ダンボール戦機 英雄の弟   作:ソーナ

78 / 120
回想 W―ディテクター編 Ⅸ 観戦と羨望

 

〜バンside〜

 

レイがヒロとラン、ジェシカとバトルする事になった時、俺は少し無謀なことをと感じつつも、ヒロたちが負けるかもという予想も感じていた。

俺たちが普段特訓とかで使ってるNICSの中にあるトレーニングルームへ向かう道中、俺はジンとユウヤと会話していた。

 

「まさかICPOとコンタクトを取っていたとはな」

 

「驚きだね。でもまぁ、彼なら納得するかも」

 

「最近俺、レイの兄だという自信が無くなってきてるんだ」

 

俺より優秀で何事も先を行く弟に、俺は兄としての自信を無くしかけていた。

いや、すでに日常から色々兄としての尊厳が無くなってるような気がする。

アミやカズにもレイがいないとダメなのか?って言われてたし。

 

「だ、大丈夫だよ!・・・・・・たぶん」

 

「ああ。バン君はちゃんと彼の兄をしている」

 

「ありがとう二人とも・・・・・・」

 

慰めてくれる二人に感謝しながら、どんよりとしながらトレーニングルームへと向かう。

ルームに着き、早速Dキューブの前で準備をする4人。

 

「なぁ、バン。レイってどれくらいのレベルなんだ?」

 

4人を見ているとコブラが訊いてきた。

 

「あの歳でヨーロッパエリアのチャンピオンの称号を勝ち取ったのだ。弱いわけがないとは思うが・・・・・・」

 

カイオス長官も腕を組みながら言う。

レイのレベルか・・・・・・

 

「レイの基本戦闘スタイルは攻防一体。万能型です。僕でも勝てる確率は半々かと」

 

「俺もそうだ。今のレイとまだ戦ってないから分からないけど、これまでのトータルでも負け越してるし」

 

「ジンくんとバンくんがそこまで言うなんて・・・・・・一体何者なんだいレイくんって・・・・・・」

 

驚嘆しながら呟くユウヤ。

 

「ハッキリ言って、レイは俺たちの認識を大きく超えてる規格外だと思った方がいい。油断してると足元をすくわれる」

 

「さすが山野博士の子供ってか?バンもバンもだが、レイはレイでバンとは別格だぜ」

 

「レイはどちらかと言うと母さん似なんですけどね」

 

過大評価されても反応に困るんだよなぁ。

レイと比べたら俺なんて・・・・・・

自虐気味になりかけていたところに。

 

 

「両者用意は良いでヨ?」

 

 

オタクロスがレイたちに確認していた。

 

 

「大丈夫」

 

「はい!」

 

「いけるよ!」

 

「ええ!」

 

「それでは、始めるでヨ!!」

 

 

オタクロスの開始の合図でヒロ、ラン、ジェシカがLBXを同時にDキューブのフィールドに投下した。

 

 

「[ペルセウス]!」

 

「[ミネルバ]!」

 

「[ジャンヌD]!」

 

 

ガシャん!と3機の着地する音がする。

そしてレイのLBXは―――

 

 

「疾く来たれ!―――[エレボス]!!」

 

 

黒銀を基調とし、羽織るように表に白、裏地に蒼銀色のマントが靡く。

武装はレイの前の相棒たる[カオス]や、ペルセウス同様二刀流の双剣。

細身で黒と白の、対を成す双剣を携えてる。

 

「あれが父さんがレイに託した、4体目・・・・・・」

 

初めて見たレイの新たな機体。

 

「エレボス・・・・・・ギリシャ神話の暗黒地下世界を司り、原初の神の一柱か・・・・・・」

 

「バンの[エルシオン]が楽園を意味するなら、レイは反対の地下世界ってところだな」

 

「バン君とレイ君二人を表す、まさに表裏一体と言うことか」

 

拓也さんたちがレイの新たな機体エレボスを見て呟く。

表裏一体か・・・・・・

 

「性能は未知数だが、山野博士の設計だ。そんじょそこらのLBXとはポテンシャルが違うはずだ」

 

ジンも俺と同じことを思ったのか言う。

やがてレイが。

 

 

「さぁ、始めようか」

 

 

と、冷たい口調で3人に言った。

 

 

「「「っ!!」」」

 

 

ヒロたちがビクッとするのと同時に、俺たちも背筋に氷を当てつけられたような寒気が走った。

 

「な、なんだ今のは・・・・・・?」

 

「今一瞬、彼からとんでもない寒気を感じたが・・・・・・」

 

「まるで氷を背中に当てられたような感覚だ・・・・・・」

 

初めてレイの冷たい気配に当てられたコブラたち。

俺やジン、拓也さんは慣れてるから大丈夫だが、初めての人はコブラたちと同じような反応だろう。

そうしてレイ対ヒロ、ラン、ジェシカのバトルが始まった。

始まるやいなや、早速レイが先制攻撃を仕掛けた。

しかも―――

 

 

「必殺ファンクション!!【アタックファンクション!ライトニングフォール!!】」

 

 

開幕初っ端から必殺ファンクションを放ったのだ。

エレボスの、地面に突き刺した右の黒剣から雷撃が走り、ペルセウスたちのいる場所へと迫る。

当たる直前にペルセウスたちは三方に散り避けたが、ヒロたちはいきなりの必殺ファンクションに驚愕していた。

 

 

「うん。さすがにこれは躱せないとね。もし今のを食らってたら今ので勝負ありだったよ」

 

 

クスッと微笑を浮かべてヒロたちに言うレイ。

 

「おいおい。開幕初っ端から必殺ファンクションかよ」

 

マジか、と唖然するコブラ。

 

「基本、始まってすぐ必殺ファンクションを放つプレイヤーは全くいない。開幕初っ端から必殺ファンクションを放たないだろうという相手の心理を逆手に取った行動か」

 

「ああ。それにあの必殺ファンクションを食らったら、レイの言う通り今ので勝負ありだった」

 

ジンと俺はレイの行動を分析する。

 

「確かあの【ライトニングフォール】は、当たった相手にスタンを発生させる技だ。スタングレネードと同じ効果を持つ上に、効果範囲も射程距離も広い。ギリギリだったな」

 

把握してるレイの必殺ファンクションを見て拓也さんも冷静に分析する。

そうしてレイのエレボスはヒロのペルセウス、ランのミネルバ、ジェシカのジャンヌDを相手に大立ち回りを繰り広げた。

1対3という数の不利を全くものともせず、フィールドをフルに活用して無駄なく動いていた。

最初にやられたのはジャンヌDだった。

無数に放たれた弾丸すべてがレイのディフェンス型の必殺ファンクションによって防がれ、動揺して一瞬動きが鈍ったところを突かれた。

次にやられたのはミネルバ。

ジャンヌDがやられたことに直情的になり、感情のまま愚直に突っ込み、わざと隙を作らされたことにも気づかず必殺ファンクションを放ち、見事にかわされた上にカウンターの必殺ファンクションによる四連撃を全て食らってブレイクオーバーした。

あっという間に2機をブレイクオーバーにし、ペルセウスとの一騎打ち。

 

「流石だな。ジェシカとランの弱点をほんの僅かな間に見抜いた」

 

「うん。最初にジャンヌDを倒したのは後々面倒ってのもあるだろうけど、ミネルバを倒す計算の内だったのかもしれないね」

 

「ああ。ジェシカの記憶力は時間が経つほどに動きが見切られるからな。ランはその性格上突っ込まずにはいられないだろうし」

 

ジン、ユウヤ、俺は今の戦闘を考察する。

 

「攻撃力、防御力に速度。それに加えてレイ自身による観察力と洞察力が相まって普通じゃ考えられないレベルになっているな。この半年でさらにレベルアップしている」

 

「ええ」

 

一体どんな半年を海外放浪で過ごしてきたのか・・・・・・

 

「エレボスとペルセウス。どちらも武装は双剣か・・・・・・」

 

エレボスとほぼ互角に渡り合ってるペルセウス。

その場から移動するエレボスを追いかけるペルセウス。

エレボスは高台の壁を蹴り、立体機動の如く三次元機動でペルセウスを攻撃する。

そんなエレボスの攻勢をペルセウスはギリギリのところで防いでる。

そんなペルセウスも少しずつだがエレボスの動きに付いていってる。

しかも段々と早くなってきてる。

 

「エレボスの速度に追いついてる、だと?!」 

 

「ヒロ・・・・・・」

 

レイの操作速度に追いつき始めてるヒロの操作速度に驚嘆する。

ヒロは今この瞬間にも経験値を得て、それを糧としている。

 

 

「面白いっ!!」

 

 

ニヤリっ、と笑みが洩れるレイ。

そのレイの背後に一瞬、何か黒紫色の何がが視えた気がした。

 

「?どうしたバンくん」

 

「いや、今一瞬レイの背後に・・・・・・」

 

怪訝そうに訊いてきたジンにそう言うが、すぐに、なんでもないと言った。

たぶん気の所為だろう。

疲れてんのかな?

そう思ってる最中にもレイとヒロのバトルは白熱していく。

 

 

「ついて来れるかなヒロ!」

 

 

楽しそうに言うレイは、さらにギアを上げ、フィールド全体を利用して高台や平原で攻防を斬り結ぶ。

少しずつだがペルセウスの攻撃がエレボスに入ってる。

さらにそれに伴ってペルセウスの動きが徐々に洗練され無駄が無くなって来てる。

だが、レイの炎も燃え滾ってきたのか、さらに操作速度を上げペルセウスの先をさらにいく。

そんな高速戦闘の後、両者が距離を取り。

 

 

「「必殺ファンクション!!」」

 

 

両者同時に必殺ファンクションを発動させた。

 

 

「【アタックファンクション!コスモスラッシュ!!】」

 

 

「【アタックファンクション!真―ヴォーパル・ストライク!!】」

 

 

ヒロは【コスモスラッシュ】を。

レイはLEXから受け継いた【ヴォーパル・ストライク】を。

ペルセウスの双剣にエネルギーを溜めて放たれた斬撃と、エレボスの右の黒剣から深紅に染まる一条の光槍がほぼ同時に放たれた。

放たれた二つの必殺ファンクションはエレボスとペルセウスの間で拮抗する。

衝突によって眩い閃光が周囲を包むが、レイもヒロもそんなの気にしてない感じだ。

二つの必殺ファンクションがしばしの鬩ぎ合いをし、やがて深紅の槍が斬撃を貫きペルセウスを穿いた。

穿く寸前、咄嗟にペルセウスは双剣のクロスガードで防いだが、勢いよく吹き飛ばされ、空中で青白いエフェクトを発生してブレイクオーバーとなった。

 

 

「ふぅ」

 

 

緊迫した空気が終わりレイが息を吐く。

 

 

「負けました・・・・・・バンさんの言ってた通り、強いですレイさん!」

 

「あははは。ありがとう。でも、世界には僕より強い人なんていっぱい居るから。兄さんやジンとは本気で戦ったことないでしょ?」

 

「ま、まぁ・・・・・・」

 

「一度本気の兄さんたちと戦ってみたら良いよ。僕より凄いから」

 

「はいっ!」

 

 

レイとヒロが話す中俺たちは今の戦闘を見て驚嘆に震えた。

 

「レイ、さらに強くなってる・・・・・・」

 

俺の記憶だとあの【ヴォーパル・ストライク】は《改》だったはずだ。

だが、さっき見せた【ヴォーパル・ストライク】は《改》ではなく、《真》。

威力も《改》とは段違いだった。

技の進化。

レイが辿り着いた、技を超えた技。

 

「レイ・・・・・・檜山が辿り着けなかった技の進化を、さらに進化させたのか・・・・・・」

 

拓也さんの呟きが耳に入る。

LEXが到達出来なかった場所・・・・・・

 

「レイ・・・・・・お前はどこまで強くなるんだ・・・・・・」

 

未だに底の見えないレイに俺は少し恐れ慄いた。

俺にしか見えなかったであろう、一瞬だけ見えたあの黒紫色の何か。

驚嘆する俺を他所にオタクロスがアングラテキサスに向けてのペアを発表した。

俺はヒロと。ジンはジェシカと。ユウヤはランとペアになった。

そうして俺たちはそれぞれペアに分かれアングラテキサスに向けて特訓を開始した。

途中何度かレイがヒロたちそれぞれと戦ったけど、その全てに勝ってた。

ちなみに武器はそれぞれ相手に合わせたパターンもあり、ヒロはレイと同じ双剣なので変わらないが、ジェシカには二丁拳銃。ランにはナックルだったりと。

中でも驚いたのはジェシカに二丁拳銃で相手した時、思いっきり二丁拳銃で格闘戦をしたことだ。

それを見た時全員、は?と唖然した。

いや普通、銃で格闘戦なんかしないでしょ?

なのだがレイは二丁拳銃でジェシカに遠距離戦ではなく接近戦。

銃で殴り付けたりしたのだ。

その事に対戦したジェシカが大いにビックリしていた。

確かに接近して弾丸を放った方が命中率は高いけど、普通銃で格闘戦するか!?

一体どこでこんなの教わったのやら・・・・・・

しかもそれに飽き足らずガン=カタまでやり出す始末。

うん。俺、レイの兄である自信なくしそう・・・・・・

 

〜バンside out〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜レイside〜

 

 

 

「―――レイ、いくらなんでもやり過ぎではないでヨ?」

 

「そう?」

 

ヒロたちとのバトルも終わり、兄さんたちの補佐をしたりカイオス長官にルテティアでの事を話したり、クリスさんたちの仲介をしたりした数時間後、僕はNICSの中にあるオタクロスの部屋にオタクロスと二人でいた。

ちなみに少し部屋が汚かったので簡易的な掃除はした。

潔癖症って訳じゃないけど、いくらなんでもあちこちに無造作に置かれてはなぁ・・・・・・

 

「普通、遠距離武器の銃で格闘戦なんかせんぞ?」

 

「でも銃での格闘戦は禁止って決められてないでしょ?」

 

「それはそうじゃがの〜・・・・・・」

 

「それに以外に打撃武器として優秀だよね」

 

「いや、普通は格闘戦はせんぞ?」

 

オタクロスがツッコミをしてくるが・・・・・・

 

「でも、八神さんも普通に両手銃で格闘戦してたよ?」

 

両手銃がメイン装備の八神さんのLBX[ジェネラル]。

遠距離武器を装備しているからと侮るなかれ。

普通に近接戦でも強い。

のだが、クセが強くて誰にでも扱える訳では無い。

ハッキリ言ってこんなピーキーな機体を使ってる八神さん、マジで凄いと思う。うん。

 

「はぁー。ヤレヤレじゃな。まぁ、それはそれはさておき、レイ」

 

「ん?」

 

「ちぃと、ワシとバトルするでよ」

 

「・・・・・・分かった」

 

オタクロスの展開したDキューブを挟んで僕とオタクロスで対面する。

 

「疾く来たれ!―――エレボス!!」

 

「[パーフェクトZX4]!!」

 

「パーフェクトZX4?」

 

オタクロスの出したLBXはパーフェクトZX3と同型のカラーリングが黒とオレンジのLBXだった。

 

「パーフェクトZX4は従来のLBXの3倍のスピードと400倍のパワーを誇るでヨ!」

 

「・・・・・・脳内設定で、でしょ?」

 

「先に言わんで欲しいでヨ〜」

 

涙目で言うオタクロス。

だが、その脳内設定程ではないが、かなり強いのは知ってる。

しかもパーフェクトZX3の強化型のZX4ならさらに強いはずだ。

 

「レイ、本気で来るが良い」

 

「・・・・・・使っていいんだね」

 

「うむ!」

 

「分かった。なら―――」

 

少し目を閉じ、ゆっくりと開ける。

 

「本気で行くよ!!」

 

「来るでヨ!!」

 

久しぶりの本気も本気の全力で、僕はオタクロスのパーフェクトZX4との戦闘を始めた。

エレボスの双剣、『ノワール』と『ブラン』とパーフェクトZX4の大きな剣のような武器が、Dキューブの展開するフィールドの城塞の中央でぶつかりあった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。