ダンボール戦機 英雄の弟   作:ソーナ

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回想 W―ディテクター編 ⅩⅩⅠ 大会(アルテミス)・進出

 

〜バンside〜

 

 

『山野・仙道チーム、予選Fブロック2回戦を勝ち進み、3回戦へと駒を進めました!!アルテミス出場者の中で最年少のペアですが、強さや実力は他を寄せつけません!!』

 

 

「凄いですねレイさん!キヨカさんもですけど」

 

MCの実況を聞き、席に着いてレイとキヨカの試合を観るヒロが言った。

 

「レイは実際に知っているけど、キヨカも強いわね」

 

「うん。それに息がピッタリ」

 

ジェシカとランもヒロに続けて呟く。

 

「あの2人なら予選決勝にまで来るのは確実だよ」

 

ちょっと依怙贔屓かもしれないが、レイとキヨカ。2人の実力を知っているが故に答える。

 

「1回戦で、対戦相手が土下座したのには驚いたけどね」

 

「あははは」

 

レイとキヨカの対戦相手の2人が土下座した時は目が点になったほどだ。

 

「・・・・・・もしこれにメアが出ていたらどうなっていたのだろうな」

 

唐突にジンがボソッと呟いた。

 

「メア?」

 

「それって確かトキオシアで連れ去られた・・・・・・」

 

「ああ・・・・・・。アミの妹で、レイの幼馴染みだ」

 

試合が終わり2回戦の対戦相手と握手をして話してるレイを観て言う。

 

「そのメアって子、そんなに強いの?」

 

「そうだな・・・・・・」

 

ランの問いに少し間を置く。

 

「俺の視点だけど、多分レイに匹敵する程だと思う」

 

「「「えぇっ!!?」」」

 

「メア君ってそんなに凄いのかい?」

 

「ああ。何せレイとの息は阿吽の呼吸だからな」

 

この中でレイとメアのコンビの息を知っているのは俺とジンだけだ。

 

「キヨカももちろん強いんだが、メアはメアで別の意味で強いんだ」

 

「そうだな」

 

俺とジンは、レイとメアが揃った時の強さを思い出す。

息は阿吽の呼吸であり、目だけで通じ合い、互いの動きを読んでいる動きをする。

正直、俺でもアミやカズと一緒にやっても無理、不可能だと思う。

実際にやれ、って言われても無理だ。

互いにお互いのことを理解していなければ出来ない、神業レベルの芸当だ。

 

「まぁ、俺や母さん。家族を除いた中で一番レイのことを知ってるのはメアだからな」

 

苦笑してレイとキヨカの写ってるウインドウを観る。

 

「ますますそのメアって子に会いたくなったわね」

 

「うん。バンやジンがそこまで言うなんて」

 

「ですね!」

 

ジェシカたちがメアに会いたがってる中、俺は微妙な表情を浮かべた。

以前アミから聞いたことを思い出したのだ。

アミ曰く、メアはレイ成分なるものが不足している・・・・・・との事らしい。

いや、レイ成分ってなんぞや、ってツッコミたくなるが。

もしメアがレイと再会したら一体何が起こるのやら・・・・・・

ちょっと不安になるしかない俺であった。

 

〜バンside out〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜レイside〜

 

 

「―――『黒閃の双剣』?」

 

ジェイソンさんの告げた言葉に僕もキヨカも首を傾げた。

『黒閃の双剣』ってどういう意味だろ?

 

「うむ。貴殿の戦い方は千変万化、千差万別とひとつの型に囚われておらぬ。光の速さ。正しく閃光の如く双剣を振るって戦う。『閃光の双剣』と言いたいのだが、レイ殿。貴殿のLBXは黒がベースである。故に、"黒きLBXが振るう閃光の双剣"。それで『黒閃の双剣』と言うのでござる」

 

「『黒閃の双剣』・・・・・・」

 

ジェイソンさんの言葉を聞き、もう一度ジェイソンさんが告げた名を呟く。

 

「『黒閃の双剣』。レイにあってると思うわ」

 

「そう?」

 

「ええ。黒って、色んな色が混ざりあって出来たものでしょ?白の反対。基本的に黒ってあんまり良い印象がないけど、私はレイの黒は好き。黒=レイだから」

 

「黒=僕・・・・・・ね」

 

これと言って認識していたわけじゃない。

でも、確かに兄さんは白。僕は黒系の色を好んでる。

僕と兄さん。表裏一体。

今、キヨカとジェイソンさんに言われて気づいた。

 

「カッカッカッ!拙者も、黒は好きでござる。何者にも支配されず、己が我を突き通す。まさしく、武士道でござる!」

 

キヨカだけでなく、ジェイソンさんもニコッと笑って言う。

そっか・・・・・・。

自然と、何時も黒を選んでいたけど。

 

「『黒閃の双剣』。ありがとうございますジェイソンさん」

 

「なに、気にすることではないでござる。拙者も貴殿に合う名を付けられて喜ばしいでござるよ」

 

そう言うとジェイソンさんはステージから降りて立ち去って行った。最後まで陽気で、明るい人だ。

 

「さ、次に備えて準備しましょう」

 

「うん」

 

僕もキヨカと一緒にステージを降りて、予選Fブロック3回戦に備えて準備をし始めた。

十数分後、予選Fブロック2回戦の後半組が終わり、僕とキヨカはウエストステージで3回戦を行った。

3回戦の相手はチームドレッドノート。

[ズール]や[デクー]、[ハカイガー]、とかなり厄介なLBXを使った相手だったが、特に苦戦することも無くキヨカと連携して勝ち、ついに予選Fブロック4回戦、決勝へとコマを進め、少しして、もうひとつの決勝進出チームも決まり僕とキヨカは決勝の行われるステージ、イーストステージにいた。

対戦相手はチームシャドール。男女3人組のチームだ。

男女3人とも美男美女と称されてもおかしくない程の容姿である。

互いに対面して位置についてると。

 

「どうかお手柔らかにお願いするよ、欧州地区(ヨーロッパエリア)チャンピオン、山野レイ君?」

 

相手の1人。

紺色の髪をした青年が僕に向かってそう言ってきた。

 

「ええ。こちらこそよろしくお願いします。オセアニア地区(エリア)チャンピオン、ルーカス・シュナイダーさん」

 

ルーカス・シュナイダー。

今年度のオセアニア地区チャンピオン。

僕と同じく、各大陸エリアチャンピオンの1人だ。

彼については以前LBXマガジンに掲載されていたこともあり知ってるし、調べたこともある。

ちなみにだが、各大会・大陸の優勝者や上位選手はほとんど調べた。情報は大事だからね。

彼の年齢は確か20歳にもなってない、18歳ぐらいだった気がする。

オセアニア地区で開催されてるほぼ全てのLBX大会を総ナメにし、期待の若手と巷で噂されてるプロLBXプレイヤー。

そして彼の異名は【処刑人(エグゼキューショナー)】。

死神の如く立ち回り、あっという間に相手をブレイクオーバーすることから【処刑人】という物騒な異名がついてる。

他の2人も―――

 

「ルーカス、1人で話してないで俺らにも話させろ」

 

「あははは。ルーくん楽しみにしてたもんね〜」

 

最初に話したのが、金髪に眼鏡をかけたイケメン。ロイ・ヘルディナンドさん。

そして陽気に笑う銀髪の女性がシルヴィ・ストリランドさんだ。

2人とも、ルーカスさんと同年代でありプロプレイヤーだ。

 

「山野レイ。前アルテミス優勝者山野バンの弟にして今年度欧州リーグチャンピオン『ブリュンヒルド』の優勝者。僅か10歳欧州地区チャンピオンという前人未到の偉業を成し遂げた、今期待のLBXプレイヤー」

 

「っ!」

 

「そして仙道キヨカ。【箱の中の魔術師】の異名を持つ仙道ダイキの妹。こちらは目立った記録はないが、小さな大会で優勝している」

 

「っ!?」

 

僕とキヨカについて眼鏡をクイッと上げて言うロイさん。

ど、どれだけ調べたんだ!?

僕のことはともかく、キヨカのことも調べあげるなんて・・・・・・

 

「あははは。ゴメンね2人とも。彼、このブロックの参加者について調べてたのよ」

 

苦笑して謝ってくるシルヴィさん。

いや、調べたって・・・・・・

すごい情報収集能力だ。

 

「自己紹介が遅れたな。俺はロイ・ヘルディナンドだ」

 

「わたしはシルヴィ・ストリランド。よろしくね」

 

「は、はい。よろしくお願いします」

 

「よろしくお願いします」

 

完全に場の空気を掌握された。

呆気に取られている僕らに対して、シャドールの3人はいつも通りだ。

ロイ・ヘルディナンド・・・・・・彼の異名は【番狂わせの策略家(ストラテジスト)】。

どんな作戦も彼の前で無意味になってしまうことから呼ばれてる。

そしてシルヴィ・ストリランド。彼女の異名は【閃光】。

瞬く間に相手を倒し、倒す姿が閃光に見えるというプレイスタイルからそう呼ばれてる。

このアルテミス参加者の中でもトップレベルのプレイヤーたちだ。

相手は3人。対してこちらは僕とキヨカだけ。

1人居ないという、数だけで不利だ。

けど―――

 

「「負ける訳にはいかない・・・・・・!!」」

 

僕とキヨカの意見が同時に一致した。

 

 

『それでは只今より、予選Fブロック最終戦を行います!!それぞれオセアニア地区チャンピオンと欧州地区チャンピオンの率いる戦いという、エリアチャンピオン同士の戦いとなります!!』

 

 

MCの実況とともにステージが少し昇る。

 

 

『それでは予選決勝!レディー!!』

 

 

「[オルテガ]!!」

 

「[ジョーカー]!!」

 

「[クノイチ]!!」

 

ルーカスさんたちのLBXがDキューブのジオラマ。バトルフィールドたる城壁に降り立つ。

 

「疾く来たれ!―――[エレボス]!!」

 

「[メティス]!!」

 

僕とキヨカのLBXもそれぞれフィールドに降り立ち武装を構える。

エレボスとメティスの武装は双剣と(サイス)

ルーカスさんたちのLBXは、ルーカスさんがオルテガ。ロイさんがジョーカー。シルヴィさんがクノイチだ。

武装はそれぞれオルテガが、メティスと同じく鎌。ジョーカーはアングラテキサスでヒロとジェシカと戦ったビリーと同じく二丁拳銃。そしてクノイチはメアと同じく細剣型の片手剣。

攻守ともに万全な配置だ。

 

 

『―――バトル、スタート!!!』

 

 

MCの開始宣言とともに動き出す。

 

「キヨカはクノイチをお願い」

 

「まかせて」

 

機動力の高いクノイチは、同じく機動力の高いキヨカのメティスで抑える。

今一番倒すべきなのは―――

 

「へぇ」

 

「なるほど」

 

ロイさんのジョーカーだ。

数が少ない中、遠距離からの攻撃は今の僕らには厳しい。

しかも相手はオセアニア地区チャンピオンのチーム。

これは―――

 

「本気でやらないと、ね」

 

小さく呟く。

 

「俺を狙うか。予想通りだな」

 

接近するエレボスに向けて弾丸を放つジョーカー。

二丁拳銃から放たれる弾丸を双剣で切り裂き接近するが、弾丸を放ちながら後ろに後退しているので距離が縮まらない。

そこに。

 

「っ!」

 

背後に回ったオルテガからの一撃がエレボスに襲い掛かってきた。

咄嗟に右の黒剣『ノワール』で受け止める。

 

「今の不意打ちに反応できるんだ」

 

「戦況を広く見ているな。あの歳で視野も広い」

 

感心したように言ってくる2人。

速い。

オルテガのアーマーフレーム種はワイルドフレーム。

カズ兄の使ってた[ハンター]や[フェンリル]と同じくフレーム種。

ワイルドフレームの特徴は跳躍。つまりはジャンプ力が高く、基本は遠距離戦に向いている。が、その脚力を強みに、カスタムすれば近接戦闘もこなす、かなりクセが強い機体だ。

『ノワール』でオルテガの鎌『ソウルイーター』を受け止める中、そこを突くようにジョーカーの二丁拳銃『レッドリボルバー』から放たれた弾丸がエレボスに迫る。

瞬時に『ソウルイーター』を滑らせて、『レッドリボルバー』の弾丸の範囲から避ける。

 

「っく!」

 

強い。

しかも連携もバツグン。

アルテミス参加者の中でも十指に入る人たちだ。

エレボス対オルテガ・ジョーカーで立ち回る。

メティスの方はクノイチと互角の勝負をしていて助ける暇はない。

いや、クノイチをメティスが抑えていてくれている。

ジョーカーの弾丸はエレボスを狙うだけではなく、味方の援護射撃として、エレボスの行き先や足元などを狙い動きを制限し、オルテガは鎌特有の遠心力を利用して縦横無尽に立ち回る。

 

「ふっ。面白いっ!」

 

「「っ!!?」」

 

気分が高揚してきた。

思わず口角が上がる。

面白いっ!楽しいっ!!

 

「っ!ルーカス!!」

 

「ああ!」

 

ジョーカーから放たれた弾丸と、オルテガの振るう鎌が時間差でエレボスに迫る。

けど―――

 

「ははっ!!」

 

『ノワール』を回転させて擬似【スピニングフィールド】を作り出して弾丸を防ぎ、振り下ろされる鎌を下がって避けてそのまま回転して左の白剣『ブラン』で薙ぎ払う。

 

「なにっ!?」

 

咄嗟に鎌の持ち手で防がれたが勢いで吹き飛ばすことが出来た。

動揺するルーカスさん。

 

「強い・・・・・・っ!!」

 

「さっきまでとパターンが変わっただと?!」

 

ロイさんも眼鏡のブリッジに手を当ててクイッと持ち上げる。

だんだんと視えてきた。

エレボスを操作してるとだんだんと周囲のざわめきがクリアに。聞こえなくなってくる。

意識が集中して来た。

少しずつだがCCMを操作する指の動きが速く。高速になっていき、エレボスもそれに順じて素早くなる。

 

「速くなってきた?!」

 

オルテガの『ソウルイーター』を避け、振りかぶって空いた胴体を蹴飛ばして、ジョーカーに迫る。

 

「っく!」

 

「させないよ!」

 

ジョーカーに刃が届きそうになった所で、横から現れたクノイチの細剣『バルキリーレイピア』が受け止め、その隙をついてジョーカーが弾丸を放ってきた。

すぐに下がって弾丸を防ぐ。

どうやらキヨカとの攻防を無理やり脱出して来たらしく、フレームに傷がちらほらある。

 

「ごめんレイ。逃げられた」

 

「いや、大丈夫だよ。キヨカの方は大丈夫?」

 

「ええ」

 

キヨカのメティスも僅かに傷があるがこれといって大きなダメージは無いようだ。

 

「2人とも気をつけて。あの子強いよ。わたしの攻撃まるで看えているように防がれた」

 

「シルヴィのをか?」

 

「ええ」

 

驚きながら話すシルヴィさんたち。

伊達にメアとよくバトルしていないよ。

メアのLBX『アテナ』はシルヴィさんと同じく細剣型の片手剣。

『アテナ』の細剣の名は『セイクリッドセイバー』。

ストライダーフレームの長所である俊敏さを活かし、高速でフィールドを駆け回って細剣で攻撃してくるスタイルだ。

僕とキヨカ、メア、そしてルナの4人はしょっちゅうバトルしているのでそれぞれ大半のことは予測出来るし解る。

故に、細剣についてはメアが使っていたためどんな動きかはある程度予測出来るのだ。

もっともそれは使い手によって変わるけど。

けど、キヨカと、シルヴィさんたちの会話を聞く限り特に今のところ苦となる動きはなかったようだ。

 

「これは少し・・・・・・いや、かなり彼らを見誤っていたな」

 

「ああ。2人がかりでも彼を御せなかった。むしろ押されていたからね」

 

「えぇっ!!?ルーくんロイくんの2人でも!?」

 

「ああ。正直言おう、彼は僕より。いや、僕らよりも場数になれているし強い」

 

「それはお前の勘か?それともさっきまでの攻防で実感してか?」

 

「両方だよ」

 

「そうか・・・・・・」

 

「ルーくんの勘って当たるのよね〜」

 

なんか難しい顔をして話してる。

 

「キヨカ、シルヴィさんの相手をしていてどうだった?」

 

「強かったわ。メアとのバトルで細剣使いに慣れてなかったらやられてたわね」

 

「へぇ」

 

つまりそれはメアと同等の使い手ということになる。

 

「こっちも連携にかなりやられた。本当ならジョーカーをもう倒している予定だったのに・・・・・・。さすが【番狂わせの策略家】。僕の作戦を読んでた」

 

「そう。なら、どうする?」

 

「決まってるでしょ?」

 

そう。このぐらいでへこたれてたりなんてしていられない。

 

「本気でやる」

 

「そう」

 

クスッと笑うキヨカ。

 

「じゃあ、私は貴方のサポートをするわね」

 

「ありがとうキヨカ」

 

ふふっ、とキヨカと互いの顔を見て笑みを浮かべる。

すでにそれぞれのLBXは、それぞれのチームに戻っている。

振り出しに戻った、とも言えるね。

 

「そっちの作戦は決まったのかな?」

 

「ええ。そちらも決まったようですね」

 

「ああ」

 

「それじゃあ」

 

少し間を置き、僕とルーカスさんが同時に言う。

 

「「再開しよう!!」」

 

言うと同時にそれぞれのLBXが動き出す。

オルテガとクノイチが、エレボスとメティスに向かって来る。

ジョーカーは動かず二丁拳銃を構えたままだ。

恐らくジョーカーは援護射撃。

遠近で役割を分けたようだ。

 

「キヨカ!」

 

「ええ!」

 

一言言うだけでキヨカのメティスはその場から素早く離れ、遠回りしてジョーカーの元へと向かう。

近接戦闘のオルテガとクノイチは僕のエレボスが引き受け、遠距離のジョーカーはキヨカのメティスが対応する。

 

「なるほど」

 

「そうきたの」

 

驚くルーカスさんとシルヴィさん。

 

「2人の相手は僕がします」

 

そう告げるや素早い速度でクノイチへと迫る。

 

「速い!」

 

突き出した『バルキリーレイピア』を『ブラン』で受け流し、『ノワール』で突く。

 

「っ!」

 

だがそこに真横からオルテガの『ソウルイーター』が迫り、すぐさま『ノワール』の軌道を『ソウルイーター』の刃へと移し受け止める。

 

「本人の反射速度が異常に速いな」

 

「ええ」

 

追撃をせずに離れるクノイチ。

受け止めてる『ソウルイーター』を跳ね上げ、オルテガの胴体に『ブラン』を叩き込む。

クリティカルとまではいかなかったがヒットし、ダメージを与えた。

 

「反射速度に反応速度が人間の限界を超えてる・・・・・・?こんな子がいるなんてね」

 

「どうするシルヴィ?」

 

「どうしようかしらね。ロイくんは彼女で手一杯のようだし」

 

キヨカのメティスは、ロイさんジョーカーに対して一歩も引かない戦いを繰り広げていた。

ストライダーフレーム特有の敏捷性を利用して駆け回り、メティスの持つ鎌『ソフィアサイス』で斬りつけてる。

戦い方はダイキさんの妹らしく、ダイキさんの戦闘技法と似ているが、殆どは我流だ。

このままじゃジリ貧。

だから―――

 

「行きます・・・・・・!!」

 

ふぅ、と一息吐いて一気に集中力を高める。

 

「っ!さらに速くなった!?」

 

「っ!気をつけろシルヴィ!」

 

ルーカスさんがシルヴィさんに警告を送る。

けど、送った時にはもうクノイチはエレボスの双剣の間合いにあり、双剣がクノイチを襲う。

 

「うそ!?」

 

クノイチが反応出来ない速度でクノイチの周囲を走り、双剣による斬撃を浴びせる。

ザンっ!ザンっ!ザンっ!と音が響き、すぐに。

 

「っ!クノイチ!!」

 

青白いエフェクトを発光させてクノイチがその場に倒れブレイクオーバーとなった。

 

 

『クノイチ、ブレイクオーバー!!』

 

 

「クノイチがやられた!?」

 

「速すぎる・・・・・・さっきまでは手加減をしていた?いや、でも・・・・・・それでも速すぎる!!」

 

有り得ないと呟くシルヴィさん。

 

「ロイ!」

 

「わかってる!!」

 

クノイチがブレイクオーバーし動揺しジョーカーの攻撃がメティスからエレボスに移る。

けど、それは悪策だ。

 

「私を忘れないで欲しいわね」

 

「っ!しまっ・・・・・・!!」

 

ジョーカーの背後に回ったメティスが下から掬い上げるように『ソフィアサイス』を振り上げ、ジョーカーもクノイチと同様青白いエフェクトを発光してブレイクオーバーとなった。

 

 

『ジョーカー、ブレイクオーバー!!』

 

 

「バカな・・・・・・!」

 

隙を見せた一瞬を突いた攻撃。

誰か1人でも倒せたらこうなることは予想していた。

誰でも、仲間がやられたら動揺する。

そしてそれは反応が遅れ、隙が生まれるということを意味する。

これで残りはオルテガだけ。

 

「まさかシルヴィとロイがやられるとは・・・・・・」

 

「初めの作戦ではジョーカーをブレイクオーバーさせるつもりでした。でも、さっきのでターゲットをクノイチに変えたんです」

 

「なるほど。動きの素早いクノイチを倒すことで、オルテガとジョーカーそれぞれを1対1に持ち込ませたということか」

 

「ええ。それともうひとつ。相手の心理を突きました。仲間がやられたら動揺するのは誰も同じですから」

 

「キミ、よく他の人に歳のサバを読んでないって聞かれない?その歳でそこまで頭が回るなんてね」

 

「まぁ、色々ありましたからね」

 

そう。

今の僕がここにいるのは、過去の自分が経験したことが活かされているからだ。

何より、イノベーター事件での経験があったからこそ僕はここまで出来るようになったし、半年間世界を周りいろんな国の人とバトルし、大会に参加したからこそさらなるスキルや強さが身についた。

一分一秒たりとも無駄にない人生。

そして様々な人に出会ったからこそここまで成長出来た。

もし何もなく、イノベーター事件や世界を周ったりすることもなかったらここまで強くなったり、アルテミスに参加したり、欧州地区チャンピオンの称号を獲得したりも、何も出来なかっただろう。

ルーカスさんに苦笑しながらそう言い。

 

「行きますよルーカスさん!」

 

と宣言する。

宣言するや先程のクノイチの時と同じ速度でオルテガに迫る。

 

「っ!」

 

ギリギリのところで避け、直撃を避けたりしているが、僕の眼には全てが視えている。

 

「ははっ!」

 

ああ。気分が高揚する。

本気でやると楽しい。それに僕の中にある何かが溢れてくる。

 

「もっと・・・・・・もっと速く・・・・・・!!」

 

CCMの処理速度限界の高速操作。

父さんが作ったことにより、エレボスはそんじょそこらのLBXとは違う優秀なCPUが組み込まれている。

それは僕の高速操作に対応してだ。

並大抵のCPUでは処理落ちでオーバーヒートしてしまうから。

今の速度でもギリギリなのかなと思うことはあるけど。

エレボスの攻撃がオルテガに次々と当たり、オルテガは防戦一方となる。

 

「っ!」

 

右、左、下、左、上、右、回って同時。

次々と思考が廻る。

未来が見えるように読めてくる。

 

「これが・・・・・・これが、欧州地区チャンピオン山野レイの本気・・・・・・!!」

 

縦横無尽に駆け回りオルテガを一方的に攻撃。

立ち止まって『ソウルイーター』で防ぐがエレボスの猛攻に耐えられなくなり、ついにオルテガの手から『ソウルイーター』が離れ。

 

「これで、終わりっ!!!」

 

『ノワール』ですれ違いざまに横に斬りつけ、オルテガの背後に降り立つと同時にオルテガも他の2機と同じように、青白いエフェクトを発光してその場に倒れ伏しブレイクオーバーとなった。

 

 

『オルテガ、ブレイクオーバー!!予選Fブロックの勝者は山野・仙道チーム!!ファイナルステージ進出です!!

 

 

MCの実況を聞き、歓声が会場中から響き渡った。

戦いが終わると同時に、クリアになっていた意識が戻った。

 

「ふぅ・・・・・・」

 

何とか勝てた。

正直賭けの部分が大半だった。

キヨカが居てくれて助かった。

 

「お疲れレイ」

 

「うん。キヨカもお疲れ」

 

パンっ!と互いの右手を合わせて喜ぶ。

 

「まさかやられるなんてね」

 

「ああ。どうやら俺たちは彼らの本領を見誤っていたようだ」

 

「うん。2人の息がピッタリだったわ」

 

僕とキヨカを見て苦笑を浮かべながら言うルーカスさんたち。

 

「なにより、山野レイ君の本気を僕は大きく見誤っていた。やはり世界は広いな。慢心していたつもりはなかったけど」

 

頭上の空を見上げて苦笑い気味に言うルーカスさん。

 

「そうだな」

 

「ええ」

 

「2人とも、勝利おめでとう」

 

クスッと微笑んで右手を差し出すルーカスさん。

 

「ありがとうございました。ルーカスさん。ロイさんとシルヴィさんもありがとうございました」

 

「とても楽しかったです」

 

「ああ。俺もだ」

 

「うん。頑張ってね2人とも〜!」

 

「「はいっ!!」」

 

「何時かまたバトル出来る日が来ることを楽しみにしてるよ」

 

「ええ。僕もです」

 

ルーカスさんと再戦の握手をすると会場中から割れんばかりの歓声と拍手が響き渡った。

 

 

『さあ!これでファイナルステージ進出チームが全て決定しました!!アルテミスファイナルステージ、バトルロワイヤルスタートです!!!』

 

 

アルテミス最後の決戦。

ファイナルステージ、バトルロワイヤルが幕を開けようとしていた。

 

 

 

 

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