Blue Archive:Task Force 作:タクティカルおじさん
9:エデン条約編:Turning point
<20██年初夏>
フォード 特殊戦開発グループ 大尉
トリニティ総合学園・校門
「ここがトリニティ総合学園か....。」
そう呟くのはフォードである。彼は
そして現在、彼はそのトリニティの敷地へと踏み入れる直前の位置で、足止めを喰らっていた。
「流石に先生以外の大人を学校に入れるのはちょっと....。」
「いや、調べたいことが────」
「すみません、規則なんです。」
フォードたちは校門を守備している正義実現委員会から、敷地へと進むことを拒まれていた。これでは、任務を遂行できない。
「大尉、どうします?」
フォードに語り掛けるのはピアーズ中尉である。彼も同じく、DEVGRUの隊員でありフォードが指揮するブラボーチームに所属している。
「セクターと連絡を取るしかないか...?」
拒まれた彼らは無線機を通じて、セクターと連絡を取った。
「セクターへ、現在トリニティの校門前において足止めを喰らっている。どうすれば?」
「こちらセクター、しばらく待機せよ。」
「了解。」
彼らはセクターからの返事が来るまで、待つこととなった。待っている間は、くだらない雑談を交わした。主な話題として''シャーレの先生の良からぬ噂''というものだった。
ある生徒曰く、足を舐められたとか。また噂によると、色々な女子生徒を建物に連れ込んでいるとか。本当にどうでもいい話題について、話していたのであった。
そんな風にしばらく暇をつぶしていると、無線機から返答が来た。
「こちらセクター、ティーパーティーからトリニティへ入る許可を貰った。案内役がそちらに────」
「あれ、お客さんは先生みたいな感じなんだねー?」
セクターの通信が終わる前に、案内役がフォードたちへやってくると共に話しかけてきた。
「君は一体?」
「私は聖園ミカ。あなたたちを古書館まで連れていってとナギちゃんに頼まれたから、今ここに来たわけ。」
「あぁ...俺はフォードだ。こっちはピアーズだ。」
フォードたちも名前を明かした。
「じゃあ今から行くから、ついてきてね。」
ミカはそう伝えると、フォードたちを古書館まで案内する。
道中、様々な建物が見えるとミカは丁寧に教えてくれた。
「こっちの建物は第一校舎で、向こうの方は第三校舎で....。あ!あれは────」
「にしても、とてつもなくデカいな....。」
「全くですね。」
トリニティの広大な敷地にフォードたちは呆れ返るほどだった。
「ねえ、そういえばあなたたちは古書館で何をするつもりなの?」
急にミカがフォードたちの目的を訪ねる。もちろんフォードはその質問に答える。ただ本来の目的を偽って。
「キヴォトスの起源....歴史だ。」
「歴史ねー....。そういえば、トリニティの歴史って知っている?」
「いや。何も。」
「トリニティの歴史はね、今から約────」
それからフォードたちはミカからトリニティの歴史を教えてもらった。
大昔、つまりトリニティが出来る前は様々な組織が紛争していたらしい。しかし、ある時「その紛争をやめよう」という風潮が出てきくることでパテル、フィリウス、サンクトゥスといった主な三つの分派のほかも集まって''第一回公会議''が開かれる。
これによって敵対していた組織は、争いをやめて一つの学園になった。そして現在に至るということだった。
「マジかよ...。」
フォードたちはこんな穏やかな学園が血塗られた歴史の上に立っているとは思っているはずもなく、彼らは衝撃を受けた。
「まぁ、''一つの学園になれた''とか言っているけど最後まで、一つになることに大反対した学園があってね....。あ、着いたよ!」
そんな風にミカとやり取りをしていたフォードたちは古書館に着く。こんな長話でもしないと学園内を移動できないのか──―と、フォードは思ったのだが。
「案内に感謝する。」
フォードが感謝すると、ミカからストラップ式のカードを一枚、それぞれ渡された。
「はい、これ入館証。一応、ティーパーティーの権限で急遽発行したものだけど...。中に入ったら、図書委員会の子に見せてね!!」
「ここまで用意してくれるとは...。」
「もし、何か困ったことあるならいつでも頼ってね!!あ、でも最近は忙しいから....。じゃあ、またねー♪」
そんな風にミカとのやり取りを終えると、彼らは古書館の入口へ近づく。そして中に入る。
古書館の中は一般的な図書館と比べるとても暗く、比べるとピアーズたちがいる入口の光が最も明るい光源だった。
「暗視装置かライトを持ってくればよかったな....。」
フォードはそんな風に持ってきた装備に後悔した。フォードたちが持ってきた装備は腰のベルトに巻き付けられている拳銃と数本のマガジン、もし戦闘に巻き込まれて被弾した際に止血するための包帯しかない。
「でも、これ入らないと調べられないですよ。」
「はぁ....。入るかぁ...。」
そんな風にやり取りをすると、彼らは中に入る。
かろうじて目の前が何も見えないほど真っ暗なわけではなく、物体の輪郭がうっすらとわかるような暗さであったので中を歩く。
「ひいぃっ!?」
しばらく探索をすると、少女の叫び声が聞こえる。
「なっ、だっ、だだだ誰ですか!?泥棒!?」
「ここの入館証は貰っている。図書委員会の委員長に会わせてほしい。」
流石に泥棒呼びされた彼らは、任務を遂行する以前に面倒ごとに巻き込まれたくないので、委員長と会わせるように要求した。
「...ど、どうしてです?」
急にあっけにとられたような声色で訪ねてきた。
「ここで調べたいものがあるから来た。目的はそれだけだ。」
「そう、ですか...ところで今更ですが、どちら様で...?二人ともヘイローがないようなので....。」
どうやら声の主である少女はこんな暗闇越しでも、誰かを識別できるくらいの良い目をお持ちのようだ。
「俺はフォードだ。こっちはピアーズ。」
「....所属は?」
所属を尋ねられた彼らは少し戸惑う。秘匿された部隊に所属する彼らは、素直に答えるわけにはいかない。そのため、ごまかして答える。
「キヴォトス派遣隊の隊員。」
「『キヴォトス派遣隊』?例の軍隊の...?」
声の主である少女は困惑した声色を示す。しばらくの間、静寂が貫かれる。
そして少しの静寂が続くと、少女は答える。
「と、とりあえず明るくしますね...。」
そう伝えられると古書館は暗闇か明るくなった。
そしてフォードたちの前には少女がいた。黒色の髪が特徴的で、右手には大きな本を抱きかかえている。
「初めまして、こんにちは。」
とりあえずフォードたちにとって、彼女は初対面の相手なので、挨拶を交わす。すると、少女からも挨拶が返ってくる。
「こ、こんにちは...。えっと、私は古関ウイ....この古書館を運営している、図書委員会の委員長、です....。」
ウイは人見知りな性格なのか顔の頬を赤く染めながら、自己紹介をする。
「それで、その....どうして大人たちはここへ....?」
「さっき言ったように調べたいことがあるんだ。」
「それは、いったい...?教えてくれませんか?」
「神秘と恐怖に関する文献と、色彩についてだ...。」
フォードが用件を述べると、ウイは戸惑いを見せた。
「え、えっと....前者は聞いたことありますが....後者は....。あ、あと、ここにはそれらの本はないと思います...。」
どうやら神秘と恐怖についての文献はあるようだ。しかし、ここにはないらしい。
「どこにあるのですか?教えてください。」
ピアーズは本の居場所を尋ねる。
「え、えっと場所はわかりませんが、シスターフッドが知っていると思います....。」
「シスターフッド?確か、トリニティの派閥...いや組織だったか?」
フォードは道中でミカに伝えられた記憶を頼りに、思い出す。
「そうです。よ、よくご存じですね...。」
「いや、さっきのティーパーティーの子...聖園ミカという子に教えてもらった情報ですよ。」
「あ!だからあなたたちの入館証が....。なるほど、よくわかりました。」
ウイは何やら腑に落ちた様子だった。
「それでシスターフッドはどこに?」
フォードは尋ねる。
「え、えっと、確かここから────」
フォードたちはウイからシスターフッドがいるとされる場所への、行き方を教えてもらった。
シスターフッドはどうやらトリニティの大聖堂にいるらしく、そこまで自力で辿り着く必要があること。敷地が広く、フォードたちは土地勘がないため簡易的な地図が渡された。
「ここまでしてくれて....ありがとうございます。」
「い、いや私は当たり前のことを....。」
「本当に助かるさ。俺たちはここについてあまり知らないからな....。」
そんな風にやり取りをすると、フォードたちはシスターフッドがいるとされる大聖堂へ向かい始めた。
<数分後>
フォードたちはウイから渡された地図に従って、大聖堂へと向かっていた。
そんな道中、彼らは校舎を覗くと誰もが知っているであろう人物を見かけた。
「あれは....シャーレの先生?」
そう言葉に出したのはピアーズである。
彼らが目にしたのはシャーレの先生だった。先生はどうやら、試験の監督をしているような様子が窓からわかった。
「おいおい、噂の先生だぜ?」
今日話題として出された先生に対し、フォードは窓越しに聞こえないように小声でそう呟く
「ええ、あれが....噂の変態ですか...。」
少々、彼らは窓越しに先生を観察する。先生の容姿、服装、髪型とありとあらゆる観察できる情報を目に焼き付けた。
「まあ、大聖堂行く必要があるせいでせっかく今日、話題となった先生とは話せなさそうなのが悔しいが....。」
「同じくです。」
彼らは与えられている任務を思い出し、人間観察をやめる。
そして再び彼らは歩き出す。しばらく歩いていると何やら集まりが出来ているのが、遠くから分かった。
「なんだあの集まり?」
「何やら、騒いでいますね。」
彼らは遠くからその集団を眺めていると、彼女たちは何をしているのかが次第に分かった。
「あれ~~?転んでどうされましたの~~~~??」
「あはは!!まるで犬みたい!!」
「醜い姿ですね~~~~」
「や、やめて....。」
どうやらあの集団は一人の生徒をいじめているようだった。
その生徒は黒髪や、茶色といった色よりも少々目立つ白い髪が特徴的だった。その特徴的な色から、その場で何が起きているのかを示していた。
いじめの対象となっている生徒は殴る、蹴るといった暴行を加えられていた。それだけではなく罵詈雑言も浴びせられている。
「うわ、あの光景は....最悪だな...。」
「近付いても、無視したほうが問題に巻き込まれなさそうですね...。」
彼らは現在、この任務に就いているあたりできる限り他の問題に介入したり、巻き込まれたりするのは控えるようにJSOCから伝えられていた。
それに彼らの装備は拳銃であり、生徒たちが所持する小銃などと比べると真正面から戦おうとするのであれば、少々火力不足だと感じていたのであった。
それらの理由から彼らは無視するという結論を下し、通りかかるのだが。
「た、助けて...。」
「ふふ!!犬が何か言ってますわよ~~~?」
「....お願い...誰か...。」
嗚咽交じりの助けを求める声が耳に入るたびに、彼らの足が遅くなる。いくら特殊部隊といえども、一人の人間であることは変わらない。
そんな風に良心を痛めながら間もなく通り抜けようとしたとき、いじめている集団の何人かに声を掛けられる。
「あら?あなたたち見ない人ですね...。もしかして、大人?」
「これを見て、大人は何とも思わないのね~~~」
そう言って一人はいじめの対象となっている女子生徒を、彼らの前に蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされた女子生徒は立とうとするが、頭の上に足を乗せられる。
そして、力いっぱい白色の髪に靴跡が残るのかというぐらい踏みつけられた。
「っっ!!痛い、痛い、痛い!!!」
「ねえ、あなたたちはこんな姿を見て爽快だとは思わない?」
「この光景が最高であるのは、当然ですわよね~~???」
目の前の凄惨な光景に彼らは顔を合わせる。
「これどうします?」
「どうするって...。」
フォードは迷う。助ければ女子生徒は今の状況から救われるかもしれない。
しかし、助けたらフォードたちは問題を起こしたとしてJSOCから、何らかの処分を受けるかもしれない。
ほんの少し考えると、彼は一つの結論に至った。
「やるぞ...俺は左の3人を。お前は、右の2人だ。」
「合図は?」
「今だ────」
フォードはそう伝えると、腰のベルトに収められている拳銃であるMP17を勢いよく取り出した。
取り出すとストックが展開されたのと同時に、ダットサイト越しに狙いを定める。
そして目の前に立っている一人に3発。胴体に撃ち込んだ。
「うっっ!!」
至近距離で喰らった弾丸は効果的であったようで、地面に倒れこむ。そして、同時にピアーズもM17で応戦。
ピアーズは数発ほど発砲するとあっという間にして、右にいた女子生徒2人を倒す。
「い、いきなり撃ってくるなんて──―」
フォードが担当する残りの2人の生徒のうちの一人が、不意打ちを仕掛けられたことに対して何か不満を伝えようとする。
しかし、言い切る前に彼女たちはフォードの射撃によって無力化。結果的にリンチした集団を完全に倒してしまった。
「あ、あ、ありがとう....。大人の人が戦って助けてくれるなんて...。」
女子生徒はフォードたちに礼を告げる。
「まあ....な....。」
しかし、先程の発砲はサプレッサーを装着していなかった。これにより空に盛大な発砲音を響き渡らせ、その発砲音を聞きつけた野次馬による人だかりが出来ていた。
そして、発砲を聞いたのは学園の治安維持を担当している正義実現委員会も例外ではなかった。
「あなたたち!!そこで何をしているのですか!?学園内で発砲は禁止ですよ!」
彼らは正義実現委員に怒鳴りつけられた。その後彼らは、その場にいた生徒達と共に連行された。
<数分後>
「では、あなた達はあの生徒を救うために戦ったというのですか?」
「それだけだ。」
「そうです。」
彼らは連行された後、正義実現委員会が管理する教室にて取り調べを受けていた。
そして彼女たちはフォードたちに質問したのだ。質問は至って単純で「なぜ、発砲し生徒を傷つけたのか?」、「あそこで何をしていたのか?」といったものだった。
もちろん彼らはありのまま起こった事実を説明した。
「....わかりました。でもいくら来賓の方とはいえ、うちの生徒に手を出すのはちょっと...。発行元のティーパーティに処分として学園内に入る許可証を停止させるように、伝えます。」
「「!!」」
その言葉にフォード達は焦った。任務の目的を達成するためにはトリニティに入る許可証が必要であるため、許可の取り消しは非常にまずいのだ。
最悪、侵入して情報を入手する方法もあるが軍事衝突した時の損害が分からない。それらの理由から、わざわざ許可証までも貰ってここに彼らは来ているのだ。
「助けなければ良かったかもしれんませんね....。」
不意にピアーズが不満を口にした。
「このままだと上からかなり重い処分下されちゃいますよ...。やはり、あの時助けなければ....。」
「いや....そんなことはない。」
フォードは応える。
「俺たちはあの時、あの子のために戦った。任務としてではなく、己の信念としてだ。」
「でも....。」
「言いたいこと分かるさ。でも、あの時助けなければあの子はどうなっていたと思う?その後ずっといじめられ続けて、退学したかもしれない。あるいは...。」
その言葉にピアーズは黙った。彼も学生生活を過ごしことがあるため、そのいじめられた子の末路はよくわかっていた。退学するか、自ら命を断つか。
「....大尉の言いたいことはよくわかりました。でも、このままだと処分下されちゃいますよ?」
「どのみち、あの行動は最終的に俺が判断したことだ。俺の処分は相当重いだろう、だけどお前は──―」
「許可証の取り消しは行いません。」
不意に少女の声が彼らの会話を遮る。
「君は....。」
「ええ、さっき伝えたように取り消しません。ただ