〜バンside〜
何処かに行ってしまったレイと別れた俺たちは、案内に従ってアングラテキサスの行われるステージにいた。
会場にはLマガで見たことは無いが、どれも強者の趣を出しているプレイヤーがチラホラいる。
1年前、俺やジンが参加したアングラビシダスのようだ。
だが、アングラビシダスより参加するプレイヤーの数が多い。
ステージを囲むように聳え立つ石塔の上には、何人もの観戦者がこちらを見ている。
「うわっ。すっごい人の数」
「これが全員、敵・・・・・・なんですね」
ランとヒロが感嘆としたように周りを見渡して言う。
「さすがアングラテキサスね。どいつもこいつも、只者じゃないわ」
注意深く観察してるジェシカも同様だ。
「それにしてもレイさんはどこに行ったんでしょう?」
「さぁ?独断専行がお得意のようだし」
ヒロの疑問にランは肩を竦めて返す。
「でも、戦いは観るって言ってたし、どこかで観てるんじゃないかな?」
周囲の石塔を見渡してユウヤが言う。
そんな会話をしていると、突然大きな音で音楽が流れ出した。
『ようこそ!命知らずのLBXプレイヤーたち!!』
何処からか声が響いた。
それと同時に、六角形になるよう空間ウインドウが俺たちを囲むように頭上に現れた。
『お前たち、やっとこの日が来たわねぇ!!』
カッ!とライトが点くと一人の女性が映し出された。
女性の言葉にステージにいるプレイヤーだけでなく、石塔にいる観戦者の熱狂の声があちこちから響き渡った。
『ここはアングラテキサス。荒くれ者たちが集う無法者の荒野よ〜。私はこの大会の主催者、マダム・ブルホーン。よぉく覚えておきな〜』
どうやらあの女性がこのアングラテキサスの主催者のようだ。
画面からでも只者じゃない感じが見て取れる。
『私はLBXバトルが大好き!血を沸騰させてくれる、熱いバトルがねぇ〜!!さぁ、戦いなさい!潰しなさい!!優勝者には褒美として、アルテミスへの出場資格をくれてやるわっ!!!』
マダム・ブルホーンの開催宣言にさらに会場のボルテージが上がった。
『それでは、ルールの説明を致します。予選は、1~10までのバトルステージで行われます』
マダム・ブルホーンが映ってる空間ウインドウとは別の小さなウインドウが現れ、解説者のアンドロイドが映りルールの説明を始めた。
小さなウインドウの画面には右回りに1、2、3〜、とステージのナンバーが表記されていた。
『どのステージで戦うのかは、各プレイヤーのCCMにステージナンバーが送信されますので、それに従いいただきます。プレイヤーは指示されたステージでバトルを繰り返し、10人を倒したプレイヤーが決勝に進出することが出来ます。ただし、決勝に進出出来るのは3人。早い者勝ちとなります。一度でも負けたらTHE ENDジ・エンド。引き分けの場合も同様です。10人勝ち抜きの、LBXガンスリンガーバトル、まもなく開始します』
ガンスリンガーバトル・・・・・・まさにアングラテキサス。
荒野の決闘場に相応しいバトルだろう。
アングラビシダスはトーナメント戦だったが、ここではランダム戦の勝ち抜きのようだ。
しかも早い者勝ちという、運の要素も入ってるようだ。
俺が解説者のアンドロイドのルール説明を聴きながらそう思ってると、解説者のウインドウが消え再びマダム・ブルホーンが映し出された。
『さらに今回は、特別ゲストに挨拶を貰うわ!!』
マダム・ブルホーンが告げるとあちこちから困惑の声が流れた。
「特別ゲスト?」
「それって一体・・・・・・」
俺たちも困惑していると、6つの空間ウインドウに一人の男性。
というより男の子が映し出された。
てか、その男の子・・・・・・
『彼は山野レイ。
俺の弟なんだけど!?
まさかのレイの登場に唖然とする俺たち。
唖然とする俺たちを他所に、マダム・ブルホーンの紹介によってあちこちから歓声の声が響き渡る。
レイはそのまま座っていた椅子から立ち上がると。
『アングラテキサスは史上最凶の破壊の祭典!"ルールが無いのがルール"のLBX大会だ!!』
着ている黒衣のロングコートを靡かせて画面から俺たちに向かって言う。
その言葉を聞いた俺は、ハッ!とした。
なぜならその言葉は1年前のアングラビシダスで、LEXが俺たち参加者に告げた言葉と同じだったからだ。
ハッ!とする俺を他所にレイは告げる。
『プレイヤーはそれぞれの腕を。知識を。経験を、全てを振るい、観戦者はプレイヤー同士の熱き血肉沸き踊る戦いを興奮し、熱狂しようじゃないか!!!』
大きく身振りをして宣告するレイ。
やがて握り拳を強く。
高く掲げ、ニッと笑みを浮かべて言った。
『さぁ、プレイヤー諸君!!存分に戦い、存分に壊し、破壊しろ!!我々の魂に響くような熱き闘いを、篤と見せつけるがいい!!!アングラテキサス。LBXガンスリンガーバトルの開幕だっ!!!!』
「「「「「うおおおおぉぉぉぉっ!!!!!!」」」」」
レイの宣言にさらにボルテージに拍車がかかり会場全てから熱気が漏れ出た。
いや、この場全体からか。
レイを映し出していた空間ウインドウが消えても興奮の熱気は収まる気配がない。
それ程までにレイの開催宣言の挨拶が、この場にいるプレイヤーと観戦者の心に響いたという事だろう。
「ぇぇー・・・・・・」
「うっそぉー・・・・・・」
「マジ・・・・・・」
まぁ、周囲が興奮してる中、俺たちは唖然としてるが。
現にヒロ、ラン、ジェシカは茫然としてるし。
ユウヤに限っては苦笑をして、ジンはやれやれと感じだ。
俺もレイがまさか特別ゲストとは思わず衝撃を受けてる。
「あの子、ホントに私たちより歳下?一体どんだけコネクションがあるの?!」
うん。それは俺も同感。
驚愕するジェシカに同意する俺。
って、驚いてる場合じゃなかった。
「みんな、オタクロスから伝言があるんだ」
「伝言?」
俺はオタクロスからの伝言をCCMからヒロたちに見せる。
『3人とも、よく聞くでヨ。これから、お前らにはある条件下で戦ってもらうデヨ』
「条件?」
眼をパチクリするヒロたち。
『決勝に勝ち残るまで、自分の武器は使用禁止。コーチの使ってる武器を使うべし』
「「えぇっ!?」」
「コーチの武器で戦う・・・・・」
オタクロスの伝言の内容に俺も驚いた。
ランとジェシカの反応は当然だろう。
慣れてない武器で戦うのはキツイ。
どう動けばいいのかすらも違うのだから。
「慣れてない武器で戦うことで、より厳しい経験をさせるつもりなんだね」
「ああ。レイのようにマルチなプレイヤーはまずいない。僕やバンくんも基本はハンマーや槍を使うからな」
レイの主武装は双剣。
剣にカテゴライズされる。
だが、レイは双剣以外にも複数の武器を使える。
もちろん槍やハンマー、銃系に、ナックル系も使えるマルチプレイヤーだ。
俺とジン、ユウヤは早速自分のLBXの武器を外し、それぞれヒロ、ジェシカ、ランに渡す。
ヒロは大丈夫そうだが、ランとジェシカは不安定だった。
そこに。
「ん?レイ?」
レイから俺のCCMに連絡が入った。
『やっほー』
右手を横に振って言うレイ。
「レイ、特別ゲストだなんて聞いてないぞ?」
俺はいの一番にレイに言った。
『ごめんごめん。でも、驚いたでしょ?まぁ、僕もいきなり言われて驚いてるんだけどさ』
あはは、と苦笑して言うレイ。
レイはそのままヒロたち3人を見て。
『オタクロスからの伝言は聞いたね?決勝までは兄さんたちの武器を使って戦うこと。自分の武器は使わないようにね』
と念を押した。
「ちょっとレイ!これじゃあ戦いにくいんだけど!?」
「ジャンヌDは機動力がウリの機体なのよ!?ハンマーなんて重装備装備したら活かせないじゃない!」
ランとジェシカは不満そうにレイに向かって言う。
『当然でしょ?これは3人の特訓のための戦いなんだから』
対するレイは何を言ってるんだ?とでも言いたげに言う。
『まぁ、確かにランとジェシカの言い分も分かる』
分かっちゃうんだ。
声には出さないが心の中でレイにツッコム。
こういう時にアミやメアがいてくれたらどんだけ助かるか・・・・・・
少し遠い目をして空を見上げる。
『そんなわけで、2人に助言』
「助言?」
「??」
『ジェシカは何事も、記憶してるだけがスペックだけじゃないってことを。ランは自分が何時もLBXを操作してる時何をして動かしているのかを思い出せ』
「?どういう意味よ?」
『この大会は普通の大会とは違う、"ルールが無いのがルール"の大会だ。それを忘れないようにね』
怪訝そうにするジェシカとラン。
俺はレイが言いたいことが少しわかった気がした。
それは聞いていたジンもで、ほぅ、と顔に出していた。
「あの、レイさん。僕にはなにか助言って無いんですか?」
『ヒロに?んーーー』
ヒロの質問に珍しく間を伸ばすレイ。
『ヒロについては、いつも通りに、自分の信じるままにしていけばいいって事ぐらいかな』
「いつも通りに・・・・・・はい!分かりました!!」
レイの助言に自信がついたのか勢いよく返事をする。
そこへ、予選ラウンド開始のアナウンスが流れた。
『それじゃあ3人とも、頑張ってね〜』
そう言うとレイは通信を切った。
相変わらずなレイに、ヤレヤレと感じる。
「レイが何を言いたいのかさっぱりなんだけど」
「・・・・・・・・・・」
首を傾げるランとジェシカ。
そんな中ヒロたち3人のCCMにピコンッと音が響いた。
どうやらステージナンバーが通知されたらしい。
俺はヒロと。ジンはジェシカと。ユウヤはランと、それぞれステージナンバーの書かれたステージへ行き、俺は後ろから見守り、ヒロは対戦者とバトルをした。
結果予選1回戦、ヒロとランは何とか勝ち上がれた。
が、ジェシカの方は苦戦しているようだった。
浮かんでる空間ウインドウには様々なステージで繰り広げられるバトルがリアルタイムで視聴出来る。
そのウインドウのひとつにジェシカのジャンヌDと対戦相手のブルドが映っていた。
状況から見てかなり劣勢だ。
ハンマーの重さや長さを計算に入れてなかったのが仇となり、防戦一方な状況だ。
「まさかレイ、この展開を読んでたのか?」
ジェシカの最大の強みは記憶力。
だが、それを逆言い換えると、記憶力が弱点とも言える。
記憶力だけで戦っているから、アングラテキサスのようなルール無用な大会だとそれが仇となる。
そして今の状況。
俺は弟たるレイの言葉を思い返し、ジェシカの闘いを見届けた。
〜バンside out〜
〜レイside〜
「案の定、ジェシカは初戦から苦労してるね」
ついに始まったアングラテキサス予選ラウンド1回戦。
マダムの厚意でマダムとともに観る。
予めオタクロスと相談して3人の使う武器を兄さんたちコーチの物としたのは、自分の武器だと普通に勝ってしまうからだ。
敢えて自分の慣れていない、使ったことの無い武器を指定することでさらにレベルアップを計るのが、僕とオタクロスの目的。
で、予選ラウンド1回戦。
ヒロとランはなんとか勝てたけど、ジェシカは案の定苦戦していた。
相手のブルドの持つ改造されてあるショットガンに苦戦中だ。
普通あのブルドが持つショットガンの弾数は5発。
それ以降はリロードが必要。
なのだが、ここはアングラテキサス。
"ルールが無いのがルール"の史上最凶と言われる破壊の祭典。
5発という常識は通用しない。
普通に改造されてる武器を持ち込みもOKな、普通の公式戦ではありえない大会だ。
まぁ、もっとも、ジェシカが苦戦しているのはそれだけが原因じゃないけど。
「だから言ったのに。記憶してるスペックだけじゃないって」
小さく溜息を吐いて呟く。
少し見れば相手のブルドの弱点や動きの癖なんか、ジェシカにとってすれば最大の武器となるのに。
「あらあら。このまま彼女はリタイアかしら〜?」
マダムも椅子に座ってジェシカのジャンヌDと相手のブルドの戦いを観てる。
「このまま、何も変化しなければ負けるでしょうね」
「あら、随分と辛辣なのね」
マダムの言葉に苦笑して返す。
「まぁ、貴方は常に変化してる、千変万化なプレイヤーだものね」
「前に進まなきゃ勝てないですからね」
現に兄さんもオタクロスも進化してる。
「マダムから教わった戦闘技法は相手の虚を突くのに有効ですし、普通ありえないですからね。あの戦い方は」
「あら?でもそれを避けられたじゃない」
「いや、正直紙一重でしたからね?」
マダムの戦闘技法はジェシカと同様二丁拳銃による戦い。
だが、この戦いが遠近両用なのだ。
銃系の武器は剣や槍などの近接武器とは違い、遠距離からダメージを与えることが出来る。
だが、それは相手に当たればの話。
どんな攻撃も当たらなければ意味が無いように、銃系の武器も弾丸に当たらなければダメージにならない。
が、マダムはこの銃を遠距離だけでなく、至近距離から放ってくる。しかも格闘戦もしてくるというのだ。
普通のプレイヤーでは圧倒されて負けること間違いない。
僕もマダムとの戦いではアレを使わざるを得なかった。
それ程までに強敵だったのだ。
僕がこの前ジェシカとの戦いでやった銃武器による近接格闘戦は、マダムから教えて貰ったのだ。
現にジェシカも兄さんも虚を突かれてたし。
「さぁ、ジェシカ。どうする?」
ウインドウに映るジャンヌDは、Dキューブのバトルフィールドであるコンビナートステージの一画に追い詰められていた。
まさに絶体絶命な場面だろう。
けど。
「ほぅ」
「あら〜?動きが変わったわね」
ジャンヌDはブルドの放ったショットガンの弾丸を全て避けた。
どうやらジェシカも変化をし始めたようだ。
現にそれを表すように、ジャンヌDの動きが変わった。
ストライダーフレームで重武装たる
「あの娘、いい目をしているわね」
「ええ」
ジェシカにとっての武器は記憶力の他に、観察力と洞察力。
けど、それを組み合わせることで、最大の武器となる。
今のジェシカは観察力と洞察力によって得られた記憶で、相手の動きを読んでる。
そして、それは今まさに実践されており、ジャンヌDのハンマーがブルドを一刀両断してブルドをブレイクオーバーした。
「これでジェシカは変化を始めた。あとは・・・・・・」
ウインドウに映る兄さんたちを視て呟く。
ヒロはもう既に変化を始めてる。
そしてジェシカは今変化をし始めた。
残りは、ランのみ。
ランがこの大会で変化してくれるといいんだけど・・・・・・
「やっぱり今大会で最大の強敵は彼か・・・・・・」
ウインドウに映る人物。
アングラテキサスに相応しい、まさにガンマンの感じな男性。
彼のLBXは[ジョーカー]。
そして武装はジェシカと同じ二丁拳銃。
ほぼ瞬殺と言っても過言ではない速度で戦いを終わらせてる、他とは圧倒的にレベルが違う。
「さすが、前アングラテキサス優勝者のビリー・スタリオン」
決勝の1枠はおそらく彼だろう。
ニッ、と笑みを浮かべて兄さんたちを見る。
「ヒロ。ラン。ジェシカ。期待してるよ。さぁ、見せて。君たちの変化を」
高みからの見物だが、僕は小さく呟いたのだった。