~レイside〜
「おはようございますトメさん」
ある日の朝、ダック荘の食堂に僕はいた。
「おや、レイ。おはようさん。随分早いね」
「いえ、ちょっと早く目が覚めちゃいまして」
「ははは。それじゃあちょっと手伝ってもらっていいかい?」
「はい。もちろん!」
「いつも悪いねぇ」
「いえ、トメさんには僕らの特例の件で色々便宜を図ってもらってますから」
この学園に入学する際、僕らは特例をもらっている。その特例とは、本来ランダムで分けられるはずの所属仮装国を僕ら四人は一つのパーティとして所属すること。そして有事の際、僕ら本来のLBXを使用すること。最後に、僕らを一緒に過ごさせること。ちなみに司令官の資格はいつの間にか取得していた。いや、多分、日暮先生があれだからだと思うけど。
一つ目と二つ目は何とかなったけど、最後のはトメさんに話を通して一緒に居させて貰えることになった。
ルナは言わずがな、フランも色々問題があるからね。
「ルナは大丈夫かい?昨日届いた薬は渡したけど」
「ええ。大丈夫です」
ルナの身体はオプティマによって動けるようになったが、今でも定期的に処方されてる薬を飲まないとならない。この島ではその薬は手に入らないため、船で送ってもらうしかないのだ。送り主はルナの姉である里奈さんだ。そして、送り先をこの寮にしてもらい、トメさんが受け取り直接ルナに渡してもらってる。
「そうかい。この寮にいる限りここの子はあたしの家族だからね」
「色々ありがとうございますトメさん」
朝食の準備を僕はトメさんとともにして、フランたちを起こしに行った。
「フラン、ルナ?」
部屋割りは男子の僕一人部屋で、フランとルナの二人部屋。メカニックであるメアの一人部屋だ。
フランとルナの部屋をノックする。ノックするが返事がない。
「まだ寝てるのかな・・・・・・先にメアを起こすか」
隣の部屋にいるメアを呼ぶと、起きたばかりなのか寝癖が凄いことになってる髪をしながらメアが出てきた。
「ふぁあ〜。おはよう〜、レーく~ん」
「うん。おはようメア。まずは顔を洗って髪を整えようね」
「ふぁぁい」
相変わらず朝が弱いメアに苦笑しつつ再度フランとルナを起こす。
「フラン〜?ルナ〜?」
呼びかけるが返事はない。心配になり。
「二人とも、部屋入るよ?」
鍵を開け二人の部屋に入る。(既に何度も入ってる)
部屋の中は整理整頓されていて服も教科書もキチンと整えられていた。フランの方は花をモチーフにした柄が多く。ルナの方は月をモチーフにした柄が多い。
ルナのおでこに手をやり熱を測る。
「少し熱い・・・・・・。後で体温計貰ってこないと。フランは・・・・・・」
フランを見ると少しうなされてるのか、時々苦痛の表情を浮かべていた。
「もしかしてまた・・・・・・」
幾らフランはフラン自身によって自分の元いた世界の歴史を改変したとはいえ、フランの記憶には改変前の記憶が残ってる。今でも偶に改変前の記憶を思い出すし夢に見る。最近はルナやメアのお陰で見てないと思ったんだけど。
「レーくん、フランちゃんとルナちゃん起きた〜?」
「メア」
部屋に入ってきたメア。
既に着替え終わっており、ハーネスの紫の制服を着ていた。
メアはルナとフランに目をやり、フランの様子にすぐに気づいたのか。
「・・・・・・フランちゃん、もしかしてまた・・・・・・」
何時もののんびりとした口調じゃなくて、素の口調になった。
「みたい。ルナは微熱だと思うけど、一応トメさんから体温計を借りてきてもらえる?」
「分かった」
メアが部屋から出ていくのを見送りながら、うなされているフランの手を握る。
「っ!!」
フランの手を握った瞬間、頭の中に様々な映像が流れ込んできた。
「っ・・・・・・はっ!」
左手で頭を押さえ息を整える。が、今頭の中に流れ込んできた映像に吐き気が催してきた。
「今のはフランの・・・・・・!」
今頭の中に流れ込んできた映像はフランの記憶。
それも、両親と別れさせられ人体実験の日々を送らされていた記憶の一部だ。
前にもフランが無意識に記憶を流してきたことがある。その時は寝込み、吐き気が止まらなかった。ありえない。アレが人のする所業かと、何度も問答した。
流れ込んできた記憶映像に映ってる大人たちは身勝手で、『どうせ親は『セブンス』である子供を化け物と思っているから恐れて我々に預けた』や『『セブンス』のレッテルがある以上子供たちは普通の生活は送れないから国家の為に力を使うことのほうが親としても子を産んだ喜び』や『あの子たちはしょせん道具』。と自分勝手なことばかり言っていた。
ああ、これを聞くとレックスや真実さんがやろうとしていたことが実感できる。二人とも子供の頃に醜い大人たちによって家族をバラバラにさせられたから。
いつも、何時の時代・世界も大人たちのせいで被害を被るのは子供たちだ。そしてこの神威大門で行われてるウォータイムはそのひとつ。何も知らない子供たちを使って行ってる代理戦争。
現日本総理大臣、東郷義一によって国連統合政府が推進した【
このERPが始まったのは今から三年前。丁度総理が財前宗介総理から今の東郷義一に変わった年だ。
ウォータイムは実際はシミュレーションではなく、ERP加盟国が立ち上げた『国家の存亡を賭けた代理戦争』そのものであり、その結果は
この学園で行われるウォータイムは、現実世界で戦争に発展しそうな外交問題を裁く調停システム。通称『静かな戦争』と呼ばれてるが、僕からしてみたらそんなの世界の命運を掛けたシステムなんか―――知ったことじゃない。そんな大人の事情に僕ら子供を巻き込むなって話だ。
だが、このシステムを実施以降3年間、ERPに加盟している国では戦争は起きていない。
そう、一度もだ。
そんなことを思い返していると。
「・・・・・・っ・・・・・・お母さん・・・・・・!お父さん・・・・・・!」
「!フラン!」
目尻に涙を浮かべてフランは両親を呼んだ。
「ぁ・・・・・・サン・・・・・・!アスタ・・・・・・!」
続けてサンとアスタ。
「ぁぁ・・・・・・メア・・・・・・!ルナ・・・・・・!」
メアとルナの名を呼ぶ。
「フラン・・・・・・」
夢の中だと僕は何も出来ない。だから現実世界でフランの心を落ち着かせる。
あの時、サンとアスタに約束したから。フランを守るって。
「イヤっ・・・・・・・・・・たす・・・・・・けて・・・・・っ・・・・・・・・レイ・・・・・・・・・!!」
「っ!」
うわ言のように、苦しそうに助けを求めてきたフランに僕は握っていた手をもう片方も添えて。両手で握り締める。
メアやルナならフランを今すぐ抱きしめて温もりを与えるのだろうけど、僕は男なのでそれは少し抵抗がある。女子同士なら問題ないけど。この部屋とかだって許可を貰ってるから入れるし。
「おまたせレーくん。トメさんに事情を話して体温計もらってきたよ」
「ありがとうメア。ルナにお願い―――ぁ、僕外にいた方がいいかな」
気を使ったつもりで提案したんだけど。
「却下。今フランちゃんの側から離れてどうするのよ?あぁ!ていうか、見ているこっちがまどろっこしい!」
「へ?」
メアの珍しく少しキレた言葉に目が点になる。
メアがキレることなぞ滅多にないのだ。
「さっさとフランちゃんに抱きつく!そうすればフランちゃん落ち着くでしょ?!」
「いやいやいやいやいやいや!!ちょっと待とうかメアさん?なんでそんな発想に!?ていうか僕が抱きついちゃったらアウトでしょ色々!?」
「No problem!問題なーい」
「えぇぇ・・・・・・って、うわっ!」
はい、ドーン!と言うように押し、フランに覆い被さるようになる。
「め、メアっ!?」
振り返ってメアに文句を言おうとしたが。
「レ・・・・・・イ・・・・・・・・・」
「ふ、フラン?」
逆に寝ているフランに抱きしめられ顔が赤くなる。
「レーくんはしばらく。というより、フランちゃんが起きるまでその体勢でいなさい」
「
フランに抱きしめられ上手く声が上げられずに視線でメアへ恨みがましく睨むが、当の本人たるメアは既にルナの体温を体温計で計っている最中だった。さすがにそれには視線をずらす。ルナの肌が見え隠れしていたから。
さすがにフランにされるがままの状態なのだが、さすがにこの状況、他の人に見られたら要らん噂などが立つこと間違いない。ま、まあ、僕らの部屋は他の人達とは違うところにあるから来ないと思うけど。
ていうか―――
「(や、柔らかい・・・・・・それにいい匂いがする・・・・・・)」
フランに抱きしめられているので直接フランの温もりや感触などが伝わってくる。
フランがこの世界に来てもう二年半。フランが来てからほぼずっと一緒にいる。
フランが僕の目の前に現れた時、正直夢かと思った。けど、フランは本物で現実にいた。それを認識した時、フランに会えとても嬉しかった。それから母さんに事情を説明し、フランを家に住まわせてもらえることになり、父さんと兄さんにも事情を説明し、当時既にチームを組んでいたメアとルナにも話し僕ら四人は一つのパーティになった。
その際色々あったがそれはまたの機会に話そう。
やがて温もりで眠くなったのか意識が微睡みへと沈んでいき―――
「―――きて・・・・・・レ・・・・・・起きて、レイ」
「ん、んんぁ・・・」
いつの間にか寝ていたのか呼ばれて目を開ける。
目を開けると。
「おはようレイ」
目の前にフランの顔があった。
「あれ、フラン?」
そこでようやく思考がはっきり回り。
「!フラン!良かった!」
「ええ。心配、掛けたようね」
微笑むフランを視て起き上がろうとした。が、その前にメアとルナが顔を覗き込んできた
「あ、レーくんようやく起きたぁ〜」
「おはようレイ。よく眠ってたよ」
メアと同じ、制服姿に着替えたルナがいた。
フランも制服に着替え終わっていたようで、何時ものハーネスの紫の制服を着ていた。
「あれ、いつの間に?」
「レイ、あまり寝てないんじゃない?」
ルナが心配そうに聞いてくる。
「うーん。そんなことないけど・・・・・・今日早く起きたからかな?」
朝早く起きてトメさんの手伝いをしたからだろうか?そう思いつつ降りようとする。のだが―――
「ところでこの頭の下の柔らかいのって・・・・・・」
頭の下に、枕とは違う柔らかい何かがあった。
そして目の前にはフランの覗き込むようにして僕を見る顔。それだけで何となくこれが何か分かってしまうが・・・・・・。
「私の膝よ」
フランが答えをバラした。
「あー、やっぱり」
「イヤだった?」
「い、いや、そんなことは無いよ/////」
むしろ逆に嬉しいのだが、気照れで顔が赤くなる。
「そう?」
嬉しそうに微笑みながら言うフラン。
あ、うん。その微笑みは僕にとってクリティカルヒットだ。
そのまま互いに気恥しで顔を真っ赤にしてると。
「はいはい。二人の空間作らないでね」
「そうそう。私たちもいるんだから」
メアとルナがクスクス面白そうに笑いながら言ってきた。
「め、メア!?ルナ!?」
「なら、今度は三人一緒ね」
「フランッ!!??」
話が全く進んでない。というより、どんどん話が縺れていく。いや、まあ、この学園に来る前からこんなんではあったが。何故だろうか。ここに来てから三人のアプローチが激しいような気がする。
そんな他の人。特に男子に聞かれたら妬みで殺されそうな程の悩みを浮かべながらフランの膝枕からあがる。
「ん"ん"ん"んーー」
身体を軽く伸ばし。
「ルナ、体調は大丈夫?」
「うん。ちょっと身体がダルいけど大丈夫だよ」
「無理はしないでね」
「うん。ありがとうレイ」
「それじゃあ朝ご飯食べに行こっか~」
「だね」
「ええ」
「うん」
部屋を出て僕らは食堂へと向かった。
~レイside out〜
~フランside~
「んん・・・・・・」
悪夢を見ていたと思う。けど、なにか途中から暖かい温もりと光が私を助けてくれた。
目を開けると、目の前に私の想い人。大切で好きな人の顔があった。
「れ、レイ・・・・・・?え、なんで私抱き締めて・・・・・・」
しかもぬいぐるみを抱き締めるようにレイを抱き締めていた。
「あ、フランちゃん起きたぁ~?」
「おはよう、フラン」
身体を起こして隣を見ると、ハーネスの制服を着たメアに着替えている最中のルナがいた。
「おはよう二人とも。ところでなんで私はレイを抱き締めて寝ていたのかしら?」
「さ、さあ?私が起きた時にはもうそんなんだったし・・・・・・」
私の問いにルナは少し不貞腐れて答える。
私の疑問に答えたのは。
「ふふっ。レーくんがそこにいる理由は、フランちゃんが抱き着いたからだよ~」
「ふぇっ!?」
メアの言葉に思わず変な声が出てしまう。
わ、私がレイにだ、だだだだ、抱き着いた!?
「まあ、その直接の原因は私だけど」
「め、メア!?」
メアのその一言でほぼ全ての事情が把握出来た。大方、メアがレイを私のところに倒して、寝惚けた私が抱き締めたという所かな。
レイがいたから悪夢から暖かい温もりに包まれたのだろう。それを思うと少し嬉しくもあり、恥ずかしくもある。
頬を赤く染めてレイを優しく枕に寝かせベットから降りて寝巻きから制服に着替える準備をする。
寝巻きに手を掛け、レイに視線を送る。
「お、起きないよね?」
ま、まあ、レイになら見られてもいいんだけど・・・・・ていうかもう下着姿は見られてるし。
「大丈夫だと思うよ」
「うん。よく眠ってる」
「そ、そう」
私はなるべく手早く制服に着替える。寝巻きを脱いで着けていた下着から新しいのを着け、ハーネスの紫の制服を着る。
着終わり身支度を終え。
「・・・・・・」
「───って!なんで自然にレイに膝枕してるの!?」
「え、えっと・・・・・・なんとなく?」
レイの頭を私の膝に乗せた。
ルナがツッコミを入れてきたけど。
「それにしても・・・・・・」
「?」
「メア?」
「ううん。私たちがこうしているなんて夢のようだなぁ〜って」
「ええ。そうね・・・・・・」
「うん」
「最初は私とレーくんだけだったのに、そこからルナちゃん。そして、フランちゃんが来て」
「私たちはレイを中心に最強のチームになったね」
「ええ。最初、私はいない方が良いのかしらって思ったのだけど・・・・・・」
「ふふ。レーくんから聞いていたからね」
「うん」
「改めてだけど、メア、ルナ。私を貴女達のところに入れてくれてありがとう」
「ううん」
「こっちこそ。入ってくれてありがとう、フランちゃん」
女の子同士、クスクスと笑みを漏らして話す。
二人とも私と同じ気持ちなのは気づいてる。だけど、レイだけは譲らない。多分、二人とも同じ感情だ。
「さてと、それじゃあ・・・・・・寝てるレーくんを起こしましょうか」
「そうね」
膝枕で寝ているレイの髪を優しく撫で、レイに起きるよう声を掛ける。
「起きて、レイ」
これはレイが寝ていた時に話した、恋する乙女たちの秘密の会話