Blue Archive:Task Force   作:タクティカルおじさん

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2:プロローグ/シャーレ奪還作戦(中)

 

 

 

 

 

<20██年春/9:00>

 アレックス 第一武装偵察隊・第三小隊レッド分隊 中尉

 D.U.外郭地区・シャーレの部室から3km地点

 

 

 

 

 

 

 

  ────「こちらレッド1-1、作戦地域にていつでも展開可能。どうぞ。」

 

 「レッド1-1、こちらブラボー2。了解、増援の部隊は一時間以内に到着する予定だ。終わり。」

 

 第一武装偵察隊。通称『フォースリーコン』と呼ばれる部隊に所属するアレックス中尉は、無線で司令部とのやり取りを行った。

 

 彼らはキヴォトスという地域において、彼らのような屈強な海兵隊が出動することになったのは、今回のシャーレ奪還作戦が史上初であった。

 

 今回の作戦の目的はもちろんシャーレの奪還。

 

 アレックスたちは彼らの根城であるウトナピシュティム空軍基地から3台のM-ATVに乗車し、こうしてシャーレから3kmまでの地点まで到達したのだった。

 

 アレックスが率いるレッド分隊は12人の隊員で構成されており、アレックスは分隊長としての役割を担っていた。そんな彼は、M-ATVで構成される車列の第一号車の助手席から外の様子を警戒していたところだった。

 

 流れゆく高層ビルに囲まれながら、タンカラーの塗装が施された車両が道路を走行している様子はとても目立つ。敵味方問わずにだ。

 

 不意に、どこからか飛翔してきた7.62ミリ弾は一号車の運転席のフロントガラスに命中した。金属音とは違う独特な鈍い音が立つと同時に、フロントガラスに蜘蛛の巣状のひびが入る。

 

 「うぉっ!?」

 

 そのような心臓の悪い出来事に運転していた隊員が驚きの声を上げる。そして、車内は緊迫の空気に包まれる。

 

 幸いにもM-ATVに採用されている防弾製のフロントガラスは、運転手である彼の命を救ったと言ってもいいだろう。しかし、これは攻撃を受けたことには変わりはない。

 

 「ウェストン、撃ち返せ!!」

 

 アレックスが大声でウェストンに向けて指示を出した。ウェストン伍長はアレックスと同じ車両に同乗しており、ブローニングM2重機関銃の銃座を担当する隊員であった。

 

 M-ATVに取り付けられ装甲化された銃塔────OGPKは、銃声が聞こえた方へと旋回する。

 

 「どこにいるんだ!?」

 

 ウェストンが捉えたのは摩天楼と言っても過言ではない高層ビル群とその景色であり、様々な一般車や茂みがある。射撃を加えてきたときに発生する銃口炎が手掛かりであるが、それが見えない。

 

 銃座を担当する彼は射撃を加えようにも、撃つべき場所がないのだ。

 

 「もう隠れられたんじゃ──────」

 

 やや緊張しながらも、彼は安全になったのだろうと思った瞬間から出たこの言葉は打ち砕かれることとなる。彼がそう言い終える前に、遠くの一般車の物陰からいくつもの銃口炎が見えたのだ。

 

 そして、それと同時に至る所から銃弾の雨が防盾に襲い掛かった。

 

 「っ!?」

 

 シャーレ周辺にいた不良たちの群衆は、道路上にある遮蔽物などに潜伏していたのだ。まるで格好の獲物を待ち構える野生の獣のように、攻撃を行う機会を伺っていたのだった。

 

 「クソっ!!撃たれている!!!撃ち返せ!!!!」

 

 アレックスが、車両隊と通信を行うことが出来る無線に向かって怒鳴りつけたところで、M-ATV三台の銃座から赤色の曳光弾が飛び交った。

 

 ブローニングM2の銃声は腹部に響くような重低音であり、彼らに射撃を加える軽い銃声はあっけないほど弱々しく感じた。しかし、その数は多く銃座だけでは対処しきれないのが分かりきっている。

 

 そのうち銃塔に向かって射撃が集中すれば、釘付けになってしまい射撃が困難となる。そうなってしまう前に、アレックスは次の行動を移すことを決めた。

 

 「戦闘下車!!」

 

 その声が聞こえると各分隊員は、車両から下車しそのままM-ATVか道路上にある使えそうな遮蔽物を盾として、反撃を開始した。もちろんアレックスも下車し、戦闘に参加する。

 

 アレックスはM4A1のセレクターをセーフティーからセミオートに切り替えると、次はピカティニーレール上に取り付けられたACOGと呼ばれる光学照準器で、不良たちをレティクルに定めて引き金を絞る。

 

 肩にはそれなりに強い衝撃が叩きつけられるが、正確に狙ったうえで射撃を加えていった。そうやって彼らは射撃を加えていくと、流石に正規軍の練度に劣る彼女たちはある程度被害が出始めたところで後退し始めた。

 

 「う、うわぁぁぁっ!?」

 

 「に、逃げろ────ー!!」

 

 銃撃から逃れた彼女たちは倒れてしまった仲間たちのことを気にも留めずに、走り去っていく。しかし、このまま逃してしまえば再びゲリラ攻撃を受ける可能性は捨てきれない。

 

 彼らはそのようなことを分かっていたので、分隊内の擲弾兵であるコプスはM203のリーフサイトを起こし、安全装置を解除する。

 

 M203は40mm×46のグレネード弾を発射することが可能であり、コプスはいくつかの発煙弾のほか数十発の21世紀生まれの高性能炸薬弾を、腰のベルトに携帯していた。

 

 発射までの準備を整えた彼はリーフサイト越しで彼女たちに狙いを付けると、M203の引き金を絞った。

 

 '' ポンッ ''

 

ブローニングM2が奏でる重低音や、小銃の銃声よりもとても軽い音が聞こえたのち、逃げようとする彼女たちの足元の近くで爆発が生じた。

 

 「ぐあああっっっ!!!」

 

 ビル群にうるさいほど響く断末魔が聞こえると、爆発に巻き込まれてしまった彼女たちは道路に倒れこんだ。

 

 「ナイスショットだ!!撃ち方やめ!!!」

 

 アレックスはACOG越しに敵がいないことを確認すると、そう伝えてセレクターを右親指でセミオートからセーフティに戻す。これでたった今、一つの戦闘を終えたのだ。

 

 アレックスたちは今まで、キヴォトスとは違う地域に派遣された経験もあり、その際に幾度も戦闘を経験したことがある。しかし、今回の戦闘はあっけなく終わったように感じた。

 

 敵である不良の彼女たちは、先に奇襲を仕掛けてきたのにもかかわらずこちら側が反撃を開始すると、あっという間に瓦解した。そしてあちらの数はたった12人の正規軍よりも、10人ほど多かったというのも加えて。

 

 そのような現状から、彼は増援の部隊が来るよりも先に自分たちが作戦目標を達成してしまうかもしれない──────と、考えつつも次の指示を出す。

 

 「分隊はこのまま前進、作戦目標を達成するぞ!!!」

 

 アレックス率いるレッド分隊は、さらにシャーレに向けて歩を進めていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<同日/9:17>

 D.U.外郭地区・シャーレの部室から2km地点

 

 

 

 

 

 

 

 「そ、側面から敵が展開してきています!!!」

 

 「スズミが閃光弾を投げて、ユウカたちをカバー。その間にちょっと後退しよう!危険すぎる!!」

 

 「「「はい!!」」」

 

 シャーレから2kmほど離れた地点では、銃撃戦が発生していた。不良たちと戦っているのは先生が指揮する生徒たちであった。

 

 ──────「閃光弾投擲します!!!」

 

 透き通るようなストレートの白髪が特徴的であり、『セーフティー』と名付けられたSIG MCXを愛銃とするスズミは閃光弾の安全ピンを抜き、勢いよく指示された方向へと投げた。

 

 すると、心臓に悪くしてしまうほどの轟音と閃光が発生しては近くにいた不良たちを、怯ませる。そうして怯ませた隙に、彼女はフルオートで正確に撃ち抜いていく。

 

 「ありがとう、このまま下がるわ!!」

 

 ユウカはスズミに向けてそう伝えると、ハスミと共に後退していく。その後退する間も、彼女たちは決して背を向けることなく懸命に射撃を加え続ける。

 

 不良たちの数はユウカたちよりも、かなり多いため様々な方向から戦力を展開してくる。いつもの突発的な攻撃を行うことがある不良たちの性分には、合わない戦法であった。

 

 そうして、数の有利を活かしてあらゆる方向から積極的な攻撃を仕掛けてくるため、彼女たちは防戦を強いられる一方でもあった。

 

 「....あれは?」

 

 ふとユウカはある''光''が遠くのビル窓からピカピカと輝いているのが見えた。それが狙撃銃の照準器による反射光であるとは彼女は気付かずに。

 

 しばらくその光を見つめていたところ、光が突然消えたのかと思えば体に激痛が走った。

 

 「いった~~~!!!」

 

 ユウカは悲鳴を上げていると、遅れて発砲音が耳に入る。その一部始終を見ていたハスミは反撃を行う。彼女は愛銃である『インペイルメント』ことM1917エンフィールドを構える。

 

 「ユウカさん、念のために下がってチナツさんに診てもらってください。私がなんとかします。」

 

 彼女はそう告げた。

 

 スコープを付けていないが、彼女は再び反射光が出るのを伺う。5秒ほど、待っていたところ遂に反射光を捉えることが出来た。彼女は銃がブレないように息を止める。そして、引き金を絞った。

 

 一発の銃声が響くと、遠くに輝く忌々しいピカピカは消える。それからもう二度と、その反射光は目に映ることは無かった。彼女は狙撃手を倒したのだ。

 

 「....今回の不良たちは何かが違いますね。何かがおかしい...。」

 

 ハスミは僅かに感じた異変からそのように呟いて、ボルトをコッキングする。すると金色の空薬莢が排出されて、アルファルトに落ちると軽快な金属音を奏でる。

 

 「...敵、正面10。左右側面からどちらも15...肉薄してきます。」

 

 「...まずいね。」

 

 指揮を執り行う先生はスズミからそのような報告を受けると、顔を曇らせた。ユウカは負傷してしまいまだチナツに診てもらっている上、スズミとハスミの二人だけでは三方向から展開してくる不良たちに対応することは、困難である。

 

 あまりにも数が多すぎる。一体どうすればいいのか──────と、指揮を執り行う大人は苦悩する。

 

 そんな風に考えつつも、敵は彼女たちに襲い掛かった。もちろん、ハスミやスズミたちはそれに反撃を行っていく。

 

 「そのまま戦線を維持して...。」

 

 先生はそう通信した。

 

 たとえ少数精鋭だとしても、数で押されてしまったら蹂躙されるのみ。戦場で指揮する責任というものを彼は初めて味わった。そんな風に胃が胃酸で溶けてしまいそうなほどの、痛みを味わっているところだった。

 

 左右に展開するそれぞれ15人の不良のうち、左側面の道路上にいる3人ほどの不良の足元で爆発が生じた。もちろん、爆発に巻き込まれた彼女たちはあっけなく地面に倒れこむ。

 

 一体誰なのか────?

 

 そう考える間もなく、次から次へと不良たちは倒れていった。時折、赤色の光弾が彼女たちに向かっているのも確認できたうえ、射撃音が遠くから聞こえる。

 

 ──────「こちらアメリカ海兵隊....現地では''キヴォトス派遣隊''所属のアレックス中尉だ。この無線を使っている指揮官は誰だ?すぐに応答せよ。どうぞ。」

 

 不意に無線越しにそのような声が聞こえた。この無線通りであれば、おそらく相手は軍人だろう。一体、なぜ彼らがここにいるのかに戸惑いつつも応答する。

 

 「えーと、こちら連邦捜査部シャーレの先生です...。どうぞ...?」

 

 「あーつまり非戦闘員だな?まあいい....そちらの左から攻撃しているのは俺たちだ。誤射に注意。」

 

 とりあえず誤射はしないように伝えられた先生は、生徒に向かってそのことを再び告げた。そうしている間に、左側面から展開してきた敵は全滅してしまった。

 

 「こちらは接近中。三台の装甲車がそちらのちょうど左側に見えるのが俺たちだ、注意。」

 

 そう伝えられると段々と、重低音が響き渡る独特な銃声が聞こえてくるのが分かる。

 

 「先生?」

 

 チナツにある程度治療を施してもらったユウカは、一体何が起きているのか理解出来ていないようであった。そのため彼女は、先生に対し尋ねた。

 

 「どうやら味方みたい....キヴォトス派遣隊って言われている人たちのことらしいけど...。」

 

 「キヴォトス派遣隊ですか...例の異世界の軍隊のことですね。」

 

 先生は無線越しに初めて聞いた上で知るはずもない言葉について、首を傾げていたところハスミが答えた。そして彼女は続けて。

 

 「噂ですが...彼らはそれなりに強いということは私は耳にしております...なので戦力としては...。」

 

 「十分ということだね。」──────・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

<同時刻>

 

 

 

 

 

 

 

 「いいぞ!撃ちまくれ!!!」

 

 車内に取り付けられた無線機で、指示を出しているのは分隊長のアレックスであった。もちろん彼はその指示を出した後には、助手席のドアを開いたうえでさらに、M4A1による射撃をM-ATVが進む方向に合わせて加えていた。

 

 しかし、如何せん敵である不良たちの数は密集具合からかなり多い。そのため、そこに一発の40ミリグレネード弾が襲い掛かる。M203から発射された40ミリ高性能炸薬弾は、硬質なアスファルトに命中すると信管が作動し爆発。

 

 近くにいた不良たちを瞬間的に無力化することに成功する。

 

 「な、なんだあいつらっ!?見たことのない装甲車だぞ!?それに銃弾が...。」

 

 遠くに位置する不良少女から発せられる感嘆と畏怖の言葉は、さらに他の不良たちを恐怖へと支配していった。なぜなら、M-ATVが採用している装甲板を全く貫通することが無かったからだ。

 

 M-ATVよりも()()()()に、採用されていたのは一般的にはハンヴィーという名で知られる装甲車だ。ハンヴィーは確かに優秀であった。

 

 しかし、彼らは戦争を重ねるにつれてIEDやら地雷といった待ち伏せ攻撃に対する脆弱性が露呈してきたことで、その弱点を克服した上さらなる装甲強化がなされた車両であるMRAP系統の車両を、採用することに至ったのはここ数十年の話だ。

 

 もし破壊するのであれば、流石に戦車相手とまでは言わないが一般的に言われる対戦車火器が必要だろう。そのため、彼女たちは。

 

 「ク、クルセイダーはッ!?」

 

 「もうすぐだ!!!あれなら...。」

 

 そう、彼女たちはM-ATVという装甲車に対してはあまりにも豆鉄砲すぎる攻撃であり、効果が無いと判断したため、一台の不法に流通したものであるクルセイダーを要請した。

 

 もちろんアレックスたちはその戦車を視界に捉えると、すぐさま対応する。

 

 「戦車一両を北の200メートルに確認。HAT(重対戦車兵)を寄越せ!!!」

 

 HATこと重対戦車兵はすぐにその声に反応すると、車両の荷台からM3 MAAWSことカールグスタフを抱えて、装甲目標である戦車の貫通に特化したうえで破壊が可能な弾薬筒を取っていく。

 

 基本、カールグスタフの発射は二人掛かりで取り行われる。そのため、一人は発射機であるカールグスタフを構えて照準を定めると、もう一人の隊員が速やかに対戦車榴弾であるHEAT 551を装填する。

 

 そして、装填を終えて射手の背中をボディーアーマー越しに左手で支え、後ろには誰も居ないということを確認し終えたところで。

 

 ──────「バックブラストエリア、クリア!!」

 

 と装填手が叫んだところ、すぐさま引き金が絞られた。カールグスタフは後方側に圧倒的な発射煙を発生させると共に、対戦車榴弾はクルセイダーに向かって飛翔して、正面装甲を貫く。

 

 命中した弾頭は高圧のメタルジェットにより内部の装甲やらをズタズタに切り裂き、車内に達したところで爆発。爆圧はあっという間に砲塔まで達すると、クルセイダーの砲塔を炎と共にまるごと吹き飛ばした。

 

 クルセイダーは一瞬にしてスクラップとなってしまったのだった。

 

 「ク、クルセイダーがッ!?」

 

 クルセイダーの正面装甲は50ミリ程度であるのに対し、発射された対戦車榴弾であるHEAT 551は400mmの装甲貫徹力を有する。そのため、クルセイダーの装甲は紙一枚であることに等しいのであった。

 

 そうして、不良たちの唯一のまともな対抗手段であるクルセイダーは一瞬にして失われてしまったため、これ以上有効打となるような手を打つのは難しい。

 

 なぜなら、残るのはただの歩兵だからだ。

 

 「さぁ、掃討の時間と行こうか。」

 

 アレックスはにやりと不敵な笑みを浮かべながら、無線でそう伝えるのであった。

 

 

 

 





M4にACOGという米軍定番の装備は意外と好きだったりします。なお、アンダーバレルにM203が取り付けられているともっと好き。
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