ぼっちず・ろっく!   作:借りて来た猫弁慶

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 思いついたネタを片っ端から全部突っ込んでたら無限に書く事が出てきて纏まらなくてこの話一生書き終わらないかと思ったよ……二万字あるので時間ある時にでも読んでください。


025 Xmas Party

 打ち上げの店に向かう道中、赤面顔でひとりを盾にする虹夏先輩をからかっていると、珍しくひとりが話題を切り出した。

 

「そっそういえば……リョウさんも喜多ちゃんも、太郎君がドラムヒーローだって知ってもあんまり驚かないんですね……」

 

 俺とひとりと虹夏先輩がリョウ先輩や喜多さんに視線を向けると、リョウ先輩は表情を変えずに答えた。

 

「まあ廣井さんとバンド組むって聞いてたからある程度察しはついてた。勿論郁代みたいに全然出来ない可能性も考えてたけど」

 

「ああああ!! すみませんリョウ先輩! なんでもするからあの日の無礼をお許しください!」

 

「ちょっと喜多さん! 雪降ってる道路の上で土下座はまずいですよ!」

 

 文化祭や今回のライブなど、俺の演奏機会には事あるごとに一声かけて来たリョウ先輩はやはり二重の意味で察していたようだった。っていうかちょっと喜多さんの事がトラウマになってるじゃないですか……

 

 俺達は土下座をしようとする喜多さんの腕を慌てて掴んでなんとか押し止めると、しばらくして正気に戻った喜多さんは恥ずかしそうに一度咳ばらいをした。

 

「私は凄く驚いたけど……でもひとりちゃんの幼馴染っていう納得があったというか……」

 

 一度言葉を区切った喜多さんは申し訳なさそうに眉を寄せると、恥ずかしそうに頬を赤らめた。

 

「そもそもドラムの凄さって実はよく分かってなくて……」

 

 ドラムの苦労が理解されなくて虹夏先輩は声を上げてショックを受けていたが、まあそんなものかもしれない。ドラムは大黒柱な筈なのに存在感が割と薄くて、最高の演奏をしたと思っても誰にも気付かれなかったりするのだ。まだ始めたばかりの喜多さんが分からないのも無理ないだろう。

 

「まあそうかもしれませんね……よし! それじゃあ喜多さんにも分かるように虹夏先輩にドラムヒーローについて説明してもらいましょう!」

 

 俺が笑いを堪えながらそう言うと、また虹夏先輩は顔を赤くして頭を抱えて叫び出した。

 

「あっ! でもそんな事(・・・・)より驚いたのは、山田君に軽音部のギターの彼女がいた事よね!」

 

 叫んでいる虹夏先輩を気にする事も無く、喜多さんが思い出したように言った瞬間――今まで賑やかだった空気が水を打ったように静まり返り、先程まで笑っていた俺の表情は凍り付いた。

 

 十二月二十四日、既に日も落ちてチラチラと雪も降っているというのに俺の背中からぶわりと嫌な汗が噴き出した。

 

 この二週間は新曲の練習や虹夏先輩へのドラムヒーローバレに加えて、ドラムヒーロー宛てのリクエストであるクリスマスラブソングに意識が向いていて、その事(・・・)が頭からすっぽりと抜け落ちていた。

 

 俺は全くの意識の外から飛んで来た恐ろしい衝撃に身を震わせながら、ギターヒーローの虚言がバレた時のひとりはこんな気持ちだったんだろうか……なんてどこか他人事のようにぼんやりと考えていた。

 

「あっあの……喜多さん……? な、なんでそんな事を……」

 

「この前伊地知先輩に言われてから、私、ドラムヒーローさんの動画を見たの! そうしたら、概要欄に彼女が出来たって書いてあるのを見て……でも全然気づかなかったわ! 軽音部のギター女子って言うと……誰かしら!?」

 

 なんとかすっとぼけてみようと言葉を絞り出してみたが、しっかりと情報源を確認して(概要欄を見て)いた喜多さんから、至極まっとうな感想が返って来た。

 

 全然気づかなかったって……そりゃ気付くわけねぇよ……そんな奴(彼女)なんていないんだから……むしろ気づいたら怖いよ……

 

 ひとりを見れば不安そうな困ったような顔で俺を見ている。どうにか助けてくれようとしているのか、口を開きかけては閉じる事を何度も繰り返している。

 

 リョウ先輩は興味なさげにこちらを見ていた。ほーん、それで? みたいな顔だ。この反応はある意味ありがたい。お金の匂いがしなければこういう状況で一番頼りになるのはこの人なのかもしれない……が恩を売ったら後がやばそうなので助けを求めるのは最後の手段だ……

 

 目を輝かせて他人の恋愛話に花を咲かせる喜多さんを見ながら、俺は最後に恐る恐る虹夏先輩の様子を窺うと……虹夏先輩は三日月のような形の目と口で、張り付けた様な恐ろしい笑みを浮かべながらこちらを見ていた。

 

「え~! あたしも知りたいな~! 太郎君の彼女の話!! 喜多ちゃん何か知ってるの!? 軽音部のギターの女の子の情報!」

 

 今まで散々ドラムヒーローの事でからかわれた鬱憤を晴らすかのように虹夏先輩が喜多さんの傍にすり寄った。

 

 虹夏先輩に尋ねられた喜多さんはこういう話題をするのが楽しいのか、自分の知っている軽音部のギター女子の名前を上げ始めたので、俺はいよいよ覚悟を決めなければいけないのかもしれない。

 

 もしかしたら喜多さんは最も敵に回してはいけない人物なんじゃないだろうか……その人脈の広さといい、秀華高校の首領(ドン)みたいな人じゃねぇか……しかしヤバイ、具体的な女子の名前が挙がっているのがなによりヤバイ。

 

「ああああのあのあの……喜多さんに虹夏先輩……あのですね……」

 

「ん~~? どうしたのかな太郎く~~ん?」

 

 崩壊を始めた顔面で言い訳を始めた俺に虹夏先輩がとても楽しそうににんまりと微笑んだが、このままでは名前が挙がった女子にも迷惑が掛かりかねないと思った俺は諦めて先程の喜多さんに倣って土下座を敢行することにした。

 

 雪の上での土下座はヤバイ? 本来できるはずなのだ……! 本当にすまないという気持ちで……胸がいっぱいなら……! どこであれ土下座ができる……! たとえそれが……クリスマスで大勢の観衆が居る雪降る路上でもっ…………! 

 

 俺がいよいよ土下座の為に膝を折りかけた時、虹夏先輩が堪らず噴き出した。

 

「ぷっ……あはははは! ごめんごめん! 大丈夫! 分かってる――」

 

「あっああああの!! わっ……わわわ私がそっそのかっ……かかかか彼女ですっ!!」

 

「……は?」

 

 今まさに丸く収まりかけていた状況からのあまりに突然の彼女宣言に、一同(リョウ先輩はあまり興味がなさそうだが)が驚いて発言元のひとりを見た。

 

「いっいや……あっあああ、あっあの……あのあのあの……だっだだだから……あっあのわっわわわ私がそのっ……たったたたたたたろっ太郎君のぎっぎぎぎぎギターのかっ……かかかかかかのかの……彼女……です……う……うへへ……」

 

 一斉に注目されたひとりは真っ赤な顔になり、高速で視線をあちこちに動かしながらしどろもどろに主張すると、最後には俯いて消え入るような声で呟いてにやけながら気持ち悪い声を上げた。

 

 ひとり……お前もしかしてぽいずんさんの時に俺がやったように助けてくれようとしてるのか……? なんていい奴なんだ……信じてたぞひとり……いやでも状況を考えろ! あの時は俺達の関係を知らないぽいずんさんだからこそ、そんなバカみたいな嘘が通ったんだろうが! 知り合い相手にその言い訳は無理だって!! 

 

「……も、も~何言ってるのぼっちちゃん! 大丈夫だよ~。そんな冗談言わなくても皆ちゃんと分かってるって!」

 

「えっ……あっあの……にっ虹夏ちゃん……」

 

「ひとりちゃんったら~……冗談だから大丈夫よ。山田君に彼女いない事なんて……ああああああ!!?!! ええ!? もしかしてそういう事なの!?」

 

 またぞろひとりが暴走しておかしな事を言い始めたと思ったのだろう虹夏先輩と喜多さんが、ひとりを安心させるようになだめようとした瞬間、何かを思い出したように喜多さんが叫び声をあげた。

 

「うわびっくりした! 喜多ちゃんどうしたの!?」

「どっどうしました喜多さん!?」

 

 喜多さんの突然の奇声に驚いた虹夏先輩と俺が尋ねると、喜多さんは慄きながら俺とひとりに何度も激しく視線を行ったり来たりさせた。

 

「い、い、伊地知先輩覚えてないんですか? 夏休みに山田君の家に遊びに行った時に、伊地知先輩が言ったんですよ……」

 

「え、えっと……なんだっけ?」

 

 喜多さんの言わんとしている事がいまいち掴めない虹夏先輩が聞き返すと、喜多さんはもどかしそうに叫んだ。

 

「伊地知先輩も言ってたし、概要欄にもあるじゃないですか! ギターヒーローさんにはドラムの彼氏が、ドラムヒーローさんにはギターの彼女が居るって! そ、それってつまりそういう事じゃ……!?」

 

 喜多さんの言葉を聞いた虹夏先輩は、意味を理解したのかそれはもう驚いて俺を見て来た。

 

 …………えええ!? 今頃その話がそんな所に繋がっちゃうんですか!? 時限爆弾かよ!? 多分概要欄書いた人そこまで考えてないですよ! ちょっとひとり!? やっぱりドラムの彼氏は駄目だって! せめてベースとかにしておけよ……あっ駄目だわ、それだとその彼氏〇さなきゃいけないわ……

 

 しかし概要欄が根拠ならまだ何とかなるかも知れないと思った俺は、一縷の望みをかけて反論して見る事にした。

 

「あっあのあの……そっそういう事ならひとりの彼氏はバスケ部のエース君なんで……俺とは大分違うかなって……」

 

「はぁ? 何言ってるの太郎君。あれはぼっちちゃんの妄言じゃん」

 

 取り付く島も無いとはこの事だろうか。虹夏先輩は俺の主張をバッサリと切って捨てた。あんまりな直球にひとりも泡を吹いている。

 

 それが妄言で通るなら俺の概要欄もいっそ妄言扱いして欲しい……しかしこの山田太郎(本名)、ひとり一人に(激ウマギャグ)恥をかかせる位なら己の身が傷つく覚悟はとうに出来ているのだ。という事でここはもう正直に真実を話して暫くの間虹夏先輩と喜多さんのおもちゃにされる事を選ぼう。なあにどうせ半年くらいの辛抱だって……いや結構長いな……

 

「あっあのですね……二人とも……実はですね……」

 

「ええ~……でもそういう事なら言ってくれれば良かったのに……たしか高校入ってから彼女が出来たって書いてたから……もしかしてぼっちちゃんが結束(わたし達の)バンドに入ってから付き合い始めたとか!? うわぁ……全然気づかなかった……」

 

「きゃー!! それが分かってから見て見ると、この概要欄は凄い匂わせだわ! 幼馴染で、お互い大人気のヒーローで、この匂わせ! これはTVドラマになったら大人気間違いないわー!」

 

「えっいや……ちょ……ちっ違! ごっごごごごご誤解!」

 

 地獄への道は善意で舗装されているとはよく言ったもので、ひとりが俺を助けようとついた嘘によって事態が恐ろしい方向へ向かっている事に恐怖した俺があわてて弁明しようとしたが、長年の付き合いでひとりの胞子で体の隅々まで汚染されている(責任転嫁)俺はテンパって上手く言葉が出てこない上、二人は全く聞く耳を持たなかった。

 

「虹夏」

 

 俺とひとりが顔面をぶっ壊して慌てていると、今まで一言も発さずに黙って聞いていたリョウ先輩がいつもの無表情で虹夏先輩の名前を呼んだ。

 

「あっ! リョウも驚いたよね!?」

 

「別に……どうせ太郎もぼっちと同じで見栄を張って彼女出来たとか書いてたんだろうから。それよりお腹空いたから早く店に行こう!」

 

「…………もぉ~、そう言うのは分かった上で楽しんでたのに~……マイペースだなぁ」

 

「まあ二人ともあんな感じですしね。山田君に他に彼女が居るとも思えませんし」

 

 喜多さん辛辣ぅ! いや間違ってないけどすげぇ切れ味だ……これは確実に俺の命を取りに来てますね……そんでもって切り替えの速さが恐ろしいですよ……あれ? クリスマスイヴってこんなに悲しい日でしたっけ? ライブも成功したのにおかしいな。

 

 先程までの興奮は何処へやら、興が削がれたのか呆れたように歩き出す虹夏先輩達を見ながら、ふとリョウ先輩に視線を向けると、目が合ったリョウ先輩は俺に向かってこれ以上無いドヤ顔を決めて来た。

 

 えっ!? その顔はもしかして……助けてくれた……ってコト!? うわぁイケメン! リョウ先輩抱いて! いやでもこの人ベーシストだったわ。カレーの金もまだ返して貰ってないし。危ない危ない……もうちょっとで惚れる所でしたよ。でもありがとうございます。この恩は何かで返しますよ。

 

「ほら俺達も行くぞひとり。良かったな! 誤解が解けて」

 

「あっ…………うん」

 

 一人残されて立ち呆けるひとりに声をかけると、ひとりも誤解が解けて安心したのかホッとした表情で力なく笑い、はらりと一粒涙を流した。

 

 

 

 虹夏先輩を先頭に打ち上げの店に辿り着き中へ入ると、既にウチの店長が席についているのが見えた。今日は店長の誕生日だからまさにお誕生日席に座っている。

 

「おーみんなライブお疲れ……ってどうした太郎? 随分疲れた様子だけど……」

 

「いえ……ちょっと色々ありましてね……ハハ……」

 

 店長に指摘された俺は先程の虚言バレを思い出して乾いた笑いを漏らした。

 

 喜多さんから各自自由に席についてくれと言われたので皆の様子を窺っていると、虹夏先輩や喜多さんや本城さん内田さんの所謂陽キャテーブルと、ひとりやヨヨコ先輩リョウ先輩の陰キャ&マイペーステーブルに別れたので、俺はひとりの隣に腰を下ろした。

 

 席に着くとひとりが自分の鞄からいそいそと小道具を取り出して身に着け始めたのに俺は驚いて声をかけた。

 

「うお! 三角帽にヒゲメガネにタスキかよ……随分気合入ってるじゃねーかひとり」

 

「えっえへへ……まあね……今日は必ず場を盛り上げてみせるよ!」

 

「でもお前、それ前に喜多さんに怒られてなかったか? まあいいや、俺にもなんかない?」

 

 前に喜多さんに注意された事を思い出したのか急に狼狽えだしたひとりを尻目にひとりの荷物を漁ると、一日巡査部長と書かれたもう一つのタスキが出て来たのでそれを借りて肩から掛けていた所、注文した飲み物が皆に行き渡ったのを確認した虹夏先輩と喜多さんが乾杯の音頭を取った。

 

「メリークリスマス! 今日はSTARRYクリスマスパーティに集まって頂きありがとうございます!」

 

「司会進行は伊地知と喜多が務めさせていただきます!」

 

 家族や後藤家以外の人間と過ごすクリスマスパーティになんだか浮足立っていた俺は、周りを見渡してようやく重要な事に気が付いた。

 

「って廣井さんが居ませんよ!? これってクリスマスライブの打ち上げも兼ねてるんですよね!? あの人ある意味主役ですよ!?」

 

「円滑に会を進行する為お呼びしておりません」

 

「ありがとーございまーす!!」

 

 ちょっと!? 何言ってるんですか虹夏先輩! それにSIDEROSメンバーも! なんでそんな嬉しそうに同意してるんですか……

 

 慌てて鞄に入れていたスマホを見ると、廣井さんから鬼の様に連絡が来ているではないか。ロインに来ているメッセージを見れば怒涛の連絡の最後に『志麻がやばいから早く来て!』とか書いてある。いや志麻さんがヤバイのは主にあんたのせいでしょーが……

 

 流石に無視できなかった俺がスマホを弄って連絡を取ろうとしていると、虹夏先輩が俺のスマホを取り上げて、喜多さんと二人で不気味な笑みを浮かべて腕を掴んで来た。

 

「は~い! 太郎君はこっちに来て彼女(・・)さんの事を話して貰おうかな~」

 

「えっ!? それまだ引っ張るんですか!? っていやいやどこに連れて行くんですか? それより廣井さんに連絡を……えっ? 向こうの(陽キャ)テーブル!? いやちょっと……何すんだおまっ……離せコラ(流行らせコレ)! あ~やめろお前、どこ触ってんでぃ!」

 

「ちょっと変な事言わないで山田君!? 大人しくして! 二人に勝てる訳ないでしょ!!」

 

「馬鹿野郎お前俺は……って二人ならちょっと勝てそうだぞお前!! おいひとり! ヨヨコ先輩も! 二人して神妙な顔でポテトなんて食ってないで助けて!」

 

 店に着くまでにからかった意趣返しか、いつの間にか結託している喜多さんと共に腕を掴まれて陽キャテーブルという地獄へ連れて行かれそうになっていた俺が抵抗していると、連行されかけた俺を見て内田さんの肩がビクリと震えた。

 

「……あっ、ごめんね内田さん。もしかして男の人苦手とか?」

 

「そんな事無いはずだけど……そういえば幽々。あなた楽屋でも太郎の事避けてたけど、一体どうしたのよ?」

 

 内田さんの様子を見た虹夏先輩の疑問に、内情を知っているヨヨコ先輩が不審に思って質問したが、内田さんはなおも若干怯えた様な表情で俺を見て来た。

 

 もしかしたら俺の顔が駄目なのかも知れない。ほら生理的に受け付けないとかって良く聞くじゃん? ってマジかよ……それならちょっと……いやかなりショックだわ……

 

 俺が一人で勝手に落ち込んでいると、皆に見つめられた内田さんは困った顔でやがて観念したように話し始めた。

 

「別に男の人が苦手とかでは無いんです~……ただそのぉ……山田さんはちょっと……オーラ(生命力)が凄くてぇ……ルシファーとベルフェちゃんに悪影響が~……」

 

 えっ!? オーラ(生命力)って何!? それにルシファーとベルフェちゃんって!? 怖い話!? やめてよ怖い話は! 俺は全然平気だけど……ひとりがね! ひとりが怖がるから……

 

 俺が若干引きつった顔で内田さんを見ていると、内田さんはそんな俺の顔をまじまじと見て来た。

 

「それにしてもぉ~……山田さんって凄いんですねぇ~……だってあの(・・)三人とバンド組んでいても無事なんですもん~」

 

「えっ……!? それってどういう……」

 

「ちなみにぃ……ぼっちさんは肩に凄いの憑いててぇ……」

 

「おぎゃあああああ!!」

 

「うわっ!! たっ太郎君!? だっ大丈夫?」

 

 内田さんの言葉が終わる前に俺は大慌てでひとりを強く抱き締めると、ひとりは心配そうに聞いて来た。

 

「いっいや全然へーきだし!? 全然ビビッてねぇし!? ほら……なんかお前にやばいの憑いてるみたいだから俺のオーラ? って奴で浄化してやってんのよ! どーすか内田さん! ひとりに憑いてる奴消えましたか!?」

 

 ほんのちょっとだけ(・・・・・・・・・)冷静さを欠いた俺からの質問に驚いたような表情を浮かべた内田さんは、ひとりの肩をじっと見つめるとフッと小さく笑みを溢して――顔を横に振った。

 

「おぎゃあああああ!」

 

「ちょ、ちょっと太郎君……だっ大丈夫だから……そんなに強く抱き締められたら……うへへ……」

 

 内田さんの返答に少しだけ(・・・・)取り乱した俺は、ますますひとりを強く抱き締めた。いやこれはビビってるんじゃなくてお祓い的なあれだから……

 

「な、なんか意外だね……太郎君お化けが怖……」

 

「いっいや! 怖がってなんか無いっすよ! 俺を怖がらせたら大したもんですよ!」

 

「でも山田君、文化祭の時のお化け屋敷は全然怖がって無かったのになんで?」

 

 いやだってアレは作り物じゃん……いわば養殖物……例えるならカニカマの値段は怖くないがカニは怖い……って何か違う!? い、いやそれに俺は天然物にも断じてビビッてはいない! 

 

 俺の様子を見ていた内田さんは面白い物を見つけたようにニンマリと笑みを浮かべると、さらなる追い打ちをかけるように言葉を続けた。

 

「実はぁ~……ヨヨコ先輩もすっごいののっけててぇ~」

 

 俺がひとりを抱き締めたままヨヨコ先輩に剣呑(けんのん)な視線を向けると、ヨヨコ先輩はぎょっとした表情で後ずさった。

 

「ヨヨコ先輩もやばいみたいですよ!? 早く何とかしないと!」

 

「やばいのもなんとかしなきゃいけないのもあなたの方でしょ!? ちょっ……こっちににじり寄るな!」

 

 俺がバンドメンバーの危機をなんとかしようと奮闘していると、そんな俺達の事をじっと見ていた虹夏先輩が内田さんに質問していた。

 

「……あの~内田さん。あたしには何か憑いてないかな?」

 

「いえ~……伊地知さんには特になにも無いですね~」

 

「あっ……そう……」

 

 なんでちょっと残念そうなんですか……でも虹夏先輩は何ともないならこっちを手伝ってくださいよ! 内田さんの口ぶりからすると廣井さんも大概やばいみたいなんですから! Bocchisはお化け屋敷じゃねーんだぞ! ほらヨヨコ先輩大丈夫! コワクナイヨ! 

 

「お前らそろそろいい加減にしろ!」

 

 俺が多少(・・)錯乱状態に陥りながらヨヨコ先輩を救うためににじり寄っていると、後ろから店長に締め上げられた。これでひとりを抱き締める俺を締め上げる店長という力関係の縮図の様な恰好が出来上がった訳だ。

 

「ぐぇー……店長……でも……! あ、いやもう大丈夫です! 最初から正気でしたけど、もう正気に戻りましたから!」

 

「全く……リョウもスマホ見てないで止めてやれよ……」

 

 店長は俺を解放すると、この騒動の中でも動じる事なくスマホを見ながら食事をしていたリョウ先輩に呆れた様に声をかけて自分の席へと戻って行った。

 

「それで? ライブはどうだったの?」

 

 席へと戻った店長は自分のグラスに一度口を付けると、場を一度仕切り直すように虹夏先輩へと質問した。

 

「ライブはね~、皆大盛り上がりでモッシュにダイブにサークルまで出来て! ライブ終了後には十分間のスタンディングオベーション……なんて事もなくふつーにアウェイだった……んだけど……」

 

「? けどなんだよ? 初めての箱じゃそんなもんだろ」

 

 疲れたのか何故か眠ってしまったひとりを隣に座らせて、お腹が空いていた事を思い出した俺がポテトやらピザやらを食べていると、話を振られて最初こそ楽しそうに話していた虹夏先輩が段々と尻すぼみな声になりながらこちらを見て、それに釣られるように店長やフォローしようと口を挟もうとしていたヨヨコ先輩までこちらを見て来た。

 

「……ん? なんすか?」

 

 あんまりじろじろ見られてると料理が食べづらいんですけど……

 

「いや……そういえば太郎君のバンドの演奏終わりはスタンディングオベーション……とまでは行かないけど凄い声援だったなって思って……」

 

 そう言われれば凄い応援されてた気もする。でも俺は箱でのライブ初めてだからよく分かんないのだ。SICKHACKのファンは思ったよりやさしそうな人達だったし、あれって普通じゃないんですか? 

 

「へぇ~……でもどうせバンド内にあいつ(廣井)が居たからだろ」

 

 STARRYへ行こうぜ……久しぶりに……キレちまったよ……何しに行くのかって? そりゃライブだよ! 俺の演奏で店長をわからせてやるよ! というかなんでそんな信用無いんですか俺? 

 

 俺が唐揚げを頬張りながら店長と好戦的な視線を交わしていると、そんな空気に耐えかねたのかヨヨコ先輩が堪らず声を上げた。

 

「~~っ!! アレは特殊な例だから!! それに一般的には演奏の出来と客の盛り上がりは関係ないから!」

 

 いや特殊な例って……初ライブを終えた俺を誰かもうちょっとちゃんと労ってくれよ……そもそもヨヨコ先輩もその特殊な例のバンドに入っちゃってるじゃん……

 

 ライブ前に楽屋で武道館とドームなら安心とのお墨付きを出した手前気まずいのか、ヨヨコ先輩は滅茶苦茶早口で虹夏先輩に弁明をまくし立てていた。うわ凄い喋る。

 

「でも本当に感謝しかないから。今の結束バンドが絶対出られないような場所でさせてもらったし、大人数の前でのライブ経験も積めたし。あとは曲数増やして練習を重ねるだけだね!」

 

「何かあるんすか?」

 

 気を遣うヨヨコ先輩へお礼を言って今後の意気込みを力強く語っていた虹夏先輩へ長谷川さんが質問すると、虹夏先輩はこの間のぽいずん……ぽいずん佐藤さんがSTARRYへ来た事と、その時にぽいずん佐藤さんから言われた事に思う所がある為に未確認ライオットに出場する事を話していた。

 

 その話を聞きながらヨヨコ先輩が熱心にスマホで何かを調べていたが、もしかしてぽいずん佐藤さんに興味を持ったのだろうか? ネットに色々個人情報が転がっているらしいが、結構アクが強い人なんであんまりおすすめはしませんよ……

 

 そんな虹夏先輩達を見ながら俺は食事を続けていると、入り口から聞きなれた泣き声が聞こえて来た。

 

「やっぱここにいら~~~~! あたしずっと一人でまってらんよ~~~~!」

 

「ちっバレたか」

 

「あっヤベっ……忘れてた……」

 

 い、いや違う、忘れていた訳では無い。ちょっと……そう! スマホが虹夏先輩に没収されてて……ってポッケに入っとるやんけ! 俺の知らない間にポッケに入れるなんて、虹夏先輩、なんて抜け目のない人だ……

 

 俺が心の中で虹夏先輩の手技を賞賛しながらも廣井さんの事をすっかり忘れていた事に焦っていると、店長に愚痴を言い終えた廣井さんが頬を膨らませながらすぐ傍までやって来ていた。

 

「ちょっと太郎く~ん! なんで連絡くれないの~! 私ずっと待ってたんらよ~」

 

 うわ……なんか面倒くさい彼女みたいな事言い始めたぞこの人……いや彼女いた事無いけど……なんなら友達もいた事も無いけど……いやクリスマスイヴにこんな悲しい気持ちにさせないで欲しい……

 

「あれ? ぼっちちゃんどうしたの? もしかして寝ちゃった? お~いぼっちちゃ~ん!」

 

 俺に詰め寄った廣井さんが俺の隣で満足そうな顔で眠っているひとりを発見して不思議そうに声をかけて軽くゆすると、ひとりはそれに反応して痙攣するように飛び起きた。

 

「んは!? ……あっあれ? 長男の一郎が初めてのバイト代で買って来てくれたケーキは?」

 

 そんなもんは無い。というか毎度の事ながら何の話だよ? 随分と大人しいと思ってたら気絶してたのか……もし俺が締め落としていたのだったら悪い事をしたかもしれん……しかし長男の一郎って誰……? こいつは時々よく分からない事を言い始めるのでちょっと怖いのだ。

 

「すっすみません……取り乱しました……」

 

「い~よい~よ。でもなんだかイチローってぼっちちゃんと太郎君を合わせたみたいな名前だね~!」

 

 ひとりの謝罪に廣井さんが気にした風も無く何気なくそう言って笑った瞬間――ひとりは途端に耳まで真っ赤にして俯いてしまった。

 

 ひとりにもまだ妄言を恥ずかしいと思う気持ちが残ってたんだなぁ……なんて俺が失礼な事を考えていると虹夏先輩がマイクを持った。どうやら次のイベントに行くらしい。

 

「え~ではそろそろ店長への誕生日プレゼントお渡しタイムに移ります~」

 

 トップバッターは喜多さんで、ハーバリウムと花のリップという陽キャらしいシャレオツなプレゼントをしていた。

 

「じゃあリョウ」

 

 続いて虹夏先輩に指名されたリョウ先輩は一瞬無言で固まった後、『プレゼントって値段じゃなくて大切なのは気持ちですよね……用意してくる』と言い残して外へと飛び出していった。

 

 リョウ先輩がどこかへ行ってしまったが、あくまで順番通りに進めるつもりなのか虹夏先輩が次の人を指名しないので、追加で頼んだ料理をひとりと共に食べながら待っている間、ヨヨコ先輩が電気屋で買って来たものが気になっていたので聞いてみる事にした。

 

「そういえばヨヨコ先輩はライブ終わって何買って来たんですか? あっ言いたくないならいいですけど」

 

 台風ライブの打ち上げの後にやらかしかけたので予防線を張って聞いてみると、ヨヨコ先輩はあからさまに触れて欲しくなかったようなしかめっ面を浮かべたが、しかし直ぐに何事も無かったかのような表情に戻ると電気屋の袋に手を突っ込んで白々しく言ってのけた。

 

「あれ? こんな所にトゥイッチが落ちてる。暇だし三人でゲームでもする?」

 

「いやそれが落ちてたは流石に無理があるでしょ……もうちょっとまともな言い訳をですね……でも意外ですね。ヨヨコ先輩もゲームとかするんですね」

 

「え? いや別にそう言う訳じゃ……」

 

「じゃあどういうつもりで買って来たんですか……まあいいや。じゃあちょっとやってみます?」

 

 無茶苦茶な言い訳をしながらも新品のゲーム機とソフトと追加のコントローラーまで買っているヨヨコ先輩の提案に乗って、俺とひとりとヨヨコ先輩の三人でゲームをする事になった。

 

「俺中学上がってからこういうのほとんどやってないからちょっと楽しみです」

 

「あっ私も」

 

 俺とひとりがそう言うとヨヨコ先輩は意外そうな目で俺達を見て来た。

 

 喜多さんのような陽キャなら分かるが、俺達のような陰キャが全くゲームをした事が無いという事に驚いたのかもしれない。ヨヨコ先輩はゲーム機をセットしながら独り言のように呟いた。

 

「まあ私もあんまりやらないけど、男の人がゲームをほとんどやった事無いっていうのは珍しいかもね」

 

 セッティングが終わって起動したゲーム機の画面を見ながら渡されたコントローラーを弄って操作感を確認して、いざゲームが始まると先程のヨヨコ先輩の言葉に答えるように俺の口から何気なく言葉が漏れた。

 

「中学上がって楽器(ドラム)始めてから一日中練習してるとこういうのやる時間無くて……」

 

「…………え? ちょ、ちょっと!? 待ちなさいその話……」

 

「あっヨヨコ先輩死んだ……っていうかひとり、お前結構上手いな……」

 

「えっ……! そっそうかな……えへへ……」

 

 普段ふたりちゃんの相手をしているせいかコイツ中々上手いじゃねーか……だが俺にはまだ届かんな……俺も中学上がるまではそこそこゲームやってたから多少はね? しかしヨヨコ先輩は下手くそ過ぎんだろ……あっまた死んだ。

 

「ちょっとヨヨコ先輩!? 真面目にやってます!?」

 

「うっうるさいわね! 仕方ないでしょ! とっ友達とゲームなんかした事無いんだから……

 

「あ~! みんらでなにやってんの~?」

 

「あ、廣井さんもやります? それじゃあBoB(BandofBocchis)ゲーム王決定戦ですね」

 

 そのうち騒いでいる俺達に気付いた廣井さんが混ざってきたが、廣井さんはゲーム経験が無い上に体が滅茶苦茶動くタイプの下手くそで、隣に座った俺に肘やら腕やらがガンガン当たってきて酷い目にあった。

 

 そうして中々帰ってこないリョウ先輩をゲームをしながら待っていると、喜多さんが心配して探しに行くと言い出すのと同時に、何かを引きずるような不気味な音が聞こえて来た。

 

「……なんか変な音しません?」

 

「なにこの音」

 

 不気味な音に皆で不審がっていると、高さ六十センチ位ありそうな雪だるまを連れてリョウ先輩が戻って来た。

 

「頑張って作りました! 可愛がってあげてね!」

 

「おいやめろ! 室内にいれるな!!」

 

 店長に雪だるまを拒否されたリョウ先輩があきらかなゴミ(雪だるま)を口八丁で店長に押し付けている姿に驚愕しながら眺めていると、驚くことに廣井さんが次のプレゼントを自ら名乗り出て披露し始めた。

 

「私は~~~なんと肉と現金れす!」

 

「姐さんどこから盗んできたんですか!?」

「廣井さん窃盗はマズイですよ!!」

 

「君たち息ぴったりだね……だけど真っ先にその可能性に至るのおかしいでしょ」

 

 いやおかしくねーよ。おかしいのはあんたの素行だ。

 

 俺とヨヨコ先輩のステレオツッコミに自らの素行を棚上げした廣井さんは冷静に返して来たが、そのプレゼントの実態は肉と現金が当たるポイントシール十点分(ニ十点必要)だった。廣井さんが盗みに手を出して無くて心底安心した。

 

 そのポイントシールが期限切れな事が判明して店長に破り捨てられたのを合図に、いよいよひとりの番がやってきてしまった。

 

「なんとぼっちちゃんは二か月前から用意してたんだよ~!」

 

 虹夏先輩の言葉に、すわオーダーメイドか? とかブランド品か? なんて囁かれて焦ってポケットというポケットを漁っているひとりを見ながら、実は俺も滅茶苦茶焦っていた。

 

 あれ? もしかしてBocchis連名以外で個人でも用意する感じの流れなの? だとしたらやっべぇななんも用意してねぇよ……こうなったら歌でも送るか……? 

 

 俺がバンドマンとしての地雷プレゼント(最終兵器)を送るかどうか悩んでいると、手持ちにプレゼント出来るようなものが無かったのか、諦めたような表情のひとりがギターを手に取った。

 

「あっ私は歌をプレゼントします!」

 

 あっあっあっ……おいちょっと待ってひとり。俺のネタを潰すな。

 

「ひっひとり! 俺もそれに混ぜてくれよ! セッションしようぜセッション!」

 

 歌だけでもヤバイのに二番煎じは更にヤバイので、ひとりに乗っかる為に慌てて鞄を漁ってドラムスティックを取り出そうとする俺をスルーして、ひとりはジャンジャンとギターを鳴らし始めた。

 

 なんて奴だ。こいつ自分だけ助かろうとしてやがる……ちょ、ちょっと待ってくれ確かこの辺りに仕舞ったはず……

 

 俺が焦りながら鞄を漁っていると、いよいよ歌が始まると思われた瞬間――

 

「あっ、弦切れた……」

 

「はい次、太郎君でーす」

 

 実はこういう時の為に(?)旧ギターがあるのだが、己の身がかわいい俺は余計な事は言わないのだ。

 

 遂に出番が来てしまった俺が諦めて店長へと向き直り歌をプレゼントする事を伝えようとすると、これまでの茶番を見ていたヨヨコ先輩が痺れを切らしたように大きな声を上げた。

 

「ちょっと!? もう歌はいいから! 買ったでしょ!? 前に渋谷で買ったでしょ!? まさか持って来てないんじゃないでしょうね!?」

 

「いや持って来てますけど……えっ? でも個人でも渡すんじゃ……」

 

「そんな訳ないでしょ! それなら私はどうするのよ!?」

 

 そうかな……そうかも……なんだよ驚かすなよ。それならそうと早く言ってくれよ……また黒歴史が増える所だったじゃねーか……あっひとりさんはお疲れっす。

 

 今更思い出したのか口をパクパクさせているひとりを横目に、俺は潰れない様にカバンに入れていた誕生日ラッピングのプレゼントを取り出すと店長へと手渡した。

 

「店長三十歳の誕生日おめでとうございます。これは俺達BoB(BandofBocchis)のメンバー全員からです」

 

「お、おう……歳の事はともかくありがとな……! 開けてみてもいいか?」

 

 思いのほかまともなプレゼントが出て来た事に驚いている店長がそう言ってきたので俺が肯首すると、店長は滅茶苦茶丁寧にラッピングを解き始めた。

 

 えぇ……こういう感じの人だったっけ? いやまぁこういう感じといえばこういう感じか……確かに店長がクリスマスプレゼントを貰った外国の子供の様に紙の包装を勢いよく破るのは想像できないが……

 

「うお……これって……」

 

 包装紙から出て来たのは紙で出来た全長二十八センチほどのスーツケースを模した箱だ。それを開くと中にテディベアが入っている。大人な店長へのプレゼントという事に加えて、連名という事、なにより投げ銭というあぶく銭な事もあって、どうせならちょっと良い物を送ろうという事でそこそこのお値段の代物となっている。

 

「い、いいのか? これ結構高い奴じゃ……」

 

「どうどう先輩~? それみんなで選んで買ったんですよ~」

 

「へへへ……店長、それ前の渋谷での路上ライブで貰った投げ銭で買ったんですよ。どうすか! 俺達も中々やるでしょう!?」

 

 廣井さんが俺の背中に寄りかかりながら肩越しに顔を出して話に割り込んできたので、便乗していまいち俺の実力を信じていない店長に渾身のドヤ顔を披露した。テディベアを見た店長の瞳はまるでトランペットを見つめる少年のようだ。いやそんな少年見た事ないけど。

 

「お、おう……あっいや……! わっ私はぬいぐるみなんてアレだし、子供っぽいと思うけど……まあお前らが折角選んでくれた奴だし……その……あ、ありがとな……」

 

 俺のドヤ顔を見た店長ははたと何かに気が付いたのか、あれこれと言い訳がましい話をつらつらと語った後にそっぽを向いて頬を少し赤くして再びお礼を述べてきた。

 

 うわ凄いツンデレ……これがPAさんの言ってた天然記念物ですか? なんだかドヤってた俺が馬鹿みたいじゃないですか……

 

 一通りテディベアを眺めた店長が、またいそいそとラッピングを綺麗に元に戻していると、今までの一部始終をじっと見ていた虹夏先輩がポツリと呟いた。

 

「……いいなぁ」

 

 うわあ凄い湿度だ! もう十二月も終わりに近いってのにどういう事だよ? 空調君真面目にやって! 

 

 虹夏先輩が羨ましそうに俺を見て来たので、俺はそのままひとりを見た。こうすると何故かそのままそっくり照準を受け流せる魔法の仕草だ。案の定見られたひとりはあたふたと周りを見渡している。

 

「お姉ちゃんばっかりずるいずるい!」

 

 痺れを切らして吠える虹夏先輩に、今日は店長の誕生日……なんて事は誰も言わない。だって触ると絶対面倒な事になるから。だが店長は既に面倒になっているのか俺へ丸投げして来た。

 

「虹夏も誕生日教えとけば何か貰えるんじゃないか? なっ!」

 

 いや、なっ! じゃないが……考えても見て欲しい。ここでじゃあ誕生日には虹夏先輩にも何か送りますよなんて言うと、じゃあリョウ先輩も喜多さんも廣井さんもヨヨコ先輩もとなってそこに当然ひとりとふたりちゃんも入るので、一年間に八回誕生日プレゼントを送る事になる。約二か月に一回誰かの誕生日が来るじゃねぇか間隔と金銭負担を考えろ。

 

 沈黙は金という事で俺が無言で愛想笑いを浮かべていると、虹夏先輩がズズイと距離を詰めて来た。

 

「太郎く~ん。あたしの誕生日なんだけど……」

 

「うわあ! やめて下さい! それ聞いたらもう無視できなくなる奴じゃないですか!」

 

 誕生日を知らなければ、ああその日だったんですね知りませんでしたサーセン! で済むが、知ってしまったらもうスルー出来ないだろ! やめろ俺を地獄へ引っ張り込むな! 

 

「太郎。私の誕生日だけど……」

「山田君! 私の誕生日だけど……!」

 

 リョウ先輩と喜多さんまで便乗して暴露しようとしてきた。特にリョウ先輩は俺がドラムヒーローだと分かったからか目がお金の形になってるやんけ! ほらもう収集つかないじゃん! どうすんだよこれ? これが暴露系って奴ですか? とんでもない自爆テロだな。

 

「じゃあさ! 太郎君の誕生日も教えてよ! それならおあいこでしょ?」

 

 先程から頑なに皆の誕生日を聞くのを拒む俺に、虹夏先輩がさも名案でも思い付いたように笑顔で提案してきた言葉に俺は盛大に顔を顰めた。

 

 俺の誕生日はひとりと(今のところ)PAさんしか知らない極秘情報なのだ……が、この辺りで妥協しておかないと後がもっとやばい事になりそうなので、俺は観念して正直に自分の誕生日を皆に伝える事にした。するとそれを聞いた皆からは様々な反応が返ってきた。

 

「えーっ! そうなの!? 太郎君の誕生日、私と……」

「へぇー、山田君、伊地知先輩と……」

「うひゃひゃ! ひぃー! 太郎君面白過ぎでしょー!!」

「プププ……お前こそ真の山田太郎だ!」

 

 廣井さんとリョウ先輩は秘密に気付いたようで大笑いしていた。だから言いたくなかったんだよ……

 

 その後、俺は諦めて虹夏先輩、リョウ先輩、喜多さんに続き、遠慮していたヨヨコ先輩の誕生日も聞き出してスマホにメモすると廣井さんへと顔を向けた。

 

「廣井さんはいつですか?」

 

 だが廣井さんはいつものニコニコ顔を崩すことなくこちらを見つめている。一向に返事をしない廣井さんを俺が訝しんでいると、廣井さんは手にしたグラスの中身をぐいと大仰に呷った。

 

「……いいよ~私は」

 

「えっ? いやいや廣井さん、仮にも同じバンドメンバーなんですから遠慮しないで下さいよ」

 

「ちょ、ちょっと太郎君……もしかして私が男子高校生に貢がせる駄目バンドマンだとか思ってる?」

 

「…………いえ別にそこまで(・・・・)は思ってないですけど……あっもしかして店長みたいに年齢を気にしてるんですか?」「おい」

 

「なに最初の間は!? まあきくりお姉さんは攻略が難しいキャラだからね~……もうちょっと好感度が上がったら教えてあげる~!」

 

 思いがけない拒絶の言葉に俺が驚いて詰め寄ると、廣井さんは恥ずかしそうに意味不明な反論をしてきた。途中底冷えするようなドスの利いた声が聞こえた気がしたが、多分気のせいだろう。

 

 と言うか何言ってんだこの人? それに俺の好感度意外と低かったんですね、ちょっとショックですよ……

 

「じゃあ頑張って好感度上げますんで、教えてくれる気になったら何時でも言ってください。あ、でも前日とかは勘弁してくださいよ」

 

 強情に断る廣井さんに向かって俺が諦めたようにそう言うと、廣井さんはあっけにとられた表情でこちらを見て、照れくさそうに笑った。

 

「なんすか?」

 

「いや……そういう風に返されると思ってなかったから……でもそっか……太郎君はそういう子だったね~」

 

 そういう子ってどういう子だよ……? しかし意外と自己評価が低い人だ。こういう言葉の端々から根暗だったという廣井さんの昔が垣間見えるような気がする。割と根っこの方はひとりと似ているのかもしれない。

 

 

 

 プレゼントお渡しタイムも終わりそろそろお開きの空気になった時、喜多さんがスマホを片手に声を上げた。

 

「今日のライブを記念してみんなで写真撮りませんか!?」

 

「あっ、それならBocchisと各バンドで写真撮って貰ってもいいですか? SNSで宣伝とアリバイ工作したいんで」

 

 喜多さんに便乗した俺のアリバイ工作という言葉にみんなが頭にはてなマークを浮かべた。別にこれはそんなに難しい事ではなく、結束バンドやSIDEROSといった兼任しているメンバーを誤魔化す為に一緒に写真を撮ってSNSに上げようという事である。

 

「えっと……それは分かったんだけど、どうやって?」

 

「何言ってるんですか喜多さん。俺達は覆面バンド(・・・・・)ですよ? それじゃあ……本城さん、お願いできますか?」

 

「え~? わたし~?」

 

 俺の説明に疑問を口にした喜多さんに、説明するよりやって見せた方が早いと思ったので、自分の荷物から預かっていたひとりのパーカーとマスクを取り出すと、SIDEROSメンバーを一度見渡して本城さんへと差し出した。

 

 本城さんを選んだのは単純にひとりに身長と体系が近いからだ。上半身だけの写真ならパーカーを着ればいいだけなのでどうとでもなる。そういう意味では内田さんでも良かったのだが……内田さんはほら……ね? 

 

 そうして結束バンドとBocchisの集合写真を撮って貰ったのだが……確認した写真を見て俺は叫んだ。

 

「いや違うんですよ本城さん! ひとりはこういう時はもうちょっとこう……控えめなピースサインをするんですよ!」

 

「え~? こう~?」

 

「そこにひとり本人がいるんでアレを参考に……って待てよ? ここでノリノリでピースさせれば今後ひとりもそういうキャラにならざるをえないんじゃ……」

 

「えっ!? たったたたた太郎君!?」

 

「ヨヨコ先輩この人どうにかなんないっすか」

 

 パーカーとマスクを着用して見た目はそれっぽくなったのだが、ひとり役を頼んだ本城さんがノリノリでピースサインをするという解釈違いを起こした事に憤慨したが、今後を考えるとちょっと面白そうだと思っているとひとりは驚いて震え出し、それを見た長谷川さんがヨヨコ先輩に苦情を入れていた。

 

 なんとかかんとか写真を撮り終えて本城さんにお礼を言って衣装を返して貰うと、続いてSIDEROSメンバーと写真を撮る事になったので、虹夏先輩にヨヨコ先輩役をお願いする事にした。これも身長キャスティングだ。

 

「あっあたしがBocchisのメンバー役……たっ太郎君!? どうしたらいい!?」

 

「え? そうですね……ヨヨコ先輩なら……こう腕を組んで偉そうに……」

 

「ちょっと! 貴方、私にどういうイメージ持ってるのよ!?」

 

 ヨヨコ先輩にジト目で圧をかけられながら写真を撮ったが、中々いい感じの写真が撮れたので早速俺はBocchisのトゥイッターへ投稿する事にした。

 

「えーっと……Foltクリスマスライブゲストに出演させてもらいました。打ち上げで同じゲストの結束バンドさんとSIDEROSさんと写真を撮りました。っと」

 

 本当にこんなトゥイッターを見ている人が居るのかは謎だが、ぽいずんさんも宣伝はちゃんとやれって言ってたしな。あとはこれくらいしかバンドに貢献出来る事が無いという、虹夏先輩と喜多さんの悪い所取りをしたような奴が俺なのだ。

 

 俺がトゥイッターに投稿している間に結束バンドとSIDEROSの撮影も終わったようで、今度こそクリスマスパーティーはお開きになり、みんなで店の外へ出る事になった。

 

 外に出るとパーティーが始まった時より雪が強く降っていたので各々コンビニで傘を購入して改めて集まり、そのまま流れで解散しようとした所――

 

結束バンド!

 

 ヨヨコ先輩が力強く呼び止めた。

 

「私たちも未確認ライオット出場するから! 今決めた!」

 

 突然の宣言に驚く全員を尻目に、持ち前のツンデレを発揮して書類選考の改善点のメモを虹夏先輩へと手渡すと、その後SIDEROSメンバーに突然独断で決定した未確認ライオット出場を怒られていた。

 

「あの……太郎も……出てもいいですか……?」

 

「いや別に俺には断らなくても大丈夫ですよ」

 

「でも……あなたは出なくていいの?」

 

 SIDEROSメンバーに絞られたヨヨコ先輩が伺うように俺に尋ねて来たので、俺は無言で廣井さんを見た。見られた廣井さんは言わんとした事が分かったのか恥ずかしそうに後頭部をさすった。

 

「別に……廣井さん十代じゃないし……それに――」

 

 俺は一度言葉を区切ると、隣で俺の傘に入っているひとりを見てからメンバー全員を一度見回して不敵な笑みを浮かべた。

 

「もし俺達(・・)が出たら、優勝バンドが決まっちゃって面白くないでしょう?」

 

 言って俺がカラカラと笑うと、ひとりは遠慮がちに、廣井さんは楽しそうに、ヨヨコ先輩は呆れたように俺を見て来た。

 

「ま、そんな訳で今回は応援に回りますよ! 出るからには頑張ってくださいねヨヨコ先輩。ひとりもな!」

 

 そうして今度こそ本当に解散しようとした所で、俺は慌てて廣井さんとヨヨコ先輩を呼び止めた。

 

「あっ……ちょっと待ってください!」

 

 俺はひとりに傘を頼むと、自分の鞄を漁って二人にそれぞれクリスマス包装された紙包みを手渡した。

 

「掛け持ちでバンド組んで貰ってるお礼とか色々……あとメリークリスマスって事で」

 

「えっ! 本当太郎君!? いいの~!? ありがと~!」

 

「あっ……ありがと……でも私、何も用意してないけど……」

 

「別に構いませんよ。それはまあ……曲作ってくれたお礼とかそういうのなんで」

 

「中身見てもいい~?」

 

「そ、そう? あっ、じゃあ私も……」

 

 ブツを渡すと二人とも喜んでくれたが、ヨヨコ先輩は返すものが無くて気まずそうにしていたので、お返しは必要ない事を伝えておいた。すると返事も待たずに廣井さんが包装紙を解くと、ヨヨコ先輩も同じように包装を解いて、出て来た物を見て二人同時に声を上げた。

 

エリクサー(・・・・・)

 

 廣井さんとヨヨコ先輩に送ったのはそれぞれの楽器の()だ。色々考えたがやはり楽器関係の消耗品を送るのが最も無難だろうと考えてこれになった。

 

「二人が普段なに使ってるのか分からなかったんでこれにしたんですけど、使わないようなら誰か知り合いにでもあげて下さい」

 

「ありがと~太郎君……私、お金無くて弦どうしようか困ってたんだよ~! はぁ……やっぱモテる男はちげーな……」

 

 うるさいよ……彼女どころか友達すらいない俺に対する嫌味かそれは……というか彼女が居ない事を今日は何回擦られるんだよ……

 

 俺の言葉を聞いた廣井さんは大げさに涙を流し始めたかと思うと、最後にはやれやれといった表情で呆れたように呟いた。

 

「ま、まあでもこういう消耗品の出費は意外と馬鹿にならないから、ありがたく使わせてもらうわ」

 

 俺から剣呑な気配を感じたのかヨヨコ先輩が慌ててフォローするような言動をしてきた。やはり消耗品で正解だったようで安心した。

 

「あ、やっぱそうなんですか? ひとり見てても思ったんですけど、大変ですねギターやベースも……」

 

「まあね。でも弦の張替え頻度は努力の成果でもあるから……」

 

 

 

「一か月くらいで弦が駄目になるんでしょ?」

「二か月くらいで弦を交換する事になるけどそれは仕方ない……」

 

 

 

「……えっ?」

 

 

 

 その後何か言いたそうなヨヨコ先輩を廣井さんに引き取って貰って別れた俺達二人は、先程よりも強くなっている雪の中を駅に向かって歩き始めた。

 

「おいひとり、もっとこっちに寄れよ。あんまり傘がデカくないから雪が掛かるだろ」

 

「うっうん」

 

 言われてひとりが体をくっつけて来た。虹夏先輩と店長や長谷川さんと本城さんが一本の傘で帰っていたので行けるかと思ったのだが、やはりケチらずに一本ずつ傘を買った方が良かったかも知れない。しかしもう駅が近いのでここで買ったら負けた気がするので辛抱する。

 

「しっかしクリスマスにこんなに雪が降るとはなぁ……電車大丈夫かこれ?」

 

「電車が止まってたらどうしよう……」

 

「そりゃお前……ネットカフェかファミレスに入って始発待ちかなぁ……」

 

 ひとりの言葉に不安になってスマホで電車の運行状況を検索してみると、なんとか電車は動いているようで安心した。

 

 しばらく二人で無言で歩いていると、おずおずとひとりが口を開いた。

 

「あっあの……太郎君、お姉さんと大槻さんにプレゼント用意してたんだね……」

 

「まあな、二人には色々お世話になってるしな。曲とか歌詞とか」

 

「あっ、わっ私も歌詞、書いたよ……」

 

 俺が立ち止まりひとりを見下ろすと、ひとりも同様に立ち止まり俺を見上げてにへらと笑顔を作って来たので、俺は小さく息を吐いた。

 

「お前、俺に対しては案外図々しい奴だな。でも分かってるよ、ちゃんとお前の分も用意してる」

 

「ほっ本当!?」

 

 そもそも毎年用意しているし、明日は恒例の後藤家山田家合同クリスマスパーティーがあるのでその時渡そうと思っていたのだが、今日一応持って来ておいて良かった。そう思いながら今朝と比べると随分とスペースが空いた鞄を漁って包みを取り出すとひとりへと差し出した。

 

「メリークリスマスひとり。お前のは特別におまけ付き(・・・・・)だよ。あと歌詞ありがとな。それと、これからもよろしくな」

 

「あっありがとう太郎君……開けてもいい?」

 

 俺が勿体ぶって大仰に頷くとひとりは丁重に包みを開き始めた。

 

エリクサー()フィンガーイーズ(指板潤滑剤)……それにピック……」

 

「お前が使ってる道具はいつも見て知ってるからな、消耗品欲張り三点セットだぞ。それでますます精進してバンドの力になるように」

 

「うっうん! あ……じゃあ私からも……」

 

 包みを開いたひとりに俺が笑みを浮かべてからかうようにそう言うと、ひとりは自分の鞄を漁って包みを取り出して俺へと差し出して来た。

 

「めっメリークリスマス太郎君」

 

「おう、ありがとなひとり。この感じは……ドラムスティックか?」

 

 受け取った包みを開いてみると中にはヒッコリーとオーク、二種類のドラムスティックが入っていた。

 

「太郎君昔沢山スティック折ってたから……」

 

 ひとりの言う通り、最近は練習時間が短くなったせいかそうでもないが、中学の時は二週間に一回(・・・・・・)はドラムスティックを折っていたもんだ。一組千円位だが、ヨヨコ先輩が言った通りこういう消耗品は馬鹿にならない出費だった。

 

「大事に使う……つもりではあるけど、ちょっとどれ位持つかは分かんねぇわ。でもありがたく使わせて貰うよ」

 

「うっうん。太郎君もそれで精進してね……えへへ」

 

 ひとりにお礼を言うと俺の真似をしてきたので肘で軽く小突いてやると、ひとりは恥ずかしそうに小さく笑みをこぼした。そうして再び雪の降る中、二人して一本の傘で駅までの道を歩き出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 余談だが、この日のBoB(BandofBocchis)のトゥイッター投稿に「SIDEROSの大槻から」とか「結束バンドのイソスタから」とか「例の動画から」なんて返信がされ、爆発的に増加したフォロワーが年が明けるまでの間に二万人を超える事になるのだが、それはまた別の話だ。




 はまじ先生、廣井さんの誕生日教えて……

 長すぎとか、分割しろとか他にもなんか感想あったら気軽に書いてください。もし今回分割するなら……リョウさんが店から飛び出した辺りで切ると大体半分です。


 UA、PV、評価、お気に入り、感想、ここすき、誤字脱字報告等ありがとうございます。


 前回音楽知識が全く無いからネットでググってそれっぽく書いてるだけの拙い演奏シーンを楽しみにしてくれてる人がそこそこ居たみたいで驚きました。確かにライブシーンのあるぼざろ二次創作ってあんまり見ないので、この小説の一つの売りとして今後は新曲や重要なシーンではちょっとだけ頑張ってみようと思います。
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