〜バンside〜
カイオス長官から、父さんが呼んでいると言われ俺たちはNICSからダックシャトルでイギリスのブリントンにある【ビルニッジ天文台】へとやって来た。
いるのは俺、ヒロ、ラン、ジン、ジェシカ、ユウヤ、そしてコブラの7人だ。
弟のレイはカイオス長官曰く、もう既に先行してブリントンに向かってるらしい。
なんていうか、相変わらず早いというかなんというか・・・・・・正直、我が弟ながらレイの思考がさっぱり読めない。
マングースさんとブリタニア空港で合流した後、俺たちはマングースさんの運転の元、父さんのいるビルニッジ天文台へと移動した。
コブラに先導され、俺たちは父さんの元へ。
天文台の奥の方へ行き、コブラが父さんがいると思わしき部屋の扉に声をかけると扉のロックが外れ、内開きに開いた。
久しぶりに父さんに会えるという喜びの中、室内に入る。
室内に入るとそこには―――
「―――この前来た時に言ったよね!部屋は綺麗にしなさいって!なのになんでまたしわくちゃのシャツや白衣があるのかな!?」
「いや、それはだな・・・・・・」
「しかもまたロクな物食べてないでしょ!サプリや栄養ドリンクだけじゃ意味ないからね!?バランスよく食べないと倒れるよ!?」
「は、はい・・・・・・」
「全く。早く来といて良かったよ。ある程度は片付いたけど、冷蔵庫の中は何も無いからこれから買いに行かないとだし。ったくもぉ!!!」
何故か腕を組んで怒ってるレイと、そのレイの前で正座している父さんの姿があった。
「と、父さん・・・・・・?」
久しぶりに会った父さんの姿が息子に。しかも10歳のレイに怒られているという姿に俺はなんとも言えない気持ちになった。
「まあ、家にいた時もそうだったから予想はしてたけど、研究に夢中になるあまり他を疎かにするとか、暖簾に腕押し、糠に釘だからね!?そもそもね!!―――」
「「「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」」」
俺たちに気づいてないのか、レイはさっきからずっと腕を組んで父さんにお説教していた。
いや、部屋の扉を開けたのだから気づいているとは思うけど・・・・・・
「ば、バン?今レイに怒られているのが・・・・・・」
「あ、ああ。俺とレイの父さんだよ・・・・・・」
「アレが、山野博士・・・・・・ですか・・・・・・」
ランとヒロの言葉にシュンとなる。
なんというか、その、肩身が狭い・・・・・・
俺がそう思ってる中、コブラは隅の方でガタガタ震えていた。
まぁ、コブラ、ついこの間レイにお説教されたばかりだからなぁ。フラッシュバックしたのだろう。
「あ。兄さんたち来たんだ。って、扉開けたの僕か」
ふと視線を俺たちに向けたレイが、あっ、と呟いて言った。
まさか、忘れられてたのか?
「兄さんたちが来たし、父さんへの今回のO★HA★NA★SHI★はこれで終わりにしてあげる」
「ああ・・・・・・」
「父さんは兄さんたちに、兄さんたちを呼んだ理由を説明しておいて」
「分かった」
・・・・・・完全に尻に敷かれてるよ父さん。
あ、それは俺もか。
レイを見ていると、そう思わずにはいられなかった。
「それじゃあ僕は買い物とかしてくるから」
「え?レイは聞かなくても大丈夫なの?」
「うん。僕はもう知ってるし」
俺の問いにレイは、近くにあった自分の荷物を持ち、じゃあね、と告げて去って行った。
去っていく時、ブツブツとなんか言っていたけど・・・・・・
扉がバタン、と閉まりレイが出て行って数十秒後ようやく張り詰めていた空気が元に戻った。
時間的には数十秒なのだが、体感時間は数分にも感じられた。
「父さん、久しぶり!」
「ああ。久しぶりだなバン」
約半年ぶりの父さんとの再会。
まぁ、レイにお説教されていた姿を見なかったことにすれば感動的だったんだけど・・・・・・
「みんなも遠いところよく来てくれた。ジン君も元気そうでなによりだ」
「ご無沙汰しています」
「ラン君とヒロ君。ユウヤ君とジェシカ君だね。みんなには感謝している。ディテクターを封じ込めることが出来るのも、君たちのおかげだ。ありがとう」
「博士、世界の平和は僕たちが必ず守ってみせます!」
「頼もしいな」
「父さん」
「うん。分かっている。本題に入ろう」
俺が促すと、父さんは一旦間を空けて告げた。
「この天文台では、宇宙観測のために様々な新技術が開発されている。私は今、その中のひとつ。変異結合型電磁石を応用して、新しいLBXの開発を行ってるんだ」
「新しいLBX?」
相変わらず父さんは凄いなぁ、と思いつつ父さんの話を聞く。
「これまでにない、全く新しい思想に基づくLBXで、完成すれば[スーパーLBX]とも呼ぶべき存在になるだろう」
「スーパーLBX?」
恐らく仮称だろうけど、従来のLBXとは違うと父さんから分かる。
「じゃあ、あたしたちのLBXを強化したいって言うのは・・・・・・」
「うむ。だが、この技術は私の設計したLBXにしか応用が出来ない。つまり、[ペルセウス]、[エルシオン]、[ミネルバ]だ。安心したまえ。君たちのLBXも、最大限のパフォーマンスが発揮出来るよう、調整させてもらう」
よかった。
俺たちだけじゃなくて、ジンたちのLBXも調整してもらえるんだ。
「ありがとうございます!」
「すぐにやってもらおうよ!」
「そうですね!」
ヒロたちが興奮する中、俺はふとアレ?と思った。
「あれ、でも父さん。父さんの設計したLBXは俺のエルシオン。ヒロのペルセウス。ランのミネルバ。そしてレイの[エレボス]じゃ・・・・・・」
そう。
父さんの言ったLBXの中に、レイのエレボスの名前が無かったのだ。
「確かに・・・・・・」
「そう言えばそうですね」
みんなもアレ?と思ったのか疑問符を浮かばしてる。
俺たちの疑問に父さんは。
「確かに。私の設計したLBXはエルシオン、ペルセウス、ミネルバ、そしてエレボスの4機だ。だが、エレボスの設計思想はエルシオンたちのとは違う」
「違う?」
「どういう意味ですか博士?」
父さんの告げた言葉に俺とジンが訊ねる。
「エルシオン、ペルセウス、ミネルバの3機は、元から変異結合型電磁石の技術の応用を理論に設計した。だが、エレボスの設計思想はエルシオン、ペルセウス、ミネルバのそれぞれの長所を交え、変異結合型電磁石の技術の応用後を元に設計した。つまり、スーパーLBXのプロトタイプに近い」
「スーパーLBXのプロトタイプ・・・・・・」
「ああ。そのため、並のプレイヤーでは動かしにくい機体になってしまった。まあ、レイはその機体を自分の手足のように普通に動かしているのだがな」
苦笑混じりに告げる父さん。
父さんの話を聞き、相変わらず弟がスゴすぎる、と思ったのは絶対に間違ってない。
「だからレイのLBXはあんなに高性能なのね・・・・・・」
「それもあるのだろうが、レイ自身のポテンシャルだろうな」
「確かに。レイ君はまだ余力があるように感じられるよ」
ジェシカ、ジン、ユウヤもレイについて思うことがあったのか呟く。
「そう言えば、なんでレイは父さんのところにもう来ていたの?」
ふと疑問に思ったことを父さんに訊ねる。
「あー・・・・・・」
訊ねると、父さんは少し視線を泳がせて答えにくそうな反応をし。
「私の抜き打ちチェックだ・・・・・・」
と告げた。
「抜き打ち・・・・・・」
「チェック・・・・・・?」
ポカンとする俺たち。
ヒロとランがポカンとしながら声に出す。
「私が規則正しい生活しているか、や。バンたちが泊まるための部屋の掃除などで先に来ていた」
父さんの言葉に俺たちは。
「(母さんか!?)」
「(お母さんですか!?)」
「(親!?)」
「(親だな)」
「(親かな!?)」
「(お母さんか!?)」
「(アイツは親か!?)」
と同じことを思ったらしい。
なんとも言えない、レイの行動に俺たちの間に微妙な空気が流れる。
そこに―――
『山野博士大変だ!街中でLBXが暴走し始めた!!』
近くにあったウインドウに天文台のエントランスで分かれたマングースさんが映り、俺たちにそう告げた。
そしてそれと同時に映る画面にはブリントンの街中を暴れる幾多のLBXたちが映し出されていた。
その光景が映し出されていたウインドウに、突然ノイズがかかりディテクター。あの仮面の男が写り、何時もの要求をイギリス政府にしてきた。
要求内容は、金融取引の全面停止。期限は本日正午。
一方的に告げ、画面から消え去る仮面の男。
ノイズが再び発生し、その横に新たなウインドウが展開された。
展開されたウインドウには。
『もしもし父さん!?』
と切羽詰まったレイが映った。
〜バンside out〜
〜レイside〜
「まったく、なんで兄さんも父さんもあんなんなのかなぁ!!イノベーターにいた頃父さんどうやって生活してたのかホント問いただしたくなるよ!」
ビルニッジ天文台からブリントン市街に移動してきた僕は通い慣れた足取りで、ブリントンの市街地を歩く。
ちなみに、イギリスに来るのはこれで3度目だ。
1度目は、父さんに呼ばれる前で、2度目が父さんに呼ばれた時。そして3度目が今。
父さんは言わずがな。兄さんも兄さんで部屋を綺麗にしない時がある。
その時は僕が仕方なくやってるんだけど。
ため息を吐きながらブリントン市街を歩く。
空は雲に覆われていて、日差しが差し込まない。
「予報だと今日一日曇りみたいだし。雨は大丈夫そうかな」
降水確率は20%。
余程のことがない限り雨は降らないだろう。
「人数も多いし、買うならあそこかな」
そう独り言を呟いて、目的地の大型スーパーへと向かう。
カートを取り、カートを押して端末からスーパーのサイトを調べて広告品が何かを調べる。
なんだろ。今の僕主婦になってる気がする。
なんとも言えない自虐を微妙に思ってると―――
「ん?」
外からなんか悲鳴のような声がか聞こえてきた。
それも一人や二人じゃない、数十人。いや、それ以上の。
そしてそれと同時に、小さな爆発音や窓ガラスが割れる音なども耳に入る。
不思議に思いながら外を見ると。
「え!?」
外には人々が逃げ惑う姿が写り、そしてLBXが銃火器などであちこちを破壊している光景が目に入った。
「まさかブレインジャック!?」
慌ててカートを元の場所に戻して外に出る。
まだ何もカートに入れてなかったから良かったけど。
外に出ると、数十分前までは変わりなかったブリントンの街並みが、今は破壊の惨状となって変わっていた。
「仕方ない!疾く来たれ!―――エレボス!!」
少しでも被害を食い止めるため、エレボスを出撃させ破壊しているLBXを、操られているLBXの持ち主のプレイヤーには悪いと思いながらもブレイクオーバーさせて行く。
「早く逃げろ!」
端末のCCMを片手に市街を駆ける。
途中、LBXに襲われていた人を見つけては最優先に襲っていたLBXをブレイクオーバーしてその人を救助する。
「あ、ありがとう。貴方は・・・・・・?」
「僕?僕は山野レイ。ただのLBXプレイヤーだよ」
救助した人。
たぶん僕と歳が近い女の子の問いにそう答える。
「さっ。ここは危ないから早く離れて」
「え、ええ」
エレボスの武装を双剣から双銃に変えているため、離れて次々とブレインジャックされたLBXを倒していく。
「あの」
「ん?」
まだ逃げてなかったのか、女の子が声を掛けてきた。
「私、シャーロット・レインって言いうの」
「シャーロット・レイン・・・・・・?」
「ええ。シャロやロティーでも。レインでも呼びやすい方で呼んで」
「えーと・・・・・・じゃあ、シャロでいいかな?」
「ええ!」
何故か分からないけど、頬を少し赤くして女の子。
シャロが言う。
「じゃあ、僕のこともレイでいいよ」
「レイ・・・・・・」
「うん」
シャロと会話していると、倒したはずのLBXとは別のLBX郡がやって来た。
「シャロ、ちょっと待ってて。すぐ片付けるから」
「ええ」
CCMを操作して、エレボスの武装を双銃から双剣に切り替え。
「必殺ファンクション!!【アタックファンクション!ライトニングフォール―改!!】」
右手の黒剣『ノワール』を地面に突き刺してLBX郡をブレイクオーバーさせる。
「凄い・・・・・・一撃で・・・・・・」
感嘆の声を漏らすシャロ。
ブレインジャックされていて、ただ暴れてるだけだから簡単に対処出来る。
目視できる範囲で動きているLBXはエレボスだけだ。
「よし。急いでこの場から離れるよシャロ!」
「ぁ・・・・・・」
パンっ、と小さな音を響かせつつ、シャロの右手を左手で握りその場から離れる。
その場から離れてしばらくして、街中の空間ウインドウにディテクター。仮面の男が映し出された。
仮面の男は、ブリントンにいるLBXをブレインジャックし、これ以上の破壊を止めたければ要求を聞け、とイギリス政府に宣言した。
仮面の男の要求は、金融取引の全面停止。
もし金融取引の全面停止が行われたら、世界経済は混乱する。
やはりディテクターの目的は経済危機を起こすことなのか・・・・・・?
そう思いつつ、時間を見る。
仮面の男の要求期限は3時間後の本日正午。
今は午前9時。時間が無い。
一刻も早く指令コンピューターの場所を特定してもらわないと。
「もしもし父さん!?」
ビルニッジ天文台にいる父さんへ連絡を取る。
『レイ、無事か?』
「まあね。ブレインジャックされたLBXは幾つか倒したけど」
『そうか』
ホント。
僕って悪運なのかなぁ〜。
「それより父さん。NICSにいるオタクロスに早く指令コンピューターのを特定するように言って」
『今ヒロがオタクロスを呼んでいる最中だ』
画面の奥に映るヒロは端末に向かって、オタクロスの名を叫んでいた。
「ヒロ。オタクロス出ないの?」
『は、はい。寝てるのでしょうか・・・・・・?』
僕の問いにヒロは困惑した様子で端末を観る。
いや、たぶん・・・・・・
「・・・・・・ヒロ、オタクロスへの通信。僕にも繋げて」
『へ?!あ、はい!』
素っ頓狂な声を出して、端末を操作してヒロとオタクロスの通信に、僕も入る。
繋がるや―――。
「もしもーし、いい加減、さっさと返事してくれませんか〜?」
と告げた。
しかしオタクロスからの反応はなく、なんか唸ってるような声が微かに聞こえてきただけだ。
「・・・・・・オタクロス?」
再度呼びかけるが返事はなし。
さっきのユジンさんからのメッセージから推測すると―――
「おい、
ドスの効いた、冷たい声で告げた。
告げると、なんかヒッ!?と怯えた声が三ヶ所からが聞こえた。
ひとつはすぐ隣にいるシャロ。
もうひとつは、画面の奥にいるヒロから。
そして最後は―――
『れ、レイ。お願いなので棄てるのだけは勘弁して下さいデヨ!!』
怯えたように慌ててオタクロスが画面に出てきた。
「ならさっさと指令コンピューターの場所を特定しろ。今すぐに。最速最短でヤレ。言い訳は聞かん」
『は、はいデヨ!!!』
なんか泣きそうな声で言ってるが何故だ?
まぁ、どうでもいいけど。
すぐにコンソールを操作する、カチャカチャという音がリズミカルに聴こえる。
オタクロスとの通信を切り。
「それじゃあ、指令コンピューターの場所判ったら連絡して」
と、父さんたちに告げて通信を切った。
通信を切って少しして、シャロが。
「レイ、あなたはあのディテクターって人に立ち向かうつもりなの?」
と聞いてきた。
「そうだよ」
「それは何故?」
「んー。許せないから」
「許せない・・・・・・?」
「うん。LBXはみんなの希望となる物だ。決して、こんな誰かに危害を加えたり、テロを引き起こしていいものじゃない。LBXは、希望であり、夢であり、未来だから」
「希望・・・・・・ね」
「うん」
シャロが何処か不思議そうに僕を見てくる。
「怖いとは思わないの?」
「まぁ、そうだね。怖いって言うのもあるけど、誰かがやらなくちゃ」
他力本願なんて真っ平御免だしね。
それに、ディテクターはメアたちを攫い、LBXをテロに利用した。
到底誰かに頼って、事件の解決を願うものじゃない。
そんなの、僕の信念に反する。
「僕はまだ子供だけど、それでも掲げる"正義"がある」
「"正義"?」
「うん。僕の正義は―――」
クスッと笑い僕の"正義"について答える。
そんなのは絵空事に過ぎないかもだけど、それでも掲げたその"正義"はかけがえのないものだ。
もう二度と、悠介さんやLEXのような人を目の前で出させないために。
そのために僕は動いてる。
自分に何か出来ないかと。
だから、僕はこの半年近くであちこちで人脈を広げた。
「さて・・・・・・どうなるかな・・・・・・」
小さく呟き、
「―――もしもし、レオンさん?」
端末から通信で新たな人に連絡をした。