ダンボール戦機 英雄の弟   作:ソーナ

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ハーネスの日常

 

〜レイside〜

 

朝から一悶着?ドタバタ騒ぎがあったが、それはいつもの事。僕らは制服姿でダック荘の食堂に向かった。

食堂にはまだ寝間着の生徒や制服姿の生徒がいた。

 

「よっ、おはようさんレイ」

 

「おはようカゲトラ」

 

朝食のトレーをトメさんから受け取り席に着くと、隣の席にはハーネス第一小隊の三人がいた。

すぐ近くにはギンジたち第二小隊、オトヒメたち第三小隊もいる。

 

「相変わらずお前たちは一緒にいるな」

 

「あはは、まあね」

 

呆れたように言ってくるが僕は肩を軽く竦めて返す。

 

「まあいいじゃありませんの。私もあの方の傍にずっと居たいですわ」

 

「あー・・・・・・」

 

オトヒメのジンさんへの妄信は限界突破している。まあ、たまに引くことがあるけど。

 

「オトヒメ、貴女のその盲信ぷりは相変わらずね」

 

「あはは。オトヒメちゃん、どっぷり浸かってるよ・・・・・・」

 

「それは私たちもだと思うけどね?」

 

今日も今日とて僕らは平和だ。ん?平和・・・・・・なのかな?

そんな事を思いながら朝食を済ませ、学校へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校に着くと毎週恒例の『先週のSC(シルバークレジット)高額獲得者』の発表が行われる。―――のだが・・・・・・。

 

『皆さん、今朝もご機嫌麗しく。今日は皆さんに嬉しいお知らせがあります』

 

ジョセフィーヌ学園長のその言葉に僕はイヤーな予感がした。そしてそれは大当たりで。

 

『今月をウォータイム強化月間とし、時間をこれまでの二倍・・・・・・15時から17時までの二時間とします』

 

まさかの一時間だったウォータイムが二時間の倍になった。

これにはさすがに頭が痛くなる。何せ、二時間ということ、それだけロストや消耗するリスクが高くなるからだ。

まあ、ウチのバカ二人(スズネとギンジ)は嬉しそうだが・・・・・・、あ、もう一人いた。ウチのクラスじゃないけど、ジェノックに。

視線の先にはジェノックの制服に身を包んだ瀬名アラタの姿があった。アラタは嬉しそうにガッツポーズしていた。

 

「はぁ・・・・・・」

 

「どうしたのレーくん?」

 

「いや、面倒なことになったなって」

 

「そうね・・・・・・面倒なことをしてくれたわ、あの学園長」

 

睨むように学園長を見るフラン。

他の生徒たちも動揺し、辺りに広がっていた。

やがて、メインの『SC高額獲得者』発表になり。

 

『――先週の高額獲得者は・・・・・・中等部二年、法条ムラクと山野レイ』

 

「さすがねレイ」

 

「うん。さすが私たちのレイ!」

 

「そうね〜」

 

今回もまた僕とムラクの同率一位らしい。

うーん、僕そんなにムラク並なことしてない気がするんだけど?そんな疑問を浮かびつつ学園長の話を聞いた。

 

〜レイside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜アラタside〜

 

壇上に上がり学園長だという派手な人の話を聞き、あのウォータイムの時間が二時間に伸びたことに嬉しくなった。だってそれだけ活躍できるってことだからな!

 

『さてお次は、先週のSC高額獲得者の発表よ』

 

?SC?

聞きなれない単語に俺は前にいたユノに訪ねる。

 

「なぁ、ユノ。SCって、なんだ?」

 

「ウォータイムに、いい成績を上げた者に与えられるポイントよ。私たちの評価の基準になってて、クレジットを貯めれば高機能なLBXや装備に交換することも出来るの」

 

「へぇー」

 

俺とユノが話してる間にも発表は続き。

 

『―――そして、先週の高獲得者は・・・・・・中等部二年、法条ムラクと山野レイ』

 

一位が発表された。

発表された名前に聞き覚えのある俺は驚いた。

 

「えっ!?レイが一位!?」

 

驚く俺を他所にユノは。

 

「またアイツとレイなの・・・・・・?」

 

「レイはともかく法条ムラクってそんなに凄いの?」

 

俺の問いに答えたのはユノではなく。

 

「法条ムラクは五週連続トップなんだ」

 

後ろにいたサクヤが答えた。

 

「でも、山野レイは法条ムラクより凄いよ」

 

「どういうことだ?」

 

「レイは法条ムラクの倍・・・・・・十週連続トップなの」

 

「じゅ、十週!?」

 

十週ということは二ヶ月以上もトップを保ち続けているという事だ。

 

「うん。それに、彼の仲間は全員SC高額獲得者トップに入ってるんだ」

 

「それって、あのフランも?」

 

レイの仲間が誰かは分からないが、この間会ったフランってヤツがレイの仲間なのだろう。

 

「ええ。それに、レイはこの学園最強のプレイヤーって言われてるのよ」

 

「さ、最強!?」

 

まさかの情報に声を上げる。

昨日あった時結構落ち着いてるなって思ったが、まさかの最強のプレイヤーに興奮した。

 

「言っとくけど、レイと戦いたいなんて思わないでね?」

 

「え?なんでだ?」

 

「敵対国であるハーネスであるのもそうなんだけど、レイの実力はアラタよりも遥かに上だからよ」

 

「そ、そんなになのか!?」

 

「うん。もし、アラタがレイと戦ったら・・・・・・」

 

「戦ったら?」

 

「瞬殺ね」

 

「しゅ、瞬殺!?」

 

「レイの相手出来るなんて、それこそ限られたプレイヤーくらいじゃないかしら・・・・・・」

 

「そ、そんなになのかよ・・・・・・」

 

ユノとサクヤからもたらされた情報に俺は興奮した。だって、レイを倒すことが出来たら俺が学園最強ってことになるからな!

あ、でもレイがどんなLBX使うのか知らねぇんだよな。

けど、そんなに強いならこの学園に入学するのに必要な『公式大会三回以上の優勝』の規定条件で有名なら聞いた覚えはあるはず・・・・・・・・・・あれ?山野レイにフラン・フルーリアってどこかで聞いたことがあるような・・・・・・。

そんな事を頭に浮かばせながら学園長の話を聞いた。

 

〜アラタside out〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜レイside〜

 

「―――で、あるからして古今東西集団戦とは・・・・・・」

 

LBX専門校とは言っても、この神威大門統合学園は中高一貫校であり、キチンと授業もある。今の時間は猿田教官の授業だ。

真面目に受けないと落第はするし補講もある。

のだが・・・・・・。

 

「・・・・・・・・・・・・ンゴ」

 

「はぁ・・・・・・」

 

視線の先にいる女子。金箱スズネは机に突っ伏してヨダレを垂らして寝ていた。The・熟睡である。

隣にいるムネモリや一個離れた席にいるカゲトラが起こそうとしているが効果なく。

 

「―――以上から兵法とは・・・・・・ん?」

 

黒板で板書していた猿田教官が気付き。

 

「金箱スズネ!!」

 

「!?ハイっ!!」

 

猿田教官の大きな声の呼びにビックリしたスズネ。寝ていたため口元のヨダレは拭えてない。

 

「ワシの授業で眠るとはいい度胸だ!」

 

「す、すんません・・・・・・」

 

「聞く気が無いということは、兵法なんぞどうでもよいと言うことだな!そんな事では戦場で勝利は掴めんぞ!それどころかロストして退学するのが関の山だ!!」

 

猿田教官の指摘はもっともである。

まあ、ロストしないように作戦指揮をジンさんと立てているけど・・・・・・。

ため息を頭で吐きながらスズネを見る。

 

「第一小隊隊長。乾カゲトラ!」

 

「はいっ!」

 

「ロストとはなんだ!」

 

「ウォータイム中にLBXがダメージを受け、『完全破壊』されることです。その場合、プレイヤーは戦死したと見なされ、退学になります」

 

「その通りだ!では、ロストを避ける方法は?第五小隊隊長。山野レイ!」

 

「はい!ロストを避けるためには『エスケープスタンス』を取ることが必要です。エスケープスタンスは『エスケープ』。つまり、戦場からの離脱が完了するのに5秒掛かりますが、成功した場合プレイヤーは脱出したものとみなされ、ロストは防げます。また、エスケープスタンスをしてる最中の5秒間は全くの無防備になりますので注意が必要です」

 

「よし!その通りだ。部下の教育も隊長の大切な役目だ。他の隊長も忘れるな」

 

「はい!肝に銘じます!」

 

「はい!」

 

猿田教官の言葉に僕とカゲトラだけでなく、ギンジやオトヒメ、シスイが頷いて返す。

 

「特に金箱スズネ!お前は隊長を見習え!」

 

「は、はぁい・・・・・・」

 

「なんだその生返事は!」

 

猿田教官がスズネを叱ろうとしてその瞬間、授業終了のチャイムが鳴った。

 

「ん・・・・・・。終わりか。今日の授業はここまで!各自、復習を怠るな!以上だ!!」

 

猿田教官が教壇から降り、教室から出た。

猿田教官が出てしばらくして。

 

「はぁー。疲れたぁ~」

 

スズネが一気に脱力したように机に突っ伏した。

 

「チャイムに救われましたわねスズネ?」

 

「はぁー。ホンマ敵わんわ。猿田教官キッツいわー」

 

「自業自得だろ?まったくいい加減にしてくれよ」

 

スズネの机の周りにクラスメイトが集まる。

 

「スズネ、もう少し真面目にね?」

 

「そうだよぉ〜?そうじゃないと落第しちゃうよ?」

 

「だって退屈なんだもん。バトルはさ。ガンガン行く方が性に合っとるんや。それに・・・・・・ウチのそういう所をカゲトラやレイは上手く使ってくれてるやろ」

 

「まぁ、それはそうだが・・・・・・」

 

「それとこれとは話は別なんだけどなぁ〜」

 

まあ、スズネのこの性格は出会った頃から変わってないからもう諦めてはいるけどね。

 

「さてと、それじゃあブリーフィングルームに行こうか」

 

荷物を持って僕らはウォータイムの準備のため、ブリーフィングルームへと向かい、ウォータイムを行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウォータイム終了後

 

 

「―――今日のウォータイムでジェノックは列車の護衛。その護衛にロシウスとぶつかったがこれに勝利。グレンシュテイムとロンドニアは変わりなくどちらもロシウスとの衝突。アラビスタはクルセイド領土へ進行。ポルトンは動きなし。以上だ」

 

ジンさんが僕らに情報を伝えてくる。

 

「ふむ。アラビスタは本気でクルセイドを陥落させようとしてるみたいだね」

 

司令官の席に立ち僕はジンさんの言葉に考える。

 

「見た感じそうですわね」

 

「けど、クルセイドもそう簡単にやられはしないだろう」

 

このウォータイムの真実を知らないみんなは、シミュレーション感覚で言う。だが、僕の頭ではもしクルセイドが墜ちたら、クルセイドの元となっている国家が消滅するということになる、と考えていた。

 

「ジンさん、しばらくは昨日今日と同じく各小隊の自由行動でいいですか?」

 

「ああ」

 

僕の提案にジンさんは頷いて返す。

 

「ん?」

 

視線をみんなに向けた時、オトヒメの表情に曇りが出ているのに気付いた。

 

「それでは本日のブリーフィングは以上とする。解散!」

 

オトヒメに聞こうとしたがジンさんの号令で解散となった。

次々ブリーフィングルームから出ていく中、僕はシスイを捕まえる。

 

「シスイ」

 

「どうしたレイ?」

 

「ちょっとオトヒメの第三小隊を調べてくれないか?」

 

「何かあったのか?」

 

「いや、僕の取り越し苦労ならいいんだけど、オトヒメの表情に曇りが出ていたのが気になってな」

 

「ふむ」

 

オトヒメはプライドが高いため、基本弱みを見せたりはしない。だが、そのオトヒメがあんな表情をするということはウォータイムで何かあったに違いない。

 

「一応、これはハーネス副司令ゼロとしてお願いする。引き受けてもらえる?―――コウモリ?」

 

不敵な笑みを浮かべてシスイに問う。対するシスイも不敵な笑みを浮かべて返し。

 

「もちろんだ。このコウモリにお任せあれ、ゼロ。明後日には伝えられるようにしとこう」

 

「さすがシスイ。それじゃあ頼むね。僕の方も少し調べてみる」

 

「ああ」

 

手の甲を軽く合わせシスイはブリーフィングルームから去った。

ブリーフィングルームには僕とジンさんの二人になり。

 

「レイ、しばらくの間僕は遠隔で指示を出す」

 

「?・・・・・・あぁ、分かりました」

 

ジンさんの言葉の意味を理解した僕は頷いて返す。

 

「ところでレイ、他の小隊に新しいのは渡さないのか?」

 

「許可を得られるなら何時でも。それに・・・・・・」

 

懐からCCMを取り出し画面を見せる。

 

「試作機をこっちに回してもらえるよう、既に手筈は打ってます」

 

懐から出したCCMはこの学園に来る際渡されたサブのやつだ。

そしてその画面に写ってる相手は。

 

『久しぶりだな、ジン』

 

「拓也さん、お久しぶりです」

 

タイニーオービット社社長である宇崎拓也だ。

 

「拓也さん、依頼していた物は流せますか?」

 

『ああ。問題ない、何時でも流せるぞ』

 

「じゃあ、その内の一部。例の三つをジェノックにお願いします」

 

『あの三つをか?』

 

「ええ。恐らく必要になるはずです」

 

『レイがそこまで言うのならそうなのだろう。了解した。何時ぐらいに流せばいい?』

 

「僕らと同じタイミングで」

 

『分かった。それで、そっちの方はどうだ』

 

「あー・・・・・・」

 

拓也さんの質問に僕は口を淀ませる。どうだ、と聞かれてもどう答えて良いやら。

 

『大方、あの三人からのアプローチを一身に受けてるのだろ?』

 

「あー、えー、まあ、はい」

 

事情を知ってる拓也さんは苦笑をしながら言う。

 

『ふっ。青春は今しかない。任務もそうだが、学園生活を十分楽しめレイ』

 

「分かってますよ〜。それより、拓也さんこそ里奈さんとはどうなんです?」

 

『なっ!?べ、別に里奈とはなんでもないぞ!?』

 

「いやいやいや。紗枝さんや結城さん、霧島さんも知ってますから、今更隠すことはないですよ?」

 

『なぁッ!?!?』

 

拓也さんの珍しく泡ふためいた行動に僕は笑みを浮かべる。

隠してるようだが、拓也さんとルナの姉である石森里奈は付き合ってるのである。まあ、そんなのバレバレであるが。ちなみに、タイニーオービットの社内では極秘に拓也さんと里奈さんの応援をしている組織があるらしい。あ、シーカー本部の人たちも入ってます。

 

「ちなみにルナは拓也さんのことOKだそうですよ」

 

『そ、そうか・・・っておい!!?』

 

「まあ、昔からお似合いの二人だと思ってましたし?」

 

『な、なななな・・・・・・!!!』

 

「式を挙げるなら呼んでくださいね。駆け付けますので。全員で」

 

『レイ!』

 

「ふふふふふ」

 

拓也さんの反応に笑みを浮かべる僕にジンさんは。

 

「相変わらず舌が上手い・・・・・・」

 

と感服していた。

 

「それじゃあ、拓也さん。お願いします」

 

『分かった』

 

拓也さんとの会話を切り、CCMを仕舞う。

 

「ジンさん、ジェノックへの横流しはジンさんを通してお願いします」

 

「分かった」

 

「それじゃあ僕はこれで」

 

ブリーフィングルームを出て帰宅準備をして、僕はフランたちがいる純喫茶スワローに向かった。

スワローに入ると、神威大門の生徒が大勢いた。その内の一角。フランたちが座ってるところに向かい、空いてる席に座る。

 

「ごめん、お待たせ」

 

「いいえ、大丈夫よ」

 

「うん!」

 

「レーくんはミルクティーで良かったよね」

 

「うん。ありがとうメア」

 

僕の前には既にミルクティーが置いてあり、予め準備してくれていたみたいだ。フランにはローズヒップが。ルナにはアップルティー。そしてメアにはカプチーノが入ったコップがあり、それぞれの前には追加で頼んだケーキが置いてある。

そのすぐ近くでは。

 

「マスター!いつものアレを頼む!」

 

「はいはい。純喫茶スワロー、『ギンジロウカスタムスペシャルココア』ね」

 

「おうっ!」

 

胸焼けがしそうな程の糖分の詰まったココア(チョコレートソースとマシュマロとシナモンを大量に入れたギンジだけのスペシャルメニュー)を飲んでるギンジがいた。

シズカは緑茶を。テッペイはカフェオレ。ジョニーはアメリカーノコーヒーを飲んでる。

一度飲ませてもらった事があるが、さすがにもう二度と飲みたくないと思った。何せ、全部飲み終える頃には胃がもたれる程の甘さなのだ。ちなみに、フランとルナは一口飲んだだけで倒れ、メアは何とか最後まで飲めたが、げっそりとしていた程である。しばらくのあいだメアは甘い物を控えたほどだ。あれは、とんでもない爆弾(カロリー)だと思う。

 

「今日も疲れたねぇ〜」

 

「うん。ウォータイムが二時間になったからね」

 

「ええ。さすがにメンテが大変になりそうだけど、メア大丈夫なの?」

 

「大丈夫だよ〜。むしろ気合い入る!」

 

「それでまた(・・)、倒れないでよ?」

 

「分かってるよ〜」

 

放課後の一時を仲間たちと過ごしていると。

 

「うぇ!?高っ!!?」

 

「―――いっただっきまぁーす!!」

 

「貰ったばかりの小遣いが・・・・・・」

 

「ロストしなくて済んだと思えば安いって」

 

「また何時でもどうぞ。はむっ!んんーー。美味しぃ〜」

 

「もう、絶対ユノには助けてもらわないからなぁーーーっ!!!」

 

すぐ後ろから物凄く悲痛な叫びが聴こえてきた。

後ろを見ると、美味しそうにこのスワローのチョコパフェを食べてるユノと、項垂れてるアラタ。メロンソーダを飲んでる星原ヒカルと細野サクヤがいた。

 

「だ、大丈夫?」

 

あまりのその光景に思わず声を掛けてしまう。

 

「あ、レイ!」

 

「っ!」

 

「レイって、山野レイ!?」

 

「ぇ?」

 

上からユノ、星原ヒカル、細野サクヤ、アラタの順に見てくる。

 

「ユノ、アラタのこの様子を見る限り、アラタに奢らせたでしょそれ?」

 

「正かーい」

 

「はぁー。来たばかりなんだから加減はしてあげてよ?」

 

「えー、どうしよっかなぁー」

 

美味しそうにチョコパフェをつついて食べるユノ。その反応は、まったく加減を考える気は無さそうだ。

 

「レイ!」

 

「ん?なにアラタ?」

 

項垂れていたアラタが突然起き上がり、僕に声をかけてきた。

 

「レイはこの学園で最強のプレイヤーだって聞いた!」

 

「あーー・・・・・・うん、そうみたいだね」

 

なんかいつの間にか僕が学園最強のプレイヤーだって定義付けられているみたい。別に僕最強ってわけじゃないんだけど。

 

「みたいだねって・・・・・・」

 

「いや、あんまり興味無いから」

 

「は・・・・・・?」

 

「まあ、それはいいとして。それでどうかしたの?」

 

「あ、ああ!レイ、俺とバトルしてくれ!」

 

「・・・・・・・・・・は?」

 

アラタの言葉に目が点になった。

は?えっと、今アラタは僕にバトルしてくれって言った?

 

「ちょっ、アラタ!?」

 

「何言ってんのよアラタ!!」

 

アラタに細野サクヤとユノから叱責の声が入る。

 

「だって、レイは学園最強なんだろ!なら、戦ってみたいじゃん?!」

 

「だからって・・・・・・」

 

「朝礼の時のわたしの話聞いてなかったのアラタ?」

 

突然の申し込みに呆れる。

 

「それなら僕も戦いたい」

 

しかも星原ヒカルまで加わった。

 

「山野レイ。最初、初めてあった時どこかで見たような顔だと思った。だが、ようやく思い出した。山野レイ、君は四年前の。あの、『ミゼル事変』の英雄の一人だ」

 

「!!!」

 

星原ヒカルの言葉に僕は目を見開く。

 

「そして、第五回、第六回の世界大会アルテミス優勝者」

 

「ああっ!!そうだ、思い出した!山野レイ!史上初、『アルテミス』二連覇を成し遂げたプレイヤー!!」

 

アラタのその言葉に周囲から注目の目線が集まる。

 

「そしてフラン・フルーリアはそのチームのメンバーのはずだ」

 

「ああ、そうだったそうだった。確かあと二人、えーと名前は―――」

 

「石森ルナと川村メア」

 

「そう!それ!」

 

話を肥大化させる二人。その二人にフランが。

 

「ねぇ」

 

「!?」

 

フランの声を聞いた僕はヤバっと感じた。この声音、ブチ切れ一歩前である。

 

「瀬名アラタ、星原ヒカル。あなた達は礼儀というものを知らないのかしら?」

 

「なに?」

 

「え」

 

席を立ちゆっくりと歩きユノたちの机の横に立つ。

 

「あわわわ。フランちゃんが怒ってる」

 

「あー、まあ、当然ね。というか、怒るのも分かるよ」

 

メアとルナは止める気ゼロである。

 

「ここは他の生徒もいるの。それなのに人の個人情報を暴露するなんて不作法よ?」

 

「あー、フランさん?」

 

フランに声を掛けるが無視され。

 

「しかも瀬名アラタ。あなた、敵国のプレイヤーに最強だって理由だけで戦いを申し込むの?」

 

「いや・・・・・・」

 

「鹿島ユノ、細野サクヤ」

 

「は、はい!」

 

「な、なんでしょう!」

 

「ジェノックでは新人にどういう教育をしてるの?」

 

「え、えっと、それは・・・・・・」

 

「いきなり戦ってくれなんて・・・・・・どういう意味なのかしら?」

 

「そ、それはアラタが・・・・・・」

 

「それとも、ジェノックは私たちハーネスに全面戦争を申し込んで叩き潰されたい?」

 

最後の言葉、めちゃくちゃ怒気と冷気が入っていた。

 

「そ、そんなことはないです!!」

 

「そ、そうです!!」

 

怯えて返す二人。アラタと星原ヒカルは顔面蒼白だ。

 

「まあ、叩き潰されたいなら相手してあげるわよ?本気でね」

 

フランならやりかねない言動に僕は引き攣り笑いを浮かべる。

 

「はいはい。フランちゃん、そこまでにしよ」

 

「うん。お店にも迷惑になるし、みんな困ってるよ?」

 

「メア、ルナ」

 

そこでようやく収まったのか、フランから立ち上がっていた気配が静かになった。息が詰まるような気配にみんな息を止めていた。

 

「それもそうね」

 

「それに、これに懲りたらもうしないでしょ?」

 

「うん。大丈夫じゃないかなぁ〜」

 

あ、前言撤回。

フランだけでなく、ルナとメアも激おこ状態だった。

これは後で宥めるのに苦労するな。

そんな事を思いながら。

 

「フラン、僕の代わりに怒ってくれるのは嬉しいけど、ちょっとやりすぎだよ」

 

「・・・・・・ゴメンなさい」

 

「いいって。まあ、今度してきたら、本気でジェノック潰すけど」

 

まあ、ジェノックとは秘密裏に同盟組んでるから潰すわけないけど。

 

「「「「っ!!!!」」」」

 

「ご、ごめんねレイ!フラン!メアとルナも!今後ないようにするから!」

 

「ユノが悪いわけじゃないでしょ?原因はそこの新人二人なんだから。ああ、それと細野サクヤだっけ?」

 

「あ、うん」

 

「確かジェノック第一小隊の隊長って出雲ハルキだよね?」

 

「あ、ああ」

 

「ハルキに言っといて。部下の教育をキチンとしとけって」

 

「わ、わかった。それの、僕のことはサクヤでいいよ」

 

「そう?なら、サクヤ、そう伝えといてね」

 

「わ、わかった」

 

ハルキ宛に伝言を頼み、僕らは帰る準備をする。

 

「マスター、騒がせちゃってゴメン」

 

「いいや、レイ君たちのせいじゃないだろ」

 

「そう言ってくれると助かるよ」

 

そう言って僕らはスワローから出た。

スワローからダック荘に帰る最中。

 

「まったく。あの二人のせいで余計目立つ事になったわ」

 

「そうだね」

 

「うん。レイのことが知られたのが一番厄介だよね」

 

「はぁー。だから僕はヤだったのに」

 

アルテミス二連覇の件はまだいい。けど、ミゼル事変の英雄に関しては別だ。

ミゼル事変の事は四年が経ってもまだ人類に傷を残してる。そして、それを解決し世界を救ったのは当時まだ十歳半ばの少年少女たち。兄さんやジンさんたちだ。そして、その中には僕も含まれていた。

解決した当時、様々なテレビ局や雑誌社から特集や取材を受けた。世界を救った英雄と言われ。

その時まだ十歳だった僕はそれにより周りからもてはやされた。正直それはイヤだった。普通に接して欲しかった。

小学校のクラスメイトや親しい人は普通に接してくれた。けど、そうじゃない人は違った。だから、僕はミゼル事変の英雄だと呼ばれるのは好きじゃない。

歴史に名が載っているが、例え世界を救った英雄でも僕は普通が良かったのだ。それを何とかしてくれたのが、タイニーオービット社やNICS、A国大統領クラウディア・レネトンや当時の総理、財前宗介だ。

十歳だった僕は世間からの視線を少しでも減らすため情報流出を少なくしてもらった。

けど。

 

「あれほどの事だからね」

 

この学園に来てからメディアに出てないから知られてないと思ったが星原ヒカルのせいで台無しだ。

 

「明日からはどんな好奇な視線が来るのやら」

 

憂鬱でしかたない。

 

「大丈夫よ」

 

「え?」

 

「レイは私たちが護るから」

 

「うん。レーくんは誰にも渡さない」

 

「そうだよ。レイ」

 

「フラン。メア。ルナ」

 

三人の言葉に僕は笑みを浮かべ。

 

「ありがとう。三人とも」

 

と言った。

三人がいる限り僕は大丈夫だ。

そう胸に秘めて僕らは道を歩いて行った。

 

 

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