Blue Archive:Task Force 作:タクティカルおじさん
<20██年初夏/17時10分>
フォード 特殊戦開発グループ 大尉
正義実現委員会・押収品管理室の近く
「先生とコハルはあの建物の中に入って行ったぞ。」
そう呟くのはフォードである。フォードたちは先生たちが何をしているのかが気になるため、追跡していた。
そして追跡し続け、辿り着いた場所は現在フォードたちの近くにある、正義実現委員会が管理する押収品管理室だった。
「あの制服は....。」
「あれは正義実現委員会だ。」
黒を基調とし、所々に赤のラインが入っている制服は正義実現委員会に所属することを示す目印である。そして、彼らは一度ある生徒をいじめている集団から助けるために交戦したとき、一時的にだが戦闘後にお世話にもなったことがある。
「確か正義実現委員会は、トリニティの治安維持組織でしたっけ。」
「だな。いくらなんでも俺たちの許可されている範囲じゃ、あの中まで流石に入れないな。」
ティーパーティーのホストであるナギサが許可したのはあくまで学園内の発砲と、いくつかの施設の出入り。その許可されている施設のうち、学園内の治安維持を担当する正義実現委員会は残念ながら含まれていなかったのだ。
「外で盗み聞きするか....。」
「....この学園来てからほとんど似たようなことしていませんかね?」
「知っているか?俺たちの仕事は盗聴と、ストーキングさ。」
フォードはふざけてピアーズにそう返すと、彼らは中に入った先生たちの話が聞こえるような場所へ移動。
そして偶然にも、その声が聞こえるであろう場所に彼らは移動する。
「ここで待機するぞ。」
彼らは先生たちと正義実現委員会の副委員長であるハスミとの会話を、こっそりと聞くのであった。
<数時間後>
空は既に暗くなっていた。そんな中、アレックスたちは先生たちが行った会話を盗み聞くことに成功し、次に合宿所に戻り、これまで得た情報から話し合っていた。裏切者を探し出すために────────
「やっぱり確固たる根拠が掴めないのが現状だな。」
「そうですよ、そもそもあのティーパーティーのホスト....ナギサの発言が曖昧な気もします。」
「と、いうと?」
フォードはピアーズが抱く疑問点を引き出そうとする。
「彼女は
「.....確かに、恐らくだが彼女に信用されている人物からか?」
「その可能性もありますが....万が一、彼女のことを貶めようとする人物から得ているかもしれません。」
「ふむ....。」
フォードは考える。なぜ第一に部外者であり、しかも大人である彼らに依頼したのか。そして、次にナギサが依頼してきた''トリニティの裏切り者''とは一体どういった意味なのか。
そして微かに感じるただならぬ事情。そんなことをフォードは頭の中に巡らせた。
「.....そういえば自分たちの活動をナギサに報告してませんね。」
ピアーズがそう呟くと、フォードは少し遅れて反応する。
「ああ、やはりしておく方がいいのか?」
「仕事をしていない、と思われちゃって情報を入手できないかもしれませんよ?」
「面倒なことだ.....。分かった、明日行くことにしよう。」
フォードは若干、ナギサに対して報告することを躊躇しながらそう伝える。これで明日の予定はある程度決まった。
しかし、彼らが明日の朝を迎えるのはまだ早い。
「あと、もう少ししたら自分たち生徒たちを監視する時間ですね。」
そう、彼女たちの監視が残っているのだ。実際のところ、無理にそれを達成する必要がないが裏切り者の情報収集といった点から、それを遂行しなければ彼らはベッドで睡眠を確保することはできない。
「昨日と同じ経路でいいか....。」
そんな風にフォードは喋ると、彼らは予定の時刻まで待機することとなる。
<数時間後>
彼らは昨日の探索と同じように、暗視装置と完全に武装した格好で宿舎内を徘徊した。
「たく、いくらなんでもこの校舎は明かりが少なすぎるぞ。」
「全くです、夜トイレに行くとしたら母親と暗視装置が必要ですよ。」
「いやオムツだ。真っ先にこんな暗闇に怖がって漏らしちまうよ。」
彼らはそういったジョークを交えながら探索する。二回目の徘徊ということもあってか、少し心に余裕といったものが生まれていた。
「さて、そろそろ先生の部屋だ。」
先生の部屋から20mほど離れたところに彼らは辿り着く。扉の隙間から光が漏れている。つまり、先生一人だけか生徒のどちらか。
彼らは音で誰かが近づいていることがバレないように、慎重に近づく。それもまた、前と同じ盗み聞きした距離まで。
盗み聞きが可能な距離に近付くと、会話が聞こえる。そして声から明らかに二人がいるのが確定した。
「この声は....ヒフミだな。どうしてまたここに?」
「さあ?もしかしたら先生と──────」
「噂のようにあり得るかもしれないから、聞きたくない。」
彼らは小声でそうやり取りをする。しかし、扉の向こうから聞こえる会話はそういった会話ではなさそうだ。
「こりゃあ、成績関係か?」
「.....まじめですね。」
「恐らく、何も得られない気がするから別のところへ行くぞ。」
フォードたちはあまり裏切り者に関する情報とは繋がらないと判断したからなのか、別の場所へ移動する。
移動先は先日見た、アズサとハナコが会話を交えていたところ。
「今夜は誰もいなさそうか....?」
彼らは部屋から少し、離れた位置から観察するが何も見当たらない。
「もう少し別の場所を探索するか。」
それから再び、探索が再開した。彼らは合宿所内のあらゆる部屋を探索する。しかし、どこも徘徊している人物は見当たらなかった。
「あーあ、時間を無駄にした気分だ。」
「結構、なんやかんや時間たっていますし何も成果は得られませんでしたね。」
「最悪だ。おっと、あれは....。」
フォードは自分が現在扱っているMk.18に搭載されたレーザーを使用。レーザーは直接肉眼で確認可能なものもあるが、今回は暗視装置越しにしか見えない方を使用している。
そして出力されたレーザーをある人物に向ける。
「どうしたんですか?.....あの生徒は、アズサでしたっけ。」
彼らはアズサを合宿所のロビーにて発見。何をしているのかはわからないが、様子から徘徊をしているようであった。
「あ!外に行きましたよ!」
彼女はロビーから何かから逃げるように抜け出す。そして、抜け出した先は外である。
「追うぞ!」
彼らも後を追う。抜け出すと、月明かりのせいか暗視装置越しに若干視界が明るくなる。しかし、彼女の姿は見当たらない。
「どこに行った!?」
「クソ!見失ったか。」
フォードは悪態を突く。せっかく何か情報を入手出来そうな手がかりかと思い、追いかけたのだが結果として何も得られなかった。
そのような状況に彼は呆れたのだ。
「はぁ、クソみたいな気分だ。戻るぞ。」
彼らは部屋に戻り、朝に備えるのであった。
<翌日>
トリニティ総合学園・テラス
「あら、おはようございます。わざわざ自らここにお越しになるとは......何かわかりましたか?」
テラスにはナギサがいつものように椅子に座っている。そして、テラスに訪れたフォードたちに彼女は進捗を尋ねる。
「一応、2日ぐらい前から彼女たちの様子を観察しているが特に注意すべき様子は見られない。」
「そうですか。他には何かありますか?」
ナギサはこれといった情報が無いと彼に告げられると少し、不満そうな顔を見せた。
「そうだな、一つ。君の言う裏切り者はいないかもしれない。」
その言葉を放ったフォードはナギサから冷酷な視線が向けられているのが微かに感じ取った。おそらく、彼女はあると信用していたのだがそれを覆すような発言を受け入れられないのだろう。
「たった二日、補習授業部の生徒たちをできる限り個別に監視したが、君の言う''エデン条約を阻止する''様子は一切見られなかった。」
「.......。でもそれって短期間の監視ですよね?一週間、一か月と監視をしなければ分からないこともあると思うのですが?」
ナギサは短期間であることを指摘するが、フォードはそれにすぐさま応じる。
「条約を締結するまであとは残り一か月と数週間。もし計画的に阻止するのであれば、恐らくティーパーティーにいる者を殺害するだろう。」
フォードが話す内容はほとんど推測であるが語り続ける。
「そしてティーパーティーには主要な人物が三名。ナギサとミカとセイア、だがそのうち一人のセイアは入院中。残るは二人だが、恐らくどっちも殺害するだろうな。」
「.....。」
ナギサは沈黙している。
「先に、ナギサを。次にミカをと殺害すれば主要なメンバーの派閥は混乱に陥る。エデン条約に関してはそっちのけで、内部の権力争いに発展するだろうな。」
「.....。でもそれは憶測の域を出ないのでは?」
「ああ、そうさ。でも一つ自信を持って言えることがある。あの補習授業部の生徒たちは決して、裏切り者ではないことだ。普段の様子から見ると、良くも悪くもただの青春を謳歌している学生たちにしか見えない。」
「だから何ですか?そういった演技をしているかもしれませんよ?」
ナギサはフォードの言葉に噛みついてくる。
「そういう君は裏切り者という情報はどこから入手したんだ?以前から、凄く疑問を持っている。」
「質問の答えになっていません。」
「そうか、こっちの勝手な推測だが君が信用できる人物から入手したんだろう?」
フォードは続けて。
「君の話を聞いているとかなり疑い深い性格をしている。しかし、その裏切り者という情報は信頼している。その違いはなんだ?」
「.....。」
ナギサは再び沈黙を保つ。
「きっと君の信頼できる人物だろう?....そう、君と同じティーパーティーに所属するミカから得たのでは?まあ、俺たちの勝手な推測からこの結論に辿り着いただけに過ぎないが。」
「.....あなた達は鋭いですね。これが大人の力とでも言うのでしょうかね、あなた達の予測通り私はミカさんからの情報です。」
ナギサは沈黙を保っていたが、ついにそれを破り彼らに語り始めた。
「数週間前でした。彼女は私に突然、''トリニティに裏切り者がいる''と伝えてきたのが発端です。そして、その裏切り者はご存知の通りエデン条約の阻止を目的にしているということも、教えてくださりました。」
ナギサは続ける。
「前にもお話いたしましたが、私はそのようなことに不安を覚えて彼女の情報を基に補習授業部を設置しました。」
「なるほど......。」
「それ以上、私からお話することはございません。わざわざお越しになりましたが、お引き取りいただければ幸いです。」
「待て、最後に一つ聞きたいことがある。俺たちをこの
「........。」
ナギサはそれ以上、彼らに答えようという様子が見られなかった。
「ピアーズ、戻るぞ。」
彼らはテラスから移動したのであった。
そして彼らは合宿所への帰路へと着くと、テラスで話し合ったことについて語っていた。
「やはり、彼女は疑い深いな。それでもなぜ、外部の俺たちなんかにこんな政治闘争の延長に過ぎないものを依頼してきたのかが、不明だ。」
「昨夜、寝る前に少々無理やりにでも結論を出しただけの粗末な推測が当たるとは....。」
そう、彼らは就寝前にこれまで目にしてきた補習授業部の生徒たちの様子、そして彼らが抱いた疑念について考え合っていたのだった。
「まさか、ミカから知らされたなんて思いもよらなかった。」
「あと謎なのが、どうしてミカはナギサに教えたのでしょうかね?」
「と、いうと?」
ピアーズは続けて。
「二つ考えられることがあります。一つ目は、ミカ自身が入手した情報が不正確なものであること。二つ目は、彼女自身が作り出した嘘に過ぎないものであるという可能性です。」
「可能性ならそうだが、どうやってそれを確かめるんだ?見当がつかない。」
フォードたちはミカと何度か出会ったことがあるが、彼らは彼女の居場所を知らない。たとえ、ナギサと話し合ったテラスですら彼女を目にしたことは滅多にない。
「どんどん事態が大きくなっているような気もするが.....それと個人的にアズサが気になる。」
「さっき、確実に裏切り者じゃないとか断言していましたけど、その根拠が.....。」
「ああ、そうさ。深夜に、彼女は二日とも合宿所を抜け出しているからな。どこへ行ったのが一番気になる。」
「色々と調べないとわからないことが山積みですね、本当に。」
「とっと、終わらせ──────、あれは.....ミカ?」
フォードはここから少し離れたところにいるピンク髪の少女、ミカであろう人物に注目する。
「もしかして、合宿所についさっきまで居たとか....?」
そんな風に彼らはやり取りをしているとミカもこちら側に気付いたのか、近付いてくる。
「こっちに来てるぞ。」
「何か嫌な予感がしますね。」
「奇遇だな、俺もだ。」
彼らはそんなやりとりを交わしていると、ミカはさらに接近。あっという間に、距離を詰められた。そして彼女は前に出会ったときと同じ明るさで振る舞う。
「あれ?久しぶりだね!!また何か用事があって、ここに来たの?」
「あー....一応、用事とは言わないがしばらくの間、合宿所の警備要員として配置されているのだが....。」
フォードは本当の目的を隠しながら伝えていると、ミカは不思議そうな顔で話を聞く。もしかしたら、彼女はあの発砲した時以来、フォードたちに何が起こったのかということを知らないかもしれない。
「.....それってナギちゃんが頼んだのかなぁ?もしかして、警備云々の話って嘘?」
「いや、本当さ。」
「ふーん。」
ミカはフォードを舐めまわすような目線で見つめてくる。完全に疑っているに違いないと、その視線を向けられている彼は感じた。
「ねぇ、もしかしてあなた達はナギちゃんにトリニティの裏切り者を探してって頼まれた?」
「さあ、どうだかね。」
「そっか~~~、でも先生も頼まれたらしいんだよね~。どうやら、ナギちゃんはいろんな大人を頼っている感じよ。」
「それは大変だな。」
フォードは他人事であるかのように誤魔化すが、既にミカにバレており意味はない。
「実はね、ナギちゃんは先生に頼み込んでいたけど断られちゃったらしいね。だけど、あなた達はどうやら引き受けちゃった。」
「で、何が用だ?簡潔に伝えてくれ。」
フォードは明らかに感じ取っていた。ミカが彼らに話しかけていることに、何か裏があることを。実際、何かあるようでミカはそれを口に出す。
「あなた達は第三者でしょ?まあ、今となってはその立場じゃないかもしれないけどね。わざわざ、ナギちゃんの取引を受け入れるってことはナギちゃんの味方なの?」
「どういう意味だ?」
フォードは尋ねる。
「あなた達は、キヴォトス外部から来た軍隊。最近、アビドスの方で活躍していたのは話題になっていたから、私もそれを知っている。」
ミカは続けて。
「どうして、ナギちゃんの依頼を引き受けちゃうのかなって私は疑問に思っているの。それについて教えてほしいな。」
「いや、俺たちは彼女の味方をしたわけじゃない。それに、俺たちは彼女に半分騙されたと思っているよ。」
「ふーん、そうなんだ。騙されたってことは、ナギちゃんに納得していないってことよね?あと、もう一つ聞いていい?」
「なんだ?」
「あなた達は
味方、その言葉に彼は悩んだ。もちろん、その言葉に対する答えが見つからないためピアーズと少し話し合い、結論を出した。
そして、彼らが導き出した言葉を彼女に伝える。
「俺たちは、戦う仲間・戦友の味方というのが一つ。そして、守られるべき者への味方に過ぎない。」
「兵隊さんって、そう思っているんだね。その守られるべき者には誰が入っているのかな?もちろん、私たち生徒も?」
「それは自分で決めてくれ。俺たちは戦うべき時、相手に対して戦うだけだ。」
「....わーお。少し言い方が違うけど、まるで先生みたいなことを言っているね。」
「先生...?」
どうやら、ミカは合宿所でフォードたちが今、話しかけられているような内容を先生と交わしたようだった。
「先生は生徒の味方でもあるけど、誰かの味方でもないみたいな感じだったよ。」
「先生と俺たちが同じ考えだとは到底、思えないないけどな。」
フォードはそう口に漏らすが、どうやらミカはまだ話したいことがあるようで続ける。
「ねえ、どうせ裏切り者は見つかっていないんでしょ?私からその情報を教えてあげる。」
最近、会話と情報戦じみたことばかりしているので自分の文が不安でしかありません。
それはそうと、ついにPHT決戦やってきましたね。もうすぐ、メインストーリー最終編が終わってしまうことに複雑な気持ちがありつつも、続きが楽しみです。