〜レイside〜
「うわ〜。大きい〜!」
「話には聞いてたけど、こんなに大きな大会なんだ!」
アルテミスに初出場するヒロとランが、今年のアルテミス会場を見て感嘆の声を上げる。
去年のアルテミス会場だった、お台場エリアにある【お台場ビッグスタジアム】もかなりの大きさだったが、今回のアルテミス会場もそれに引けを取らない大きさだ。
「お前たちは出場登録があるだろう。俺は先に行ってるからな」
何時ものスーツケースを手に昨日のようなだらしない顔じゃない、キッ、とした顔で言うと、コブラは観客席の方へと歩いていった。
兄さんたちが出場登録をしに行く中、僕はキヨカを待っていた。
丁度今御手洗に行っていて今居ないのだ。
待ってる中、誰かに見られているような気配と視線を感じた。
「・・・・・・・・・・」
周囲に意識を集中させ、気配と視線の主を探す。
まぁ、僕自身史上最年少の
と言っても感じたのは一瞬だったが。
気配と視線の主を探してると―――
「お待たせ」
キヨカが戻ってきた。
「あれ、郷田とダイキさんは?」
「お兄ちゃんと郷田さんはもう出場登録を済ませたそうよ」
「そうなんだ。じゃあ僕らも行こうか」
「ええ」
キヨカと出場登録をしにエントランスに向かうと。
「―――お前だな!オレのCCMを盗んだのは!!」
「ええ!?」
「言え!オレのCCMをどこに隠した!!」
「ま、待って。俺じゃないよ!」
「惚けんな!お前もLBXプレイヤーなら正々堂々戦え!」
なんか五月蝿い声が聴こえてきた。
しかも片方は兄さんの声だ。
「何かあったのかしら?」
「はぁ・・・・・・」
面倒事じゃないといいと思いつつ、騒ぎになってる兄さんたちの所に向かう。
兄さんたちの所に向かうと、兄さんと誰かが言い争っていた。
言い争っていた、というより、一方的に言い寄られてる感じかな兄さんが。
「ジェシカ、何があったの?」
近くにいたジェシカに事情を聞く。
「レイ・・・・・・実は・・・・・・」
ジェシカから事情を聞いた僕は、はぁ?となった。
隣で聴いていたキヨカも同じ表情をしてる。
未だに問い詰められてる兄さん。
というか、兄さんを問い詰めてるこの人どっかで見たような・・・・・・
そう頭の片隅で思いつつ、その人物に向かって―――。
「あのさ、腰の後ろにあるのって、その探してるCCMじゃないの?」
と言う。
「え?」
その人物は、え?と言うと腰の後ろ部分に手をやり。
「あ!あった!あったぞ!!良かったぁ〜!!」
と安堵したように喜ぶ。
そのままその人物は受付の台にCCMを置き。
「ありましたぁ!」
そう言うと、その周りに散らかっていたトマト缶ジュースを仕舞い始めた。
いや、トマト缶ジュースどんだけ持ってきてるの?
周囲に散らかっているトマト缶ジュースの数は十を超えている。
トマト缶ジュースの数にえぇー、となりながら見てると。
「古城アスカ、登録完了です。お一人で出場ですね?」
「おう!」
受付の人と古城アスカと呼ばれた人物が会話を聞いた。
てか、古城アスカ?
やっぱり、どこかで見たような気がしてると・・・・・・
「CCM見つけてくれてありがとう!!」
と、いつの間に近づいてきた古城アスカが僕に向かって言う。
「オレ、古城アスカ!よろし・・・・・・っ!?あ、あんたは!」
「ん?」
何故か古城アスカは僕を見てビクついたように驚いてるけど・・・・・・
「や、山野レイ!?」
「?どこかで会ったことあるっけ?」
「お、覚えてないのか!?」
「んー・・・・・・」
古城アスカの顔を見て頭の中で記憶を手探りする。
少しして。
「あ!思い出した!!」
記憶から引っ張りだして思い出した。
「半年前の大会でCCMを盗られたとか言って難癖付けてきた人!」
「古城アスカだ!!」
これと同じ事が半年前の世界を巡った際に、たまたま参加したLBX大会で起きたのを思い出した。
確かあの時も僕が見つけたんだっけ?
正直言ってめんどくさいから覚えてなかったや。
まぁ、それは置いといて。
「また、他人に難癖付けて、盗られたとか言ったんだ?」
ジト目で古城アスカに向かって訊ねる。
「い、いや、しょうがないじゃん!」
「は?」
視線がジト目から鋭いものに変わる。
「一度、O☆HA☆NA☆SHI☆をじっくり。たぁーっぷりと、してあげた方がいいのかな?」
絶対零度の声と空気が出る。
「そもそも、まず最初に、兄さんに謝るべきだよね?勝手に冤罪を擦り付けて、自分の不手際を他所にするなんてどう考えてもおかしいよね?」
「い、いや、それは・・・・・・」
右手に取り出したハリセンを持ち、狼狽える古城アスカに近寄る。
「レイ、時間もないから程々にね?」
キヨカの声を聞き、
「大丈夫。すぐ終わらせるから」
と返す。
「さて、と。まずはそこに正座、かな?」
「え、ちょっ、まっ・・・・・・」
「ん?聴こえなかったかなぁ〜?いいから、せ・い・ざ。・・・・・・さっさとしろ」
「ひっ!」
口をパクパクさせて静かに正座する古城アスカ。
「僕、前に言ったよね?ちゃんと探せって。すぐに決めつけて難癖つけるの止めなって?僕の話聞いてなかったのかな?」
「す、すみませんでした」
「ん〜?なんだって?」
「ひぃ!」
「しかもこれ、場合によっては名誉毀損とかで訴えられるのキミの方なんだけど?証拠もないのに犯人扱い。ねぇ、どういうつもりなの?」
「す、すみませんでしたぁ!!!!」
勢いよく土下座をする古城アスカ。
その古城アスカに僕は冷たい目線で。
「まずは兄さんに謝ること!それと、受付の人にも!!」
「は、はいっ!!」
僕がそう言うと古城アスカは兄さんに近づき頭を下げる。
「疑ってすみませんでした!!」
「あ、ああ。CCMが見つけられたなら良かったよ」
古城アスカの謝罪に引き気味に言う兄さん。
「兄さんそれでいいの?危うく冤罪になりかけたんだよ?」
「い、いや、いいのも何も・・・・・・」
頬を引き攣らせて言う兄さん。
何も言わないなんて優しすぎると思うんだけどなぁ?
一歩間違えば兄さん、在らぬ疑いを掛けられて大会に出場とか何もできなかったと思うんだけど?
そう思ってる間に古城アスカは、自分を相手していた受付の人にも謝り。
「こ、これでいいでしょうか!?」
と自発的に正座して聞いてきた。
本当はあと小一時間ほど
「もし次こういう事したら、今度はこれだけじゃ済まない、かもしれないからね?」
「ひゃ、ひゃいっ!!」
ふふっ、と冷たい微笑を浮かべると恐怖で顔が引きつったような表情をして返した。
「ふぅ。あ、兄さんたちは受付終わった?」
「あ、ああ。一応」
「じゃあ先に行ってて。僕もすぐ行くから」
「わ、分かった」
兄さんたちはぎこちない歩みをする古城アスカとともに選手控え室に向かった。
「それじゃあキヨカ、受付しようか」
「ええ」
苦笑を浮かべるキヨカに言い、僕は近くにいた受付の人に受付をお願いする。
「えと、山野レイくんと、仙道キヨカさんですね。ペアでご参加でよろしいでしょうか?」
「はい」
「ええ」
「かしこまりました。登録完了です。ようこそ、アルテミスへ」
「ありがとうございます」
受付の人が若干ぎこちなかったけど、なんとか受付が出来た。
「それじゃあ、パートナーとしてよろしくねキヨカ」
「こちらこそ。よろしくレイ」
僕とキヨカはクスッと笑みを浮かべて選手控え室へと向かった。
選手控え室に行くとすでに大勢のアルテミス参加者がいた。
「ほぇー。すごい人数」
「うん」
控え室にはLマガで紹介されたプレイヤーや、各大陸や大会などで優勝してる有名プレイヤーが数多くいる。
兄さんたちもすぐ近くの椅子に座っていて、何故か古城アスカが兄さんに[エルシオン]について聞いていた。他にも郷田やダイキさんもいる。
・・・・・・本気でやった方が良かったかな?
懲りずにいる古城アスカにイラッとするが。
「レイくん!お久しぶりです!!」
そこに横から聞き覚えのある声が聴こえてきた。
横を見ると、特徴的なヘルメットにそのヘルメットと同色のジャージを来た男女3人がいた。
そのうちの1人。真ん中にいる赤いジャージの男性はよく知ってる。
「ユジンさん!」
その人はオタクロスの弟子の1人である、オタレンジャーのリーダー。オタレッドこと、ユジンさんだ。
「お久しぶりですねレイくん。まさかアルテミスでキミと戦えるなんて、とても嬉しいです!!」
「久しぶりですユジンさん!ユジンさんも今回のアルテミスに出場するんですね」
「はい!あ、この2人は今回のチームメイトのオタゴールドとオタシルバーです!」
服とヘルメットの色まんまの紹介にあははは、と漏れ出る。
「名付けて、オタレンジャーZ!!」
・・・・・・・・・・後ろが本当に爆発したような光景が観えた。
ポーズをとる3人を見てそう感想がでた。
ユジンさんは去年のアルテミスでファイナリストにまで上り詰めたプレイヤーだ。
それにユジンさんのLBXのプレイヤーとしてのスキルは、師匠たるオタクロス譲りの為アルテミス参加者の中でもかなり高い。
恐らく今回もファイナリストにまで登ってくるだろう。
「あははは。とにかく、よろしくお願いしますね」
「はい!」
ユジンさん。ではなく、オタレッドと握手して分かれる。
分かれて兄さんたちから少し離れたところにキヨカと一緒に座ると。
「久しぶりねレイ」
と、正面に2人の女性が挨拶しながら座ってきた。
こっちの2人も知っている人たちだ。
「あ!ジャス姉にブレ姉!!2人も出るんだ!!」
「ええ。もちろんよ」
今年の中南米LBX選手権で優勝したアレキサンダー・シスターズ。
チーム名のシスターズの通り、姉のブレンダ・アレキサンダーと妹のジャスミン・アレキサンダーの2人のチームだ。
アレキサンダー・シスターズは別名、【カリブの赤いハリケーン】の二つ名で呼ばれてる。
2人とも赤く塗色したクイーンとアマゾネスを使い、激しくも華麗に戦う姿から【カリブの赤いハリケーン】の異名を持っているのだ。
「久しぶり〜レイ」
「うわっ!ブレ姉!?」
テーブル越しに抱き締めてくるブレ姉。
あまりにも勢いすぎるので驚く。
「お姉さま、ずるいですわ」
椅子から立ち上がり、後ろから僕を抱き締めるジャス姉。
「だってこの抱き心地、久しぶり」
「ちょっ!?ブレ姉!?ジャス姉も!?」
まるで人形のように抱き着かれる僕。
隣に座ってるキヨカは眼をパチクリしてるし、控え室の視線のほとんどが集まってる。
しばらくして、満足したのか離れて正面の椅子に座る2人。
のだが、テーブルの下でキヨカが僕の右手を強く抓ってきた。
ちょっと痛い・・・・・・・
「レイ。この2人と知り合い?」
「あ、う、うん。ブレンダ・アレキサンダーとジャスミン・アレキサンダーの姉妹だよ。今年の中南米LBX選手権の優勝者」
「へぇ」
相変わらずの感情をあまり表に出さないキヨカの反応に苦笑が出る。
2人とは僕がB国にいた頃に知り合った。
その時色々あって、ブレンダ・アレキサンダーをブレ姉。ジャスミン・アレキサンダーをジャス姉と呼ぶことになったのだ。
当の本人たちも弟が出来たようで嬉しいらしく、僕を弟のように扱ってくれる。
ま、まぁ、こうして抱擁されるのには慣れてないんだけど・・・・・・
アミ姉とは別で、年上のお姉さん、という感じだ。
「レイ、こっちの女の子が貴方のパートナー?」
「うん」
「仙道キヨカ。よろしくお願いします」
「キヨカね。ブレンダ・アレキサンダーよ、よろしく」
「ジャスミン・アレキサンダー。よろしくね」
「はい」
互いに自己紹介をし、僕らはアルテミスが始まるまでブレ姉とジャス姉と話した。
それからしばらくして、アルテミスが開幕した。
今回の優勝賞品は、クリスター・イングラム社の開発した最新式モーター《スパーク3000》。
去年の《メタナスGX》もそうだったけど、アルテミス程の世界大会となると超高性能な優勝賞品が用意されるんだね。
優勝賞品が発表されると、次にそれぞれの予選の組み分けブロックが発表された。
去年のアルテミスでは16組5ブロックの総勢80組のチームが参加してるのだが、今年のアルテミスはさらに増え、16組6ブロックの総勢96組が参加してる。
これを見るだけで、年々LBXプレイヤーが増えている事が分かる。
で、その肝心の予選ブロックだが、古城アスカはAブロック。ブレ姉とジャス姉のアレキサンダー・シスターズはBブロック。郷田とダイキさんのチームはCブロック。オタレッドたちオタレンジャーZはDブロック。兄さん、ジン、ジェシカのチームと、ヒロ、ラン、ユウヤのチーム2組はEブロック。
そして僕とキヨカのチームはFブロックに分かれた。
決勝に進出出来るのは各ブロックで1組だけ。
つまり6組のみが決勝の舞台に立てる。
アルテミスに集中するのもそうだが、僕らの第1目標は大統領の暗殺阻止だ。
選手席に座って右耳にクリスさんから渡されたインカムを着けてCCMを開け電波探知をする。
「さて・・・・・・暗殺者は一体どこにいるのかな」
目付きを鋭くしてCCMと睨めっこをし、会場全体に視線を行き届らせた。
失敗出来ない