大学受験が終わり卒業式も終わった3月
それは受験から解放された学生たちが遊びに遊ぶ時期だ
特に受験期間中に発売されたゲームを消化するにはうってつけの
時間だ
かくいう俺も楽しみにしていたゲームがやっと届き意気揚々と始めたわけだが
『ようこそ<infinite dendrogram>へ。私は』
始まった瞬間目の前に芋虫チックな物体がフレンドリーに話しかけてきた。
「芋虫がしゃべった!!」
ゲーム間違えたかな!?
『…私は君のチュートリアルを担当する管理AI5号、キャタピラーという』
「は、始めまして。草薙八雲です」
珍妙な物体から急に丁寧な自己紹介を受けて思わず自分もかしこまって返してしまう
「クサナギヤクモ、と。では了解したプレイヤーネームの次は外見と」
「タンマタンマタンマ!!!」
「何かね?ローマ字の方が好みだったかな」
「それは本名!プレイヤーネームは考えるからちょっと待ってて!!」
「了解した」
いきなり芋虫に本名プレイを強いられそうになり大慌てで訂正する
大丈夫かこのAI…
『本来は違うAIが担当しているのだが今は所用があってね不慣れなのは大目にみて欲しい』
「アッハイ」
「じゃあ名前はイズモで」
『了解したイズモ。では外見の設定に移ろう』
そうして表示される俺の肉体と無数のパラメーター
「多っ」
一つづつ調整していては1日かけても終わらないと思わせられる量に圧倒される
「実際の顔から調整したいんだけどできますか?」
『可能だ』
ならそれから細部をいじったり髪色を変えたりするとしよう
髪を茶髪から白髪へ眼の色を黒から金色へと変えてみる
悪くないが現実でもできなくはないアレンジだ
ピンとこなければ戻せばいいしもう一捻り加えたい
「種族を変えるとかって出来るのか?吸血鬼とか妖精とか」
『見た目は変えることはできる。しかし羽をつけても飛ぶことはできないな。見た目だけだ』
「じゃあ獣耳をつけることって出来る?」
『可能だ』
キャタピラーが答えるとキャラクターに猫耳が生えた
そして獣耳の種類や大きさを変えるウインドウが現れたので物色する
「じゃあこれで」
俺が選んだのは狐っぽい耳反映されたキャラクターを見るとかなり良い感じだ
その後30分ほどかけて細かく調整し完成する
「じゃあこれで終わりで」
『了解した。キャラクタークリエイトはやり直せないので注意するように。では最初に始める国を選んでくれ』
「え」
『どうかしたのか?』
「い、いや何でも?それよりそれぞれの国の特徴とかを教えてくれる?」
『いいだろう。まずアルター王国だが…』
キャラクリやり直せないの!?
動揺で半分聞き流しながらそれぞれの国について知っていく
「うーん…」
悩ましい話だ
アルター王国はいかにも王道の中世ファンタジーという感じでそそられるしドライフ皇国の機械にも心が動かされる。ファンタジー全開のレジェンダリアや海上のグランバロア、逆に砂漠のカルディナも魅力的だ。でも…
「決めた。天地に行く!」
『了解した』
その後アイテムボックスと銀5000、初期武器に模擬剣を貰った
「よし!じ、じゃあそろそろ…」
『うむ最後にお待ちかねのエンブリオを君に移植する』
きた!!
エンブリオは一人一つ与えられ誰一人として同じエンブリオになったかことはないと言われるこのゲームの目玉要素だ
噂では性格によってエンブリオの傾向も変わるとか…
「じゃ、じゃあよろしくお願いします」
『では移植しよう』
途端俺の左手の甲に宝石が埋め込まれる
「おおお…!」
これが俺のエンブリオ…!?
『興奮しているところに悪いがそれは第0形態、いわばエンブリオの卵だ。君だけのエンブリオになるのはもう少し先になる』
「なんだ…」
『露骨に落胆するなイズモ。エンブリオが孵化すると宝石は個別の紋章へと変わる。その紋章がマスターとティアン…NPCを見分けるポイントだ。』
「なるほど楽しみだ…!」
うんこの紋章とかになったらどうしよう…
『これで準備は整った。これから天地の王都へ転送する』
「上空から始まらないよな?」
『始まらない』
本当か?
『そうだ、聞き忘れていたことがあった』
「?AIでも物忘れとかするんだな」
『君はこのゲームで何を望む?』
…それは
「俺は、特別な唯一になりたいんだ」
『君なら可能だ』
「そりゃどうも」
『それでは改めて』
『〈infinite dendrogram〉へようこそイズモ。私達は君の望みを歓迎しよう』
そして俺の〈infinite dendrogram〉が始まった