が響き渡る。
「ふふっ。はじめまして、山野レイです」
クスッと微笑んでレイは3人に挨拶をした。