Blue Archive:Task Force 作:タクティカルおじさん
アイン、ソフ、オウル...復活希望
少佐が拉致されたという一報が入ったことで、すぐさま統合方面軍の最高司令官であるミリー陸軍大将の方へと迅速に伝えられた。それから20分ほどを経てペンタゴンに連絡をしたのち、キヴォトスに派遣されている部隊のうち各戦闘団の団長が大将の執務室へと招集された。
これから行うことは正式な命令が下される前に作戦の大まかな方針と立案に関することであり、もちろん陸軍の関係者だけではなく、空軍の部隊の調整を担う隊員なども集められたのだった。
「状況を説明してくれ────ハンプトン大佐」
「了解しました。午前10時ごろ、ミレニアムサイエンスクールに向かったケリー少佐と護衛要員二名が機械生命体との戦闘に遭遇。護衛要員によれば防衛の為、ある生徒によって起動された機械生命体を破壊したそうです。
その際に負傷した生徒一名は我々のヘリによって、後送されて軍病院で治療を受けています。戦闘から40分ほど経過し、ヘリの誘導のために護衛要員と少佐が孤立したタイミングで、機械生命体を起動した生徒と共に拉致されたと聞いております」
ハンプトン大佐は現地にいた護衛から報告された情報を基にそう言った。そして、ハンプトン大佐がタブレットを操作すると、プロジェクターからスクリーン上に衛星から撮影されたエリドゥ一帯の様子が映る。
「ケリー少佐の居場所は掴めているか?」
「はい。エリドゥの中心部、中央タワーに生徒と共に居ると情報が先ほど入りました。」
「なるほど。それにしてもミレニアムサイエンススクールか...陸路での即応は難しいな」
ミリー大将は彼の執務室内にあるキヴォトスの地形図を見ながらそう言う。キヴォトスの行政の中心地に位置するウトナピシュティム空軍基地から、ミレニアムサイエンスクールとの直線距離は180kmだ。陸路で向かおうとするならば6~7時間ほど必要とする。
「大将、その通りであります。我が第二戦闘団はブラッドレーやエイブラムスといった重装甲車両を重点的に編成している為、火力と数は揃えられますが即応は困難です」
第二戦闘団の戦闘団長を務める大佐は、実戦に参加したいところだが、命令から出撃そして作戦地点への到達時間などを加味した上でそう言った。
ミリー大将には分かりきっていたことだが、移動時間を考慮した上で陸路で移動するのは避けるべき手段だと判断した。今、我々に必要なのは速度だ。
「ミリー大将、ここはやはり我々のヘリコプターを主軸とした
第二戦闘団団長の右隣に位置する兵士────カーター大佐はそういった。カーター大佐は、ヘリコプターによる空中機動作戦及び強襲作戦を展開することが可能な第三戦闘団団長だ。
彼は大佐かつ戦闘団団長という立場ということもあり、実際に戦場に出て戦うわけでは無い。だが、彼らはキヴォトスに派遣されて以来、殆ど実戦に参加出来ていない兵士────AH-64Eの搭乗員らの間で鬱憤が溜まっていることを知っていた。
そういう事情もあって、なんとか彼らに出番を与えられるチャンスがやって来たというわけだった。
「む、そうか」
「実際にヘリコプターならそこまで時間を必要としない距離ですし、迅速に作戦展開が可能です」
「敵を一気に叩いて、少佐を素早く救出し、戦場から離脱する──────まさに我々が行わんとする作戦そのものでしょう」
ハンプトン大佐が基地からエリドゥとの距離についてそう述べると、カーター大佐は彼の擁護の下、語気を強めてそう言った。ここ半年以上は戦闘に参加できておらず、代わりに第二戦闘団に出番を取られていた故の反動だ。
「しかし実際に要塞都市の正確な位置は兎も角、敵戦力の規模と能力が不明だ。いくらこの世界は、MANPADSを殆ど見かけることが無いとはいえ危険だろう」
カーター大佐の言葉に対して、第二戦闘団の団長はそう返した。実際、ヘリコプターが兵士を降ろしたり載せる間は滞空や離着陸するわけであるが、その瞬間は地上から攻撃に晒される瞬間でもあり、一番危険である。何としても作戦地点に近付けるように、付近の安全を確保しなければならない。
「衛星写真によれば、敵は小火器を武装しているロボットが凡そ2個大隊規模だ。だが...」
部隊ごとにAMASが巡回していることを発見した衛星写真数枚とは、異なる写真を眺めたハンプトン大佐が言葉を詰まらせる。
「この
「高層ビルに相当する大きさの戦闘ロボットか...」
「ダサッ...ええ、武装付きの大型のロボットですね」
その場に参加していた者は巨大で、いくつかの武装を装備しているロボット────アヴァンギャルド君の姿を見て、そう反応を示した。確かに彼らはキヴォトスでは、戦闘可能な自律ロボットであったり意思を持ったオートマタの存在を確認しているし、戦闘したこともあった。
それだけではなくカイザーPMCや一部の資金が潤沢な軍事組織では、ゴリアテと呼ばれる中型の二足歩行型戦闘ロボットを運用していることも米軍側は認知していた。しかしながら、ゴリアテは二階建て家屋の大きさぐらいであり、一方で彼らが釘付けとなっているアヴァンギャルド君はそのゴリアテの大きさの数倍近く大きいことが一目瞭然であった。
またアヴァンギャルド君は4本腕ということもあり、武装の種類も多いことが彼らの注目を集めたのだ。脚部は都市戦にはやや向かない履帯であり、右腕上部にランチャーと下部に盾、左腕上部はアサルトライフルと下部にミニガンを装備している。
かなり重武装な上に、ロボットそのものが巨大であるが故に口径も我々の兵器とは明らかに大きいのがはっきりとわかる。
「重武装なのは間違いない。問題は、空を見ているかどうかだな」
「対空能力は?」
カーター大佐はハンプトン大佐に質問した。最もヘリコプターという航空戦力を投入する上では、必要な情報だったからだ。
「丁度、一か月前に空軍がそいつの脅威評価をしたようだ。彼らに聞いてくれ」
「まず、AWACSのような高度な捜索レーダーは積んでいません。またミサイルなども積んではいないですが、火器管制用のレーダーは確認しています。
火器を装備している胴体の旋回は速いですが、飛行中のF-16のことを追尾しきれていません。やはり、武装が銃器に依存しているのもあるのでしょう」
近くにいた空軍パイロット────ウォルト大尉はそう言った。そして隣にいるデイビッド大尉も当時、脅威評価をした兵士の一人だった。
「あの大型ロボはヘリコプターや歩兵、装甲車両といった鈍足な目標に対抗するために作られたようです。
俊敏に空を飛び回る戦闘機を相手にすることは、想定外なのでしょう。戦闘機で優先的に排除すれば、航空作戦への影響は限定的になる可能性があります」
パイロット二人はそう進言したところで、必要な情報が揃った。あとは第三戦闘団の内部の人員で細かい作戦計画を立てれば、問題はなさそうだ。
「よし。正式なオーダーの前に、各戦闘団ごとに陸空との統合作戦を含めて、ケース別、敵戦力規模に応じて少佐を救出する作戦を立案せよ。第二及び第三戦闘団は出撃に備えておくように、以上だ」
大方の作戦の方針を決めた第三戦闘団の兵士らは、別室のブリーフィングルームにて作戦を練ることにした。そこでは作戦の戦闘に関わる部分について決定するために、AH-64E編隊長や先ほどの会議に参加していたパイロット二人、実際に全部隊を指揮する中佐二人の他関連する部隊の兵士が集められた。
「今回の作戦では、ブラックホークとアパッチによる
敵戦力は配布したこの資料の通りだ。各自、確認してくれ」
カーター大佐は改めて周囲に知らせる。そして、各兵士たちは配布された資料に目を通す。資料には、想定される敵戦力及び作戦地域の衛星写真が記載されている。加えて、作戦に参加するであろう部隊もある程度記載されていた。
「大型ロボットがいるのか? それにしても奇妙な姿で不格好すぎる...いや、それよりも武装が多すぎるな」
「図体がこれだけデカいと、ヘルファイア斉射でも仕留めるのは厳しそうだ」
アヴァンギャルド君の姿を収めている衛星写真を目にしたアパッチ隊の編隊長は、率直にそう述べた。
ヘルファイアは型番によって多少差異はあるが、凡そ7km先の目標をロックオンすることが可能な対戦車ミサイルである。性能としては第三世代主力戦車の比較的薄い装甲を貫徹することが可能であり、致命的な一撃を加えることが出来る爆薬量を備えている。
しかしヘリコプターはいくら空中機動が得意とはいえ、比較的鈍足だ。7km先からヘルファイアを撃とうとする前に、相手の対空能力をある程度備えている兵器に近付いたことで、攻撃されてしまったら元も子もない。
相手の射程が不明である以上、闇雲に近付くのは自殺行為に等しいのだ。
「真っ先に叩いておかないと降下する地上部隊が蜂の巣にされるぞ」
「ケネディ中佐、何かいい案はないのか?」
ケネディ中佐は呼び掛けられると、すぐさま説明に入る。
「そうですね...成功確率は高いですが、対空能力次第で損耗の可能性ある作戦になりますが...」
彼はそう切り出す。レイノルズ中佐の隣にいるケネディ中佐は、第三戦闘団の副指揮官であり、作戦参謀に当たる隊員であった。なおレイノルズ中佐は、一言も喋らず地図を眺めているばかりであった。
航空部隊指揮官という立場であるにも関わらず、
「まず相手は移動出来るので、F-16のマーヴェリックで履帯を破壊して足を封じます。それから作戦地点外周で待機している砲兵隊に攻撃させ、センサー類の機能妨害を行います。
その一瞬の隙に、空域に進入したアパッチ隊のヘルファイアで破壊します。出来れば、エイブラムスの徹甲弾をしこたま叩き込んでやりたいところですが...」
ケネディ中佐は地図上にF-16とアパッチ隊の攻撃開始線を書き込む。それから、エリドゥの外周────都心から17km離れた位置に砲兵隊が待機する地点を赤いマーカーで示した。
「エイブラムスか...投入したいところだが無理だろう」
カーター大佐は諦めた様子でそう言った。実際に、時間さえあれば即応が可能な距離ではある。しかし、エリドゥは要塞都市だ。
一般的に都市部における戦車は、建物から最も装甲が薄い天板であったり、物陰から側面を狙うことが容易い。たとえ随伴歩兵が居たとしても、相性は最悪といったところだ。
どちらにせよ、時間と戦場の制約からエイブラムスを投入するのはナンセンスである。
「ロボットの破壊を確認次第、アパッチ隊にLZを確保してもらいます。その後目標がいると思われるポイントに歩兵分隊を4個降下させます。砲兵隊は分隊が降下後、LZより半径6kmの交差点及び道路を集中砲撃してもらいます」
ケネディ中佐は地図に更に砲撃地点となる領域を示す円を複数描き、斜線を引いた。これらの砲撃地点は作戦地点へ繋がる要所であり、AMASたちが砲撃を避けて通ることは不可能だ。
「アパッチ隊は分隊が目標を救出するまで、分隊の近接航空支援並びにLZ周辺に接近する脅威の排除を行ってもらいます」
「合点だ」
編隊長は気前よく返事した。彼はこれから実戦に参加出来るという事に、期待感が高まっているかもしれない。
「F-16は作戦開始前に都市の重要区画を空爆後、高高度で
「聞いたか? 俺たちは都合の良い女扱いらしい」
「笑えるな」
パイロット二人は彼ら自身の扱いと出番が無い故に、そう言葉を漏らす。キヴォトスでは敵戦闘機などは見掛けることが無く、戦闘ヘリか民間の飛行機程度しか存在しないのである。しかも飛んでいる数は、地球側と比べて圧倒的に少ない。
現代戦におけるドッグファイトをこよなく愛す戦闘機乗りにとっては、このような現代的でハイテクを駆使した空爆などを行う作戦は、さぞかし寂しい気持ちに至るのは違いない。
「よし、砲兵と降下する歩兵は第二戦闘団を展開させるとして...一つ問題がある」
先程から地図を眺めているアパッチ編隊長はそう漏らす。
「エリドゥはミレニアムサイエンススクールの自治区だ。作戦開始前から砲兵を展開させなければ、支援ができないことは重々承知だろう。しかしながら自治区である以上、勝手に侵入されたと思われたら不味いぞ」
「最悪、大規模な戦いに発展してしまうか...それは避けなければいけないな」
カーター大佐は頭を抱える。今回の一連の発端は、ミレニアムサイエンススクールの生徒会長が独断で起こしたことだ。そして、彼らには『陸軍少佐が拉致された』という大義名分がある。
しかしながら実際に部隊が自治区に到着すれば、生徒たちは混乱するだろう。それを発端にさらなる戦火が広がるのは、彼らも望むことではない。
「確か...生徒側でも救出作戦を行うという話がありましたよね? その生徒側に生徒会関連の方が居るはずだったのでは?」
「あぁ、そうだが...そうか。その子たちに話を通せば!」────・・・・