Blue Archive:Task Force 作:タクティカルおじさん
<20██年秋/16:17>
ウトナピシュティム空軍基地・通信指令室
「現在、暴動鎮圧にMPを120人投入しデモ隊を鎮圧中です。対して、デモ隊は1000人以上の規模でありデモを解散させるのにはそれなりに時間がかかると予想されます。」
「予定は?」
「最低でも一時間以上、長ければ5時間もかかる見込みです。」
「そうか....。」
ミリー将軍は部下の隊員からの報告を受け、落胆する声を漏らした。しかし、隊員は続けて。
「ビナー討伐作戦に参加していた部隊のうち、AC-130及びA-10、EP-3は1時間以内に到着します。陸路の部隊はもう少し時間がかかりますが....。」
「構わん。帰還した航空機は再補給させたのちに、すぐに再出撃させろ。それとF16は?」
「既に無誘導弾を出来るだけ投下させましたが....やはり、効果はほぼ見られませんでした。現在、二機は帰投している最中です。」
「...了解。」
彼は閉口した。地上に降下したあの勇敢な二名のDEVGRU隊員たちはどうなっているのだろうか。きっと敵の数は多く、地上は蹂躙されているに違いないのだ。
彼にはDEVGRUの隊員を指揮する権限はない。しかし、最高指揮官としてあの二人を降下させた。これはミリーの責任である。
あまりにも無謀だった。今は彼らがどうなっているのかを知る手筈はない。なぜなら────
──────「先ほどから通信がジャミングされているせいで、ノーマッド6-1と通信が不可能です。それに無人機の映像も....。」
「わかっている。きっと敵の仕業だろう。」
そう、敵のジャミングにより彼らの無線及び映像が途絶えた。そのため、地上では一体何が起きているのかが分からない。
ミリーはこれは敵によるものだと確信している。敵は侮れない。
一か月以上も前から計画的に準備を進められたであろう。デマによる基地に対する抗議活動を引き起こすことで、QRFの出動の妨害。そして、高度なジャミング攻撃といったことは並大抵の組織では出来ない。そして、古聖堂にミサイルを発射するほどの技術力と襲撃能力。
これらを加味するとキヴォトス派遣隊が戦っているのはそれなりに手強い組織であることが予想される。
「....今から航空機を出しても最悪、
彼はそう悩みつつも、外からは怒号やデモ隊の抗議の声が微かに聞こえていた。
<同日15:56>
バンダーマン 特殊戦開発グループ 大尉
ゲヘナ自治区・
──────バンダーマン大尉はDEVGRUアルファチームを指揮する隊長である。彼らアルファチームが派遣されたのは、ブラボーチームに所属するフォードよりやや遅い時期である。
そして、ここゲヘナ自治区にて秘匿され続けたクランプスで彼らは根城として活動していた。
ブラボーチームはCIAが保有する諜報部隊よりも危険な地域での諜報活動を行うことを主任務として、キヴォトスでは活動していた。対して、アルファチームは違った。
アルファチームはブラボーチームのような後方支援的な役割ではなく、特殊作戦を直接実行する部隊として活動していたのだ。
そのためブラボーチームは市街地での活動を考慮して私服をベースとした装備であったが、アルファチームはマルチカム迷彩が施されたコンバットシャツやパンツをベースとして装備している。
そんな彼が率いるアルファチームは急いで、出撃準備を整えていた。
バンダーマンはサプレッサーや、レーザー装置が取り付けられたHK416を手に取ると同時に、準備を行っている他の隊員に呼び掛ける。
「暗視装置も持っていくように。今回の作戦はそれなりに長い戦いであることも予想されるぞ。」
そう伝えると、各隊員はさっさと装備を整えたのちにヘルメットマウントにGPNVG-18を取り付けていく。これから彼らが参加する救出作戦のための準備である。
<数分前>
「バンダーマン大尉!!テレビにアルファチームの奴らがテレビに映っています!!!」
一人の隊員がそう叫ぶと、呼ばれた彼は何かの冗談か?────などと半信半疑に思いながら、テレビが備え付けられている部屋に向かった。
すると部屋には数名もの隊員らがテレビを囲い込んでは、何やら騒いでいるようであった。
「何をしているんだ一体?また例のポルノ男優をからかっているのか?答えなくていいぞ。きっとお前らは次はどのポルノ男優の髭を枕にしたら、深く眠りにつくことが出来るとかじゃ────」
彼はそうやって愚痴を言いつつ、呆れた顔をしながら尋ねた。すると、部屋に呼びつけた隊員が答えた。
「いえ、違います。本当にアルファチームの奴らが戦っているんです。」
「?」
バンダーマンはそうやって次は怪訝な表情に変えたが、とりあえずテレビの映像を見てみることにした。
映像は報道ヘリか飛行機から中継でもしているのだろうか、遥か上空から地上を映し出しているようだった。そのせいかやや画質が悪いが、何が起こっているのか彼は理解することが出来た。
テレビに目をやると、キヴォトス派遣隊が使用しているであろうMH-60が一瞬映った。そして場面は切り替わるとそこには私服を着こなし、バンダーマンたちの装備と瓜二つの見た目をしているベストやヘルメットを着用していた一人の男がいた。
男は遮蔽物越しにどうやら銃を構えて、射撃を加えていたようだが一瞬画面上に黒い筒状の何かが遮蔽物に向かっているところを目で捉えたとき、男は銃と共に吹き飛んだ。
そして、吹き飛ばされた男はゆっくり後ずさっていた。
「....つまり?」
バンダーマンは目の前で見た映像を確かめるかのように、確認を求めた。
「だから何度も言っているでしょう?あそこに映っているのはきっとアルファチーム隊長、フォード大尉です。」
「マジか。一体どうなってんだ?」
彼はやや驚きつつ、テレビに視線を戻した。
視線を戻すと映し出されているのは先ほどのような地上の様子ではなく、旋回飛行するブラックホークの映像だった。ブラックホークに取り付けられているドアガンのM134は地上に向けて、射撃を加えているようだった。
しかし、飛行するブラックホークの近くで散発的だが何回も爆発が発生していた。なんとか初めの数回はその爆発に巻き込まれることはなかったが、そのうち一発の爆発がコックピット付近で発生した。
「ヘリが墜落します!!」
中継しているアナウンサーはそうやって叫ぶと共に、ヘリはどんどん高度が下がっていく。どの高層ビルよりも高い所に位置していたヘリは、時間が経つごとに機体が回転しながら地上に近付いていった。
そして、もう少しで地面に機体がキスしそうなところだった。しかし、奇跡が起きた。
動力を失いつつ回転していたヘリは幸運なことに、地面とキスをすることはなかった。地上から100mほどぐらいの高さにまで機体は接近したが、なんとか機体を上昇させつつビルにぶつからないように飛行。
そして、そのままカメラが納めている映像外へと行ってしまった。
バンダーマンが目にした先ほどの映像はスリル満点のアクション映画でもなく、パニック物のドラマでもなかった。
市街地で行われる恐ろしい現代戦の一場面に過ぎなかったのだ。
「とにかく、あいつらが戦っているんです。このまま見ているだけでいいのですか?」
一人の隊員はバンダーマンにそうやって声を掛ける。
「....。」
しかし、彼は無言を貫こうとした。
「仲間が死んでしまいます。それに映像に流れていたのはフォード大尉だけじゃありません。ピアーズ中尉、シャーレの先生と生徒たち。どうにかしないと....。」
「言いたいことはわかるが....出撃命令がない以上、無理だ。」
彼らは正規軍であり、命令がないまま部隊を動かすことは禁物である。もし命令がないまま部隊を動かそうというのなら、軍隊はただの統制がない暴力装置に成り下がる。
「じゃあ、どうするっていうのですか?」
「辛抱強く、待て。それだけだ。」
彼がそう伝えたときだった。
「大尉、電話です。」
もう1人の隊員がテレビを囲っている部屋の出入り口に立ち、そう伝えてきた。
「電話?誰だ?」
「ポースティン大佐からです。」
「わかった、今出る。」
彼はそう伝えると、唯一このクランプスにおいて固定電話があるブリーフィングルームに向かった。
ブリーフィングルームに向かうとそこには電話越しにやりとりをしている隊員と、その周辺で話し合う二人。すなわち、三人組が部屋にいた。
そして三人組のうち、電話に対応していない2人はバンダーマンの姿を見るとすぐに。
「聞いていると思いますが、ポースティン大佐からです。」
「ああ。変わってくれ。」
彼は固定電話に近づくと、対応している隊員と入れ替わった。
「こちらバンダーマン大尉です。」
「バンダーマン大尉、テレビの中継は見たか?」
ポースティン大佐。バンダーマンの上司いや、DEVGRUの指揮官に当たる彼が尋ねる。
「はい、もうすでに見ました。」
彼は素っ気なく答える。
「アルファチームの2人が戦っているそうじゃないか?そこでだ。私から君たちの部隊に一つの命令を届けにきた。」
「一体なんでしょうか?」
「──────敵地に孤立した味方及び現地住民の救出作戦をDEVGRU司令官として命じる。以上。」
そう伝えるとすぐさま、電話が切られた。
もちろんその命令を受けたバンダーマンはというと。
「全員ここに集めろ。仲間を迎えに行くぞ。」
仲間は誰1人、取り残さない───────
たとえ死体であったとしても──────
彼らの内に秘められている信念なのである。
<同日16:18>
「う.....うう....。」
市街地にてとある大人の苦しい喘ぎ声が微かに聞こえていた。
男は5.56mm弾を二発ヘルメットに受け、倒れ込んだ兵士であった。
幸運にもヘルメットは二発の凶弾を弾いた。
しかし、ヘルメット越しに伝わる5.56mm弾の衝撃はダイレクトに兵士の脳天に響いた。
男は意識を失い、アスファルトで舗装された地面に倒れた。
視界はぼやけてよく見えない。
頭からキーンという音共に、強烈な痛みが襲った。
その場から彼は動くのは不可能であった。
普通はそのまま倒れ込んだ所を、殺されるはずだ。
しかし、男は殺されなかった。
なぜか。
男にとっては誰か分からないが、ある2人にベストを掴まれて体を引きずられた。
地面と足が擦れる。
それと同時に、ベストの重さと男の体重の重量感に対して嘆く声が耳に聞こえた。
「お.....重い.....です....。」
「いっそのことこれ脱がそうよ〜。」
「いやいや、フブキもちゃんと引っ張ってくださいよ〜。」
「私だってちゃんと引っ張っているけどさあ.....こんなに重いのが悪いのだよ。」
背後から聞こえる2人の少女の声。その2人はしっかりと体を引きずって、ビルの中に男を移動させた。
「何が...?」
男は小声でそう呟くと、2人は反応を見せた。
「あれ?生きているんだ?目の前で倒れたからてっきり死──────」
「フブキ、それは死にかけたこの大人に言わない方がいいですよ。」
「それもそうだね〜。」
やや会話が噛み合っていないかのように思えたが、2人はいつもそんな感じなのである。
「君たちは...?」
引きずられた体をゆっくりと自ら起こし、男は装備を確認しながら尋ねた。
「ほ、本官はヴァルキューレ警察学校の中務キリノと言います!!生活安全局所属です!!」
「私は合歓垣フブキだよ〜。キリノと所属は同じだよ。それで、あなたは?」
男は尋ねられたので、名前を明かした。
────────「キヴォトス派遣隊所属のフォード大尉だ。」
<同日16:20>
フォード 特殊戦開発グループ 大尉
敵地にて孤立中
「なるほど。あの装甲車たちは警備局のもので....君たちはたまたまパトロールしてたら、巻き込まれたんだな?」
「そうですね。いきなり、あのよく分からない破廉恥な格好をした奴らが現れて.....今の状況に。」
なんとか命を助けられたフォードは彼女たちと、ここに至るまでの経緯や自身のことについて少し話し合っていた。
なお、彼女たちがどうやらKYPD所属ということを知った時フォードが過去に所属していたLAPDについて思い出し、親近感が湧いてきたのは余談である。
──────「お久しぶりですね、フォード大尉。」
キリノとフブキ達ではない誰かの声。そして、彼にとってはどこかで聞いたことがある声でもあった。
声がする方にフォードは視線を移すと。
「....確か、ゲヘナの行政官。アコ....だったよな?」
「ええ、そうです。」
そうアコである。彼女は頭に包帯を巻き付けていたが、何よりも特徴的な胸部分の露出度によって誰であるのかというのが、フォードは判別できたのだった。
「ところで風紀委員長は見ませんでしたか?少し心配で──────」
「ヒナは.....このビルの外に取り残されている。」
「え────」
アコはより一層表情を険しくした。彼女にとって最愛...と言うと妙な感覚がするがとにかく、彼女が未だに外に取り残されているのだ。
「今すぐ、助けに────」
もちろんそれを聞いたアコは動揺しつつも、ヒナを助けに行こうとビルの出入り口に役割を果たしている頑丈な扉へと向かおうとした。
扉はまるで防火扉と言っても過言ではない見た目をしており、外の様子を確かめるための小窓が一つだけ取り付けられていた。
そして、彼女はその扉にまで近付くと外の様子を確かめることもなく開けようとした。
これにフォードは。
「おい、馬鹿やめろ。外にはクソッタレな敵どもがいるぞ!!!」
先ほど、彼が体験した出来事から故に汚い口調だが注意した。
そして、フォードは続けて。
「...ヒナのヘイローにはひびみたいな傷が入っていた。今の状況がわかるか?敵は俺たちのことを殺そうとするんだぞ。」
明らかな殺意を持った攻撃。それがどれだけ危険なのか、彼なりに伝えた。
「でも.....。」
「分かっている。あいつは必ず助ける。仲間を見捨てない────それが、俺たち兵士の信念だ。安心しろ。」
フォードは彼なりにだが、アコのことを宥めた。
「そういえば悪いけど.....フォード大尉さん。被弾しているよ。」
「っ!?」
フブキに突然そう伝えられた彼は驚きつつも、体のどこに被弾したのかを確認し始める。
両足、腹部、背中、最後に頭。確認したが、見つからなかった。
そして入れ替わるかのようにキリノが。
「左腕の二の腕ですね....。」
「左腕...?」
フォードは視線を左腕に移す。すると確かに二の腕あたりに、被弾したと分かる小さな傷があった。彼は撃たれても戦闘していたからなのか、気付くことはなかった。
アドレナリンが分泌されて、興奮を引き起こし、自分以外のことだけに集中するようになるからだ。
傷口は、縁が盛り上がっており真ん中かが小さなクレーターみたいに窪んでいた。
被弾した原因はミサキのスティンガーが遮蔽物の近くに、命中した時であった。地面に命中したスティンガーは、弾子を撒き散らしてそのうち彼の左腕に一発だけ命中したのだ。
そして幸運なことに出血はしていなかった。出血しなかったのはおそらく、スティンガーの弾子が熱く、焼灼されたからだ。
フォードは左腕の状況を確かめる。左腕をばたばた動かし、腕を回して血が下から出てことないことを確かめた。すると、彼の懸念は無くなった。貫通銃創ではない。
「本官が包帯を巻いてあげましょうか?」
キリノはそんなことを伝えたので。
「ああ。この包帯があるから使ってくれ。」
と、フォードは言いながらメディカルポーチに入っていたパウチに包まれた最後の包帯。それを彼女に渡した。
「じゃあ巻きますね。」
彼女はパウチを破り、包帯を出すと被弾した傷口に巻き付けた。かなりキツく締め付けられた感覚がした。
「感謝する。」
包帯を巻き付けられると彼は感謝を示した。
そして、準備が整ったかのようにフォードは。
「....ヒナを救うために、
「「もちろん!!」」
ビルの中で唯一、前向きな大声が響き渡った瞬間だった。