Blue Archive:Task Force 作:タクティカルおじさん
<20██年初夏>
フォード 特殊戦開発グループ 大尉
トリニティ総合学園・正義実現委員会教室
「ある条件だと....?」
「ええ、そうです。今ここで詳しく伝えるのは避けますが。」
フォードは話しかけてきた少女と会話する。それに、許可証の取り消しを避けられるのなら興味があったから。
「ところで、あなたのお名前は?」
ピアーズは少女に名を尋ねる。少女は、他の生徒よりも明らかに華やかな制服を着用している上、この学園の生徒会であるティーパーティーが発行した許可証の取り消しを止めることが可能であるかのような発言をしていた。
そのため、その少女の所属などが気になったのだ。
「ああ失礼、私の自己紹介が遅れましたね。私はティーパーティーのホスト、桐藤ナギサです。」
「「!!」」
彼らは驚いた。なぜなら、彼らの前には学園を統率することができる権力の持ち主であるナギサが目の前にいるからだ。
「それで、私の話には興味がありますか?」
「....一応、興味はある....。」
「大事な話なので、ここではないどこかでお話しましょうか。ついてきてください。」
ナギサはそう伝えると、フォードたちと共に移動した。
<数分後>
トリニティ総合学園・テラス
「さて、ではお話ししましょうか。」
ナギサは椅子に座りながら、語る。
「あなたたちは知っての通り、先ほど問題を起こしましたよね?本来なら、来賓の方が持つ許可証を取り上げになるのですが、特別に取り上げをしないという結論に至りました。」
「でも、それって条件付きですよね?」
ピアーズは尋ねる。
「ええ、その通りです。では、その条件についてお話しましょう。端的にいえば、私たち内部の問題に介入して欲しいのです。」
「内部の問題....?」
「お恥ずかしながら、現在のトリニティは複雑な状況に置かれております。エデン条約の締結が間近となっている今、そのような問題に対処しなければ私自身が不安なのです。」
「エデン条約....確か、ゲヘナとトリニティの平和条約か....。」
フォードはミカに教えてもらったエデン条約を思い出し、呟く。
「そうです、よくご存知ですね。あれは私たちにとって必要なものです。そして、実現のためにあなたたちは私に協力してほしいのです。」
「なるほど、概要は掴めたが具体的に俺たちは何をすることになるんだ?」
「....裏切り者を探して欲しいのです。」
「裏切り者...?なぜ、俺たちが裏切り者を探す必要が?」
「....。」
ナギサは少しの間を置いてから、答える。
「裏切り者の狙いはエデン条約締結の阻止。先ほど、軽くエデン条約について説明致しましたがその重要性はお分かりでしょうか?」
「少しはな....ゲヘナとトリニティとの全面戦争を止めたいのだろう?」
「ええ、そうです。私はそのためにわざわざ一度は空中分解仕掛けたものを、ここまで立て直しました。しかし、その条約の締結を阻止しようとするものがいることを耳にしてしまいました。」
ナギサは眉間にしわを寄せた表情で、語る。
「そして、それを企む人物は誰かわからず特定には至りませんでした。そこで次第の策として....可能性のある容疑者を一か所に集めました。裏切者はそこにいます、誰かはわかりませんが。」
フォードは話の流れから嫌な方向へと向かっていることに気付いた。そして、若干不愉快な気分に襲われた。
「....まあつまり、その裏切り者を一か所に集めたのが補習授業部と呼ばれるいわば豚箱です。そしてその豚箱の作成には、シャーレの先生の権限を少しお借りしていただきましたがね。」
「「!!」」
彼らは驚く。なぜなら、シャーレの先生がこんな血生臭いことと関わっているなんて想像できなかったからだ。
「さて、あなたたちは補習授業部にいる裏切り者を探していただけますか?」
「少し時間をくれ。」
フォードがそう伝えると、ピアーズと二人で話し合い始めた。
「これ、面倒ごとに巻き込まれていませんかね?」
「全くだ。でも、この要求を呑めば情報を入手できる。そうだろう?」
「....上と相談するべきだと思います。」
「....。今からでも連絡するか...。」
フォードは無線を手に取り、通信を開始する。
「セクター、こちらブラボー6-1。どうぞ。」
「ブラボー6-1、こちらセクター。何があった?どうぞ。」
「問題が発生。これから概要を....。」
フォードは彼らの指揮を行っているセクターことJSOCに、今彼らが置かれている状況や起きたことを全て説明した。
「....情報を入手することを目的として行動せよ。終わり。」
説明を受けたセクターは無線でそう伝え、通信を終了した。
「結局のところ現場の判断に任せるということか。」
「.....。少なくとも情報の入手を優先するとなるとやはり...。」
「わかったぞピアーズ。もう何も言わなくても良い。同じ結論に至ったのだからな。」
彼らは互いに顔を向けて話し合うのをやめ、ナギサの方へと向ける。
「どうですか?」
冷淡な声が彼らを突き抜ける。
「協力する。」
「交渉成立ですね。あなた達が欲しい情報はミカさんから伺っております。あと明日お越しください、早速頼みたいことがあります。私からの頼み事を全てこなせば情報を差し上げましょう。では。」
彼らはテラスから移動した。
<数十分後>
トリニティ総合学園・校門
交渉を終えた彼らは校門を出たところに待機していた。
「セクター、こちらブラボー6-1。回収地点アルファにおいて待機中、どうぞ。」
「ブラボー6-1、こちらセクター。了解、黒のSUVが回収に向かっている。合流せよ。終わり。」
フォードは無線で回収の要請をし終えると、空を見上げた。少し焦げたようなオレンジ色の雲が、交互に重なっていた。つまり、夕方である。
「なあピアーズ。お前はあの交渉についてどう思う?」
不意にフォードはピアーズに尋ねた。
「どうって....今は致し方ない判断だと思っています。ただなぜ部外者であるこっちが探すことに?」
「それは俺も同じだ。絶対に何か裏があるに違いない。」
「とにかく、明日またここに来るんですよね。装備とかどうします?」
「....。」
フォードは沈黙する。今日、何人かの生徒を相手にしたがあれはあくまで相手が警戒していたわけではないからだ。だから、あの時の奇襲攻撃は通用した。
ただ逆に仕掛けられた場合はどうなる?おそらく、一人や二人程度ならまだ反撃の機会があるかもしれないがそれ以上となると、流石に火力不足だろう。
それらを踏まえてフォードは答える。
「今日みたいな私服で行くとしよう、ただ愛銃と共にね....。」
「わかりました。」
ピアーズが返事を返すと彼らの目の前に、黒塗りのSUVが停車する。
「来たみたいだな。」
フォードはそう告げると、後部座席に彼らは乗車。帰還したのだった。
<翌日>
トリニティ総合学園・テラス
「あら、おはようございます。今日は昨日と比べて随分物騒な格好ですね。」
ナギサはテラスに集まったフォード達をジロジロと見つめる。それもそのはず、彼らは一般的な私服の上に数本のマガジンが入っているタクティカルベストを着用。
そして、彼らの手によってカスタムされた上、スリング付きのMk.18を装備。加えて、ヘルメットを片手で持っている。昨日の様子と比べ、この完全に武装した姿に口を出さずにはいられないだろう。
「これが俺たちの仕事着だ。で、何をすればいい?」
「ああ、わざわざあなた達と交渉したものですからね。昨日の伝えた通り、裏切り者を探していただきたいと思います。」
ナギサは紅茶を少し口にしたあと、純白のテーブルクロスの上に置く。
「そしてその裏切り者ですが....補習授業部には4人の生徒がいます。きっとその4人のうちの誰かでしょう。あるいは──────」
「
フォードは蔑むかのような目線でナギサを見つめる。いくらなんでも全員が裏切り者の可能性があるというナギサの持論は、流石に馬鹿げていると考えたからだ。
「.....
ナギサはそう伝えると、彼らに説明を始める。
「まず、トリニティの別館....すなわち合宿所へ向かっていただきます。そこで補習授業部と接触してください。そうそう、表向きはこれから合宿所を管理ないし警備することを、私たちに依頼されたということでお願いします。」
ナギサは彼らに合宿所の位置を記した地図を二枚差し出す。もちろん差し出された地図をフォードたちは受け取り、地図を眺めた。
「あなた達は裏切り者を見つけることが出来たら、直ちに私に教えるようお願いします。ではこれにて説明は完了です。何か質問はございますか?」
「....無しだ。」
フォード達はナギサとの会話を終えると、合宿所へ向かったのだった。
<数十分後>
トリニティ総合学園・別館/合宿所
ナギサから渡された地図をもとに、彼らは広大な敷地内にある別館へ数十分かけて、徒歩で移動。彼らが目的地に着くと、別館の様子を眺めた。
「所々、外壁の塗装が剥がれてたり道に草が伸びきっていますね。」
「ああ、そうだな。どうやらそこまで整備されてなさそうだな。」
合宿所の建物は全体的に古びた感じが伝わるほど、劣化した箇所が存在していた。そんな建物の中へ、フォードたちは足を踏み入れた。
足を踏み入れると、外観と比べ室内はかなり整備されているようだった。....ただ埃が少々、舞っているが。
「外とはえらく様子が違うな。てっきり、虫やらがかなり住み着いているゴミ屋敷かとでも思っていたのだが。」
室内は確かにやたらと綺麗であり、しかも別館とはいえ装飾も華やかであった。
「いくら別館でもお嬢様学校の名の通りですね。」
彼らは煌びやかに施された内装に驚きつつ、補習授業部との接触を図るため内部を探索をし始める。しばらく、彼らは探索を続けると階段を発見した。そこから彼らは上の階へ移動。
二階に上り、廊下へと出る。そこには他あまりと変わらない窓があった。フォードはそこから景色を眺めた。
「....あれはプールか?もう水泳の授業がある夏だっていうのにこんなに汚いとは....。」
フォードが目にしたのは水が入っていないプールである。プールは一年に数回、水泳の授業で使われるぐらいの頻度であり、それ以外全く使われない。そのため、どこから来たのか分からないたくさんの葉や枝、側面にこびりついた濃い緑色の汚れが遠くからでも視認できた。
「もしかしたら、ここ自体あまり使われていないかもしれませんね。あるいは水泳の授業がないとか。」
「にしても懐かしいな、ただ俺の高校時代はプールなんて授業はなかったがね。クソガキ時代以来だ。」
「自分の高校はありましたね。確かこの光景は何度も見ましたし、掃除をさせられましたよ。」
彼らはそんな風にかつてあった学生時代、青春の記憶を懐かしんでいると、突然横からか少女に声を掛けられた。
「きゃっ!!だ、誰!?もしかして、不審者!?」
フォードたちはその声の元へと、体を向け少女を目にした。少女は、体操服を着ておりピンク色の髪の毛だがミカのピンク髪とは少し違う色であった。
すなわち、下江コハルである。
「俺たちは不審者じゃない、これを見てくれ。」
そうフォードが伝えると、敷地に入ることを許可した証明書を彼女に見せる。
「え?ここの建物の警備を任されているの...?」
「数日前にティーパーティーに依頼されたものでね....。」
「あ!そうなの!?でもなんで大人が...?」
「俺たちはキヴォトス派遣隊の隊員さ。」
「ま、まあ。大人といってもちゃんと正式な証明書を持っているなら、不審者じゃなさそうね!」
こうしてあっさりと誤魔化すことが出来てしまった。コハルは良い子であるが、そこまで物事を深く考えない。そして政治や社会情勢について疎く、彼らの存在をあまり知らなかったのだ。
「ところで名前は?」
「わ、私の名前は──────」
それから軽く、互いに名前を教え合うと次にフォードは補習授業部の顧問こと先生に会いたいと伝えた。その要望を聞き入れた彼女は、あっさりと承諾し先生の居場所まで連れて行ってくれた。
その間彼らは「ああ、なんて良い子なんだろう。」と思いながら、ナギサの裏切り者を探す云々の言葉を頭の隅に追いやったのだった。
そして、コハルの案内があったおかげで先生を発見した彼らは以前、先生と接触したことがあるアレックスのように挨拶を交わす。大人同士の社交を済ますと、コハルではない少女の声を耳にする。
「先生~、掃除終わりましたよ~。」
声の主である彼女はそう言いながら、先生の元に向かってくる。彼女はコハルと同じように体操服を着ており、かなり明るめの茶髪であった。そして実は公にはされていないが、アレックスと接点がある阿慈谷ヒフミである。
「あ!ヒフミ!お帰りなさい。」
「いや~アズサちゃんと一緒に掃除しましたが、大変でしたよ~。」
ヒフミの隣には白髪の少女がおり、同じく体操服を着ている。そして今、体操服を着てまで愛銃である''Et Omnia Vanitas''ことM4A1を肌から離さず、所持しているのは白洲アズサである。
「確かに、埃が多くて掃除をするのが大変だったがヒフミが考えた掃討作戦で、あっという間に終わった。」
「あはは....たまたま役に立つ方法を知っていただけですよ...。」
どうやら、ここにいる補習授業部の生徒たちはこの校舎内を掃除をしていたようだった。そして、ヒフミとアズサは先生以外の見知らぬ大人がいたことにもちろん疑問を持ったようで。
「あ、あのここにいる大人の方々は...?」
ヒフミは少し、彼らに何かを恐れているような口調で述べたところ、フォードが応じる。
「俺はフォードだ。こっちはピアーズ。俺たちはティーパーティーにこの施設の警備などを依頼されて、来ただけだ。君たちの名前は一応、知っている。」
そう返すと、先生がフォードたちのことを心配しないようにと伝えてくれたのだ。その援護もあってか、少しは彼女たちの緊張か不安といったものが和らげられた。
「えっと、よ、よろしくお願いしますね。」
「よろしくだ。警備といったが私も何か役に立てることがあれば、手伝う。」
そんな感じにやり取りを交わすと、次に先生に向かってヒフミが話し始める。
「あと改めて.....先生!これで掃除完了です!」
ヒフミは元気よく、掃除を終えたことを先生に報告するが、先生はハナコが居ないと伝える。その本人である浦和ハナコは、突然現れるのだが。
「あら、まだ一か所だけ残っていますよ?屋外プールです♡....あれ?この方々は?」
フォードたちの前に現れた浦和ハナコは、他の補習授業部の生徒たちのようにフォードたちに関心を向ける。なお、先生がヒフミとアズサ達と同じように彼らの説明をしてくれた。
そしてその説明が終わると、残った掃除の場所であるプールについての話題となる。
「本題に戻りますけど、プールなんてありましたっけ?」
「ええ、ありましたよ。こっちですね。」
それから彼女たちはハナコを先頭に、プールがあるであろう方向へと向かった。もちろんフォードたちは追うべきかと考えたが、遠くから観察するべきという結論に至り、合宿所から観察することにした。
合宿所に戻ると、彼らはプールが見えるであろう部屋に入る。部屋の中に入ると、いくつかベッドがあったため彼らは観察という状況下においては必要ではないMk.18やヘルメットをベッドに置く。ただし、ボディーアーマーは身に着けている。
「さて、どうやって裏切り者を探し出せばいいのやら....。」
「そもそも裏切り者という情報があるといっても、それを区別する方法がないのが痛いですね。」
「ああ。もしかしたら、今のプール掃除で怪しい行動をするやつがいるかもな。」
「それって...何も意味が...。」
「今のは無しだ。」
フォードたちはそんな風にやり取りをしながら、補習授業部の生徒たちの様子を観察する。彼女たちを観察すると特に怪しい動きはないどころか、楽しそうな様子であった。
その後彼らは彼女たちの掃除が終わるまで、見守ることとなった。