〜バンside〜
暗殺者のジャッカルを拓也さんたちが連れ去り、レイの見た事ない程の冷たい気配が消え、何時もの温かい、光のような感じのレイに戻った俺は、レイに質問した。
「れ、レイ。さっきの・・・・・・」
「ん?なに兄さん。さっきのって?」
ポカンと首を傾げるレイ。
もしかして無意識?
いや、違う。さっきのレイは、レイであってレイじゃなかったのか?
俺は実弟たるレイについて分からなかった。
もう10年も一緒に過ごしてるのに。
「どうしたの?」
「い、いや・・・・・・なんでもない」
首を傾げるレイに俺たちは何も言えなかった。
いや、言ったらまたあの冷たい気配が今度は俺たちを襲うのではないかと思ってしまったのだ。
いつも心配掛けさせて、自業自得ではあるが、レイにしょっちゅう怒られてる俺としては兄の面目躍如の欠片さえないと思うのだが、さっきのは何時ものとは全く違った。
表情は見るものによっては恐怖を。いや、見るものによっては、じゃない、確実に恐怖を。それ以上を与える。
全身から冷や汗が止まらなかった。
「ところで、なんで古城アスカがいるの?それになんで暗殺のこと知ってるわけ?」
あ、と思い出したようにレイがアスカの方を向いて訊ねる。
アスカはレイの視線にビクッ!としながら。
「ば、バンとヒロが大統領の暗殺を阻止しよう、って言ってたの聞いたから」
「・・・・・・兄さん?ヒロ?」
「「っ!」」
ジー、っと半目で見てくるレイにさっきの光景がフラッシュバックしビクンッとなる。
「はぁー・・・・・・」
「ちょっ!ま、待ってくれレイ!?」
「す、すみませんでした!!周囲に人気が無いとはいえ軽率でした!!」
レイのため息を聞き、何故か正座をする俺とヒロ。
コブラやジンたちは少し離れたところで見てて、助けてくれる気は無いらしい。
さすがにあの冷たい気配のお説教は勘弁したい!!いや、マジで!!!
「・・・・・・いや、なんで正座してるのさ」
ポカン、としてるレイ。
「い、いや、えっと、その、つ、つい反射的に・・・・・・」
「な、何故か身体が勝手に・・・・・・」
ポカンとしてるレイに俺とヒロはオドオドと言う。
俺はともかくヒロも勝手に正座するって・・・・・・
それだけさっきのレイが恐ろしかったってことか。
「まぁ、いいけど。それより古城アスカ」
「お、おう!?な、なんだ?!」
「分かってるとは思うけど、この事は絶対に言わないように。もし少しでも口を滑らせて言ったりしたら・・・・・・」
「わ、分かった!!い、言わない!!言わないから!!!」
「ならよろしい」
・・・・・・今更だけど、俺たち完全にレイの尻に敷かれてないか?
というか、レイの発言力が高い・・・・・・
この中で一番歳下の子に、ぐうの音も出ないほど言い負かされてる俺たち。
半ば脅しのようにも聞こえるレイの言葉に首を激しく上下に動かして頷くアスカ。
そこに。
「レイ、やり過ぎよ」
レイと同じく一番歳下のキヨカがやや呆れたように告げた。
「そう?かなり加減してた気がするけど?」
「アレで加減してたって言うなら、鏡を見た方がいいと思うのだけど」
肩を竦めて返すキヨカに、えー、と言うレイ。
てか、アレで加減してたのか。
「ねぇ、バン?貴方の家の序列ってどうなってるの?」
「え、えーと・・・・・・」
唐突に来たジェシカの問いに俺は口を淀ませる。
何せ、我が家の序列は、上から母さん、レイ、同列で俺と父さんだからだ。
母さんは言わずがな、レイも家事炊事は母さんから教えて貰っていたりするため技術がかなり高いし。それに加えて俺は全くという程ではないが、2人に比べたら結構低い。
「バンくん?」
「いや〜・・・・・・そのぉ〜・・・・・・」
視線を泳がせて両指の人差し指をチョンチョンしながら言う。
俺の言葉に全員唖然とした反応が帰ってきた。
「レイの家事炊事スキルが高ぇのは知ってたが、そんなにかよ」
「レイ君って、一体何者なんだい」
それは俺が一番知りたい。
コブラとユウヤの言葉に俺はそう思わざるを得なかった。
「あ、兄さんたち。頑張って決勝まで来てね。特に、兄さん。兄さんとは全力でやりたいからさ。行こっかキヨカ」
「ええ」
そう言うとレイはキヨカとともに去っていった。
さっきまでの冷たい気配ではなく、何時もの気配をただ依らせ、黒衣のコートの裾を靡かせて。
立ち去る2人の中、沈黙が俺らに走る。
「ねぇ、ちょっと気になったんだけど」
その沈黙を破ったのは、ん?と呟いたジェシカだった。
「キヨカって、レイの彼女なの?」
ジェシカのさっきまでの沈黙とは場違いな質問に俺たちは、は?となる。
「確かに。なんかもう阿吽の呼吸って感じだよね」
何故かランまでも乗ってきた。
「どうなのバン」
「いや、俺にそう聞かれても・・・・・・」
弟の色恋沙汰なんて知らないんだけど・・・・・・
ジェシカの問いに困惑する。
「お前の妹について言われてるぞ」
「ふむ・・・・・・」
郷田の言葉に仙道が小さく唸る。
全員の視線が仙道に集まり。
「俺は別にレイがキヨカの恋人でも構わん。というか、キヨカの相手などレイ以外絶対に認めん」
と答えた。
「はい!?」
仙道の言葉に思わず変な声が出た。
仙道のその一言を聞いてジェシカとランはきゃーァ!と歓声を上げる。
「お前なぁ・・・・・・」
「なんだ?」
「いや・・・・・・お前ってかなりのシスコンだよな」
「?それがなんだ?」
「・・・・・・なんでもねぇわ」
「ぁ?まぁ、レイの事を好いているのは何もキヨカだけじゃねぇがな」
「なんですって!?それについて詳しく聞かせてくれるかしら!!?」
「アタシも聞きたい!!」
さっきまでのシリアスな空気から一点、シリアルな空気に変わってしまった。
ジェシカとランの詰め寄りに仙道は右髪をガシガシかいて
「俺が教えるわけ無いだろうが。本人に聞け。それに・・・・・・・・・・いや、なんでもねぇ」
と言った。
そんな殺伐した空気から元の空気に戻り、俺たちは元の自分たちの席に戻って行った。
仙道の最後の一言が少し気になるが・・・・・・
〜バンside out〜
〜レイside〜
兄さんたちと分かれ、僕とキヨカは元の。自分たちの席に戻ってきていた。
戻ってきた、のだが―――
「どうしたのジン?」
何故かジンがいる。
僕とキヨカが席に戻って少ししてジンがやって来たのだ。
1人で。
「レイ、聞きたいことがある」
「なに?」
首を傾げて訊ねる。
「体のほうは大丈夫なのか?」
「っ!?」
ジンの問い掛けに目を少し見開いた。
隠してたはずなのになんで?
ちなみにキヨカにはバレてた。兄さんたちから離れたあと手を貸してくれた。
「バン君ほどキミとは長い付き合いがある訳では無いが、少し見れば判る」
僕の驚いて声の出ない沈黙にジンが答えた。
「原因は最後にした暗殺者への問いらか?」
「・・・・・・ふぅ。兄さんたちには言わないでよ?」
小さくため息を吐いて告げる。
「なんか知らないけど、ちょっと体が痛い。原因は推察の通り」
そう。
隠していたが、今の僕の体は少し軽い筋肉痛のような感じで痛い。
少し休めば大丈夫だと思うが。
原因はたぶん、さっきの暗殺者にした詰問だと思うけど。
「さっきのは一体なんなんだ?さっきのは本当にキミなのか?」
「その答えはなんとも言えない」
「?どういう意味だ?」
「僕であって、
「???」
「どういう意味レイ?」
ジンだけでなく、キヨカも僕の答えに疑問符を浮かべていた。
「んーーー。言葉に言い表すと難しいんだよね。僕なんだけど、僕じゃなくて。さっきのは、誰かの感情が来たんだ」
「誰かの感情だと?」
「そう。なんて言ったらいいのかな〜。こう、まるで僕の中に僕じゃない誰かが居るような?よく分からない感じ」
正直なんて言葉にしたらいいのかさっぱり分からない。
「いや、正確に言うなら、僕とその誰かの感情が混じり合った、って言った方が正解かな?」
僕の怒りに呼応した感じで混じった感情。
その感情は僕と同じように憤怒の感情を発していた。
けど、その憤怒は僕と同じ、って告げてるようだった。
「まるでキミの中のもう1人がキミを代弁したような感じだな」
「まぁ、実際ジャッカルにしたのは僕の意思でもあるし」
「その割には普段使わない口調だったな。僕もだが、バン君も驚いていたぞ」
「そう?」
そんなことないと首を傾げてると。
「レイのアレを見たのは2度目だけど、相手どころか私たちにもトラウマを残すつもり?」
キヨカがジト目で言ってきた。
「2度目?」
「以前あったのよ。レイの逆鱗に触れた人」
ジンの問いにキヨカが思い出すように返す。
「その人は今、レイを見るなり逃げ出すし脅えたりしてるらしいわ」
「・・・・・・・・・」
ジンが唖然としてる。
眼を何度もパチクリしてるし。
「学校でも、レイだけは絶対に怒らせるな、っていう暗黙の不文律が学校全体に伝わってるようだし」
「えー。メア程じゃないでしょ?」
「私から見たら貴方もメアも同じよ!?」
ちょっと心外である。
キヨカのツッコミにそう思うが・・・・・・。
「とにかく、この事兄さんたちには言わないでよ?心配かけたくないし」
「・・・・・・分かった」
僕の意を汲んでくれたジンはそう一言言うと、兄さんたちの方へと戻って行った。
ジンが去り、丁度今行われてる予選Dブロックの決勝を観てるとキヨカが。
「それで?」
「ん?」
「さっきのはレイなの?それとももう1人の誰か?」
と聞いてきた。
「・・・・・・両方」
「そう・・・・・・」
僕の答えを聞くと、キヨカはそれ以上その話題を出さなかった。
代わりに―――
「どっちが勝つと思う?」
と聞いてきた。
「無論、ユジンさんたちオタレンジャーZ」
僕は即答で返した。
ユジンさんたちがここで敗れるわけないでしょ。
ユジンさんの実力を知っている僕はふふっ、と微笑む。
オタゴールドとオタシルバーは分からないけど、あのオタクロスの弟子なのだ。そんじょそこらのプレイヤーとはレベルが違うはずだ。
そしてユジンさんが選んだのだ。連携も並大抵のものじゃない。
ユジンさんたちオタレンジャーZの対戦相手はチームテリブル。
ワールドブルドカップチャンピオンのチーム3人組だ。
ワールドブルドカップとはその名の通り、出場者全員のLBXが[ブルド]のみの、ブルドオンリーの大会だ。
ちなみにキャタピラやホバーなどの特殊な脚部パーツを装備したLBXのことをパンツァーフレームというのだが、上半身のフレームで統一されることが多い。
例えばブルドなら上半身がブロウラーフレーム、脚部がパンツァーフレームであるが、ブルド全体はブロウラーフレームとしてカテゴライズされる。
他にも、郷田四天王の1人であるリコや、アレキサンダーシスターズのブレ姉の[クイーン]は上半身はストライダーフレーム、脚部はホバーとパンツァーフレームであるが、カテゴライズはストライダーフレームとなってる。
他にもいろいろあるが、それは省略する。
とまぁ、それは置いといて。
僕の予測通り、Dブロックの勝者はユジンさんたちオタレンジャーZとなった。
相手の連携のリズムを見切り、動きが単調になってる所を突いた流石の観察眼だ。
そして、それに素早く反応して反撃するオタゴールドとオタシルバー。
なにより、相手のリズムを見切った観察眼。
「さすがユジンさん」
やはり、ユジンさんの観察眼はこのアルテミス出場者の中でも一二を争う程。
油断出来ない相手だ。
「次はバンさんたちの番ね」
「うん」
Dブロックが終わり、次は兄さんやヒロたちのEブロックだ。
兄さん、ジン、ジェシカのチームとヒロ、ラン、ユウヤのチームが戦うには決勝まで進まなければならない。
まぁ、普通なら当たる確率は低いのだろうけど。
「決勝は兄さんとヒロのチームかな」
「そうね」
兄さんたちの実力を知っている僕とキヨカは、決勝進出が兄さんのチームとヒロのチームだと確信していた。
確かに各大陸のチャンピオンが幾人かいるが・・・・・・。
前回優勝者の兄さんに、ファイナリストのジン。記憶能力の高いジェシカ。
アングラテキサス優勝者にして秘めたる才能があるヒロに、動体視力が高いラン。そしてジンと同じくファイナリストのユウヤ。
正直過剰戦力とも言えるチームだ。
余程のことがない限り負けることがない。
「ていうか、兄さんとジンを一緒に組ませちゃダメでしょ!?」
僕らの中でも最強格の2人が同じチームって・・・・・・
対戦相手に同情してしまう。
そして始まった予選Eブロック。
アルテミスMCの彼の言う言う通り、確かに激戦区であったが、兄さんたちは順調に勝ち進み、確信通り2組ともEブロック決勝へと駒を進めた。
「まぁ、予測通りね」
「あははは。兄さんたちの方は確実だけどね」
何せ、最強格の2人がいるのだから。
というか、兄さんとジンのコンビはヤバい。
元々敵同士だったのもあり、互いに認めた最大のライバルなのだから。
アミ姉やカズ兄とは別の意味で強い。
「ヒロたちの方は、ユウヤが上手く指揮を執っていたね」
さすがユウヤ。
ヒロとランを上手く手綱を引いていた。
「どっちが勝つと思う?」
「んー・・・・・・相手の先を取った方かな?まぁ、最終的には、我を通した者が勝つ」
「そうね」
視線を宙の空間ウインドウに合わせ、兄さんたちの試合を観る。
ついに始まった予選Eブロック決勝戦。
バトルフィールドは城塞。
小高い草原の上から巨大な城が流れる河を見下ろし、長い城壁が囲っている、至ってシンプルなバトルフィールドだ。
互いにそれぞれLBXをフィールドに投下する。
投下されたLBXを観て眉を上げた。
「[リュウビ]の武装が変わってる?」
ユウヤのLBX、リュウビの武装が何時もの片手剣と盾ではなく、片手銃と盾に変更されていたのだ。
しかも装備してる片手銃は機関銃系の『ビームサブマシンガン』。
ジェシカの[ジャンヌD]の装備してる片手銃『スナップピストル』は単発系だが、リュウビの装備しているのは機関銃系と連続で弾丸が放てる型だ。
「・・・・・・ジェシカさんはランさんの性格を読んで作戦を立てたのかしらね?」
「だろうね。僕もジェシカだったらランの性格や思考を読んで作戦を立てる。けど、今回はユウヤの方が一枚上手かもね」
「それは何故?」
「ジェシカの思考は読みやすい。しかも、開戦前に敢えてランが兄さんと戦いたがってるのを見せたからね。尚更だよ」
策略ではジェシカよりユウヤの方が一枚上手を行く。
敢えてランの行動を見せ、ジェシカがランの性格と思考を読んで作戦を立てるように誘導した。
戦いは試合が始まる前から始まっている。
相手の読み合いが。
しかも今回は仲間同士。互いに手の内は知り尽くしている。
故に勝つためには相手より先に行くしかない。
バトルが始まり、開始早々兄さんの[エルシオン]にランの[ミネルバ]が向かい、それをリュウビが追いかけて行く。
エルシオンは逃げるようにその場から離れ、ジンの[トリトーン]とジャンヌDは残ってるヒロの[ペルセウス]へと向かっていく。
「2人がかり」
ジャンヌDの銃弾を避けるペルセウス。
だが、ジャンヌDの弾丸を避ける事ばかりに集中して、トリトーンの背後からの攻撃を避けられずに倒れる。
倒れたペルセウスにトリトーンが追撃を仕掛け、ジャンヌDと動きを封じる。
だがそこにエルシオンを追い掛けていたリュウビの機関銃から放たれた光弾がペルセウスの窮地を救った。
「上手い。武器を近接武器から遠距離武器に切り替えたのはこの為か」
兄さんたちのチームは遠近とバランス良く揃っているが、ヒロたちのチームは全員が近接武装と偏っている。
エルシオンは槍と盾。トリトーンはハンマー。ジャンヌDは単発系の双銃。
対してペルセウスは双剣。ミネルバはクロー。リュウビは剣と盾。
故にユウヤはリュウビの武器を剣から機関銃系の光銃に切り替えたのだろう。
銃なら相手の牽制にも出来るし、遠距離という近接武器の届かない安全圏から攻撃出来る。
「兄さんはランを押さえてるな」
ミネルバはエルシオンを攻撃するのに夢中で、ペルセウスとリュウビの助けに入りそうにない。
「いや、これはランが兄さんを押さえてるって感じかな?」
「え?」
僕が呟くと、ペルセウスとリュウビと対峙していたトリトーンが城壁の上を駆け、エルシオンと合流し2対1でミネルバを押さえていた。
「ジェシカがヒロとユウヤを足止めして、兄さんとジンの2人でランを倒す、ってのがジェシカの立てた作戦かな」
右足を左膝の上に乗せて足を組む。
「なるほどね。じゃあ、ユウヤさんの立てた作戦は?」
「ユウヤの立てた作戦?それは―――」
僕が言うのとほぼ同時に、ウインドウに映るミネルバが反転して駆け出し、エルシオンとトリトーンがミネルバを追い掛ける。
ジャンヌDとある程度距離が離れたその隙に、リュウビの光銃がジャンヌDの周囲に光弾をばら撒き視界を隠す。
そしてその隙を突いてペルセウスがジャンヌDを双剣で攻撃した。
この時点でさっきまでの立場が逆転。
ジャンヌDをペルセウスとリュウビが押さえていた。
しかも超至近距離のため、避けるのが難しい。
避けるより先にペルセウスの双剣かリュウビの光弾がジャンヌDを襲う。
「ジャンヌDだけになるのを狙っていた・・・・・・かな。ジェシカがランの性格を読むように、ユウヤの作戦はランの性格を読ませて、敢えてジェシカの作戦に掛かるフリをして2対1でジャンヌDを倒す」
「つまり、ジェシカさんの作戦すらも自身の作戦に組み込んだ、ということ?」
「そゆこと」
普通ここまで先を読める人はいない。
何せ大抵の人は初対面なのだから。
だが、今回の相手は互いに知り尽くしている仲間同士。
故に読める。
ミネルバを押さえていたトリトーンがその場から離脱し、ジャンヌDを助けるためジャンヌDの方へと移動する。
エルシオンも移動しようとするが、ミネルバがそれを阻止する。
これでエルシオンはミネルバに押さえられた。
「作戦は完全にユウヤの勝ちだね」
武装を変更して剣から銃にしたことも作戦の内だったのだろう。
それにしても。
「ビリーという一流の双銃使いとの戦いを経験してるヒロでジェシカを押さえるのは理にかなってるな」
ビリーの双銃はジェシカをも凌ぐ技量だ。
あのビリーの[ジョーカー]を倒したペルセウスなら、ジャンヌDの至近距離からの攻撃など苦でもない。
アングラテキサスでの戦いが今ここに生かされてる。
銃を同時に弾き飛ばした動きでジャンヌDが弾丸を放つ前に攻撃する。
そしてそこをリュウビが必殺ファンクション【ハイパーエネルギー
倒れて動きが遅れたジャンヌDに巨大なエネルギー弾が襲う。
が、その前にトリトーンが立ちはだかりジャンヌDの代わりにリュウビの必殺ファンクションを受けた。
爆煙が立ちのぼる中、必殺ファンクションが直撃したトリトーンが立ち上がりカウンターで必殺ファンクション【オーシャンブラスト】を放った。
必殺ファンクションを放ち、動きが止まった瞬間を狙った必殺ファンクションがリュウビを襲う。
トリトーンから放たれた螺旋状に巡る激しい渦巻がリュウビを襲う。
激しい水の奔流をギリギリ盾で受け止めるが、完全には受け止めきれず後ろに吹き飛ばされるリュウビ。
トリトーンもリュウビ、どちらもダメージは大なのは確実だ。
そこでエルシオンがペルセウスと。ジャンヌDがミネルバの1対1へと変わりそれぞれ対峙する。
「っ!トリトーンとリュウビ同時にブレイクオーバー・・・・・・!?」
対峙する中トリトーンとリュウビが同時に倒れ、蒼白いエフェクトを放ってブレイクオーバーした。
それだけでさっきの互いの必殺ファンクションが如何に強力だったか判る。
これで残りは2対2。
作戦など立てようもない、それぞれ1対1の戦いを繰り広げてる。
次にブレイクオーバーになったのはジャンヌDとミネルバだった。
ミネルバのクローを受けたジャンヌDが吹き飛ばされながら弾丸を放ち、トリトーンとリュウビと同様に同時にブレイクオーバーしたのだ。
「実力伯仲ね」
「これで、兄さんとヒロの一騎打ち」
互いに残ったのは兄さんとヒロ。
エルシオンとペルセウス。両機とも同時に動き、向かい合ってきた中間部で互いの武器をぶつけ合い鍔迫り合う。
どちらも拮抗して退いてない。
鍔迫り合いから仕掛けたのはエルシオンだ。
エルシオンの槍、『エルシオンハルバード』による突きがペルセウスを襲う。
ペルセウスも双剣の『ペルセウスソード』で軌道をずらし直撃を防いでる。
「バンさんが押してる・・・・・・!」
距離を取ってからの、一気に距離を詰めたペルセウスが今度はエルシオンに猛攻する。
エルシオンは盾の『エルシオンシールド』と『エルシオンハルバード』で防ぐ。
「今度はヒロが兄さんを押してる・・・・・・!」
どちらも引けを取らない、一進一退の攻防。
ひとつでもミスをしたらその瞬間に殺られるミスが許されない緊迫した展開だ。
「凄い、ヒロ。兄さんにあそこまでくい込んでる」
LBX歴で言えば兄さんの方が長い。
つい最近始めたばかりのヒロがここまで兄さんにくい込んでいるのは、ヒロ自身の才能と。
「兄さんから教わったからか・・・・・・」
ヒロのLBXの師匠は兄さんだ。
言うならば、今この戦いは
「凄いね・・・・・・」
「うん・・・・・・」
一進一退の攻防に僕もキヨカも目が離せない。
いや、2人の戦いにこの会場にいる全ての人が目を離せずにいた。
「互角・・・・・・」
固唾を呑んで観る2人の戦い。
この戦いはもうそれぞれの我のぶつけ合い。
兄さんとヒロの―――意思の対峙だ。
「「っ!!」」
エルシオンとペルセウスのぶつかりで、手から飛びそれぞれ反対側に突き刺さるそれぞれの槍と双剣。
エルシオンの方には双剣『ペルセウスソード』が。
ペルセウスの方には槍『エルシオンハルバード』が。
誰もが息を呑んで見守る。
動いたのは同時だった。
エルシオンは盾を放り、突き刺さっていた双剣『ペルセウスソード』を。ペルセウスは突き刺さった『エルシオンハルバード』を手に取り構える。
そして両機とも同時に必殺ファンクションを放った。
エルシオンはペルセウスの【コスモスラッシュ】を。
ペルセウスはエルシオンの【ホーリーランス】を。
兄さんはヒロの。ヒロは兄さんの必殺ファンクションを放つ。
双剣にエネルギーを溜めて放たれた斬撃と、槍に輝く十字越しに閃光を纏った閃槍が同時に放たれた。
互いに同時に放たれた必殺ファンクションはぶつかり合うと眩い閃光を放つ。純白の光で染まりウインドウに映る試合が観えない。
やがて光が収まると、ウインドウにエルシオンとペルセウスが真後ろに吹き飛ばされ、地面に落下すると同時にブレイクオーバーした姿が映し出された。
「両者・・・・・・ブレイクオーバー・・・・・・」
まさかの展開に声が出ない。
「まさか、こんな展開になるなんて・・・・・・」
この展開は誰が予想。想像しただろうか。
僕ですら想定外だ。
でも、
「ヒロ、良かったね・・・・・・」
最後にヒロのペルセウスが放った【ホーリーランス】。
あれはアングラテキサスが終わった後、ヒロが秘密裏に特訓をして身につけたヒロの成果だ。
このことを知っているのは僕だけ。
僕が知っている理由は、ヒロが直接僕に特訓を頼んできたからだ。
アングラテキサスで身につけた槍の動きをさらに身につけたいと言い、僕との特訓の末、結果的にヒロは【ホーリーランス】を習得した。
ヒロの基本装備は双剣のため、槍を使う場面はあまりないのだが、まさかあの特訓が今ここで。しかも兄さん相手に披露出来るなんてね。
その事を思い出してると。
「あれ?でも、この場合ってどうなるの?」
とキヨカがふと呟いた。
キヨカの問いに僕が答える前に、アルテミスMCが。
『両チーム全てのLBXがブレイクオーバー!大会ルールにより、両チームとも敗退となります!!』
と実況した。
「えっ!?」
「うそっ!?」
まさかの結果に驚きが出る。
他の人たちも、えぇ!?と驚愕の声を洩らしてる。
『Eブロックからは、決勝進出なしという結果になりました!!』
まさかの展開にステージにいる兄さんたちも落胆していた。
そこに。
『『『『ヒ〜ロ!ヒ〜ロ!ヒ〜ロ!ヒ〜ロ!』』』』
『『『『バ〜ン!バ〜ン!バ〜ン!バ〜ン!』』』』
と観客席のあちこちから兄さんとヒロを呼ぶ声が響いた。
その声はどれも歓喜の声だ。
「持っていかれたね」
「ええ。でも、バンさんたちの戦いはそれだけの影響を残したってことね」
弟として嬉しい。
兄さんの戦いでこんなに誰かが喜んでくれるなんて。
けど、だからこそこのLBXの祭典アルテミスを汚したヤツらが許せない。
自分の欲望のために、このアルテミスを汚した。
もし大統領の暗殺が行われていたら、もう二度とアルテミスは行われてなかったかもしれないのだから。
兄さんたちがステージから立ち去る中そう思ってると。
『みなさま!ここで大会本部から緊急発表です!!』
とMCが放送した。
「?」
「なにかしら?」
誰も彼もが不思議がってると。
『な、なんと!!大会協議の結果!只今敗退した大空ヒロ、山野バン両チームのファイナルステージ進出決定が決まりました!!!』
と耳を疑う驚愕の案内をした。
「「ええっ!?」」
『みなさまの熱き思いが。声援が、アルテミス本部を動かしたそうです!!!』
MCの言葉に会場中から歓声の声と拍手が鳴り響く。
「兄さんとヒロたちが決勝進出・・・・・・」
「凄い・・・・・・アルテミス本部を動かすなんて・・・・・・」
「それほどまでに兄さんとヒロの戦いが白熱して、みんなの心に響いたってことだろうね」
そうじゃなきゃアルテミス本部がこんな事許すわけない。
こんな事前代未聞だろう。
けど、逆に言い換えればそれほどまでにアルテミス本部の人たちにも届いたということになる。
これでEブロックから決勝進出したのは兄さんとヒロたち。
そして次はついに―――
「行こうキヨカ。兄さんたちに負けないぐらい熱い戦いをしないと!」
「ええ!」
あんな戦いを見せられたんだ。中途半端な戦いなんて出来ない。
兄さんたちに負けないほどの戦いをしなきゃ!
『さぁ!!ついに、予選最後のFブロックによる試合が行われます!!』
MCと会場アナウンスによる案内の元、僕とキヨカは移動する。
僕とキヨカのアルテミスでの戦いが、ついに始まる!