Blue Archive:Task Force 作:タクティカルおじさん
<20██年秋/調印式襲撃から3日後>
バンダーマン 特殊戦開発グループ 大尉
ゲヘナ自治区 FOSクランプス・ブリーフィングルーム
ブリーフィングルームに集められた屈強なアメリカ海軍所属の特殊部隊員たちは、席についており今回の作戦内容について指揮官であるポースティン大佐から説明を受けていた。
「よし、これより今回の作戦について説明する。」
彼は部隊が揃っていることを確認すると、プロジェクターのリモコンを操作してスクリーンに様々な資料を映し出した。
「今回、君たちDEVGRUアルファチームにはアリウス分校が設営した秘密拠点の調査をしてもらう。」
スクリーンには秘密拠点とされているアパートの画像が映し出される。
「ここの発見に至った経緯は、3日前の作戦行動中に強力な電波を傍受したのがきっかけだ。またその周波数を調べてみたところ軍事用で、それがしかも調印式当日に頻繁に送受信していたことまで分かっている。なお現在は、その周辺ごとジャミングしている。」
ポースティン大佐がそこまで説明したところで、一人の隊員が手を挙げて質問する。
「アパートの一室ではなく、そのものが調査対象なのでしょうか?」
「その通りだ。」
ポースティン大佐は頷くと、再び説明する。
「アパートを調べてみたところ今年の6月に完成したそうだが、入居者は誰も居ないことも判明している。それなのに電波が確認されている...不思議だろう?」
さらに彼は続けて。
「今もこうして我々が周辺一帯にジャミングをしているから、そのせいで現地住民の生活にも支障をきたしてしまう。そのため即時にこの拠点を叩き潰すぞ。」
ポースティン大佐はそう言いながら、作戦のタイムラインを映し出す。
「2日後の午前1時に作戦を決行、室内での銃撃戦が予想されるから気を抜くな。それではブリーフィングは終了だ、以上。」
彼はそう言うと、その場に集められていた隊員たちはブリーフィングルームを後にする。キヴォトスでは再び、米海軍特殊部隊による襲撃作戦が始まろうとしているのだった。
<作戦当日>
バンダーマン 特殊戦開発グループ 大尉
トリニティ自治区 襲撃作戦下
市街地から少し離れた場所にある集合住宅地にはDEVGRUが保有する複数の車両が停車していた。その車両からバンダーマンは作戦開始の合図であるコードを無線から聞こえるのを待っていた。
「静かだな...。」
彼は助手席から寝静まった住宅街の光景を見て、そう呟くと次に腕時計を見て現在時刻を確認する。時計の針は概ね0時59分と1時との間であった。作戦開始まであと30秒ほどである。そのため彼はヘルメットマウントに取り付けられたGPNVG-18を目元に下ろす。そうすると暗闇に包まれ街灯で照らされていた道や周囲の建物が、さらに暗視装置が持つ増幅菅によって強調されて、視界が確保される。
「コードクリーナー繰り返す、コードクリーナー。」
「さぁ、いくぞ。」
ちょうど準備を作戦開始コードであるクリーナーが発せられると、彼らは銃を抱えて下車した。バンダーマンが率いるFTエコーはアパートの裏口から侵入し、一階のすべての部屋を制圧することが任せられていた。彼らは下車すると、派手な音を立てないように建物に近付く。
「暗いな。」
彼らは窓に銃口を向けて、警戒しながら移動すると彼らの視界に入る全ての窓からは、部屋に電気が付いている様子はなかった。一人ぐらい起きていてもいいのだろうに。そうして警戒しながら移動した先は、チェーン付きの門扉であった。どうやらここに来訪するお客様は、一切歓迎されないようだ。
「FTエコーは裏庭に侵入する。」
バンダーマンはそう伝えるとチェーンカッターを持っている隊員が南京錠付きのチェーンを切断し、強引に侵入していく。
「FTデルタは建物正面に着いた。待機中。」
今回の作戦にはDEVGRUアルファチームが割り当てられており、FTエコー及びデルタは該当アパートの突入チームだ。対してFTゴルフはアパート周辺の封鎖及び接近してくるであろう脅威の排除のためのチームとなっているのだ。
「突入準備。」
バンダーマンがそう言うと彼らは、アパート一階にある4つの部屋の扉前でそれぞれ待機。彼らのFTはバンダーマン含め9人で構成されており、一つの部屋に3人とそれ以外の部屋は二人一組での突入となる。
「FTデルタも二階で待機中。そちらの合図を待つ。」
「了解。」
返答したバンダーマンの合間に、爆破係である隊員が爆破可能な扉であるかどうかや、施錠されているのかも調べる。そうして調べた後に、扉にテープ状の指向性爆薬を扉枠に沿って取り付ける。
「FTエコーは突入準備が完了。」
「FTデルタも完了した。」
双方とのやり取りが行われて上でさらに突入準備ができたことを確認し終えた彼らは、ついに突入することになる。
「爆破しろ。」
「了解、爆破!」
起爆装置のレバーを引くと盛大な音を立てて、ドアが吹き飛ばされる。そうして煙が舞う中、彼らは銃を構えて暗い部屋に突入していった。
「殺せ────」
昼夜構わず日常的にガスマスクを着用している彼女はそんなことを言いながら発砲するが、彼女の視界はガスマスクを着けている上ブレーカーも落とされている。そのため彼女にとって暗い上に、見えにくい。暗視装置を装備している彼らに撃ち勝てるはずがないのだ。
そして先に突入した隊員はサプレッサーの音が二回ほど響きながら、彼女は玄関からすぐの床に倒れた。しかしそれでもヘイローがまだ消えていなかったため、追加の一発を頭に撃ち込んでやった。
「うっ...。」
「....一人やった。」
呻き声と共にしっかりと無力化したことを確認すると、部屋のクリアリングも同時並行で行われた。その結果、彼らが突入した部屋にはこれ以上敵がいないということもわかった。
「オールチーム、この建物の安全が確保されたのを確認。これより捜索を行うぞ。」
バンダーマンはそう伝えると次に、建物の中の捜索が始まった。以前行われたアビドスでの特殊作戦の時と同じように、重要そうな書類や通信機器から銃器などまで探し出そうとする。それから数十分間に渡って建物の捜索が行われたところで、唯一デスクトップPCがある部屋を見つけ出した。
そして彼らは四眼式の暗視装置を付けたままその部屋に備え付けられている金属製の引き出しを見つけた。どうやらその金属製の引き出しには施錠をするための鍵穴等はなく、誰もが自由に中身を閲覧できるようであり重要な書類を保管している可能性は低いだろう。
ただそのような書類が無かったとしても証拠品の回収の為に中身を確認する価値はある。ゆえにバンダーマンは他の隊員に調べるように命令を下すと、「学園都市の引き出しにはどんなポルノが眠っているのか、軍は知りたくて仕方がないんだろ?」などとジョークを交えながら確認し始めた。
もちろんそれと並行してデスクトップPCのデータの確認も始まった。
中身はやや乱雑に中身に入っているファイルやクリップで纏められた紙束がびっしりと埋まっていた。そのうち適当にファイルから紙を取り出すと、その紙はどうやら誰かの個人情報であった。
「これは....トリニティの学園の生徒か?」
まずバンダーマンの目に映ったのは生徒の顔写真であり、次に不正に入手したと推定される本人と学園しか知らないはずの連邦生徒会から与えられる生徒IDに、その生徒の住民票と思われるものが添付されていた。そしてその紙の右上には不鮮明ながらも『20██0912』と数字の羅列が記されていた。
「なあ、ここの警察って腐っていると思うか?」
バンダーマンがそう呟いた。
「異世界と言えども、ここはアフガンと等しいに決まっている。
近くにいた隊員がそう返答すると彼はこの建物で何が起きているのかを理解した。そして無線で各チームに指示を出すことにした。
「わかった。もう少し部屋のクローゼットや壁を調べろ。」
あの生徒の個人情報が付されている紙には、普通なら入手が不可能なはずのIDや住民票までもが載せられていた。例えアリウス分校というテロ集団であったとしても、そこまでの情報収集能力が無いことは既に結論付けられていた。そもそも敵対組織に属するであろう個人の住民票の入手など最も情報収集に優れているCIAですらそれらの関係者が必要であるため、至難の業である。
そうなるとすれば、やはりあの生徒の情報は不正に入手したとしか考えられない。それもIDを管理している連邦生徒会や、同じく住民票を管理しているヴァルキューレ警察学校又は、自治体の内部に内通者がいると強く疑うことが出来る。
そしてなぜ、生徒の個人情報などがあるのか。あまり想像したくないことだが、その背けたくなるような事実をデスクトップPCに保管されているデータから示された。
「このパソコンにはどうやら生徒個人の保管位置が記されていて....隣の107号室のシャワールームから真下に────」
暗号化やパスワードすら設定されていないこの無防備なパソコンに保存されていたデータを隊員がすらすらと読み上げていく。抵抗なく隊員が読み上げるものの、内容は抵抗が強いものだった。
それからバンダーマンはシャワールームの真下にあるとされる地下壕を調べるため、無線で呼びかける。
「オールチーム、107号室のシャワールームに集まれ。」
そう呼び掛けてから数分後に、彼らはバンダーマンに指示された通りに107号室に集まる。流石に20人以上の隊員が一室に集まると狭すぎるため、最終的にバンダーマンを含めて10人の隊員が107号室に残った。そしてさらに数名の隊員がシャワールーム内に入り、くまなく調べていく。
「使われていなさそうだな?」
バンダーマンは排水溝に使われている金網が錆び付いていないどころか、全くもって汚れていないことを発見した。よほどの綺麗好きじゃなければ、こんなピカピカな状態を維持することも出来ない。
「...?浴槽を動かせれる...?」
ある隊員が歩き回っていると違和感を感じたためそう報告する。
「浴槽を動かそう。きっと地下に繋がっている。」
バンダーマンがそう命令すると各隊員はその浴槽を持ち上げた。意外にもその浴槽は1人で持てそうなほど軽かったのか、数人で運ぶ必要性がなかった。しかし、浴槽をシャワールームの外へ運び出したところであるものを発見できた。
「わーお。浴槽を設置していた場所にまさか大穴があるとは。」
バンダーマンがそう言いながらプレートキャリアのポーチに納められているケミカルライトを取り出して発光させたところで、その大穴に向かって投げつけた。そうするとケミカルライトは光が見えるような位置で落下した。つまり、底なしの穴というわけでもなさそうだ。
「ご丁寧に梯子まで取り付けてくれるとは....まあいい突入する。」
そうして彼らは梯子を伝って地下トンネルに降り立つ。地下トンネルは薄暗い上、土の香りが漂ってくる他空気の循環が悪いためなのか、涼しいはずの秋頃とは様変わりしたジメジメとした空気を彼らは感じた。
「一本道か...。」
バンダーマンはGPNVG-18を目元まで下ろしたところでそう言った。またこの地下トンネルには崩落を防ぐ為に坑木で支えられており、その坑木にはLEDライトが取り付けられている。しかしそれでもこの地下トンネルは薄暗く、暗視装置のおかげで辛うじて道筋がほんのり分かる程度だった。
バンダーマンらはそんな地下トンネルを進み続けると、木製の扉の目の前まで達することが出来た。
「バンを準備しろ。」
バンダーマンは後続の隊員に向けて閃光手榴弾の準備をするように命じると、隊員はポーチからM87閃光手榴弾を取り出して安全ピンに手を掛ける。そしてバンダーマンが少し扉を開けて出来た隙間に、上手く投げ込んだ。そうすると、起爆時間が2秒と極めて短く設定されている閃光手榴弾は扉の向こうで爆発する音が聞こえた。
それが聞こえるとバンダーマンは扉を開き、AN/PEQ-16Bから発せられるレーザーポインターを頼りに照準として構えながら、ルームを手慣れた動きでクリアリングしていく。その後ろから数名の隊員もクリアリングに参加していく。そうして一通りクリアリングが終わると、次に彼らは奥に続くであろう通路にトタン板でバリケードされているのを発見した。
もちろんこの奥に生徒らが本当にいるのかを確認するために、数人がかりでの撤去をバンダーマンが命令せずとも開始した。
「嫌な臭い...。」
作業を行っている最中にこのトタン板そのものからなのか、どこからかやって来たのか分からない悪臭を感じた隊員は愚痴を呟いた。そうしてトタン板を完全に撤去させると、標準的な成人男性がそのまま歩けそうなほどの大きさの通路が現れた。それと同時に匂いが一層キツくなった。奥には隠したいものを相当溜め込んでいるのだろう。
「俺に続け。」
バンダーマンはそう言うと、真っ先に進んでいった。それから20メートルほど進んだところで、次は大きな鋼鉄製の扉を目に捉えた。扉は足元の隙間から先ほどから悪臭の原因である匂いが漏れ出ているようであり、彼らは鼻が曲がるような思いをしつつもこの扉を破壊することにした。まずこの扉はご丁寧にも蝶番が付いているため、テープ状の指向性爆薬を適切な位置に取り付ける。それから彼らは爆風や爆破した際に生じる扉等の破片に巻き込まれないように、距離を取る。そして、起爆した。
「突入!」
起爆すると扉は吹き飛ばされて、部屋の様子がわかった。そしてそれと同時に胴体にいくつもの砲弾...もとい自爆用ベストを身に着けた上でガスマスクも被っているアリウス生がバンダーマンに勢いよく向かって来た。また彼女の右手には起爆用のリモコンがあるようであり、それを掲げていた。
「死ねえぇぇぇ────」
「ボマー!!」
バンダーマンはそう叫びながらも自爆ベストを着用している生徒がこちらに向かってきているため、彼女の勢いに気圧されたのか足を滑らせてしまい、背中から地面に倒れこんだ。しかし、彼は倒れこもうとする最中にレーザーサイト越しに彼女に照準を合わせた上でHK416Dのトリガーを数発絞った。またそれと同時に、後続に居た隊員が何発もセミオートで反撃を加える。
サプレッサー越しの発砲音が何発も連続で地下に響く中、何とか起爆させずに撃ち込まれた彼女はそのまま倒れこんだ。しかし、それでも彼女のヘイローは消えなかった。体勢を崩したバンダーマンが立ち上がり、それと同時に彼女も起爆用のリモコンを握りしめながら起き上がろうとしたがバンダーマンらはそれを阻止するためにさらに射撃を加えた。
「くッッ!?」
「そいつを殺せ殺せ殺せ──────」
バンダーマンは目の前に自爆特攻を行うアリウス生に対してパニック状態となってしまい、普通ならただの銃撃程度で死なないキヴォトス人である彼女に向かってそう言いながら、HK416Dに装填してあるマガジン一本分を撃ち切るまで素早い指切りを行った。もちろん、後続にいる隊員もさらに激しく射撃を加えた。その激しい銃撃の成果はすぐさま彼女のヘイローは消失させた上で、自爆ベストを身に着けた彼女の胴体は地面に倒れこんだ。
「はぁ....死ぬかと思った。」
体勢を整えたバンダーマンはそう呟きながら空となったマガジンを地面に投げ捨てた。そしてプレートキャリアのポーチから新しいマガジンを取り出して、装填。それからチャージングハンドルを後退させて、初弾をチャンバーに送り込んでやった。そうして一連の動作を完了させると、彼は追加で倒れこんだアリウス生の右脇腹に一発、撃ち込んだ。しかし彼女のヘイローは消えているため、無力化は既にされており不要な行為だ。
「死亡確認は不要じゃ────」
キヴォトスの生徒はヘイローの有無で、無力化がされているのかを確認することが可能である。逆に言えばただの人となれば、無力化の判断が極めて難しい。また死亡したことを偽装することで、後々反撃を行う可能性が十分にあるのだ。そのため彼らのような正規軍は生きていようが死んでいようが、敵の体に一発撃ち込むように教え込まれている。しかし、今回のは明らかに不要な行為だ。
つまるところ、わざわざキヴォトス人相手に不要な行為をするほど彼は錯乱しているのだった。
「奥へ進むぞ。」
しかしバンダーマンはそれでも奥へ進むことに決めた。そうして奥の方へ進むと、悪臭の原因であろう穴に埋められかけている複数のドラム缶と本来なら隠蔽するために用意したセメント。そして、捕虜を収容するための粗悪なつくりである収容室が見られた。
「このドラム缶の中には悪魔に捕まった子供でも詰まっているようだな。」
バンダーマンは猛烈な悪臭が漂い、ハエが宙に舞っているドラム缶の方へと目をやり、そう愚痴を吐いた。ここで何が起こったのかは想像したくないが、彼女たちは相当酷い目にあったとしか言えない。
「収容室に誰かいるぞ!」
他の隊員がそう声を荒げながら、収容室の扉に近付く。生憎にも扉は施錠されているだけではなく、どうにも開けれそうになかった。そのため、指向性爆薬を用いて中に居る生徒を吹き飛ばさないようにするために、今回はスレッジハンマーを使うことにした。
スレッジハンマーは一振りでかなりの力を加えることができる。しかし、流石に目の前にある扉は金属製でありかなり頑丈だ。それでも彼らは扉の取っ手の部分に目掛けて何回も振り下ろすことで力を堅実に加えていく。そんな風に行っていくと破壊するまで何分か掛かってしまったが、なんとか扉を破壊することに成功する。
そして突破した彼らは収容室内のベッドの上に横たわっている生徒を外に運び出す。顔色は生きている人間とは思えないほど酷く、はっきりと衰弱していることが伺えた。
「医療ヘリが必要そうだな...。」
バンダーマンがそう呟くなか、ベッドの上に落ちている物品をまじまじと見つめた。
「マジかよ。」
なぜなら、ベッドの上にはいくつもの使用済みの注射器が散らばっていたからだ。注射器があるということはすなわち薬物の摂取が疑われる。それも摂取した...いや摂取させられた薬物は少なくとも医療用ではないだろう。何が目的でこの地下トンネルが存在していたのかは不明であるが、この拠点では恐らく人体実験或いは人身売買の関与がされていたのだろう。
そして最終的に不必要となった生徒は何らかの方法で殺害されてあの薄暗く、狭いドラム缶に閉じ込められた上でセメントと共に────。
彼はそれを眺めながら、電波が地上まで届いているのかは分からないが兎に角無線で報告することにした。
「アルファ6-1より、すべてのルームクリア及び証拠品を確保。行方不明の生徒らを確認した、