Blue Archive:Task Force   作:タクティカルおじさん

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追加ストーリー読みましたがヒナちゃかっこいい....


43:エデン条約編:The Day Before

<自爆攻撃から1時間後>

ウトナピシュティム空軍基地 入場管理ゲート

 

 

 

 

 「警備2班より本部へ、遺体の収容状況の報告を行う。2名の遺体の収容は完了、しかしそれ以外は損傷が激しく困難だ」

 

 

 1時間前に発生した自爆攻撃の事後処理を行っている空軍警備隊の男は、無線を用いて連絡を取り行う。比較的、車から離れていた2名の遺体は損傷が少なく人としての原型を保つことが出来ており、回収することが出来た。しかし、それ以外の車両に近くに居た5人のうち3人は、ただの肉塊と化したようであり、回収は困難だった。

 

 そして車両に乗っていたアリウス生二人は、そのまま生きていたため拘束され、拘留所に送られたのだった。そして一見、一連の事態が収拾したかと思えるがまだ問題があった。それは入場管理ゲートの鉄柵が爆発で吹き飛ばされた他、キヴォトスで初めて自爆攻撃をこの基地で許してしまったことだった。

 

 アメリカよりも銃社会が形成され、第二次世界大戦中に開発された戦車が当たり前のように一般道を通行しているこのキヴォトスは、アフガニスタンよりも酷く治安が悪い。その為、こうして攻撃を許してしまうということは、即ち今後の攻撃に同様の手法が使われてしまう可能性が十分にある。

 

 通用する攻撃方法を得た敵────それが如何に恐ろしいことかは、ベトナムのジャングルにおけるゲリラ戦やアフガニスタンでのIED等で学んできたことだ。

 

 

 「あの至近距離で炸裂したんだ。形を保つことは無理さ」

 

 

 同様に事後処理を行なっている若い隊員はそう言うと、次に長い間空軍警備隊に属する中年男性が口を開いた。

 

 

 「俺が見たことがある人間シチューよりはマシだよ」

 

 

 彼の言う『人間シチュー』とはイラク戦争にて、空軍に移籍する前の陸軍で従軍した際に目撃したものだった。彼は、爆発に巻き込まれた車両の清掃を担当していたことがあり、その時に対戦車用の地雷によって破壊されたハンヴィーの清掃を行なったことがあった。

 

 その際にハンヴィーの車両下部から爆発の炎によって肌が爛れ、四肢が文字通りぐちゃぐちゃとなってしまっている3人の光景を目にした事があった。その光景を見た彼は、当時の仲間達と共に『人間シチュー』と呼んだ経緯があった。

 

 

 「5人が死亡の自爆攻撃ねぇ....こりゃニュースに乗るぞ」

 

 「その心配は必要無い。もう既に人集りが出来ているからさ」

 

 

 実際に入場管理ゲートより30メートルほど離れた場所に位置する手動式のパスゲートにて、爆発音に気付いた野次馬達が既に爆発から20分後を目処に殺到していた。その中には、キヴォトスの報道界を牛耳るであろうクロノス報道部の姿は目に見えなかったが、何人かは事後処理に当たっている彼らをスマホで撮影したのだ。

 

 SNS上に拡散するのは時間の問題だろうし、合衆国でも国防省がこの自爆攻撃に巻き込まれたことを発表するには違いない。どちらにせよ知られる。

 

 

 「異世界と合衆国...どちらも何も変わらないな」

 

 

 未だに熱心な好奇心を示す人々が増えている光景を見た男はそう言ったのだった。

 

 

 

 

 

 

<同時刻>

FOSクランプス ゲヘナ自治区

 

 

 

 病院での戦闘を終えたDEVGRUのアルファチームとフォード達は、スラム街にて秘匿された基地に到着し、装備品の点検を行うのと同時に拘束されたアリウス生を移送した。

 

 それからポースティン大佐は隊員らの前で今夜の予定を話し始める。

 

 

 「ナイトストーカーズが運用するチヌークが、今夜3時にアラバ海岸のヘリポートに着陸する予定だ。救出した負傷者の他、深夜に強襲したアジトで回収した証拠品も移送する」

 

 

 負傷した先生らは、今回襲撃された病院での継続的な延命措置及び治療行為は不可能という観点と再びアリウスが送り込む部隊によって、殺害される可能性が高いと判断された。そのため、より安全な場所であるウトナピシュティム空軍基地に属する軍病院に移動することが決まった。

 

 

 「あともう一つ。今日付で、一時的にDEVGRUアルファチームは、ウトナピシュティム空軍基地へ帰投する。まともな睡眠は取れていないのは重々承知しているから、荷物を早く纏めるように。質問は?」

 

 

 ポースティン大佐が質問の有無を確認したところで、バンダーマンが挙手する。それに気付くと、軽く相槌を示して彼が喋り始める。

 

 

 「待機命令が発令されたということで宜しいか?」

 

 「その通りだ」

 

 

 ポースティン大佐は静かにそう返答した。

 

 ────ウトナピシュティム空軍基地で待機命令が発令されたと言うことは、間も無く大きな何かの作戦かが発動する前兆ということだ。それに加えて、アルファチームは活動範囲をゲヘナとトリニティ自治区に定めていた。それにもかかわらず、わざわざD.U.に位置する空軍基地での待機命令が意味することは余程、重大な作戦が行われるための事前準備だと言える。

 

 フォード自身もかつてはアビドスでの特殊作戦に参加したことがあるが、その際は基地でヘリと共に待機命令から作戦が発動するまで、待機した事があった。つまり、これから行われる作戦は捕縛か殺害又は、救出の任務のいずれかが課せられてもおかしく無いと言う事だ──────・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

<出発時刻から5時間前>

 

 

 

 

 荷物を纏めた隊員らは、すぐにでも基地から出ることが出来るように車両に荷物を詰めていた。この基地を多く構成していたアルファチームがここから退去するため、医務官やDEVGRUではない数名のSEALs隊員らは残されるということになる。暫くの間は、優秀な彼らに任せておけば問題はないだろう。

 

 

 「ここに居るのも今夜が最後だ」

 

 「ああ」

 

 

 その光景を見ていたバンダーマンとフォードは言葉を交わす。バンダーマンは長い間、この基地を根城として活動していたのもあり、離れることは少し緊張していた。それに加えて重大な作戦が発動される前に待機命令を下されたということも合わさって不安な感情を抱いていた。

 

 

 「あの一年近い戦いが終わるのか?」

 

 

 バンダーマンは尋ねた。

 

 

 「さぁ? ビンラディンを殺害したデルタみたいに上手くいけばどれだけ良いことか」

 

 

 フォードはそう返すと、二人は屋内の兵舎施設に戻った。それから今後について話し合った。

 

 もし予想通り作戦が発動され、それが終了した3週間後には、すぐに本国ではクリスマス一色となっていること。そして彼らはそれでも任務の為に、家族や愛人と会えることが出来ないこと。更には、大義名分は達成した故にキヴォトスから撤退命令が下されてもおかしくは無いこと等々。

 

 実に様々な変化が彼らの話の中で予想された。

 

 たかが一年という月日は彼らにとっては長いようで短かった。異世界だろうが海外であろうが任務は体と時を麻痺させる。2人はそれをアフガニスタンで実際に学んだ。

 

 

 「国連を介入させる事なく、一年もこの国がこの異世界を独り占め出来るのは驚いたよ」

 

 

 不意にバンダーマンが呟いた。

 

 

 「俺たちの国は軍事産業で成り立っている。燃料費や弾薬を戦争で、ばら撒かないといけないぐらい経済は太り、常に最新技術を渇望する貪欲な国だ」

 

 「そうだな。今頃NATOが介入したら....いや、碌な事が起きないな」

 

 「ロシアと中国に侵略者と言われるか....」

 

 

 フォードがそういうのと同時に2人で苦笑した。

 

 

 「そういえば....」

 

 

 バンダーマンが何かを思い出したようでそれを告げる。

 

 

 「暗視装置は持って来たか?」

 

 「すっかり忘れていた。今すぐ用意してくるよ」

 

 

 フォードはそう言って、暗視装置が入っているバックパックを置いてきた兵舎へと向かった。それからその兵舎に辿り着くと、彼はベニヤ板で仕切りにされている各個人の部屋に行くのではなく、その部屋の中央に位置する長いテーブルへと進んだ。

 

 長いテーブルの上には、彼の所有物であるオリーブドライ色のバックパックが置かれていた。それから彼はバックパックの中身を開けて、暗視装置とヘルメットに取り付け無ければならない暗視装置用の追加バッテリーを取り出す。

 

 そうして取り出した所で彼は慣れた手つきでヘルメットにそれらを装着しようとした時だった。何処からか啜り泣く声と共に鋭い金属製の音が聞こえているのに気付いた。それもかなり近くから。

 

 一体誰か────

 

 彼は気になったため、声が聞こえてくる方へと向かった。

 

 

 ────「ヒナ?」

 

 

 彼女は部屋の隅の方────それも丁度、照明が当たらない死角で床にへたり込んでいるのが見えた。そして彼女は、何処から取り出してきたのか分からないAK-308の銃口を彼女の頭の近くに向けていた。彼女は、彼の呼びかけがあったにも関わらず黙り込んでおり、目を見てやると虚ろな眼差しだった。

 

 彼は再び呼び掛けた。

 

 

 「大丈夫?」

 

 「あの子は死んだのよね...」

 

 「ああ....」

 

 

 彼女は一層、震える両手でAK-308を強く握り締めつつも少し両手がハンドガードからトリガーに近付けているように見えた。

 

 

 「私の目の前であの子が死んだのよ...私が撃ったせいで────」

 

 「分かっているよ。だけどそれは仕方なかった」

 

 

 実際、あの状況だとヒナが反撃しなければ彼女は死んでいただろう。それに近くに落ちていた使える武器がアレしかなかったのが問題だった。彼女が悪いわけではない。

 

 

 「私はもう....無理。先の戦いでは先生も守れなかったし、あの子を殺してしまった...」

 

 「あの時、君が率先して戦闘していなかったら先生は死んでいた。降下した俺たちよりも君は頑張っていた」

 

 「いや、それは当然やるべきことだったから....」

 

 

 彼女が握るAK-308は更に両手の揺れによってカチャカチャと何回も金属音が奏でられた。ヒナは完全に強張っていた。あの銃にはまだヘイローを破壊する銃弾が装填されているはずだ。万が一の為に発砲が出来ないようにしたかった彼は、銃が揺れないようにゆっくりと両手で抑えた。

 

 

 「やっぱり私は引退すべきだったのよ...」

 

 「ヒナが頑張っているのは分かっているよ」

 

 

 彼はそう言うと、まずAK-308のマガジンを外した。それからまだチャンバー内に装填されている弾丸を取り出す為に、チャージングハンドルを後退させた。そうすると弾丸が排莢されて落下し、床に軽快な金属音を立てた。

 

 ひとまずこれで彼女が発砲する可能性はなくなった。

 

 

 「ヒナが経験したことは辛いことだったのは分かっている。それでも君はそれを乗り越えようと頑張ったんだ」

 

 「私は乗り越えられない....小鳥遊ホシノみたいになれないのよ」

 

 

 彼女の頬から涙が零れた。

 

 

 「私は頑張った!! 先生に褒められたかった!!!」

 

 「先生は今、意識不明だ。もう皆が頼れる彼が居ないんだ」

 

 「分かっているよ...それは分かっている....だけど」

 

 

 彼女は嗚咽にまみれた声でそう言った。余程、今まで辛かったのだろう。彼女は先生の為に頑張ろうとしたが、その頑張りを見てくれる彼は今は居ない。頑張りが認められないことほど辛いものはないのだ。

 

 

 「やっぱり私は...小鳥遊ホシノどころか、貴方達みたいな大人にもなれなさそうね。貴方達は────ヘイローがないにも関わらず勇敢で、強いのに...私は臆病で甘えん坊で...」

 

 「君はよく頑張った」

 

 

 彼女にとってはやはり褒められなかったのが辛かったのだろう。だから彼は本心から褒めることにした。

 

 

 「いつも頑張っていてありがとう。先生を一緒に助けようとしてくれてありがとう」

 

 「....本当に私は誰かの役に立てたの?」

 

 「ああ」

 

 

 彼女はそう言われると更に頬を涙で濡らした。

 

 

 「こんな弱虫な私でごめんなさい」

 

 「気にしないさ」

 

 

 彼女は人を殺すと言う子供にとって辛い経験をさせてしまった。彼にとってはそれは申し訳ない気持ちと共に、事の発端である首謀者に対し怒りの気持ちで埋め尽くされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────「ヒナ、無理にここまで来る必要はないだろう」

 

 「...私の気が済まないのよ」

 

 

 深夜3時、誰も居ないアラバ海岸のヘリポートにて二人は言葉を交わした。既にチヌークは着陸しており、荷物の積載でやや手間取っていた為その合間に二人は話していたのだった。そしてヒナはあまり目にしない中型輸送ヘリであるチヌークの機体の姿と隊員らが積載する様子を見て、関心を示していたようだった。

 

 そしてアラバ海岸はキヴォトスにおける数少ないリゾート地の一つである。そして、わざわざここを着陸ポイントとして選んだ理由は、ゲヘナ自治区に位置するにも関わらず治安がややマシだったからだ。もしあのスラム街の近くにでも着陸すれば、ゲヘナ学園の生徒が興味本位で集まるのと同時に戦闘が始まっていただろう。

 

 

 「異世界の軍隊(アメリカ軍)はたった一つの部隊のためにすぐにヘリを用意するなんて...予想外だわ」

 

 

 彼女は暗闇に包まれる隊員らがよく見えなかったため目を凝らしながらそう言った。

 

 

 「皆が付けているアレ(暗視装置)は本当に暗闇でも見えるの?」

 

 「もちろん。ただ視界は最悪だが」

 

 

 GPNVG-18は第3世代の4眼式暗視装置である。多くの一般の兵士らは単眼式又は双眼式の暗視装置が支給されるが、これらは視界が約40度ほどであったりとかなり狭い。それだけではなく、特に単眼式の場合だと物体との距離が掴みにくいという欠点がある。だが、GPNVG-18は4眼式にすることで約97度の視界を確保することが出来た代物だ。それでも人間の通常の視野よりは狭い。

 

 総合的に言えばこの暗視装置は非常に優秀であるが唯一の欠点として一基当たりの単価が非常に高価であるため、アメリカ特殊作戦群傘下の特殊部隊でしか採用されていないことぐらいだ。

 

 

 「そろそろ積載が終わりそうだな」

 

  

 フォードは隊員らが積載を終えた様子を確認したところでそう呟くと、チヌークの方へと向かい始めた。それから機体に搭乗したところで彼はヒナに左手を振って別れを告げた。

 

 

 「墜落しないように祈ってくれ」

 

 

 彼は縁起でもない冗談を口にしたところでバンダーマンに報告する。

 

 

 「全員乗ったぞ」

 

 「今夜は新月だ。RPGは兎も角、熱源感知式のミサイル程度じゃないと墜落するわけがないだろう」

 

 

 バンダーマンとフォードはMH-47の機内で言葉を交わした。それから彼は同乗しているポースティン大佐に報告する。

 

 

 「大佐、チーム及び重要人物の全ての搭乗を確認しました」

 

 「了解、出発しろ」

 

 

 ポースティン大佐がバンダーマンからの報告を受け取ると、大きな声でパイロットに伝えた。それからチヌークの後部に取り付けられている後部ハッチが、閉められると機体は上昇し始めた。そうしてチヌークがランディングゾーンから離れると、D.U.地区がある方へと向かい始めた。

 

 彼らは1時間半のフライトを経てウトナピシュティム空軍基地へ向かうのだった。

 

 

 




この世界線では実は2001年に行われたウサマ・ビンラーディンの追跡作戦が成功しています。そのため史実で殺害された作戦である海神の槍作戦は発動していないということになります。しかし、早期に殺害したため予想以上に中東では戦闘が泥沼化し、新たな対テロ戦争であるキヴォトスにおいてアメリカ軍が大量の部隊を派遣出来ていない要因の一つとなっています。

またキヴォトスと現実の世界では時差として3か月ほど時期がズレています。

(そろそろ特殊部隊中心の話からガチガチ分隊単位の話書きたい)
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