Blue Archive:Task Force 作:タクティカルおじさん
<米海軍特殊部隊襲撃作戦から6時間後>
フォード 特殊戦開発グループ 大尉
聖テレサ病院に向かう道中・休暇管理中
「クロノスニュースの時間です! 今日は昨日に引き続き、エデン条約調印式襲撃事件特集を組んでいますので視聴者の皆さんは楽しみにしてくださいね!!」
走行中の車内のラジオから発せられる活気あふれる声はアイドルレポーターと自称するシノンによるものあった。世間では襲撃事件についての話題で持ち切りであり、それもあってか視聴率も高い。そのため彼女らのようなマスメディアが報道をしないわけにはいかないのだ。
フォードは運転する最中、この手の内容は大変聞き飽きたものなので番組を変えようかと悩んだが、とりあえず聞いてみることにした。
「今回はなんとクロノス報道部が独占入手した沢山の情報を伝えて行きますよ〜。それじゃあ最初はゲヘナ学園風紀委員会のヒナ委員長についてです。先日の熾烈な戦闘に巻き込まれ、負傷したヒナ委員長は現在聖テレサ病院で入院していることが分かりました。いや〜まさか、あの1人で数人もの戦力に匹敵するヒナ委員長が入院するなんて予想外ですよね」
シノンはさらに続けて。
「それになんと驚くべき事が判明しました!! 現在もなお失踪している連邦生徒会長が発足した部活であるシャーレの顧問、先生も同病院に入院しているそうです。そうそう、噂では生徒に対し常習的にセク────」
シノンがその先の言葉を言おうとする前に、修正音であるピー音が流れてその後ラジオの音声が無音となってしまった。どうやらゴシップネタやシャーレにとって都合の悪い情報は隠蔽されるようだ。そして30秒ほど待っていると遂にラジオ放送が再開する。
「えーと気を取り直して....シャーレの先生の容態は回復しつつあるものの、未だに目を覚まさないだそうです。早く目を覚ましてほしいですよねぇ....。それじゃあ、次はエデン条約調印式襲撃事件でヒナ委員長らを救出に向かったキヴォトス派遣隊の兵士について────」
「ふむ、このラジオはつまらなさそうだ」
シノンがそう言い終える前に、フォードはそう呟きながら周波数を調整するつまみを弄り、今度は民間のラジオ放送が受信できる周波数から軍事用の周波数帯に切り替えた。当事者である彼にとって、彼自身の報道は単純に聞きたくないものであった。
今回の件では、彼はアメリカ軍の機密性が高いDEVGRUという特殊部隊に所属する隊員にも関わらず、少なくとも顔を晒してしまったのだ。DEVGRUはそもそもアメリカ軍においてTier 1に位置する部隊であり、顔や本名を含む全ての個人情報は隠匿されなければならないのだ。
そして今回は世間では襲撃事件の話題に関して言えば、注目が高いこともあり彼の個人情報が詮索される可能性が大いにある。そのせいで彼がこの仕事を長く続けられるかどうか怪しい。そんな風にこれから一体どうしようか? ────などと思いながら車を走らせていたところラジオから声が漏れ出た。
────「モナーク3、こちらライノ2-1。百鬼夜行自治区の偵察任務及び航空写真の撮影が完了した。これより基地に帰投する」
「ライノ2-1、こちらモナーク3。こちらへ帰還せず、近接航空支援の為に直ちにアビドスに向かってくれ」
どうやら会話の内容を聞く限り、偵察任務に割り当てられていたF16が近接航空支援の為にアビドスへ向かわされるそうだった。アビドスでは現在、海兵隊及び陸軍による治安維持活動が活発となっている。そもそも最近になって、アビドス地域の復興支援及び天然資源の回収のために前哨基地が設営されたのだった。しかし、それを快く思わなかったカタカタヘルメット団と名乗る武装勢力は、攻撃を仕掛けるようになり、度々航空機がアビドスに向かわされている。
ウトナピシュティム空軍基地からアビドスに航空機を向かわせた場合、ヘリでは2時間以上掛かりかなりの燃料を食う。そしてヘリで実際に支援を行える時間は30分程度と、かなり短くなってしまうことが問題だ。その問題を解決するために、アビドスに向かわされる航空支援の機体はヘリではなく、大抵の場合俊敏なF16に任務が割り当てられているのだ。
そうしてラジオから流れるアメリカ軍内の一連の通信を聞き終わったところで、またラジオの周波数を調節するつまみを弄る。今度は、民間放送や米軍の通信でもなく適当に。
────「はい、こちら911です。どのような緊急事態ですか?」
この会話を耳にしたフォードは、どうやらヴァルキューレ警察学校の緊急通報回線なのだろうと思った矢先に、女子生徒の叫び声が聞こえてきた。
「助けて! 殺される!!」
「落ち着いてください。何がありましたか?」
宥めようと受信係はそういうものの次の言葉で何が起きているのか、彼は察した。
「ガスマスクを着けた集団が突然撃ってきて...皆倒れたんです!」
「場所を教えてください。直ちに警官を送りますから」
「場所は聖テレサ病院です!! お、お願い早く────」
彼女がそう言い切る前に、ラジオからは群衆の悲鳴と共に銃声音が響いた。この通報の内容によれば、聖テレサ病院にて虐殺が起きていると考えた方が良いだろう。そしてガスマスクを着けた集団であるということはつまるところ、アリウス分校の部隊に違いない。あの病院には先生やヒナその他にも自爆ドローンによって重傷を負ったアリウススクワッドの生徒たちがいる。そのため、彼女らの攻撃の目的は、入院している生徒の殺害が目的だと彼はすぐに結論付けた。
そして彼は再びラジオの周波数を調節するつまみを弄り、DEVGRUの部隊専用の通信チャンネルへと切り替える。それから彼は無線機のスピーカーを手に取り、呼び掛けた。
「こちらフォード。管理休暇中だが緊急事態が起きた。直ちに聖テレサ病院にチームを送ってくれ、アリウスの虐殺が始まっているぞ!」
彼はそう呼び掛けた後に一段とアクセルを強く踏み込むと、愚痴を吐いた。
「ちくしょう、なんで奴らは攻撃を続けるんだ?」
フォードはピアーズと共に管理休暇中であるにも関わらず、彼はヒナと先生の見舞いに行こうと思って外出許可を貰った上で、病院に向かっていた。本当は戦闘などするためではないにも関わらずだ。
彼の車両は聖テレサ病院に着くまであと50分ほどの距離である。
<同日9:20>
聖テレサ病院
虐殺が行われている聖テレサ病院に初動対応に当たったヴァルキューレ警察学校の生徒たちは、アリウススクワッドと応戦していた。しかし容疑者である彼女らは、防弾ベストと連射性と貫徹力に優れたライフルを装備しており、たかが.38スペシャル弾という貫徹力がない銃弾を扱うS&W M60では分が悪かった。
「こちらKY13! 容疑者は防弾ベストとアサルトライフルを装備している!!」
「パトカーから離れないと貫通しちゃうよ!」
S&W M60を使用する一人の生徒が本部にそうして報告する中、もう一人のべネリM4を装備している生徒が遮蔽物として使用しているパトカーから離れることを提案した。なぜならパトカーの素材は残念ながら、アサルトライフルが使用する小口径高速弾を阻止することが出来ずに貫通してしまうからだ。そうして二人のヴァルキューレの生徒がパトカーから徐々に離れていく。そうすると、次に遮蔽物となりそうなものを探すために現場の周囲を見渡した。
見渡したところ周囲はかなり酷い状況だと改めて感じさせられた。彼女らは病院の入り口より少し離れた位置で応戦しているが、その入り口の近くには生徒らが倒れていた。まさに血の海だ。
「うっ..」
もちろんその光景に耐えられなかったリボルバーを持つ彼女は、見慣れない光景に吐きそうになってしまう。そもそもこういった流血を伴う戦闘は、キヴォトスにいる生徒らがまず普通は体験しないことであり、彼女らの目線に立っていえば異常な光景とも言える。しかし、現実はまさに異常な光景が映っている。
「こっちに隠れよう!」
ベネリM4を持つ生徒はカートリッジをリロードしながら、コンクリートブロックに身体を隠す。流石に高貫徹力を誇るライフル弾ですら貫通は出来ないだろう。そしてもう一人の生徒がこちらへ来るまでに援護を行う。ビデオゲームやアニメーションなどで登場するショットガンはよく10メートルの射程がせいぜいと言われるものの、現実のショットガンは散弾ですら最大で50メートルの有効射程距離を持つ。
そうして援護を行いながらこちらへ走って向かってくる生徒は、背中に一発の7.62ミリ弾が命中する。そして血しぶきを上げながら倒れこんでしまった。
「痛ッ!!」
大口径弾のストッピングパワーは凄まじく、撃たれたS&W M60を装備している生徒は地面に這いずりながらこちらへ向かってくるが、彼女はあのガスマスクを着けている奴らにさらに撃ち込まれた。そして、地面に新鮮な血が滴ると二度と動かなくなってしまった。
「そ、そんな..」
遮蔽物に隠れている生徒は目の前で起きた光景に、動揺を隠しきれず応戦するのを止めて遮蔽物に完全に身を隠した。そして無線機を使って本部に報告する。
「こちらKY13、警官が倒れました....至急、SRTの部隊の応援を...」
彼女は恐怖のあまり、現在閉鎖中であるSRT特殊学園に属する部隊の応援を本部に求めた。こういったヴァルキューレ警察学校では対応しきれない事案は、SRT特殊学園が対応するのが通例であるが彼女たちはもう存在しない。かといってヴァルキューレにはSRTと同等な訓練課程を経た特殊部隊を保有しているわけでもない。
「こちら本部より通信可能な全ユニットへ、
彼女はそうして報告を終えると、本部から指令される通信を聞きながら恐怖のあまり完全に蹲まるのだった。
<同日9:57>
聖テレサ病院
警備局が採用しているベアキャットの他、アメリカ軍から有償供与として供与されているハンヴィーにパトランプを装備している各種装甲車が、聖テレサ病院を包囲していた。またそこにはライオットシールドとショットガンを装備した警備局の生徒らがいるものの、容疑者側の装備の方が彼女らよりも優れていたため誰一人として突入しようとしなかった。
そんな現場ではテロ事案ということで、対応可能な公安局員らも呼び集められていた。そして、公安局員らは容疑者側との交渉のほか突入する際に必要な情報の収集といった事前準備を行っている最中だ。そこではギザ歯に、対応中にも関わらず右手にはコーヒーが入った肉球のマークがついたマグカップを持つ公安局員...同じ局に所属するのであるならば、知らない人がいないはずの人物が遅れてやって来た。
「まったく、公安局もそろそろ警備局の頭と体力無しの集まりにでもなったのか?」
「お、尾刃局次長!?」
ヴァルキューレ警察学校において『ヴァルキューレ狂犬』とも言われる彼女は、対応に当たっている公安局員らの手際の悪さを見るや否や、そう活を入れた。
「公安局は頭で勝負するのが当たり前だろう? なのに誰1人として突入作戦を立案出来ていないことは問題じゃないか」
彼女はそういうと、聖テレサ病院内部の構造図をプリントアウトした紙を作戦会議用の机に広げた。そしてカンナはこの建物について説明する。まず聖テレサ病院は、医療関係者のみ立ち入ることができる地下3階から地上7階まであるということ。そしてこの病院にはもう一つ重要な情報として、4階にある
「ところで容疑者側の要求は?」
カンナは立て籠もっている容疑者側と交渉をしようと思い、そう尋ねた。するとちょうど彼女が来る数分前まで拡声器で交渉を呼びかけていた局員が答える。
「反応はまったく...」
彼女は軽く首を横に振った。大概の立て籠もり事件では身代金や、逃走手段の確保或いは逮捕された人物の解放といったことを要求してくるが、今回のように全くもって反応がないことは場数を踏んできたことがあるカンナにとって不気味でしかなかった。
「ったく、SRT特殊学園は閉鎖中だから応援として呼ぶことが出来ないし....かといって突入に特化した部隊が居ないから、うーん...」
カンナは一人でそうぶつぶつと独り言を言いながら悩む。最悪の場合、突入は警備局の奴らに任せればいい。しかしそうなると今回の相手が持つ銃器が特殊であるため、負傷どころか死にかねない状況になるのは必至だ。
また今までは困難な状況に限っては、SRTの特殊部隊に突入を任せていたのには理由がある。それはヴァルキューレ警察学校には、そのSRT特殊学園と同じようなカリキュラムが無いというのは勿論のこと、それを習得できるほど優秀な生徒は居ないのであるからだった。
「尾刃局次長、負傷した生活安全局の生徒についてのお話がありますが大丈夫ですか?」
「問題ない」
カンナはそう返すと、報告を行う公安局員は支給されているタブレット端末を操作しながら伝える。
「初動対応に当たっていた生徒は先ほど病院に搬送されたそうですが、出血がありましたが無事だとのことです」
「そうか、なら良かった...」
既に生活安全局の生徒一人が、容疑者側のたった一発の銃撃で重傷を負ったのは彼女も知っていたことだった。そしてたった今、その生徒の容態に関する報告を受けて安堵した。
「ただやはり容疑者側は特殊な弾丸を使用しているようです。考えもなしに突入させると碌なことが起きないでしょう」
「ああ、わかっている。報告、ご苦労」
カンナはそう伝えるとマグカップに入っているコーヒーを一口だけ、飲んだ。いつもは酸味を感じにくいはずだが、なぜか酸味が強かった。
「もうこれだけ時間が経っていたのか」
カンナはマグカップを病院内部の構造図を広げているテーブルに起き、左腕に身に着けている腕時計で時間を確認するとそう述べた。コーヒーは時間が冷めれば冷めるほど、酸味が際立つ。まだそこまでコーヒーが完全に冷え切っているわけではないが、少なくとも淹れた時よりは格段と冷たくなっていたのだった。
カンナの腕時計が指し示す時間はちょうど彼女が現場に到着してから、約40分ほど経過した10時40分頃だった──────・・・・・・
・・・・・──────「うん、ヒナのこと信じているから」
優しい言葉が私の意識を突き刺す。誰の言葉かと思えば、先生だ。
......私はあの後どうなった? 身体が熱くて、意識がぼんやりしたあと....確か大人が沢山居て、止血や輸血もされた上で車に載せられて────
────とりあえず、起きないと。
そうやって重い瞼を開けてみると、私の目前の光景には見知らぬ天井が。周りを見渡すと心拍数を計測し、表示する機器が私の鼓動と共に機械音を発していた。そして私はどうやらベッドの上で寝ていたようだった。左隣の机にはデジタル時計が設置されており、日付を見てみると
「ううっっ、まだ体が痛い..」
体を少し動かしてみるが被弾した箇所が悲鳴を上げることはなく、むしろ快適であった。やはり私はヘイローを備えているキヴォトス人の頑丈さというものを再認識した。
それじゃあ....先生はどこなのだろうか?
私は心からずっと先生の無事を願っているのは勿論だ。ただ....あの時、守れなかったことが凄く後悔している。そんな風にあの時のことを思い出すと、頭の中で様々な痛ましい先生の様子が駆け巡る。
血が滴れ、体にはいくつもの銃創があり、苦痛な顔を見せ────
私自身に嫌気が差してきた。
どうして信頼してくれた先生を守れなかった?
どうして憧れの存在を守れなかった?
どうして、どうして、どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして──────・・・・
誰にも認められないことほど辛いものはない。
そんな風に気分がどんよりしていると、耳に乾いた銃声と悲鳴が聞こえてくる。院内で発砲?
そういった馬鹿げたことをする生徒がいるものかと疑ったが、明らかに院内から聞こえてくる。それも連続で。
何かがおかしい────
私はそう思うとベッドから降りて立ち上がる。まだ本調子じゃないが、足元に置いてある
だけど────私は再び戦うことを決めたのだった。
キレそう
キレてる
キレた
実はこの話を書くのにあたって一時5000文字ぐらいまで行ったのですがなぜか保存のボタンを押したにも関わらず全て消えました(?????)