Blue Archive:Task Force   作:タクティカルおじさん

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25:エデン条約編:Down

 

 

 

 

 

<20██年秋15:56>

 フォード 特殊戦開発グループ 大尉

 大破した車両付近

 

 

 

 

 

 

 

 「ヒナ!ビルへ戻るぞ!!」

 

 フォードは甲高い銃声が空に向かって響く中、大きな声で叫ぶ。彼らは今もなお、激しい銃撃戦のなか戦っていた。

 

 「...わかった!」

 

 呼びかけられたヒナは精一杯の大声で答えると同時に、彼と共に走り出す。彼女は怪我の痛みからか、足元が時々おぼつかない様子であった。

 

 その間、フォードは周囲から彼女に向けて銃を放つ異形たちに射撃を加えながら走る。数メートル走っては狙い、また走ってから再び狙う。

 

 無数に押し寄せる()()()()()()異形(ユスティナ信徒)どもは恐れ知らずの不死身の軍隊だ。だが、ヒナのMG42による射撃はそんな多くの異形たちを薙ぎ倒すことができる貴重な火力の一つであった。

 

 しかし、今彼女は射撃を加えることが出来ない状態だ。だからこそ、無事にビルまで到達できるように援護射撃をするのだ。

 

 たった30m。距離は短いはずだが、敵の射撃に対して応じようとしているからかビルに到達するまでの時間や距離が再び長く感じた。

 

 敵の射撃は凄まじかった。時々、狙いが定まらなかった銃弾が体の近くを通り過ぎると同時に発生する衝撃波が肌を伝わる。

 

 酷く不快だ。

 

 「こちらノーマッド6-1、援護する!!」

 

 ヘッドセット越しにレイの声が聞こえると同時に、鋼鉄の羽音が聞こえてきた。そうすると空から大量の赤色の曳光弾が放たれて、集団で行動していた異形たちに命中して消え去っていく。

 

 「ガンナーいいぞ。グッドキル。」

 

 ウォルコットがガンナーを褒めたたえる声が聞こえたと同時に、彼らはビルに辿り着いた。

 

 「こちらフォード。最高だったぜ。」

 

 彼はヘッドセット越しに射撃のお礼をした。

 

 「ああ、どうも。これで全員か?集めたのならば、このまま街を脱出するぞ。」

 

 「了解。」

 

 彼らは降下する前にある作戦を立てた。フォードたちが地上に降下したら、すぐにヒナたちと合流。そして、合流が済んだのちノーマッド6-1が車両から離れたところに着陸して彼らを回収するといった手筈だった。

 

 しかし、予想以上の敵の数の多さからそれは断念せざるを得なかった。そうして一見彼らの作戦が失敗したかと思えたが、まだ他の方法(Plan B)がある。

 

 それはノーマッド6-1が空から彼らを援護しつつ、現在の戦闘地域から離脱するといったものだ。そして、上手くいけばヘリに乗り込んで基地へ帰投することができるというものだ。

 

 「ピアーズ、先生の容態は?」

 

 フォードは尋ねる。

 

 「呼吸はしっかりしていますが...出血が多く、1時間以内に病院に送らないと死んでしまいます。」

 

 「セナは?」

 

 「足を骨折している可能性がありますが.....それ以外は無事です。」

 

 「了解。先生を担架で運ぶ準備を。今からこの戦場から脱出するぞ。」

 

 彼はそういうとピアーズと共に準備を進めていく。担架に先生を乗せて運ぶ準備を整え、今すぐにでも脱出が出来るようにする。

 

 そして準備を終えたフォードはヒナの銃創まみれの体を見て。

 

 「ヒナ、傷を見てやるからこっちに。」

 

 「....。」

 

 彼女は何も言わずにフォードの目の前に近付く。彼女は生きているはずだが、表情が険しい。

 

 彼はそれから手当を始めた。今この場では止血程度しか出来ないが、何もしないよりはマシなはずだ。

 

 しばらくヒナの銃創に止血を施していくと彼女は口を開いた。

 

 「以前、同じようなことがあったわね....。でも前はこんな状況じゃ...。」

 

 「この戦いが終わったら何がしたい?ピザパーティーか?」

 

 彼は笑いながら、ヒナの言葉を無視して呟いた。

 

 そして続けて。

 

 「いやピザパーティーよりも、水着パーティーか?おっとそれを望んでいるのは先生だ。俺じゃないぜ。」

 

 「....どうして話を逸らすの?」

 

 ヒナはフォードに包帯を巻かれながら尋ねる。

 

 「戦場で暗いことは言うべきじゃない。状況はきっと良くなることを信じろ。」

 

 「....。」

 

 「これから俺たちは先生を連れて、この戦場から脱出する。そのためにヒナ。君の力が必要だ、援護射撃を頼みたい。」

 

 「....わかったわ。」

 

 彼女は小さな声でそう答えると同時に止血が終わった。それと同時にフォードのメディカルポーチに入っていた、包帯はもう無くなってしまった。

 

 「ピアーズ!俺に包帯を分けてくれないか?被弾して、そのまま失血死は御免だ。」

 

 彼はピアーズに向かってそう告げると、彼はパウチに包まれた包帯を一枚手に出す。

 

 「自分もそんなに残っていませんが....どうぞ。」

 

 「ありがとう。」

 

 彼は礼を言ってピアーズから包帯を受け取ると、メディカルポーチに収納した。

 

 そして。

 

 「準備は出来たな?....あまり負傷者を動かしたくないが.....セナ。先生の担架を持てるか?」

 

 負傷者であるにも関わらず、彼はどうしてセナに先生の運ぶ役目を担ってもらおうとしたのか。それにはフォードなりの考えがあった。

 

 少なくとも応戦が出来るのはこの場には3人、ヒナとフォードたちだ。そして、フォードとピアーズがもし担架を運ぶとしたら、応戦が出来るのは一人となってしまい、敵に対しての火力が不足しているように思えた。

 

 そのため、苦肉の策だがセナに運ばせることで少しでも敵に対抗できるようにしようと、彼は考えたのであった。

 

 「やるだけやってみます...。」

 

 セナはそう言うと、ピアーズと共に先生の担架を持ち上げる準備をする。

 

 「俺とヒナの2人で、先生を運んでいるピアーズとセナを援護。とにかく突っ走れ。」

 

 フォードはそう言うとビルの自動ドアの前に立つ。センサーが反応してドアが開くと、同時にセナたちは先生の担架を持ち上げた。

 

 そして、ついに彼らの作戦が始まるのであった。

 

 「行け行け!!!」

 

 フォードはやや怒鳴りながら、運ぶ2人を援護し進んでいく。時々、ビルから狙撃手や進む道に敵が居ないことを確認する。

 

 ヒナも同様に一緒に警戒しながら進んでいった。すると彼女は敵が居たことを発見したのか、射撃を加え始めた。

 

 MG42の銃声が空に向かって響くと同時に、ありとあらゆる場所から銃弾が飛び込んできた。凄まじい射撃だ。

 

 「足を止めるな!!撃たれるぞ!!」

 

 ピアーズたちに向かって注意を飛ばしながら、彼はMk.18の引き金を絞る。放たれた5.56mm弾はしっかりとマグニファイアの照準通りに飛翔し、正確に異形たちの戦力を削り取っていく。

 

 対してヒナはフォードとは全く違った。

 

 フォードはセミオートによる一発、一発の精密な射撃を加えていたが彼女はそれと相反するフルオートによる射撃だった。

 

 ヒナが持つMG42の火力は凄まじく、素早いスピードで敵を薙ぎ倒していった。デストロイヤーの名は伊達ではないのだ。

 

 彼女に狙われてしまった不運な異形たちは3秒以内にはもうそこから消え去ってしまう。ヒナの圧倒的な火力は最もこの戦場において威力を発揮してた。

 

 そして、それに対抗するかのように空からも射撃が加わった。

 

 ノーマッド6-1に取り付けられた二基のM134こと、ミニガンは5発に1発の割合で装填されている赤色の曳光弾が飛び交った。

 

 M134の発射速度は毎分2000発。フォードのMk.18をフルオートで撃つと毎分700発、約三倍の差。そんな数の暴力を体現するミニガンが二基取り付けられているため、敵をあっという間に消し去っていく。

 

 そんな風に火力で優位に立つことができた彼らはなんとか、無数の異形たちを排除することに成功していた。

 

 「このまま直進せずに右に曲がれ。真っ直ぐ行くとゲヘナとトリニティの戦いに巻き込まれるぞ。」

 

 レイは上空から地上の様子を眺めることができたため、そのように報告した。

 

 ヘッドセット越しにその通信が流れていたピアーズはレイの言う通り、右に曲がった。そして、後続で援護射撃を加えていたヒナとフォードも曲がる。

 

 そこから数歩進んだ時だった。

 

 乾いた銃声がどこからか聞こえてくると同時に、フォードの目の間を走っていたヒナに当たるのがわかった。

 

 「がぁっ!?」

 

 彼女のうめき声が聞こえるも、ひたすらに撃ち込まれていた。

 

 今までの銃声とは違う。異形たちが持つドラグノフの独特な重低音とも、ヒナのMG42の甲高い銃声とは全くもって違う。そして、どこかで聞き馴染みのある銃声だった。

 

 「クソ!!隠れろ!!」

 

 フォードは道端にあった遮蔽物に隠れて、ヒナに呼び掛ける。だが、遅かった。とっくに彼女は敵の射撃の格好の的となっており、動ける様子ではなかった。

 

 「うっ!!!」

 

 ヒナは被弾するたびに苦しい喘ぎ声を漏らす。フォードはこのコンクリートジャングルから射撃を加えてくる忌々しい敵たちを見つけ出そうとするが、彼の隠れている遮蔽物に銃弾が当たる音がした。

 

 それはたった一発ではなく、数発も連続して聞こえた。そういったさなか、フォードはなんとか撃ち返し始める。

 

 マグニファイア越しに何体もの異形たちがいるのはもちろんのこと、ヘリで見たことがあるヒナを執拗なまでに追い回していたあの四人組の生徒たちもいた。しかも、彼女たちは銃をこちらに向けて射撃していた。

 

 射撃を加えながら、少しづつ周囲の状況が明らかになった。ヒナは車道に放置されたままのヴァルキューレの刻印がなされた、装甲車の近くに倒れこんでいた。

 

 動く様子はなく、彼女はうつ伏せの状態であった。そして、恐ろしいことにヘイローに()()か何かの傷のようなものが入ってるのがわかった。

 

 先に進んでいたピアーズたちはどうなったんだ?──────と、彼は考え始めるがそんなことはすぐに思考から消し飛んでしまった。

 

 敵の攻撃が激しすぎたのだ。彼が隠れている遮蔽物には何発も銃弾が当たる音がしていたが、さらに追い打ちをかけるかのように。

 

 '' バリバリバリバリバリッ!!! ''

 

 「っ!?」

 

 彼が隠れている遮蔽物から数メートル先の右側にスティンガーが命中した。発射した本人はミサキである。

 

 そして、そのような音が発せられたのと同時に凄まじい爆風でフォードの体は浮き上がり、Mk.18もろとも反対側に倒れた。

 

 「今だ、あの大人を狙え!!!」

 

 遠くからその声が聞こえると、何が起こっているのかを察することが出来た。たった今、あの生徒たちが自分のことを殺そうしているのだ。

 

 そしてすぐに、狙われたままこの場にいるのは危険だとフォードは判断し、どこか隠れることができそうな場所へと移動をし始めた。一歩ずつ後退していくのだが彼はMk.18の弾を出来る限り、銃口炎が輝くほうに向かって撃ちこむ。

 

 しかし効果があまりないのか、何回も足元に銃弾が掠めた。

 

 「ヒナ!!!」

 

 彼は叫んで返事が返ってくるのか確認するが、返ってくることはなかった。

 

 彼女は敵の射撃に圧倒されて、返事をするほどの余裕がないのか。もしくは....死んでしまったのか────と、彼は不意に考えた。

 

 そうやってあともう3メートルほどで近くのビルの扉に到達するところ、遠くから反射光が見えた。何者かの狙撃用のスコープがフォードを狙っているのだ。

 

 彼はまずいと咄嗟に感じて、ビルの支柱に隠れた。

 

 あの反射光を出した張本人はヒヨリであった。ヒヨリが使用しているスナイパーライフルの口径は20mmであり、フォードが着用しているセラミック製の防弾プレートをいとも簡単に貫通し、胴体を文字通り()()()()()にさせてしまうことが出来るほどの凶悪な威力を持つ。

 

 そんな彼女の銃から一発の銃弾が放たれると、彼が隠れている支柱に命中した。貫通はしななかったものの、もたれかかっていた背中にドスンと衝撃が伝わった。

 

 そして、狙撃を凌いだ彼は隠れている間に接近してくる敵を排除しようと柱から顔を出した瞬間だった。

 

 どこからかの(サオリ)がダブルタップで放った2発の5.56mm弾。

 

 それは彼のFASTヘルメットに命中し────────

 

 

 

 

 

 一人の兵士は突如として、意識が途切れたのであった。

 

 

 

 






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