Blue Archive:Task Force 作:タクティカルおじさん
<20██年秋/16:47>
フォード 特殊戦開発グループ 大尉
敵地にて孤立中
数多ものアリウス生たちによって包囲され、ハンヴィーに取り残されたフォード達が居た。彼らは完全に釘付けにされてしまい、身動きが取れなくなっていた。
唯一の有効な反撃手段としてハンヴィーに取り付けられたM240は給弾不良を引き起こしてしまったため、もう二度と使えない。
挙句の果てにはハンヴィー自身も、走行が不能な状態にまで追い込まれていたのだった。そんな状況のなかでも、ヒナの容態を観察しているアコを除いてキリノやフブキと共に次の行動を考えていた。
──────「泳ぐのはどう?」
一番最初にそう提案したのはフブキであった。フブキ曰く、この近くに流れている川があるらしくその川はD.U.にあるウトナピシュティム空軍基地の近くにも沿っているらしい。
そこでその川に入り、流れに乗って何十キロメートルも下流すればそのうち着くだろうとのことだった。しかし、この案には重大な欠陥がいくつもあった。
まず川に入ったところで、ヒナは確実に数分以内に失血死する。続いて、泳げない者は溺れてしまうだろう。
その欠陥について、フォードがフブキに伝えると彼女は答えた。
「え?あたしはそもそも泳げないけど。」
その言葉を聞いたキリノと共に、フォードは顔を見合わせた。
そして、即座にこの案は無し────────ということで二人は一致したのだった。
「.....周囲の防御を固めて、死守するのは?」
次にキリノがそう提案した。さらに彼女は続けて。
「ヒナさんは....負傷しているから動かすことは出来ません。だから....救援が来るまでここで....。」
これは、唯一重傷を負っている彼女の容態を案じての考えであった。
確かに、この安全な場所を今もなお提供しているハンヴィーですら、対戦車火器などによる攻撃で車内にいる彼らは被害を受けるに違いない。
そのことも考慮すると、ここも安全であるとは絶対に言い切ることは出来なくなり、ヒナだけでも脱出させたほうが良いかとも思えた。
しかし、失血しすぎた彼女を動かすのは悲惨なことになるとは予想できた。それらのことをフォードは考えると、彼はキリノの案に対して。
「賛成だ。」
と、言い。
「だが、一番の問題──────ビル内にいる奴らをどうにかする必要がある。」
フォードたちにとって一番の厄介な問題は何を言わずとも、あのビル内に籠り続けている敵たちだった。
彼はM240を用いて何回も射撃を加えたものの、ビル内にいる敵に対してはいまいちの効果しかなかったと感じさせられた。
そのため、真っ先にそのビル内にいる奴らを叩きのめしてから周囲の防御を固めるべきだ────と、彼は考えた。
「そして、もう一つの問題点がある。ヒナを救うにはどうする?」
ヒナはこの5人の中で、最も酷い状態であった。足首はちぎれかけ、数多もの弾痕や弾子で体は切り刻まれ、失血しすぎた。
失血死するまでのリミットである一時間以内に救援が来るとはフォードは到底、思えなかった。例え、失血死する前に救援が来たところでも病院へ送るのに、さらに数時間を要するはずだ。
助かる見込みはほぼないと言っても、過言ではないだろう。
そんな状況に追い込まれた場合、多くの人は生き延びることを諦めて、慰めの言葉を掛け合っては息を引き取るまで見守る....という痛ましい選択を取るだろう。
そんな選択?何があってもノーだ──────
彼の脳裏に、やり遂げるべきことが浮かんだ。それはここを文字通りに、死守すること。そして、ヒナを救うことの二つ。
──────じゃあそれを達成するにはどうすればいい?
まずビル内の敵どもを駆逐する必要がある。そして、ハンヴィーから出来る限り敵を遠ざけること。
ハンヴィーから敵を遠ざけることが出来なければ、航空支援が到着したとして万が一近付かれてしまった場合、攻撃を彼らの真上に要請する羽目になる。
それに加えて、ハンヴィーを破壊出来てしまうような武器をもつ敵はヒナの生存にも関わる。そのため、ハンヴィーの周囲の安全の確保をすることは真っ先に重要なことの一つである。
そして、もう一つのヒナを救うこと。フォードが懸念している点は、彼女が失血死してしまうことだ。幸い、放棄された緊急車両11号がハンヴィーから50メートルも満たない距離にある。
もしかしたら、彼女の血液型に合った輸血パックがあるかもしれない。それで輸血することが出来れば....。
それから彼はしばらく、思考を巡らしたのち。
「やるべきことが思いついた。」
と、彼は言い。キリノの案に対して、彼なりに肉付けした計画を伝えた。
そして、伝え終わったところで。
「ビル内の敵は俺がなんとかする。.....輸血パックを探すのと、周囲の敵を制圧する役目をやる者は?」
「本官が輸血パックを探します。」
キリノが素早い反応速度で答えたが、フブキはというと。
「え~?あたしが制圧するの?無理だってばぁ...。」
フブキがその敵を制圧するという役割に対して、自信がないのかそれとも単なる怠惰なのか分からなかったが、消極的な反応を示した。
「...あたしの武器じゃ制圧だなんて。」
この計画を遂行するには人手も火力も何もかも足りない状態であり、そんな中だからこそフブキの力が必要である。だから、武器に対して不安を持っている彼女に対して。
「最高だぜ。俺は前から、ヴァルキューレのライフルで狙撃をやってみたかった。」
そう伝えると、力づくでフブキが持っている第14号ヴァルキューレ制式ライフルことAC556をマガジンごと奪い取った。
もちろん、そのようなフォードの理解不能な行動に対して彼女は口を開く。
「ちょっと!?何をっ!?」
「制圧射撃をするならヒナのMG42を使うべきだ。俺はあのビル内にいる奴らを排除するのに、君の武器を使う。」
フブキが扱っている第14号ヴァルキューレ制式ライフルにはバイポッド、光学照準器が装備されている。バイポッドは射撃の安定性、反動制御に適しており遠くの敵を精密に狙うには必須級の装備である。
対してフォードが必要としていたのはMG42のような弾幕による制圧射撃ではなく、精密な射撃であった。
実際、あのビル内の敵をM240で掃射したものの効果は見られなかった。ならば、安定性に長けたバイポッドによる精密な射撃で敵を打ちのめそうというのが彼の考えであった。
逆に、フォードが必要としている精密射撃ではなく正反対の弾幕による制圧射撃が、フブキに必要だった。
「俺は今から、ビル内の奴らを倒してくる。それが終わったら、キリノは飛び出してから帰ってくるまでの間はフブキが援護するんだ。」
「了解です!」
「わかったよ~。」
キリノ、フブキの2人はそのように返事するとフォードは銃座に移動した。
銃座に移動すると、フォードはバイポッドを展開させ装甲化された銃塔の防盾に固定させた。するとすぐさま、遠くから銃口炎が見えたのち近くの装甲板に命中した。
だが彼は怯むことなく、銃口炎が輝いた方へ何発も撃ち込んだ。フブキの銃に取り付けられている光学照準器はそこまで、倍率が高くないため遠くの敵を捉えずらかった。
それでも微かに人影が見えると、彼はそれを狙って撃ちこんだ。そして、何発も撃ち続けて二本目のマガジンを空にしたときだった。
ビル内から銃口炎が見えることもなければ、装甲板に銃弾が当たる音を聞くこともなかった。きっと、さっきの射撃で倒せたのだろう。
そう判断したフォードはMk.18に持ち替えて。
「奴はやった。今なら行けるぞ。」
銃座からキリノに向かってそう伝えると、彼女はすぐに緊急車両11号の元へと走り出す。
それと同時に車内からMG42のけたたましい銃声が、聞こえ始めた。
MG42の銃声はまるで電動のこぎりのようなものであり、銃声をある程度軽減することが出来るヘッドセット越しでもよく聞こえるほどだった。
そしてフォードも銃座からMk.18を構えて、あちこちにいる敵に向かって射撃を加える。M240やMG42のような圧倒的な連射能力、制圧能力を持って射撃を加えることが出来ないが、正確に撃ち抜いていく。
そうして何分か経った頃、キリノが再びこちらに戻ってくることが出来た。その間もなお、フォードたちは援護射撃をしていた。
キリノが車内に戻ると、彼女は呼吸を激しくしながら口を開いた。
「.....輸血パックは一つも....使えない状態でした。ですが......これが。」
彼女の右手には輸血キットがあった。これが意味することは、言葉を交わす必要がなくフォードにも分かった。
異例だし理想的ではないが、兵士から兵士への直接輸血は戦争で幾度となく行われてきたという事実を彼は知っている。ただ実際にやるとなるのは、彼にとって未体験であった。
「ヒナの血液型は?」
フォードはアコに尋ねた。アコは彼女の情報なら、ほとんどのことを知っているはずだからだ。
「....A型プラス。」
「ここに同じ血液型は?」
車内にいる彼女たちは、首を横に振った。どうやらここに輸血できそうな者は、
念のため、彼は自らの首にかけているドッグタグを取り出し、血液型を確認した。
''A POS''
「キリノ、代わりに俺の銃を好きに使っていいから援護頼んだぞ。」
とフォードは言い残して、キリノにスリング付きのMk.18とマガジンをいくつか渡した。これからフォードが輸血を行う間は、代わりに誰かが応戦しなければならない。
「分かりました!本官が責任を持って撃ちます!!」
渡されたキリノはそう返事すると、彼女は銃座に向かった。そして、射撃を始める。射撃の腕は不安であるが、撃たないよりはまだマシだ。
その間、フォードは輸血キットを組み立て終わると次は自ら血を二単位採血する。一単位はたった140ミリリットルで、二倍の280ミリリットルをキリノに持ってきてもらった空のバックに入れる。
二単位分の採血が終わると、らせん形の針をヒナの外側頸動脈に刺した。すると、効果覿面であり血は流れていく。これならしばらくは、どうにかなりそうだ。
「...あとは頼んだ。」
そして、彼女に二単位分の採血を終えたフォードはアコに向かってそう伝えると、次はキリノを呼んでマガジン、Mk.18とAC556を交換する。
「フブキ、状況はどう?」
ずっと敵に向かって射撃を加え続けているフブキに向かって、キリノが尋ねた。
「ん~、まだ敵はたくさんいるけど少しづつ減っているよ。」
なんとかフブキがなんとか掃射してくれているおかげで、敵の数は減りつつあった。これなら、ハンヴィーから敵を遠ざけることが出来ているから、安全を保てるはずだ。
フォードはさらに安全を確実なものとするため、キリノに対して。
「キリノ、今から一緒に外へ出て戦うぞ。死守しないといけないんだ。」
「本当ですか?」
「ああ、さもなければ味方の爆弾を俺たちの真上に落とす羽目になる。」
「....わかりました。行きましょう!!」
流石に、自爆必死の航空支援を浴びるわけにはいかないというのが彼女に伝わると、フォードと共に車外に出る。
車外に出ると確かに、敵の数は減っているようであった。その証拠に、アリウス生が様々なところに倒れていた。おそらくフブキが、彼女たちをやったのだろう。
ヒナの持つMG42の火力は凄まじいものであるというのが、彼の脳裏に焼き付いたのだった。
フォードは数十メートルほどハンヴィーから、離れた位置である緊急車両11号を遮蔽物として射撃を加える。残りの弾薬はベストに収められている2本のマガジンと今、Mk.18に挿している分しかない。
無駄遣いなどは全くできない。もし、Mk.18の弾薬が尽きればサイドアームとして装備している一丁のMP17と、4本の9mmパラベラム弾が入ったマガジンで戦わなければならない。
もし、その弾薬さえも全て尽きてしまったら──────次に何が起こるのかなんてことは、フォードは考えたくなかった。
敵の構成は変わっていた。あの無尽蔵に襲い掛かってくる異形たちではなく、アリウス生であった。
「くそっ!!増援を────」
「ぐはぁッ!?なんであんな少人数が!?」
「迫撃砲を要請する!!」
フォードはそうやって射撃を加えていたが、遠くからそのような砲撃を要請する声が聞こえて、数秒経過した時だった。
'' ヒュ────── ''
かつてどこかで聞いたことのある音が、上空から響いた。そして──────
「「「「ぎゃあっっ!?」」」
アリウス生が何十人かで構成されている中規模な集団のもとで、爆発が発生した。
「おい迫撃砲のバカども!!!味方に当たっている!!!!」
たまたま生き残ったその集団のリーダー格の人物が、遠くからでも聞こえるほどの声で無線に向かって叫んだ。
どうやら、この攻撃は敵の迫撃砲によるものであったようだ。敵の迫撃砲を担当している部隊は、熟練した者たちではないのか友軍への誤爆を招いたのだった。
しかし、それから10秒後に再び爆発が発生した。爆発はハンヴィーやフォードたちとは離れたところで起きた。
それから10秒ずつの間隔で、迫撃砲による間接攻撃に彼らは晒された。一発ずつの砲撃は彼らに当たることはなかったが、だんだんと狙いが正確になっていた。
「クソったれ。」
フォードは悪態を突きつつも射撃を加えようと、車両の陰から狙いを付けて引き金を絞ったときだった。
マグニファイア越しに捉えているアリウス生どもに、一発の爆発が発生した。
「なんだ!?」
彼はてっきりMk.18にM203でも装着されているのか疑い、アンダーバレルを確認した。もちろん、装着されているのはM203ではなくグリップである。
またもや敵の誤爆か?──────と、彼は思うさなか。
「おい迫撃砲班!?応答しろ、どうして黙るんだ!?」
「きっとやられた!!」
その分かりやすい声が聞こえると、再び味方への誤爆が起きるようになった。
「ちょっと!?どうなって────」
「なんで味方を狙う──────」
断末魔がビル街に響く中、聞こえるはずのない彼のヘッドセットから声が漏れた。
「ブラボー6-1、こちらアルファ6-1。救援部隊だ、どこにいるか教えてくれ。どうぞ。」
それはフォードの戦友、DEVGRUアルファチームを務めるバンダーマン大尉の声が聞こえたのだった。
<同日/17:06>
バンダーマン 特殊戦開発グループ 大尉
古聖堂の近く・救出作戦中
バンダーマンたちは更に前進をし続け、なんとか孤立している味方たちを救出しようと奔走していた。
そうしているうちに幸運にも彼らは、敵の背後に位置することが出来た。
「あそこにいる奴らは敵だ。排除するぞ。」
バンダーマンはそうやって仲間に呼びかけると、彼らは気付かれないようにゆっくりと近付く。
迫撃砲を担当している彼女たちは、撃つことに必死になっており20メートルほど離れた位置にいる彼らについて、全くもって気にすることはなかった。
それに加えて派手に何回もの発射音が響くため、近付いている足音が気付かれることはなかった。
そうして迫撃砲班である彼女たちの背後を取り、思いっきり彼らの銃のストックで頭に目掛けて勢いよく殴った。
「うっ!?」
「え?後ろに──────」
アリウス生たちはそんな風に、気絶する直前で各々に言葉を漏らした。
そして、全員倒しきったところで彼女たちが扱っていた迫撃砲について調べた。どうやら、迫撃砲の口径は60ミリのようだった。
また親切なことに敵の無線機がそのまま置かれているほか、何発分かの弾薬、砲撃するのに必要な座標が示された地図が残されていた。
「迫撃砲班、支援を再要請する!!我々から1ブロック離れて、座標は──────」
敵の支援要請が、座標付きで無線機越しに伝えられた。おそらく、その座標はフォード達のことを狙っているのだろう。
それならば、要請している彼女たちのことを狙えば良い。
「敵を叩け!!」
バンダーマンのこの単純な命令はすぐに伝わった。そして、送信された情報を逆手にとって彼女たちのことを狙う準備をする。
地図に書かれている座標に合わせて、そこからさらに敵に当たるように距離を逆算して仰角を調整する。
「大尉、準備が出来ました。」
「好きなだけ撃て!!」
「了解です。」
そのやり取りがなされると、迫撃砲に一発の砲弾が装填されて、ついに攻撃が始まった。
そして、数秒後。
「ぎゃあっ!?」
無線機越しに、断末魔が聞こえた。どうやら攻撃は成功したようだ。それからは、彼らは弾薬が無くなるまで何発も再装填して徹底的に撃ち込んでいく。
発射されたのちに聞こえる断末魔や混乱している様子から、かなり効果があるようだった。そうして、しばらく撃ち込んだのち彼のヘッドセットから声が聞こえた。
「アルファ6-1、こちらシエラ2-1。敵の電子妨害は無効化させた、無線機はもう使えるはずだ。終わり。」
シエラ2-1はEP-3のことである。EP-3は電子妨害が可能な能力を備えており、今回は敵による電子妨害を阻止するために現場に送り込まれたのだった。
そして、バンダーマンは無線が使えるとわかるとすぐに周波数を切り替えて、こう送信した。
「ブラボー6-1、こちらアルファ6-1。救援部隊だ、どこにいるか教えてくれ。どうぞ。」
結構前から、輸血描写したかったのでやっと出来ました。実際は病気の検査などを受ける必要がありますので、同じ状況じゃない限り真似をするのは.....。