ダンボール戦機 英雄の弟   作:ソーナ

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回想 W―ディテクター編 ⅩⅦ 大会(アルテミス)・策略

 

〜レイside〜

 

「それでレイ。あの古城アスカの強さってどのくらいなの?」

 

アルテミスが開幕し、スタジアム中央。東西南北に分かれた4つのDキューブにはそれぞれ予選Aブロックの第1試合をするプレイヤーがいた。

そしてその中にはあの古城アスカもいる。

古城アスカの対戦相手は公式戦37連勝中のチャールズ&ロバート選手。

以前調べた際のデータで、変わってなければ確かあの2人のLBXは[タイタン]と[グラディエーター]だったはず。

どちらも上級者向けのLBXだ。

 

「古城アスカの強さ?」

 

「ええ」

 

隣に座るキヨカの質問に僕は、うーん、と唸る。

 

「結構強いとは思うよ?でもなぁ〜・・・・・・」

 

正直古城アスカの戦略って、アレなんだよなぁ〜。

僕の反応に首を傾げるキヨカ。

 

「まぁ、観れば判るよ。この試合の勝者は彼女だから」

 

「そう・・・・・・・・・え?彼女?古城アスカって女なの?!」

 

「そうだよ?」

 

「・・・・・・マジで?」

 

「うん。マジ」

 

「えぇ・・・・・・」

 

まぁ、古城アスカってどこからどう見ても男にしか見えないからなぁ。

ボーイッシュな中性的、って感じだし。

ま、まぁ、僕もよく女子と間違えられるからなぁ。

多分兄さんたちも古城アスカが男だっておもってるだろうね。

最初僕もそうだったし。

珍しく驚いているキヨカにクスッと微笑みながら、始まった予選Aブロック第1試合を映してる空間ウインドウを観た。

 

「・・・・・・相変わらず、猫を被ってるなぁ・・・・・・」

 

やれやれ、とため息を吐いて観る。

驚いているのに、全然驚いてない(・・・・・・・)

チャールズ選手とロバート選手の操作の腕はさすが公式戦37連勝中なだけあって上手い。

扱いの難しいタイタンとグラディエーターを的確に、しかも早く動かしている。

さすがアルテミス参加プレイヤーなだけある。

しかも長年コンビを組んでいるからなのか、連携速度も目を見るものがある。

片方を避けても、もう片方のLBXが攻撃してくる。

避けたところを先回りして、避けた所で攻撃をする。息があってなければ無理な芸当。

さすがな阿吽の呼吸だ。

 

「さすがね。見事な連携だわ」

 

「うん。それぞれがカバーし合ってる」

 

「それに対して古城アスカは・・・・・・」

 

グラディエーターとタイタンの猛攻に古城アスカのLBX。[ヴァンパイアキャット]は避けてばかりだ。

傍から見たら紙一重で、ギリギリ避けてるようだけど。

 

「遊んでるな・・・・・・」

 

「え?」

 

傍から見れば逃げ回ってばかりに見えるけど、攻撃はさっきのグラディエーターとタイタンの同時(ダブル)攻撃を一撃、わざと喰らっただけで後は逃げるように立ち回りつつも、グラディエーターとタイタンを誘導して自身をフィールドの一画に追い込ませていた。

ちなみに、このバトルフィールドはジャングル。濁った河を挟んだ熱帯雨林が広がる、古代の遺跡と、その戦いの爪跡が残るフィールドだ。

多分だけど、この会場にいる大半の人が古城アスカの策に掛かってるだろうね。

現にアルテミスのMCを務める彼も、防戦で精一杯、って言って実況してるし。

でも、まあ―――

 

「そろそろ終わりかな?」

 

空中のウインドウに映し出されてる古城アスカとチャールズ&ロバート選手の試合はすでに佳境に入りつつあった。

チャールズ&ロバート選手のグラディエーターとタイタンが古城アスカのヴァンパイアキャットを遺跡を追い詰め、ヴァンパイアキャットが絶体絶命の場面だ。

古城アスカはうわぁ〜、ってどうしようって声出してるけど・・・・・・

 

「まずはタイタンかな〜」

 

「え?」

 

グラディエーターとタイタンがトドメの一撃を繰り出す。

だが、ヴァンパイアキャットは2機の一撃を普通に。余裕で躱して、立場を逆転させた。

窮地に追い詰められているのは今やチャールズ&ロバート選手のグラディエーターとタイタンだ。

ヴァンパイアキャットはそのままタイタンを手に持つ三叉に分かれた槍で貫き、ブレイクオーバーさせ、続けて反撃してくるグラディエーターの攻撃を見切り、飛び上がって上からの攻撃を下から突き上げるように三叉の槍を突き出し、グラディエーターをブレイクオーバーさせた。

 

「・・・・・・猫を被ってるにも程があるでしょ」

 

「あ、はははは・・・・・・」

 

キヨカの言葉に苦笑いを浮かべる僕。

チャールズ&ロバート選手なんか唖然としてるし。

古城アスカはそのまま2回戦の対戦相手であるヴィンセントチームの[ブルド]。予選準決勝の相手のシスターメアリーズの[アマゾネス]の[ウォーリアー]を下し、Aブロック決勝へと駒を進めた。

そしてそのまま決勝の相手であるチームミラージュの[ズール]3機を瞬く間に倒し、一度も必殺ファンクションを使わずに予選Aブロックを制し、決勝戦へと一番に駒を進めた。

 

「必殺ファンクションを一度も使わずに勝ち進んだ・・・・・・」

 

「やってくれたね」

 

必殺ファンクションを使わなかったのは、自分に対しての絶対的な余裕と、あの程度の相手では使うまでもないと見せつけているのだろう。

そんな軽い挑発のようなものにやれやれとため息が出る。

 

「こんなパフォーマンスをされたら、僕もそれ相応のパフォーマンスを見せないとかな?」

 

クスクス、と微笑みながらAブロック勝者の古城アスカが映る空間ウインドウを視る。

次に行われたのはジャス姉とブレ姉のBブロックだ。

 

「Bブロックの決勝進出者はジャス姉とブレ姉かな?」

 

2人の実力を知っているからこそ、2人が予選で負けるはずがないと口走る。

そしてその予想は的中し、Bブロック1回戦のスティーブ&アレックス選手、2回戦のボマー・ゴンズ選手を楽々と下しそのままBブロック準決勝で大塚・鳴海チームを突破。

Bブロック決勝戦でシャーク&ロザ選手の[カブト]と[クノイチ]をブレイクオーバーしBブロック勝者となった。

 

「【カリブの紅いハリケーン】。さすがジャス姉とブレ姉」

 

荒々しくもあり、可憐に戦うの姿はまさにハリケーン。

使う真紅に塗装された[クイーン]と[アマゾネス]は戦場の華と言うべきだろうね。

 

「首に近距離からの銃撃・・・・・・おっかなくもあるわね」

 

キヨカの感想に僕も同意見。

クイーンの武装は片手銃系の機関銃『クイーンズハート』。アマゾネスの武装は両手銃系のアサルトライフル『キラーガトリング』。

どちらも遠隔系の武器ながら、クイーンの機動性と、アマゾネスの敏捷性を活かした戦術で決勝戦にまで勝ち進んだ。

もし戦うことになったら気を抜けない相手だ。

もっとも、それは他の相手に対してもだけどね?

そこに、右耳につけたインカムからクリスさんの声が聴こえてきた。

 

『レイくん、そろそろレネトン大統領の平和演説が始まるわ』

 

「分かりました。平和公園ないの様子は」

 

『宇崎氏や、日本の総理から援軍として送られてきた八神氏たちと合流して情報共有して今公園内を警戒している最中よ』

 

クリスさんが凛とした口調で話す。

 

『そちらの方はどうだ?』

 

そこへ、クリスさんとは別の声が聞こえてきた。

 

「こちらはまだ何も。恐らく演説が始まるまで動かないつもりかもです紳羅さん」

 

聴こえてきた声は公安の紳羅さんだ。

 

『ユキト、そっちはどうなの?』

 

『こっちも同じだな。報道陣や人はかなり居るが・・・・・・』

 

『空にはヘリ。海には潜水艦。地上は警察や私たちがいる。けど、どうも嫌な感じが拭えないわね』

 

クリスさんと紳羅さんの方も何も手がかりがないようだ。

 

「僕たちも会場に散らばって電波探知をします。何か分かればすぐに共有しましょう」

 

『そうね』

 

『了解だ』

 

クリスさんと紳羅さんとの通信を切り、端末から兄さんに連絡する。

 

「兄さん聞こえる?」

 

『ああ。そっちは何かあったか?』

 

「ない。これからキヨカと一緒に会場を探す。兄さんたちも2組ずつに分かれて会場内の捜索を。例え暗殺者を見つけても無理に取り押さえないように固く言って」

 

『分かった』

 

兄さんとの連絡を終え。

 

「キヨカ、動こう」

 

「ええ」

 

キヨカと座っていた席を立ち会場を歩き回る。

試合は既に郷田とダイキさんのブロックである、予選Cブロックが始まっている。

2人の1回戦の相手はチームチャーリー。

キヨカと電波探知をしながらスクリーンやウインドウに映し出されてる試合映像を観ていたが、相変わらず強い。

1回戦のチームチャーリーを破り、2回戦の川田ジョーチームさえも撃破。

そして今、予選準決勝の相手たるウィルソン&スティラー選手さえも圧倒してる。

ウィルソン&スティラー選手は今年度のA国LBXリーグチャンピオン・・・・・・つまりは僕がフランスで開催された『ブリュンヒルド』で勝ち取った、欧州地区(ヨーロッパエリア)チャンピオンと同等の称号を持ったチームだということなのだが・・・・・。

リーグチャンピオンということは、結構な強さなはずなのだが、それにも関わらず郷田とダイキさんの2人[ハカイオー絶斗]と[ナイトメア]で終始圧倒して勝ちをもぎ取った。

 

「相変わらず強いなぁ、2人とも」

 

「でも、お兄ちゃんと郷田さんなら当然」

 

「まぁね」

 

当然と言えば、当然だ。

 

「2人とも、相性最悪なのに最高のコンビだからね」

 

あははは、と苦笑を浮かべて言う。

 

「お兄ちゃんが聞いたらコンビじゃねぇ、って言いそうだけど」

 

キヨカもクスッと小さく微笑んで言う。

まぁ、

 

「急に仲良くなったらなったらで、それはそれで少し不気味だけど」

 

「それは言えてるわ」

 

キヨカと顔を見合わせて2人が仲良くなってるところを想像する。

・・・・・・・・・・うん、不気味どころか、明日雪や雷・・・・・・それどころか槍でも降ってくるのかと思うかも。

 

「お兄ちゃんと郷田さん。犬猿の仲だからこそ相手のことが判るし、息もピッタリなのかもね」

 

「そうだね」

 

互いに苦笑しながらも、電波探知を忘れない。

今僕らがいるのは物販ブースだ。

物販ブースにはタイニーオービットをはじめ、クリスターイングラム、サイバーランス、プロメテウス、と各LBXメーカーの物販が販売されている。

外と会場が窓ではなく吹き抜けで構造されてるため、アロハロア島の暖かい空気や近くからの海風が感じられる。

さすがアルテミスなだけあって、物販ブースにはそれなりに人がいる。

 

「それにしても、なにも反応無いわね」

 

「うん」

 

すでにあちこち歩いているが反応が全くと言っていいほど何もない。

 

「やはり、平和演説が始まるまで動かないつもりか」

 

そう呟くと、空間ウインドウから歓声が響いてきた。

どうやら、もう片方で行われていた予選Cブロック準決勝が終わり、郷田とダイキさんの対戦相手が決まったようだ。

 

『―――[マッドドッグ]の仕掛けたサークルマインが炸裂(ヒット)!!勝ったのは1人で出場のジャッカル!!』

 

MCの声とともに映し出されたその人は茶色の上着を着た黒髪にサングラスを掛けた男性だった。

 

「この人がお兄ちゃんと郷田さんの相手・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「レイ?」

 

なんだろう。

なんかこの人から違和感が・・・・・・

会ったことは無いはずなのだが、僕の直感が告げていた。

この人、どこか可笑しいと。

そんなはずないのだけど。

自身の直感に自問していると、キヨカが大丈夫?と聞いてきた。

 

「あ、うん。大丈夫」

 

キヨカにそう返しながらも思考はあのジャッカルという男について考えていた。

 

「気になるの?」

 

キヨカがあのジャッカルって人、と訊ねてきた。

 

「あ、うん。なんていうか、僕の勘、なんだけど・・・・・・」

 

そう答えるとキヨカはダイキさんと同じタロットカードを1枚取り出した。

 

隠者(ハーミット)。隠し事・・・・・・それに秘密・・・・・・?」

 

描かれたカードには青灰色の薄暗い背景の中、ランプの灯りを頼りに、老人が一人静かに崖道を歩いているような絵柄が描かれていた。

キヨカやダイキさんのタロット占いは何気に当たる。

 

「隠し事に秘密・・・・・・」

 

僕の勘に、キヨカのタロット占いでの結果。

 

「・・・・・・なにか、ある」

 

無視出来ない。

そこに。

 

『みんな聞こえるか?5分後に大統領演説が始まるぞ暗殺者が動くとしたらここからだ。。警戒レベルを最大の(セブン)にせよ。カイオス長官からの指令だ』

 

コブラからの指示が来た。

そうこうしている間に、予選Cブロックの決勝。郷田とダイキさんの試合が始まった。

 

「お兄ちゃん・・・・・・郷田さん・・・・・・」

 

「大丈夫だよ。ダイキさんと郷田の2人なら」

 

恐らくCブロックの決勝進出者は郷田とダイキさんのチームだろう。

・・・・・・・・・・何も無ければだが。

歩きながら電波探知を続けていると。

 

『おまいら!アルテミス会場地下フロア、電気制御室に通常のLBX操作とは別の周波数帯の電波を探知!これこそ、暗殺者の使うLBXの反応に違いないデヨ!』

 

ダックシャトルでサポートしているオタクロスが言ってきた。

 

「分かった!僕らが近い。すぐに現場に行く!兄さんたちは念の為ほかの警戒を―――」

 

『ちょ、ちょっと待つデヨ!!』

 

地下フロアの電気制御室に近いのは僕らだ。

なので向かうと言おうとしたが、オタクロスが慌てたように遮ってきた。

 

「どうしたのオタクロス?」

 

『ど、どういうことでヨ?!電波探知が増えてる?』

 

「は?」

 

オタクロスの言葉の意味が理解出来ずにいると。

 

「レイ、電波を探知したわ!」

 

「えっ!?」

 

僕とキヨカの電波探知プログラムに電波探知のプログラム反応のアラートが出た。

ここはまだ地下フロアじゃないし電気制御室じゃない。

地上エリアだ。

なのに電波探知をするなんて・・・・・・!

驚く僕をよそにさらに。

 

『暗殺者を見つけました!』

 

『なぬっ!?』

 

『暗殺者は僕のすぐ近くにいます!』

 

別の場所を捜索していたヒロが言ってきた。

バカな。ヒロがいるのは僕たちとは真反対の場所のはず。

 

『違うわヒロ』

 

『え?』

 

『暗殺者は、私のすぐ後ろよ!』

 

『ちょっと待って!暗殺者はコイツだって!』

 

『な、なんだよ・・・・・・!?』

 

さらに続けてジェシカ、ランからも来た。

それに続けて電波探知が次々と反応した。

 

『どういうことだ?』

 

『これは』

 

『電波の反応が、こんなに』

 

『どうなってやがんだ!?』

 

もう既に反応は10を超え、20、30と増えている。

CCMの画面には電波探知を知らせる赤いビーコンがあちこちにある。

 

『おいおい、どういうことだこれは?なんでこんなに反応があんだ?』

 

『これは、一体・・・・・・ 』

 

慌ててはいないが、戸惑っている声が会場にいるリズさんとレアさんからも伝わる。

電波がこんなに・・・・・・しかも同じ周波数帯。

まさか・・・・・・

 

「やられた!」

 

『やられたデヨ!』

 

僕とオタクロスが察したのは同時だった。

 

「オタクロス、この電波は!」

 

『うむ!暗殺者は我々が電波探知を行っているのに気づいていたデヨ!じゃから、自身の使うCCMと同じ周波数帯のダミーを会場のあちこちに仕掛けたのデヨ!!』

 

完全に僕らの逆手を取られた。

恐らく暗殺者はアルテミス開幕時からすでに動いていたのだろう。

そしてこのタイミング。

すでに平和公園内に仕掛けられた暗殺LBXは動き始めていると見て間違いない。

 

『みんな聞こえるかデヨ?アルテミス会場から800(メートル)と1600Mの海の上に、同じ電波反応を探知したデヨ』

 

『海の上に?!』

 

『怪しいな』

 

『だけど、CCMの操作可能範囲の1000Mには、1600Mまで届かないはずだけど・・・・・・』

 

ユウヤの言う通り、現在のCCMの操作可能範囲は1000M。800Mはまだしも、1600Mには届かないはずだ。

だが、電波反応が1600M地点にもある。

つまり、暗殺者がアルテミス会場から平和公園にあると思われる暗殺用LBXの操作をするカラクリが何かあるはずだ。

 

「兄さんとヒロはライディングソーサで、800M地点の電波探知について調べに。残りはアルテミス会場内に散らばっている暗殺者のダミー電波を虱潰しに除外していく!」

 

『『『『『了解!!』』』』』

 

僕の指示でそれぞれ動き出す。

兄さんとヒロは会場の外からライディングソーサで800M地点に。会場内にいるジンやジェシカたちは反応のあった地点に行き、ダミー電波を除外しに。

 

「行こうキヨカ!」

 

「ええ!」

 

 

 

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