Blue Archive:Task Force   作:タクティカルおじさん

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16:エデン条約編:Easy Does It

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<20██年初夏/21:30>

 フォード 特殊戦開発グループ 大尉

 トリニティ自治区/大通りの一角

 

 

 

 

 

 

 「これで全員を確保したんだな?」

 

 フォードはハンドカフによって拘束された美食研一味と無理矢理連行された給食部のフウカを眺めながらそう呟く。

 

 彼らは先の戦闘で、トリニティ自治区内で暴れまわっていたテロリスト紛いの集団を全員拘束。そして今は、情報整理を兼ねて先生や補習授業部、トリニティの治安を守る正義実現委員会が集合していた。

 

 「お疲れ様です、皆さん。お陰様で事態を無事に収拾することができました。」

 

 ハスミは労いの言葉を皆に向ける。労いの言葉を向けられたヒフミとコハルは嬉しそうな顔をしながら。

 

 「あ、あはは....途中は大変でしたけど....。」

 

 「や、役に立てたどうかは分かりませんが...!」

 

 そんな風に嬉しそうな顔をする二人とは少し変わって、瞳を輝かせるアズサがいた。

 

 「あの二人(フォード、ピアーズ)の戦闘を少し見れたが、物凄く勉強になった。それと正義実現委員会の戦術も今度見てみたい。」

 

 「褒めてくれてありがとうな、お嬢さん。」

 

 フォードは少しにやけた顔をしながら、アズサに向かって感謝した。

 

 「ところで、この方々はどうなるのですか?」

 

 ハナコがハスミに対し質問すると彼女は答える。

 

 「本来ならば私たちの方でこの後の処遇を決めるのですが.....今回は時期が時期ですので、ゲヘナの風紀委員会に託そうかと。そこで、先生もう一つお願いがあるのですが...。」

 

 「うん、どういったもの?」

 

 それから彼女はお願いとその理由について説明した。お願いは至って単純、拘束した生徒たちを風紀委員会に引き渡すこと。そしてその理由は彼女曰く、シャーレという第三者の機関が引き渡すことでゲヘナとトリニティの両者に政治的な憂慮が減るとのこと。余程彼女たちはエデン条約に対して気にかけているのであろう。

 

 軍隊においても政治的な理由及び圧力から行動が制限されることがあるが、それと似たようなものだとフォードは感じ取った。

 

 「....うん、任せてね。」

 

 先生はハスミのお願いを承諾したところ、フォードは先生に申し入れする。

 

 「俺たちもエスコートしていいか?また彼女たちが暴れたときは俺たちなら対処できるぞ。」

 

 「じゃあ、エスコートよろしくね。」

 

 「ああ...。」

 

 それからフォードたちはゲヘナ風紀委員会と集合する地点へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<同日23:15>

 トリニティ自治区・外郭の大橋

 

 

 

 

 

 

 「ここが集合地点だ。風紀委員会はどこにいる?」

 

 「車両で来るとのことですが....どこでしょうね。」

 

 ピアーズとフォードはそんな風にやり取りをして、到着を待っていると緊急車両が発するサイレンだろうか?そのような音が彼らの真正面から聞こえてくる。そして、そのうち橋の向こう側から車両が現れた。どうやら、あの車両が風紀委員会を載せているのだろうか。

 

 やがてその車両がフォードたちのいる前で停車すると運転席から、看護師を彷彿とさせる姿をした少女が降り立つ。

 

 「......お待たせしました、死体はどこですか?」

 

 「「「え?」」」

 

 3人は死体がどこにあるのか尋ねられてあっけらかんとしていると、少女は言葉を改めて。

 

 「....失礼。死体ではなく負傷者でしたね。たまに混同してしまって。えー.....納品リストには新鮮な負傷者4名と人質1名と書かれていましたが。」

 

 彼女は車内から紙を取り出し、眺めながらそう呟く。そして確認を終えたのか、彼女は目線をこちら側に向けると不思議そうな顔をして。

 

 「.....ところであなた達は?正義実現委員会ではなさそうですが....?」

 

 「俺たちは....。」

 

 フォードが説明をしようとしたとき、車両の後部にあるドアから開閉する音が聞こえるともう一人、別の少女がこちらに向かってきた。その少女に彼は見覚えがあった。

 

 「スーツを着ているのはシャーレの先生。」

 

 「ヒナ!!」

 

 先生が再開を分かち合うように名前を呼ぶ。

 

 「久しぶりだね先生。ところで、この銃を持った大人たちは....。」

 

 そしてヒナはフォードたちの前に歩んでくると、ジロジロと彼らに目線を向けてきた。そんな風に視線を向けられる中、フォードは口を開く。

 

 「久しぶりだな、ゲヘナの風紀委員長さん。いつ以来だ?半年以上前に一緒に戦ったのが最後か?」

 

 フォードは突然、ヒナに声を掛けると彼女はそれに反応した。

 

 「.....ええ、そうね。久しぶりだわ.....フォード大尉....。」

 

 「ここにいる方々は知り合いでしたか。委員長。」

 

 「うん、そうね....。」

 

 ヒナはセナにそう答えると、先生がなぜこの場所に来たのかということをざっくりと説明する。トリニティで起きた美食研による一連の事件、それに対応した事実、そして政治的な問題を避けるために第三者であるシャーレや派遣隊の隊員がここに来たといったものだった。

 

 ──────「なるほど。このタイミングでお互い政治的な問題にしないために、先生が。そして護衛としてあの二人も....。」

 

 「そっちだって同じだろう?例えば、公的には救急医学部が来たことになっていて君は付き添い....という感じだろう?」

 

 「よくわかったわね....。その通りよ。」

 

 ヒナがそんな風にフォードに対して返答すると、救急医学部という単語が出てきたからかセナが先生たちに自己紹介する。

 

 「....救急医学部の部長、氷室セナです。以後よろしくお願いします、先生。それと...。」

 

 「ああ、俺はフォードだ。こっちはピアーズ。」

 

 「....はい。死────いえ、負傷者がいたらいつでもお呼びください。配送料はいただきませんので。」

 

 「面白いサービスだな。でも配送中に死体になっちまったら、料金取られてしまうのか?」

 

 フォードが冗談交じりにそんなことを伝えるとヒナが突っ込みを入れる。

 

 「よく負傷者を死体って言うけど....本物の死体を見たことないでしょうに。」

 

 「はい。そのことについては委員長はないでしょう?」

 

 ヒナは彼女からそう言われると少し、怪訝な表情を見せる。だが、そんな表情は2、3秒見せた後にいつもの冷静な顔に戻った。

 

 「とにかく....美食研究会をこっち移してもらえる?」

 

 ヒナは車両の後部のドアを開けて、移送するよう頼んだのでフォードたちは拘束された状態の彼女たちを運び込む。運び込む途中、彼女たちはヒナにそれぞれ何か一言伝えるとヒナはめんどくさそうな表情を見せた。

 

 学園の風紀を取り締まる彼女にとっては、問題児たちが引き起こす出来事に頭を抱えている。それだけではなくゲヘナの問題児たちは数多く、日頃から事件が起きる中それらを取り締まるためヒナを委員長とする風紀委員会は奔走しているのだ。

 

 フォードはそのような背景から、ゲヘナはいつまでたっても変わらないのだな。と若干哀れみを思いながらピアーズと共に移送の作業に励む。しばらくの間、彼女たちの手に取り付けたハンドカフを解除してから、後部の座席に乗り込ませるといった作業に集中すると、移送の準備が完了したのだった。

 

 「....積載完了。出発の準備もできています。」

 

 セナが後部のドアを内側から開けないように、鍵を掛けてから運転席に乗り込むとヒナにそう伝えた。

 

 「.....いや、少し待って。」

 

 伝えられた彼女はセナにそう告げると、先生とフォードたちがいるところへ歩み寄ってくる。彼らの数歩手前で停止すると彼女は質問をしてきた。

 

 「先生....トリニティで何をしているの?」

 

 「補習授業部ってところの担任を...。」

 

 「それはもう知っている。色々と情報は入ってきているから...。それと、なぜキヴォトス派遣隊の隊員もいるのかしら?いや、正確には...いわゆる特殊部隊の一員が?」

 

 「と、特殊部隊!?」

 

 先生がやや食いつき気味に驚いた反応をする。

 

 「....あなた達は他の部隊が使用していないような武器や、装備品を持っているでしょう?それにゲヘナで活動していた時に、あなた達は特殊部隊であるということを明かされたのを、今も覚えているわ。」

 

 「....つまるところ、何を言いたいんだ?」

 

 「どうして中立であるはずのシャーレや、あなた達はトリニティにいるのかしら?この時期にトリニティにいるとまるで....。」

 

 「「「....。」」」

 

 彼ら三人は沈黙する。彼女は彼らのような中立的な組織が、トリニティという学園に加担しているのではないかと疑っているのだ。

 

 「....やっぱり今の無し、気にしないで先生...。でもあなた達は...?」

 

 「俺たちは軍人さ。それに俺たちの部隊がどういうものかということを、分かっているのだろう?それなら、察しが着くはずだ。」

 

 「それは分かっているつもりだけど....。」

 

 ヒナは普通ならば信頼できないはずの大人たちの一人である、先生のことを信頼している。それに対してフォードたちはある程度、信頼されていたが今は違う。

 

 いくら過去に共闘したことがあったとしても彼らの部隊の特性、そしてトリニティにいるという事実があることから、彼女の目線から言えば様々な疑念が浮かび上がるため信頼できないのだ。

 

 「まあいい。...ところでこっちから一つ聞きたいことがあるのだが、エデン条約についてどう思っている?」

 

 フォードが話題をエデン条約について転換すると、彼女は困惑した表情を見せる。

 

 「俺たちはこの条約と全く関係のない任務でトリニティに派遣された。だが三流の中古車のセールスマンの押し売りのような形で、俺たちは面倒ごとに巻き込まれた。その原因がある意味、エデン条約だよ。」

 

 「あなた達はどこにいっても大変なのね....。」

 

 ヒナは他人事のような反応を見せるが、次の言葉で一変した。

 

 「俺たち?いや、先生もだ。俺たちは''トリニティの裏切り者''を探す羽目になったんだ。」

 

 「....先生も!?....それに私にこんな大事そうなこと話していいの?」

 

 「どうして、私のことも知っているの?」

 

 先生はなぜそのことについて知っているか尋ねてきたが、それは後にした。

 

 「君が俺たちのことをどう思っているかは分からないが、俺たちは君を信頼しているつもりだ。なにせ、戦友なのだから────。」

 

 戦友であるがゆえに信頼していると伝えられた彼女は、少し思案する顔を見せたのちに。

 

 「....。あなたらしい、兵士らしい考えね、あの時から変わらない....。」

 

 「大尉の信条であり、自分たち兵士の信条でもありますからね。戦場で出来た絆は深いのですよ。」

 

 ピアーズがどうして自分たちがヒナのことを信頼しているのか、したり顔で伝える。

 

 「その通りだ、戦場で結びついた友情は深いんだ。さて、エデン条約について話して欲しいのだが...。」

 

 フォードがそう説得すると彼女はエデン条約についての考えを述べ始める。

 

 「エデン条約が軍事同盟という見方もあるけど、私は平和条約だと考えている。条約によって生み出されるエデン条約機構(ETO)...あれを武力集団と捉えたところで、誰かが単独で統制することは出来ない。」

 

 「なるほど...。いくつかの権力が互いに抑制し、均衡を保とうとするから単独で統制出来ないというわけか?」

 

 「それもそうだけど....権力を持つ全員が協力する事態となれば少しは変わるけどね。でも、最初からそんなことをするならこの条約を締結する意義もないし....それにマコトは他人と協力できない質だし。」

 

 「マコトですか....万魔殿の方でしたね。いろいろと面倒だった印象しかありませんけど。」

 

 マコトはゲヘナ学園のトップであり、彼らも一度は出会ったことがあった。ピアーズが言うように面倒な存在であると言われている原因は、彼女による勘違いや思い込みにうんざりさせられたことから来ている。

 

 「ははっ、そうだったな.....。ところで、マコトはこの条約に賛同しているのか?」

 

 フォードは苦笑しながら尋ねる。

 

 「....賛同したのは私だったから、彼女は何も考えてないんじゃないかしら。私はこの仕事が色々と面倒だし、引退するのもいいのかなって。」

 

 「引退?冗談だろ?」

 

 「本当よ。ETOが出来たら今よりも遥かにゲヘナの秩序はマシになるはず。そうなれば私が風紀委員長である必要もないから。」

 

 「でも、ここに一人悲しむ奴がいるぜ?」

 

 フォードは先生を見つめる。先生はやや暗い表情をしている。彼女が風紀委員長をやめてしまうということに、物寂しさを感じているのだろう。

 

 「....。」

 

 ヒナはそんな風な表情をした先生を見て、何とも言えない雰囲気が漂ったところでセナから声が掛かる。

 

 「風紀委員長、まだですか?」

 

 「...ええ、今行く。じゃあお疲れ様、先生たち。また...。」

 

 彼女はそう告げると助手席の方へと歩を進めた。ドアに手を伸ばし、あとは開いて乗るだけとなったとき彼女はこちら側に振り向いた。

 

 「....補習授業部のことは先生いや、あなた達大人で守るのよね?」

 

 唐突にそのようなことを聞かれ、フォードは不思議に思ったが先生が答える。

 

 「うん。」

 

 「...じゃあ、またね。」

 

 彼女はそう言い残すと、助手席の扉を開けて乗り込む。そして閉めると、彼女たちと負傷者、人質を乗せた救急車は走り去っていった。その様子を見た、彼らはというと。

 

 「じゃあ、俺たちも戻るとするか...。」

 

 「ビールは...?」

 

 「またいつかだ。この任務が終わった時でいいな?先生も奢ってやるからな。」

 

 ピアーズは少々、不満そうな顔を見せながら大人三人組は合宿所への帰路に着くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

<同日23:40>

 氷室セナ 救急医学部 部長

 緊急車両11号・車内

 

 

 

 

 

 「はあ、まさかあそこで先生だけではなくフォード大尉まで居たなんて。」

 

 私が運転する隣でヒナ委員長はため息を吐きながら、そうおっしゃいました。横目で見ると、委員長は走行する車内から見える夜景を眺めて、物思いに耽っているようでした。

 

 「...結局あの迷彩柄の二人はどういう方々でしたか?」

 

 私はスーツ姿の大人の方は先生であると先ほど知ることが出来ましたが、あの方々はどのような人物であるかよく分からないため尋ねました。

 

 「本物の兵士よ。それに特殊部隊に所属するエリートたち。」

 

 「特殊部隊...ですか。」

 

 特殊部隊という言葉は私も聞いたことがあります。SRT特殊学園にいる生徒は特殊部隊であり、精鋭の集団であること。そして最新鋭の銃器が集まっているとも聞いたことがありましたから。

 

 「彼らとはいつ出会いましたか?」

 

 私はフォードと名乗る大人が「半年以上前」云々言ってたのと、私自身が興味があったので尋ねた次第です。

 

 「去年の冬だったかしら.....。まだ先生とも出会ったいない頃ね。」

 

 「どういう関わりだったのですか?」

 

 私はさらに聞き出そうとします。

 

 「彼は戦友とか言ってたけど、本当に一緒に戦ったことがあるのは事実。最初は突然現れた上、正体の分からない大人で信用することもなかった。」

 

 委員長は淡々と語ります。

 

 「....だけどある日のこと。私含む風紀委員会が不良たちの罠にハマってね、圧倒されたことがあったのよ。その時、彼率いる部隊は私たちを助けようとしてくれた以来、信頼するようになったわ。」

 

 「なるほど....そういうことがありましたか。」

 

 私はヒナ委員長の話を聞いて、彼らについて少しでも知ることができて満足だったので、そう返しました。

 

 「ただ今となっては、あまり信用できないわ。」

 

 「.....。先生は信用できるのですか?」

 

 「信用できるわ。」

 

 即答。委員長は彼ら二人は無理でも、先生なら信用できるようです。

 

 「でも....。」

 

 「....?」

 

 「....彼らから信用されているから、私も信用できるようになれたらいいと思う。」

 

 「....信用できる関係になれるといいですね。」

 

 私はヒナ委員長に当たり障りのない返答をした後から、私たちは言葉を交わすことはないままゲヘナ学園に到着したのでした。

 

 

 

 

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