Blue Archive:Task Force   作:タクティカルおじさん

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仕事がひと段落ついたので投稿....


3:プロローグ/シャーレ奪還作戦(下)

 

 

 

 

 

 

 

<20██年春/9:27>

 アレックス 第一武装偵察隊・第三小隊レッド分隊 中尉

 D.U.外郭地区・シャーレの部室から2km地点

 

 

 

 

 

 「レッド分隊前進!!」

 

 アレックスがM-ATVの車内に取り付けられた各車両との通信を可能にする無線でそう伝えると、M-ATV三両は横一列に組みさらに各分隊員が車両たちを盾として彼らは前進。進路上の敵はブローニングM2による圧倒的な威力を誇る制圧射撃によって、無残にも不良らの部隊を壊滅させていく。

 

 撃ち漏らしたり、どこかに隠れていた不良は随伴している各分隊員によってあっさりと各個撃破していったのだった。なお、シャーレに向けて快進撃を続けるレッド分隊の後方には、あまりにも速すぎる彼らの制圧速度にあっけにとられていた。

 

 ────ーM4A1による軽快な射撃音が数多のビル群に向かって響くと、それに応じて不良たちは地面に倒れていく。そして、運よく遮蔽物に隠れた彼女たちには真っ先にブローニングM2の制圧射撃が加わり、それでも倒しきれなかった場合は40ミリグレネード弾が彼女たちを襲う。

 

 不良たちの逃げ場は無いに等しいと言っても過言ではない。その圧倒的優勢は誰が見ても、アレックスたちであると疑いの余地は一切ないほどであった。

 

 そんな風に彼らは快進撃を続けていくと一際目立つ女子高校生を彼らは発見する。

 

 「あれはなんだ?まるで巫女のような...?」

 

 「いや、違うね。あれは化け狐だ。」

 

 レッド分隊員内においてちょうど会話の対象となっていた彼女は、明らかに敵である不良たちの集団に紛れ込んでいた。しかし、こちらには発砲をしてくる様子が無いことから敵ではないだろうという推測に至ろうとしたときだった。

 

 狐の仮面を付けた彼女は、こちら側に狙いを一瞬にして構えると彼女の持つ銃から銃口炎を明らかに捉えた。

 

 ──────「っ!?被弾した!!!」

 

 真っ先に声を荒げた隊員はブローニングM2の銃座を担当していたウェストン伍長であった。彼は、そのように叫ぶと急いで射線が通らない車内に身を隠す。

 

 被弾した箇所は頭部であった。彼は強烈な痛みを感じていたため、ヘルメットを外して被弾した状況を知ろうとする。そして硬く結ばれた顎紐を解くと、コンバットグローブ越しであるがどこから痛みが伴っているのかを探る。

 

 もちろん車内にいた他の隊員も被弾箇所を探すが見つからなかった。そこで彼は悟ったからか、呟いた。

 

 「嘘だろ...?」

 

 ヘルメットをまじまじと観察し、どこに被弾したのかを探す。そうすると、彼自身の身体にあるかもしれない被弾箇所を探る時間よりは短く見つけることができた。

 

 7.7ミリ弾という現代で言うところの大口径弾を跳弾させたACHヘルメットには窪みと、弾痕がくっきりと残っていたのだった。ウェストンは目にしっかりとそれらの光景を焼き付けると、ヘルメットを再び被ってこう呟いた。

 

 「ヤバかった。」

 

 キヴォトスという初めての異世界で受けた攻撃に対し、彼は固唾を飲み込むのであった。

 

 

 

 

<同時刻>

 

 

 

 

 

 「さすが厄災の狐!!!大人を1人やっつけてしまった!!!!」

 

 「ふふっ。」

 

 数多もの不良生徒に囲まれながら、仮面越しに笑みを浮かべたのは彼女がいた。彼女の名はワカモ。七囚人などと呼ばれたうちの1人であり、数日ほど前に暗くて狭い豚箱に等しい矯正局から脱走したのである。

 

 そして流れに身を任せてシャーレ周辺で不良たちと意気投合をし、破壊活動などに加わっていたのだった。そんな彼女は先ほど数百メートルも離れた上で防楯に身を守られ、狙いをつけにくいであろう重機関銃手の頭部を撃ち抜いたばかりだった。

 

 彼女自身、ヘイロー持っていないあの射手を殺してしまったのかもしれないという恐怖や焦燥感を抱いたのであったが、黄色い声援を送る不良たちによってあっさりと忘れてしまった。

 

 「姐さん、次は誰を狙います?」

 

 「いや〜、ここは一気に車両ごと破壊しようぜ!!」

 

 「あははっ、それはいくらなんでも災厄の狐でも無理だってば〜。」

 

 ワカモを取り囲む彼女たちは、虎の威を借る狐が如し調子に乗っていた。なお皮肉なことに、虎でもなく狐の威を借りているのである。

 

 「そうだ!!貰い物のクルセイダーを全部出そう。私はクルセイダーの砲声を聞いたことが無いのだよね。」

 

 「「いいね〜、そうしよう。」」

 

 ワカモは彼女たちの会話に加わることはなく、進軍を停止したレッド分隊の様子を観察していた。大人たちは明らかに重武装であり、ボディーアーマーにヘルメットも身に付けているのがわかった。

 

 「どなた様なのでしょうか....?変な大人たちですこと。」

 

 射撃を加えたあの大人たちの装甲車は数百メートルも先で停止しているだけではなく、銃声すら聞こえなかった。たった1人の大人が戦死又は負傷したというだけで、彼らは怖気付いてしまったのかだろうか。

 

 「....あの狐部隊どころか、そこら辺の不良よりも脆弱ですわ。」

 

 勝ち誇ったかのような表情を仮面越しでそう述べた彼女の近くに、突如として白色の煙幕が発生した。

 

 「っ!?一体何をしようと...?」

 

 「なんだなんだ!?!?」

 

 「敵の攻撃!?」

 

 不良達も同じように驚いているが、何発もの発煙弾が地面に命中し彼女の視界を遮っていく。濃密な白煙は彼女たちが目に捉えることが可能な周囲の視界をあっという間に奪う。

 

 そして、何処に誰がいるのかすら把握できない状況の中、ワカモの彼女自身の本能が何かが迫ってきていると訴えていた。

 

 「お手並を拝見させていただきましょう。」

 

 彼女は凛々しくそう告げると、咄嗟に身体を宙に浮かせる。すると、彼女が先ほど立っていた場所にて爆発が生じた。もちろん、彼女の近くにいた不良たちはその爆発を避けることができず、巻き込まれてしまう。

 

 それだけで攻撃は終わらなかった。次は赤色の曳光弾が彼女の身体を掠めた。赤色の曳光弾はかなり多くの軌道を描いており、あの大人たちの攻撃であると察することができた。

 

 しかし、ある問題があった。

 

 焚かれた煙幕の密度はかなり濃いだけではなく、範囲も広かったのだ。そのため、方向感覚を掴むことが難しいためどこから撃たれているのかを判別することは、流石に彼女でも不可能なことだった。

 

 また唯一の手がかりは赤色の曳光弾であるがそれらの弾を回避することに集中をしているため、射撃を加えているあの大人たちがいるであろう方向の特定に更なる困難さを伴った。

 

 「煩わしいことですわね。」

 

 彼女は不満そうにそう呟きながら、銃弾を回避し続ける。そうすると、またもや爆発音が近くで聞こえた。しかし、被弾はしていないし寧ろ周囲の視界を奪っている白煙が軽減された。

 

 そして彼女の目でも白煙越しに、向こう側を視認できるほどの視界を確保できた時だった。彼女はあの大人たちの姿を何人も捉えた。それだけではなく、大声が向こうから聞こえた。

 

 「出て来い、災厄の狐!!!」

 

 ──────再び、爆発が近くで生じるとちょうど、爆圧によって白煙が晴れたのであった。

 

 

 

 

<同時刻>

 

 

 

 

 

 「出て来い、災厄の狐!!!」

 

 怒号に等しい大声が、ビル群に反響するがもちろんそれを放った本人はアレックスであった。アレックス自身は、矯正局から脱走した生徒として作戦開始前に上官を通して知らされていた。

 

 もちろん、彼女がそこら辺の不良とは全く異なる戦闘能力も知っていた故に、反撃をされた場合に部隊がかなりの危険に晒されると判断をしたために彼女の視界をM203の発煙弾で妨害した上で、攻撃したのだった。

 

 「確認したぞ。間違いないな...擲弾を撃て!!」

 

 「了解。」

 

 白煙が爆圧によって晴れたとき、アレックスはワカモのことを視認するとただちにコプスに向けてM203を発射するように命令を下す。命令を受けた擲弾兵のコプスはM203のリーフサイト越しに狙いを付けると、引き金を絞る。

 

 '' ポンッ ''

 

 「....効果なし。」

 

 「いや、あれは当たっていないぞ!?」

 

 ワカモの身体能力は素晴らしく、40ミリグレネード弾の炸裂範囲から一瞬にして逃れられてしまう。そこにブローニングM2、M27 IARによる制圧射撃が再び加わる。しかしながら、まったくもって命中する様子は無かった。それどころか、彼女はこちらに正確に反撃を加えてきた。

 

 彼女の銃口からオレンジ色の炎が一瞬見えると、M-ATVの防弾版に命中して金属音が擦れた音が聞こえる。アレックスは咄嗟の判断で、M-ATVの陰から顔を引っ込めたので被弾しなかったが本当に致命的な瞬間であった。

 

 「リロードする。」

 

 同じくM-ATVの裏陰に隠れているコプスはM203のリロードを行う。銃身をスライドさせると、空薬莢が自重によって排莢される。そして、ベルトから40ミリ高性能炸裂弾を取り出すと銃身に装填。そこからさらに、銃身を後進させると遂にリロードが完了する。

 

 「あまり芳しくないな。」

 

 アレックスは不意にそう呟いた。なぜなら、たった一人の女子高生相手に彼らは脅威に晒されているのだからだ。ワカモは七囚人の一人だとは聞いているが、たった一人でこのような脅威となるともし全員集まったらきっと更に酷い状況になるのだろうと彼は確信した。

 

 ──────「アレックス、聞こえる?私たちの後ろから戦車が何台も────」

 

 先生の声が、彼の無線から漏れ出る。先生たちはアレックスたちよりもさらに後方に位置しているが、どうやら裏を取られたようだ。しかも、裏を取ってきたのは戦車。彼らには有効な対戦車火器であるカールグスタフがあるため対抗することが可能だが、先生らはそれらを持っていないため戦車はかなりの脅威である。

 

 「先生、どうにか持ち堪えてくれ。こっちもかなりキツイんだ。」

 

 「...わかった。」────────…………

 

 

 

 

 

 

 ────────「あれはクルセイダー!?」

 

 「....トリニティで採用しているのと同じ型!!」

 

 ユウカとハスミは声を荒げる。さっきアレックスたちがクルセイダーを破壊したため、もう既に不良たちの持つであろう戦力分を失ったかと思われた。しかしながら、彼女たちの目の前に現れたのは紛れもなくクルセイダーである。

 

 クルセイダーの持つ装甲は40ミリ程度であり、部分的には50ミリの厚い箇所もある。これらは大抵の小銃を防ぐため、カールグスタフやRPG-7といった対戦車火器が必要である。なお、ユウカたちが所持している銃器は勿論ながらクルセイダーの装甲を貫通することは到底不可能である。

 

 ゆえに、彼女たちにとってもクルセイダーは脅威であることには変わらない。

 

 「閃光弾で目眩し....出来そうにもないですね。」

 

 スズミは閃光弾の安全ピンを握り締めながら、そう呟いたときだった。彼女たちの真正面に位置する何両ものクルセイダーたちが、砲撃を加えてきた。

 

 「吹っ飛ばせ──!!」

 

 クルセイダー隊を指揮する不良はまるで害虫を駆除するかのような勢いで、砲撃がどんどん加えられる。いくつかの砲弾は、彼女たちの近くに着弾して破片を撒き散らし、彼女たちに危害を加える。

 

 「どうにか出来ないの!?」

 

 砲撃音と着弾音がうるさく聞こえる中、ユウカはいっそう声を荒げる。

 

 「後退するしかないですね。」

 

 チナツはそう呟いた。しかし、後退してもワカモがいる。どのみちこのままだと、不良たちの包囲網から抜け出すことは不可能に等しいだろう。

 

 「いいぞ!!このまま包囲して殲滅する──────」

 

 クルセイダー隊を指揮する不良は、俗に言う『勝ち確』を確信した。

 

 

 ────────そんな不良らへのとどめは、空からやってきた。

 

 鋼鉄の羽音が聞こえたと思いきや、いきなり一両のクルセイダーが爆発した。爆発したクルセイダーは砲塔が吹っ飛んでおり、明らかに破壊されたと誰もが一目でわかる姿だった。

 

 一両のクルセイダーを葬ったのはアレックスが無線で要請した、戦闘ヘリAH-64E(アパッチ)によるAGM-114 (ヘルファイヤ)だった。対空手段を持たないクルセイダーは一方的に空からの正確無比な遠距離攻撃によって次々と破壊された。

 

 敵戦車部隊を破壊したアパッチは次の攻撃目標を地上で包囲網を敷いている不良らの地上部隊に定めたのだった────……

 

 

 

 

<20██年春(推定)/10:46>

 コールサイン''ヴァイパー2-1''・AH-64E

 シャーレ周辺・上空

 

 

 

 

 AH-64Eのコックピットはタンデム方式に配置されており、パイロットが広く視認できるようになっている。パイロットが友軍に距離を詰めてくる不良らを発見すると彼らの指揮官に無線を繋いだ。

 

 「ブラボー2、こちらヴァイパー2-1。シャーレ周辺にいた敵戦車を全て破壊し、現在上空にて待機中。どうぞ。」

 

 「ヴァイパー2-1、こちらブラボー2。下では大規模な敵歩兵部隊によって友軍が釘付けにされているようだ。敵の包囲網から友軍を救出せよ、建造物に危害を加えない限りWeapons free(兵装自由使用)だ。終わり。」

 

 「ブラボー2、こちらヴァイパー2-1。これより交戦を開始する。」

 

 パイロットが無線でやり取りを終えると次は、アレックスに無線を繋いだ。

 

 「レッド1-1、こちらヴァイパー2-1。待たせて悪かったな兄弟(ブラザー)、航空支援を行う。」

 

 「ヴァイパー2-1、こちらレッド1-1。またお前の声が聞こえて嬉しいよ。」

 

 アレックスとのやり取りをパイロットは終えるとヘリは急降下した。

 

 「ビルにぶつけるなよ。せっかくの遊覧飛行が台無しになっちまう。」

 

 とやる気に満ち溢れたガンナーは軽口を叩く。実際、シャーレ周辺は高い建造物が多く飛行をするのは困難である。しかしパイロットは難なく飛行し、ホバリングに移行する。

 

 そして機首下ターレットに装着されているM230は独特な音を発しながら不良らに襲い掛かった。M230が発射する30mm弾は戦車の装甲を貫通するほどの能力はないものの、対人に関しての威力はとてつもないくらい高いのだ。

 

 30mm弾の雨が集団で行動している不良らを薙ぎ倒す。たったの1掃射だったが着弾したところに立っているものは誰一人もいなく、横に倒れているのがガンカメラ越しに確認できた。

 

 運良く、一回目の掃射の範囲に入っていなかった不良たちは突然目の前に現れたアパッチに恐怖心を抱き一気に逃げ出した。

しかしガンナーはすぐに逃げようとする不良らを照準に捉え、ゲーム感覚で引き金を絞る。

 

 M230の威力は凄まじく、たとえほんの少しガンカメラの照準から外れたとしても地面に着弾した弾の破片が彼女らに襲い掛かかる。

 

 それでも、複数回に渡る射撃でも数が多いためM230ですべての不良を処理するのは時間がかかると判断したパイロットはロケット弾をしこたま集団の中央にぶちまけた。

 

 高性能爆薬を搭載するロケット弾は、今の戦場において最も比較にならないほどの威力を発揮し集団単位で不良らを壊滅していく。

 

 アパッチがぶちまけたロケット弾の一斉射はかなり効果的であったようで、一気に不良の数は減りつつあった。

 

 そんなアパッチの援護を受けた友軍であるユウカたちはシャーレを奪還しようと動き始めるのだった。

 

 

 

 

<同時刻>

シャーレ周辺

 

 

 

 

 「....流石にあれは勝てそうにありませんね。ではここでお暇させていただきますわ。」

 

 近接航空支援に駆けつけたアパッチの殲滅力を見た彼女は、そそくさに逃げ出した。もちろん、不良たちの一部は逃げようとするが遅かった。なぜなら、増援の地上部隊も到着していたからだ。

 

 不良らを捉えた増援隊の先頭に位置するLAV-25は、25ミリ砲弾を発射し真っ先に殲滅する。そうすると、さらに後方から多数の海兵隊員と装甲車たちが進軍する。アフガニスタンやイラクで見たことのある光景だった。ただ、特殊作戦以外で陸軍のアパッチが参加しているというのが相違点であったが。

 

 「アレックス、聞こえる?」

 

 「先生どうした?」

 

 無線で呼び掛けられた彼は続けて。

 

 「既に不良たちは壊走中だ。早く来い、シャーレを奪還するために来たんだろ?」

 

 「そうだけど....うん、ありがとう。」

 

 「()()()()海兵隊員だからな。」

 

 アレックスは自身の所属が海兵隊であるということを強調するのであった。

 

 

 

 

 

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