ダンボール戦機 英雄の弟   作:ソーナ

79 / 120
回想 W―ディテクター編 Ⅹ 無法者どもの戦技場(アングラテキサス)

 

〜レイside〜

 

ピッピッピッピッ。

CCMのボタンを操作する音が二つ。

僕のCCMとオタクロスのCCMから聴こえる。

操作音とともに互いのLBX、[エレボス]と[パーフェクトZX4]が動く。

パーフェクトZX4は巨体であるが、その速度は並のLBXの比じゃない。

攻撃力も高く、一撃でも食らったらヤバイ程だ。

ZX3の強化型と言うだけあって、かなりの強さだ。

対するエレボスも二本の剣、右の黒剣『ノワール』と左の白剣『ブラン』を振るい、パーフェクトZX4の剣を受け止め、流して去なす。

 

「ホント・・・・・・強いっ・・・・・!!」

 

歯を食いしばりながら先の先を読むが、オタクロスはその先が見えない。

もし普通にアルテミスとかの大会に出てたら、余程のことをしない限り大会を総ナメするはずだ。

3体のLBXを同時に、一人で扱うテクニックに反応速度。

そして先眼。

どれも年の功といえるほどに熟練度が高い。

 

「どうしたデヨ?そんなもんかデヨ」

 

「ははっ!面白いっ!!!」

 

喋りつつも油断しないで斬り結ぶ。

ギアをさらに上げ加速する。

だんだん視界の風景がスローモーションになってくる。

いや、もう既にスローモーションに入ってる。

『ノワール』でパーフェクトZX4の右足部を斬り付け、パーフェクトZX4の背後に回り込み『ブラン』で連続突きをする。

意識がどんどん吸い込まれていく。

パーフェクトZX4の大剣を弾き、空いた胴体を連続で斬り付け距離取る。

距離を取るや、一瞬で視界外に入り込み斬撃を浴びせる。

相手の。パーフェクトZX4の動作が手に取るように解り見える。

すでにエレボスの速度は神速と見紛う程に到達している。

黒剣の『ノワール』と白剣の『ブラン』を自由自在に、自分の手足のように振るう。

 

「むむむっ・・・・・・!!」

 

小さく唸り声を上げるオタクロス。

久しぶりのこの感覚。

高揚する。

エレボスの振るう『ノワール』と『ブラン』が次々とパーフェクトZX4の巨体を攻撃し、ついには膝をつかせた。

 

「なぬっ!?」

 

膝をつかせた隙を逃さず。

 

「必殺ファンクション!!【アタックファンクション!ナイトメア・レイン!!】」

 

深紅に染まった双剣から16連撃の斬撃が放たれる。

【スターバースト・ストリーム】と同じ16連撃だが、威力は僅かに劣る。

が、汎用性ではこちらの方が高い。

特化型の【スターバースト・ストリーム】に対して汎用型の【ナイトメア・レイン】。

膝をつき、動けないパーフェクトZX4にエレボスが繰り出す【ナイトメア・レイン】16連撃による全方位からの斬撃の雨が、次々と当たりラスト一撃でパーフェクトZX4は蒼白い光を放ってブレイクオーバーした。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・まさか、これ程とはのぉ〜」

 

顎髭に手をやりながら呟くオタクロス。

パーフェクトZX4がブレイクオーバーするのと同時に視界の風景が元に戻った。

別の時間軸にいた感覚から、元の時間軸に戻ったような感じだ。

それと同時に軽い頭痛のような感覚が身体に走った。

幸い表情に出すことなく、一瞬で治まったが。

 

「ふむ。成長したのうレイよ。じゃが、コントロール出来てはおるが、イマイチ全力を出し切れておらん」

 

「うっ・・・・・・」

 

オタクロスの指摘にぐうの音も出ない。

もし本気の全力を出したら僕が僕じゃいられないような感じがたまに来る。

最近だと、視覚や聴覚が異様に鋭敏になって来ているような気もするし。

 

「お主がそれを恐れることも分かる。じゃが、全部をコントロールしてこそ、完全と言えるでヨ!」

 

「ぅ〜・・・・・・」

 

オタクロスの見事なまでの言葉に小さな唸り声が出る。

確かにオタクロスの言う通りなんだけど〜。

 

「まぁ、お主はまだ10歳じゃ。こんな事を言うのも酷というものではあるデヨ。じゃが、近い将来、お主はそれを完全に使いこなせなければならない事が必ずあるはずデヨ」

 

「判ってる」

 

使う度にどんどん感覚が鋭くなってる。

けど、それと同時にLBXの操作や、LBXが伝えたい事などが感じ取れる。

 

「レイよ。それを使う判断はお主に任せる。お主の判断で使うデヨ」

 

「うん」

 

「わしも可能な限りお主の特訓には付き合うデヨ」

 

「あははは。お願いするよオタクロス」

 

「うむ!」

 

さすがに兄さんたちにはお願い出来ないからなぁ。

LBXを回収して、オタクロスの意見を聞きながらエレボスの調整などをし、僕はNICSから与えられた部屋に戻り床に着いた。

横になった際、疲れていたのかすんなりと深い微睡みの中へと落ちていった。

 

〜レイside out〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜オタクロスside〜

 

レイがわしの部屋から出て行ってしばらくした後、わしはレイとのバトルで使用したパーフェクトZX4の傷を見た。

 

「パーフェクトZX4はZX3よりはるかに性能が高いはずなのじゃが・・・・・・」

 

ZX4の右足。

ヒトで言うところの膝関節部分を見る。

そこはカバーパーツが破損し、コアスケルトンが剥き出しになっている。

しかも関節部からはスパークが小さく発生している。

最低でも、バンたち3人じゃないと倒せないほどのスペックを有しているのではあるが・・・・・・

 

「1年前と比べてはるかにレベルアップしておった・・・・・・。もしあ奴が本気でやってきたら、わしは手も足も出んかったじゃなろうナ」

 

互角に戦えたのは、レイが無意識に手加減をしていたからにほかならない。

自分自身は気づいておらんようだったが。

あれはレイの優しさを示すものだ。

 

「ああは言ったが、正直無理はしてほしくないのォ〜」

 

ZX4を大型コンソールの真横に置き、ついさっきの戦いの録画データを観る。

 

「銀の瞳・・・・・・」

 

最後らへん、レイの瞳はレイ本来の瞳の色である黒から銀色に変わっていた。

いや、より正確にいうのなら、銀色に近いクリアな透き通った白銀かの?

それに。

 

「気の所為では、なかったようじゃの〜・・・・・・」

 

レイの背後にほんの数秒だけ、陽炎のような黒紫色のなにかが出ていた。

 

「一体なんじゃこれは・・・・・・」

 

気の所為かと思ったが、改めて見て気の所為では無かったと解る。

 

「レイ自身も気づいておらんようじゃし・・・・・・」

 

レイがヒロやランたん、ジェシカたんとのバトルをせんかったら、わしがバトルの提案をするところじゃった。

結果的にレイはヒロたち3人を相手しても問題ないくらい(手加減して)じゃった。

ヒロはカイルで心境の変化でもあったのか、以前より強くなっておった。

逆にランたんとジェシカたんはまだまだ甘い。

それを見事に指摘してくれた。

ホント・・・・・・

 

「わしの弟子では無いが、さすがわしが認める弟子じゃな」

 

わしは1年前のことを思い返す。

それは今は亡き、悠介氏が亡くなる数日前のこと。

アキハバラキングダムが始まる前日、わしは悠介氏と密会をした。

それはレイについてじゃった。

 

「悠介氏よ。わしがお主の分まであ奴を正しく導いてやるデヨ。お主が言った希望の光をのォ」

 

わしも悠介氏もレイが希望の光だと感じ取った。

もちろん、バンやジンも希望の光なのじゃろう。

じゃが、その希望の光を導く先導者をレイに感じた。

恐らく、これから先あ奴は様々な人を導く先導者になるのだろうの。

それが何時なのかは解らんが。

コンソールを操作し、今観ていたバトルの画像を消去(デリート)する。

これはわしが伝えることでは無いと感じたからじゃ。

今のわしにはせいぜい、レイの成長を見守るぐらいしか出来ん。

あ奴が壊れたりしないためには、やはりメアたんやキヨカたんとかじゃないとダメじゃな。

レイを理解している者でなければ。

 

「わしも、出来うる限りのことをせねばな」

 

そう呟き、わしは長官から送られたフランスでの、レイとディテクターとの戦闘報告書をコンソールからスクロールした。

 

〜オタクロスside out〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜レイside〜

 

 

僕がNICSに来て、アングラテキサスにヒロ、ラン、ジェシカの3人が参加するのが決まって数日後。

僕らはアングラテキサスの開催される、Tシティにある荒野に来ていた。

 

「ここが・・・・・・アングラテキサスの会場?」

 

目の前にあるタワー型の崖を前にしてジェシカが呟く。

手が施されているとはいえ、大半が自然の産物であり長い年月を得て出来たものだとひと目でわかる。

 

「いよいよ修行の成果を発揮する時が来ましたねぇ!!武器の選び方や距離の取り方。バンさんやレイさんからバッチリ教わりましたから!!」

 

張り切るヒロ。

そのヒロに対し女子2人は。

 

「へぇ、ちゃんとやったんだ」

 

「え??」

 

「真面目ね〜。ヒロは」

 

「あの・・・・・・コーチとの特訓は・・・・・・?」

 

「あたしはあたしの戦い方で行くよ〜」

 

「私は必要ないの。強いから」

 

「そんなぁ〜。師匠と弟子の特訓は盛り上がるイベントなのに・・・・・・」

 

である。

ちゃんと特訓をしていたヒロに対して、ランとジェシカはあんまりしてないのだ。

強制的に僕と戦わせたが、その全てで僕が勝った。

正直、今の2人だとこのアングラテキサスで勝てる見込みは低いんだけど・・・・・・

特にジェシカの私は強い、という自己やランの猪突猛進の戦い方をどうにかしないと、これからの戦い。

アルテミスやディテクターの戦いで足でまといになるのが目に見えている。

ガクリと肩を落とすヒロ。

ランとジェシカ、2人のコーチだったジンは険しい表情を。

ユウヤは難しい顔をしていた。

2人とも結構苦労していたからなぁ。

 

「はぁー。一度ランとジェシカにO☆HA☆NA☆SHI☆した方が良かったかなぁ〜」

 

ボソッと呟く僕に、兄さんとジンはビクッ!?とし、ユウヤとヒロは怪訝な顔をしていた。

 

「れ、レイ。お願いだからお話だけは勘弁してくれ」

 

「???」

 

何故か必死に懇願する兄さんに首を傾げる。

何故だ?

 

「まぁ、とにかく。ジンとユウヤはあの2人のことお願いね」

 

「ああ」

 

「うん」

 

「ヒロ、頑張ってね!」

 

「はいっ!レイさんから学んだこと、アングラテキサスで実践してきます!!」

 

「うん!」

 

ヒロの反応を見ていると純粋に嬉しくなる。

教えたかいがあったもんだよ〜。

 

「さてと」

 

「ん?レイ、どこか行くのか?」

 

「んー、ちょっとね。あ、大丈夫。アングラテキサスはちゃんと観るから」

 

そう言って僕は兄さんたちと別れて、昨日の夜ある人物から送られてきた場所へと移動する。

その場所に着き、設置されているエレベーターに乗り込み階上へと登る。

ピコン、と到着する音が鳴り、エレベーターの扉が開く。

エレベーターから降り室内に入ると、そこには一人のふくよかな女性がワインレッドのドレスを着て、豪華な椅子に腰掛けていた。

すぐ側にある小さな机にはワインボトルとワインの入ってるグラスが。

女性は僕に気づくと。

 

「よく来てくれたわねレイ」

 

と挨拶した。

 

「お久しぶりです。―――マダム・ブルホーン」

 

彼女の名前はマダム・ブルホーン。

このアングラテキサスの主催者だ。

彼女自身もLBXプレイヤーではあるが、なにより彼女は熱き血肉沸き踊る闘いが大好きなので、この超過激ななんでもありのLBX大会アングラテキサスを開催している。

ちなみに結構なお金持ちである。

 

「堅苦しい挨拶は要らないわ。貴方とのバトルは今でも思い出すぐらい熱き戦いだったもの」

 

「あははは」

 

自身の両肩を抱き、思い返して興奮するマダム・ブルホーンに苦笑する。

マダムとは半年前、A国に来た際バトルした。

正直あの時は結構ギリギリだった。

 

「まあ、座って。飲み物はジュースでいいかしら?」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

マダムと対面するように、反対側の椅子に座る。

 

「貴方の活躍は耳に入っているわ。ヨーロッパエリアチャンピオンおめでとう。Congratulation!!」

 

「ありがとうございますマダム」

 

「さぁ、挨拶はこのくらいにして。貴方を呼んだのは貴方にお願いされていた情報の提供のためよ」

 

「っ!」

 

ちなみに、こう見えてもマダムは裏社会にも通じてるという情報屋でもある。

そのため、僕はマダムにあるお願いをしていた。

 

「貴方の探してる人物を最後に確認したのは、Lシティよ」

 

「Lシティ・・・・・・オメガダインがある所か・・・・・・」

 

クリスさんから提供された情報と、マダムからもたらされたこの情報である程度は絞り込めた。

もっとも、その情報の年月によっては変わるけど。

 

「ええ。・・・・・・Mチップについては私も聞いてるわ」

 

「マダムはオメガダインについてどう思いますか?」

 

「・・・・・・正直、どうも怪しいわね。情報に拠れば、先日のNシティで起こったLBXの暴走。暴走したLBXに向けて停止信号を送ったそうだけど、どれも受け付けなかったそうよ」

 

「つまりそれは、本来機能するはずのシステムが機能していなかった、ということですね」

 

「ええ。私の勘だけど、Mチップにはなにか別の役割があるのではないかと思うわ」

 

「別の役割・・・・・・」

 

「ええ」

 

マダムの言葉に僕は背中に汗が流れる。

これは、クリスさんや紳羅さんたち。

八神さんや父さんにも言っておいた方がいいかもしれない。

マダムの言葉に沈黙が少しの間その場を支配する。

その支配を破ったのは、マダムの真横に出たひとつの空間ウインドウだ。

 

『まもなく時刻となります』

 

「ええ、分かったわ」

 

どうやらアングラテキサス開催の時刻になったらしい。

 

「レイ、ちょっとお願いがあるのだけど構わないかしら?」

 

「?なんですか?」

 

マダムからのお願いとは・・・・・・

 

「アングラテキサス開催の開会式で貴方に参加者に発破を掛けて欲しいのよ」

 

「分かりました。いいですよ」

 

「ありがとう〜。あ、ここで観戦してもらって構わないわ」

 

「はい。お気遣いありがとうございます」

 

マダムの厚意に預かり僕はこの部屋で観戦することになった。

そして開催の時刻なり。

 

「ようこそ!命知らずのLBXプレイヤーたち!!」

 

兄さんたちがいるステージに6つの。

六角形になるよう空間ウインドウが現れマダムが挨拶をする。

 

「お前たち、やっとこの日が来たわねぇ!!」

 

参加者だけでなく、観戦者の熱狂の声がこっちまで聞こえてくる。

 

「ここはアングラテキサス。荒くれ者たちが集う無法者の荒野よ〜。私はこの大会の主催者、マダム・ブルホーン。よぉく覚えておきな〜。私はLBXバトルが大好き!血を沸騰させてくれる、熱いバトルがねぇ〜!!さぁ、戦いなさい!潰しなさい!!優勝者には褒美として、アルテミスへの出場資格をくれてやるわっ!!!」

 

マダムの最後の言葉にさらに会場のボルテージがヒートアップ。

さらなる歓声の声が上がる。

 

 

『それでは、ルールの説明を致します。予選は、1~10までのバトルステージで行われます』

 

マダムの映ってるウインドウとは別の小さなウインドウが現れ、そこには解説者のアンドロイドが映っていた。

小さなウインドウの画面には右回りに1、2、3〜、とステージナンバーが表記されてる。

 

『どのステージで戦うのかは、各プレイヤーのCCMにステージナンバーが送信されますので、それに従いいただきます。プレイヤーは指示されたステージでバトルを繰り返し、10人を倒したプレイヤーが決勝に進出することが出来ます。ただし、決勝に進出出来るのは3人。早い者勝ちとなります。一度でも負けたらTHE END(ジ・エンド)。引き分けの場合も同様です。10人勝ち抜きの、LBXガンスリンガーバトル、まもなく開始します』

 

 

解説者のウインドウが消え、マダムが言う。

 

「さらに今回は、特別ゲストに挨拶を貰うわ!!」

 

そうマダムが言うと、画面が僕に移る。

 

「彼は山野レイ。欧州地区(ヨーロッパエリア)チャンピオンよ!!」

 

どうやらその特別ゲストとは僕のことらしい。

マダムの紹介に歓声の声が響く。

立ち上がり、アングラテキサス開催に相応しい言葉を告げる。

 

「アングラテキサスは史上最凶の破壊の祭典!"ルールが無いのがルール"のLBX大会だ!!プレイヤーはそれぞれの腕を。知識を。経験を、全てを振るい、観戦者はプレイヤー同士の熱き血肉沸き踊る戦いを興奮し、熱狂しようじゃないか!!!」

 

1年前。

LEXがアングラビシダス開催の時に告げた言葉を思い出して言う。

 

「さぁ、プレイヤー諸君!!存分に戦い、存分に壊し、破壊しろ!!我々の魂に響くような熱き闘いを、篤と見せつけるがいい!!!」

 

大きく身振りをして最後に握り拳を強く。

高く掲げ上げて宣言した。

 

「アングラテキサス。LBXガンスリンガーバトルの開幕だっ!!!!」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。