お前が嫌いだ
『俺はアンタの事が嫌いだ』
「………そっか」
__悲しそうな顔をして俺を見つめてくる
『アンタは怖いと思うことはないんですか?』
「……ないね」
『俺はありますよ。コベニちゃんに嫌われること』
「君はコベニちゃんが好きなんだね」
『もう公安で知らない人はいないと思いますけどね』
「君は……」
『?』
「コベニちゃんを無理矢理にでも手に入れたいとは思わないの?」
『……………………』
__何度も思ったよ。でも、そんな事をしたら嫌われるのが目に見えてたから。彼女を怖がらせたくない、彼女に嫌われたくない。そう思うから無理矢理なんてことはしない。
『俺はアンタとは違う』
「そうだね。でも、願いは一緒だったでしょ?」
『違う』
__一緒じゃない。俺の願いはお前なんかと同じじゃない。
「君は私の下につく気はないの?」
『死んでもつかない。アンタの下なんて想像しただけで吐き気がする』
「命令だとしても?」
『死んでも断る。俺の命はコベニちゃんのためにあるんだ。
「………」
『今の俺は人間だから。人間らしく生きたいんだよ』
「隠しきれてはないけどね」
『どうせ消えれば誰も覚えてないんだ。バレたらバレたで仕方ないんだよ』
「悪魔だね」
『俺は人間だ。悪魔はお前だろ』
__俺の左目と同じ目。俺を見下す目。どれだけ潰したいか分かるか?俺はお前に支配される事はない。出来るわけがない。
『俺はお前を許すつもりはない。死んでも、絶対に』
「私が死んだら?」
『地獄で笑ってやるさ』
「口が良く回るね」
『誰にも声が聞こえないなんて辛いだろ?声が出るうちに喋る方がいいんだよ』
「不思議だね。仁間くんは」
『………』
「あ、外。霧が出てる」
『あれは靄だ。霧じゃねえ』
「へー。物知りだね」
『お前嫌い』
「私は好きだよ」
『……………』
「仁間くん」
『んだよ』
「マキマに従うと言いなさい。これは命令です」
『嫌だ。俺はお前に支配されない。されるわけがない》
__何故か右側が軽くなっていく。左目が霞んでいくのに対して、右目は良く見えていく。ハッキリと。外を見れば靄の奥まで鮮明に見えていく。
《俺は俺だ。俺は人間として生きている。お前に支配されては人間として生きるのが困難になってしまう。俺はそれを望まない』
__だんだんと元の感覚に戻ってきた。なんだったのだろうか?嗚呼でも、ハッキリと分かる事はある。
『俺を支配できるのは闇だけだ。決して消えることのない、変わることのない闇が俺の支配者だ』
__そう言って俺はコベニちゃんのところへ行こうと思い、帰った。ずっと微笑んでるマキマは俺の右目を見ていた。まるで、別の誰かを見ているようだった。
暗い暗い真っ黒な世界…。俺の前にはあのお方がいる。あのお方のため強くならなくては。悪魔どもの恐怖で強くなったのに……なのに何故俺を側に置いてくれないのですか?何故隣に置いてくださらないのですか?俺がまだ弱いから、ですか?お願いです。俺を側に置いてください。アナタ様の側に、眷属として置いてください。
「□□□□」
両目と両耳が熱い。喉が痛い。俺はアナタ様に敵意はありません。ただ側に置いて欲しいのです。眷属になりたいのです。俺はアナタ様がいないといけないのです。
「□□□、□□□□」
それがアナタ様の命令ならば、俺は従います。俺はアナタ様に忠誠を誓い、心臓を捧げます。
「□□□□□□□□。□□□□」
はい。俺はアナタ様の眷属、