新しい学年に備える為の短い春休み中に俺は色々と準備を進めていた。
一つは三月の末のライブを店長に頼んで録画して貰ったライブ映像を編集して、作るだけ作って放置していたオーチューブのBOBチャンネルに投稿した。
結束バンドのライブ映像とMVの再生数の差を見て本当はMVを投稿したかったのだが、そんな暇もお金もアイデアも無かったのと、とにかく何か早く出せとヨヨコ先輩にケツを叩かれたのでライブ映像を出すことにしたのだ。
今のところ再生数は……まぁ結束バンドのライブ映像よりは多いけど、MVには負けるといった感じだ。
実は渋谷での深夜のスタジオ練習? をイライザさんが録音していたようで、あの日スタ練に参加した全員に音源を送って来たのだが……これは各バンドの許可が取れたらオーチューブに乗せる……かもしれない。いやどうだろう? ちょっと分からん。需要あるのか?
もう一つは廣井さんが作った次の新曲でヨヨコ先輩とツインボーカルをやってくれと言われたので、その練習として滅茶苦茶ヨヨコ先輩にカラオケに呼び出されて練習していたのである。
おかげでヨヨコ先輩からも一応ライブでお出しできる最低限にはなったとお墨付きをいただいた……のだが……新曲の俺の担当ラップなんだよなぁ……ヨヨコ先輩の担当は普通に歌だけど。ちなみに作詞はひとりで、今回はかなり異色な出来だ。
あとは物販に関して色々。次のライブでお披露目できる……筈だ。
そんなこんなで春休みも終わりを迎え新学期が始まる今日は、今後一年間を左右するであろう超重要イベントであるクラス替えが行われる日でもある。
多くの人間は仲の良かったクラスメイトと離れ離れになるかもしれないという不安と戦っているかもしれないが、俺に恐れるものは無い。だってクラスに仲の良かった奴なんていなかったから!!
とはいえ正直俺も同じ学校で、同性である男子の友人を作りたいとは常々思っていた。去年は沢山の知り合いが出来たが、その全てはひとりを通して知り合った人ばかりなので当たり前だが女性ばかりなのだ。
別に虹夏先輩達や廣井さん達に不満がある訳では無いが、俺も同性の友人と気兼ねなく何か馬鹿な話をしたり、どこかへ遊びにいってみたいという欲求はあるのだ。
そういう意味では生徒のほぼ全員が人間関係を強制的にリセットされるこの日は、俺が新しく友人を作るのにうってつけの日でもある。
幸いな事に今年はとっておきの秘策がある。俺はその秘策を仕込むと、意気揚々といつも通りひとりを迎えに後藤家に向かう事にした。
「ダディーヒッピーおるー!!」
ひとりを迎えに行った後藤家の前に立つ人物を見て、俺は思わず叫んでしまった。
ヒッピーとは『伝統に反抗し、自然を愛する自由な生活を求めた人々』の事だが、そんな小難しい思想なんかよりも長い髪にヘアバンド、カラフルなシャツにワイドパンツと言った格好をしているのが恐らく俺達の頭に浮かぶヒッピーだ。
後藤家の前に立つ人物もその特徴に漏れる事無くピンクの長い髪にヘアバンドを巻いている。ギターケースを背負い、顔には丸メガネのサングラス、両腕には無数のラバーバンドを身に着け、右肩から下げるトートバッグには大量の缶バッジが取り付けられている。
思わず三度見しそうなヒッピーファッションの人物こそ、まごう事無き俺の幼馴染である後藤ひとりだった。
「あっ太郎君!」
叫んだ俺を見つけて駆け寄って来たひとりは、ヒッピースタイルに自信があるのか不安半分期待半分といった様子だ。
「どっどうかな? 去年の反省を踏まえて、今年はドメジャーバンドのグッズにしてみたんだけど……」
「や、やるじゃねぇか……まさかそんな隠し玉で来るとは思わなかったぜ……」
俺の前でラバーバンドに浸食されている両手を挙げて見せたり、体を捻って缶バッジが取り付けられたトートバッグを見せてくるひとりに、俺は慄きながら返事をする。
前にぽいずんさんに今後の目標を聞かれて語った『世界平和』って答えを、まさかヒッピースタイルで表現してくるとは……これこそロッカーだぜ……
だが俺だって今日は無策で来たわけでは無い。去年ひとりが虹夏先輩を釣り上げたという話をパクっ……参考にして一応制服の下に仕込んできたのだ。
「でもな、今日という日に仕込んできたのはお前だけじゃないんだぜ!」
「!! そっそれは!」
俺が制服の下に着込んだTシャツを見せる為にネクタイとYシャツのボタンを外してブレザーとYシャツを拡げると、結束バンドのバンドTシャツが姿を現した。
「どうよ? これはメジャーバンドを外す事で通っぽさを出すのと、去年の文化祭で名前が知られている結束バンド……ひいては人気者の喜多さんの話題に繋げる事が出来る最強カードだぜ!」
さらにはひとりのラバーバンドと同じように、自分の左手首に物販で買ったピンクの結束バンドも装備済みだ。
完璧な作戦にぐうの音も出ないようなひとりにドヤ顔で語った俺はまた元の通りに制服を着直すと、ひとりはスマホ片手に遠慮がちに口を開いた。
「あっあの太郎君……お願いがあるんだけど……」
「ん? どうした? 悪いけどこのTシャツは貸せないぞ」
「そっそうじゃなくて……さっきの右手でネクタイを外すのもう一回見せて欲しいなって……」
「どういうことだよ!?」
よく分からないが熱心に頼み込むひとりに押し切られて困惑しながらもう一度ネクタイを外してやると、何故かひとりはその様子を写真に撮っていた。スマホで撮った写真を見て満足したのか、一度大きく頷いたひとりと共にようやく学校へと向かう事になった。
ヒッピー後藤に対する周囲からの視線は、学校に着くまでの電車内でも凄かったが学校に着いてからも凄い。校門をくぐって昇降口へ辿り着くまでに、学年問わず二度見は勿論の事、三度見する奴も珍しくない。何を思ったのか写真を撮ってる奴まで居る。
こんな事なら俺も駅に着いた時に結束バンドTシャツが見えるようにしておくべきだったと後悔したが、流石にいま服を脱ぎ出すと別の意味でやばい奴になってしまうので、ここは当初の予定通り教室に入る前に準備してクラスの皆にアピールする作戦で行くしかない。
好奇な視線に晒されながらクラス分けが書かれた掲示板の前まで辿り着くと、俺達二人は自分の名前を探し始めた。
俺の苗字は山田なので各クラスの名簿をケツの方から探していくとすんなりと発見した。そのまま自分のクラスにどんな奴がいるのか確認するために名簿の後ろから遡って見て行くと、まさかの人物の名前に俺は驚愕した。
「ウ……ウソやろ。こ……こんなことが、こ……こんなことが許されていいのか」
「? どうしたの? 太郎君は何組……って同じクラス!? や、やった……!」
ひとりは己の胸の前で小さく両手を握りしめた。どうやらこの結果に相当お冠のようだ。クラス割を決めた教師に対してファイティングポーズを取っている。
それもその筈、俺達はついこの間に高校最後の年に遂に同じクラスになるというドラマティックな展開を将来音ステで披露しようと誓い合ったのだ。
だというのにもう一緒のクラスになっちゃったよ……これじゃもう音ステでギャップトーク出来ないじゃん! もしかして俺達の思考が盗聴されてたのか? だとしたらやばいな頭にアルミホイルを巻かないと(ただしトッ〇バリュ製は不可)!
「じゃ、じゃあ……いっ一緒に教室まで行こうか……うへへ……」
「……そうだな」
決まってしまったものは仕方ないので、ひとりに促されて二人で教室に向かおうとした瞬間――俺はふとある事に気が付いた。
「? どうしたの?」
「……いや」
ひとりの姿をチラリと見て生返事をした俺が足早に教室へと向かい始めると、ひとりも何かを思い出したかのように速足で後を付いて来た。
「たっ太郎君? どうしたの? なんか歩くの速くない?」
「い、いや……そんな事ないぞ……というかひとりこそ歩くの速くないか? 歩くっていうか小走りになってない?」
「そそそそうかな!? そっそんな事無いよ……」
教室までの道中に俺はネクタイとワイシャツのボタンを外して結束バンドTシャツのお披露目の準備を進める。
ひとりより先に教室に着こうとしているのは、別にヒッピースタイルのひとりと一緒にいるのを見られるのが嫌なわけでは断じて無い。ただちょっと先に教室に入らないといけない理由を思い出したのだ。
流石に運動が苦手なひとりに足の速さで負ける訳もなく先に教室に辿り着いた俺は、勢いよく扉を開けると共にブレザーとワイシャツを両手で拡げて中に着ている結束バンドTシャツがよく見えるようにして入室しようとした――瞬間、ひとりが勢いよく俺の腰にしがみ付いた。
「うお!? 何すんだよひとり!」
「ままま待って太郎君! 私を先に教室に入らせて!」
「ふざけんな! そんなド派手なヒッピースタイルのお前が先に入ったら、バンドT姿の俺の印象が薄くなるだろうが! お前はインパクト抜群だから後でもいいだろ!」
俺が足早に歩いていた理由がこれだ。別々のクラスなら競合しないのだが、同じクラスだとどうしても後から入った方が不利になる。その為俺はひとりより先に教室に入ってアピールする為に急いでいたのだ。
「だだだだだって……バンドTの太郎君が先に入ったら、こんな格好で後から入った私が、無駄にはっちゃけてる変な奴みたいに見えるじゃん!」
「変な奴の自覚あったのかよ……とにかくもう遅い……」
「きゃーー!! 二人ともなにしてるの!?」
俺の腰にしがみ付いて激しく抵抗するひとりと教室の入り口で言い争っていると、俺達の良く知る声が聞こえて来た。
「あれ? 喜多さん?」
「あっえっ喜多ちゃん!? どうしてここに……」
「同じクラスなのよ! 掲示板のひとりちゃんの名前の一つ前に、私の名前あったでしょ!? っていうか二人ともその格好は何!? 何かの罰ゲーム!?」
喜多さんの登場によって、俺達二人のしょうもない争いに終止符が打たれた。だが少しいつもと違う格好してたら直ぐに罰ゲームに結びつけるのは、いくら喜多さんでもちょっとどうかと思う。
「いやあの……これはですね。話のきっかけを作る俺達の秘策でして……」
「あっ去年はマイナーバンドグッズで失敗したので、今年はドメジャーバンドにしてみたんですけど……」
「そういう問題じゃ無いと思うわ!」
喜多さんは俺達の姿を見て困ったように叫ぶと、すぐさまひとりが身に着けているバンドグッズを取り外しにかかった。
「わはは、やっぱドメジャーバンドじゃ駄目なんだってひとり。こういうのはもうちょっとマニアックな所を攻めないと……」
されるがままに喜多さんに凄い勢いでバンドグッズを取り外されるひとりを見ながら俺が笑うと、全てのグッズを外し終えた喜多さんは勢いよくこちらへ向き直った。
「山田君もよ! というか何で
「そりゃ、秀華高でなら抜群の威力を発揮するからですよ。さてはシロウトだな?」
「~~~ッ! とにかく、ソレは恥ずかしいからちゃんと制服を着なさい! あっピンクの結束バンドまでしてる!」
「あっ、ちょ……わ、分かりました! もう大丈夫です! 後は自分でやりますって!」
「もー、いいからほら! ネクタイは何処!?」
ドヤ顔で語った俺のシロウト発言に憤慨した様子の喜多さんは、手始めに目ざとく見つけた俺の左手首のピンクの結束バンドを外すと、嫌がる俺のYシャツのボタンを手際よくかけ始めて、最後には文句を言いながら乱暴にネクタイまで締め出した。お母さんかな?
教室の入り口付近で喜多さんにされるがまま服装を正されるおかしな二人組の姿がそこにはあった。
というかさっきからクラスの皆の視線が痛い。
ただでさえトンチキな恰好で騒ぎながら教室に入って来たおかしな二人が、キングオブ陽キャである喜多さんと親し気に話しているのだから無理もない。ひとりは同じバンドメンバーなのが去年の文化祭で判明しているが、俺の事は正体不明の男子だろう。
それが関係しているのか、心なしか男子諸君の視線が痛い気がする。
普段のヤベー発言や奇行で忘れがちだが、喜多さんは顔が可愛くて、性格も良くて、歌も上手くて、友達も多い陽キャなのである。
これ以上クラスの男子の俺への心証を悪くするのはまずいと思ったので、俺は喜多さんにお礼を言うと自分の席へと避難する事にした。
「これでよしっと」
「あ……喜多さんあざます……じゃあ俺はこの辺で……」
「そう? じゃあこれから一年よろしくね! 山田君!」
「っす……」
「ちょっと!? 何で急にそんなに他人行儀なのよー!?」
面倒な事を言い始めた喜多さんに本格的に絡まれないうちに俺は自分の席へと向かう。クラス分けの掲示板でも確認したが、今回のクラスは和田さんや渡辺さんのような『わ』から始まる苗字がいないようで、珍しく山田の俺が一番最後の出席番号だ。
漫画やアニメなんかでは主人公席と言われる窓際の一番後ろの席に座り、頬杖をつきながらゆっくりと一度教室全体を見回した後、ひとりの様子を確認する。
ひとりの席は喜多さんの直ぐ後ろ、前から二番目の位置なので後ろからよく見える。しかしあいつマジで後ろから見ると全身ピンクだな。こんなにピンクなのは後藤ひとりか星のカー〇ィかメ〇モンくらいだろう。
俺はひとりを観察しながら、ひとりが同じ教室にいるという生まれて初めての感覚に変な感慨を覚えていると、ふと別の異変を発見した。
喜多さんの席の周りに凄い数の女子生徒が集まってきている。
凄い……クラス代わったばかりでこんなに集まって来る? というくらい人が集まっている。恐らく喜多さんの友人であろう女子生徒は誰も彼も陽キャっぽい垢抜けた感じの女子ばかりだ。
教室に知り合いがいるのが嬉しかったのか、ひとりは喜多さんに話しかけようと小さく手を伸ばそうとしたが、ひとりの様子に気付いた喜多さんとその友人たちが一斉に振り向くと、その圧倒的な陽キャオーラに慄いた様子のひとりは肩を落として俯いてしまった。
そんな様子を自分の席に座りながら眺めていると、また喜多さんに話しかける女子生徒が現れた。
「喜多~今年も同じクラスじゃん。腐れ縁だね~」
「これで五年連続ね~」
制服の上着の上からブラウンの長袖スクールセーターを着た、ショートボブ? の女子生徒は、聞こえて来る会話内容からどうやら相当喜多さんと仲が良いようで、とりわけ多くの女子生徒が『喜多ちゃん』と呼んでいる中、ただひとり『喜多』と呼び捨てにしているのが仲の良さを際立たせている。
女子生徒の席はどうやらひとりの真後ろらしく、席に座ってからもひとりを挟んで二人は会話に花を咲かせている。
仲の良さそうな二人に挟まれて一人で勝手に右往左往しているひとりを眺めていると、急に喜多さんが立ち上がって俺へと顔を向けた。
「山田君! ちょっといいかしら?」
手招きしながら俺を呼ぶ喜多さんに俺は面食らった。いや――正確に言うなら喜多さんに呼ばれた事で教室中の視線が俺に集まった事に……だろうか?
一応頭では理解していたつもりだったが、学校外ではあまり見えなかった喜多さんの交友関係の広さとか影響力を今まさにダイレクトにこの身で体験している。ただこれは喜多さんの影響だけでなく、俺という正体不明の男子生徒という事も大いに関係しているだろう。恐らく陽キャ男子ならこんな注目を浴びていないはずだ。
ただでさえ先程喜多さんにお世話されたのを周りに見られているのでこれ以上悪目立ちするのは御免被りたいが、呼ばれた以上は仕方ないので俺は教室中の視線に晒される中ゆっくりと立ち上がった。
話のきっかけを作るため、ひいては喜多さんのネームバリューを期待して結束バンドTシャツを着て来たが、俺が望んだのはこういう目立ち方ではなかったんだが……
周囲の視線に怯えながら喜多さん達の元へ行くと、喜多さんはひとりの後ろの席に座る女子を紹介してくれた。
「ひとりちゃん、山田君、紹介するわね! 彼女は佐々木
「ども~」
「あっどうも……」
「……っす」
「それでこっちの子が、私と同じバンドの……」
「あ~知ってる知ってる。去年の文化祭の……
佐々木次子という名前は初めて聞いたが、さっつーという呼び名には覚えがある。確か元旦にウチに来た時に喜多さんが言っていた人の筈だ。
佐々木さんは文化祭でのひとりの
意味深な笑いと去年の文化祭と聞いて自分の
「あっすっ好きなバンドとか……」
「ウチヒップホップしか聴かないんだよね。喜多たちがやってる様なバンドは聞かないわ。ごめん」
見事に撃沈した。別に誰が悪い訳でもない。ただちょっと噛み合わなかっただけだ。だが喜多さんとかなり仲が良さそうな佐々木さんを結束バンドのライブで一度も見た事が無かった理由が判明した。しかしヒップホップか……
「ヒップホップっていうと定義がかなり広いですけど、ラップ・ミュージックもありですか? ラップ・メタルとかは? それともやっぱり四大要素が無いと駄目な感じですか?」
「え? いやメッチャぐいぐい来るなコイツ……まぁそりゃ四大要素はあるに越した事は無いけど、音源にブレイクダンスやグラフィティは無理じゃん? そういう意味ではラップ・ミュージック
ヒップホップという言葉の定義は広く、基本的にサンプリング(既存の音源から音やら歌詞やらを抜粋してループさせたり継ぎ接ぎしたりして作る曲)や打ち込みの音楽にラップを乗せた音楽はヒップホップ・ミュージックやラップ・ミュージックと呼ばれるヒップホップの中の一要素的な物だ。
本当の意味でのヒップホップというのは先程のMC(ミュージシャン)に加えてDJ、ブレイクダンス、グラフィティ(主にスプレーを用いて、電車の車両や高架下の壁など公共の場に描かれる文字や絵のこと。落書きとも言われる)の四つの要素全てを内包している言葉なのである。なのでヒップホップが好きとだけ言うと、ラップだけが好きだったり、ブレイクダンスだけ、DJだけ、グラフィティだけと結構バラバラだったりする。
「……もし良かったら今度の結束バンドのライブに来てくださいよ。対バンで出てる別のバンドですけど、一曲だけそういう感じの曲あるんで。あ、チケットは結束バンドのやつ買ってくれたらいけますから」
「は? 何? ウチ口説かれてんの? 怖いんだけど」
「山田君それって……」
「……え? いやっ!? ち、ちちっち違っ……誤解!」
何で俺がこんな面倒くさいヒップホップの解釈的な事を佐々木さんに確認していたのかと言うと、次のBoBの俺とヨヨコ先輩のツインボーカル予定の新曲がまさに一部ラップミュージックを内包した曲だからである。ここで四大要素が無いとヒップホップじゃ無いと言われると終わりだが、そうでないならワンチャンある。これをきっかけに結束バンド沼に落とすんだよ!
「それで? さっきから話してるこっちの男子はどちらさん? もしかして喜多の彼氏?」
「違うわよ! もうっ! どうして皆すぐにそっちの方向に持って行くのかしら……」
「ごめんごめん。でも喜多が男子紹介してくるとか珍しいからさ~。知ってる? こう見えて喜多ってウチの知る限り男子と付き合った事無いし、あんまり仲良くしてる所も見た事無いんだよねぇ~。でもこいつはやめた方がいいんじゃない? ウチの事口説いてたし」
「ちょっと!? だから誤解ですって!」
本当に誤解だからひとりはそんなこの世の終わりみたいな表情で俺を見るな。
しかし佐々木さんの喜多さん評を聞いて驚いた。交友関係が広く、社交性の高い喜多さんの事だから男子の知り合いもとても多そうだが……喜多さんはリョウ先輩みたいなのが好みみたいだから、お眼鏡に適う男子がいないのか、それとも高嶺の花的な存在なんだろうか?
そういえば俺似たような人を一人知ってるわ。メッチャ顔が良くて性格は喜多さんと反対なんだけど良い人で、でも俺とするまで他人とロインの交換した事無いって言ってた人……大槻ヨヨコっていう人なんですけどね……
「もうっ! 私の事はいいから!」
「はいはい。で、山田君だっけ? 実は私、ちょっと知ってるんだよね~」
「え? そうなんですか?」
何時の間に自分がそんな有名人になったのかと思って驚いて声を上げると、佐々木さんは俺を見てひとりの時と同じような意味深な笑みを浮かべた。
「去年の文化祭で、後藤のダイブ食らって担架で運ばれた人でしょ? あの時のライブ見てた人ならほとんどの人が知ってるんじゃない?」
思わず俺は眉をひそめてスンとした表情になってしまった。碌な知られ方じゃ無かったわ。顔が知られてると聞いてドヤ顔を晒さなかった自分を褒めてやりたい。ひとりのドンマイ! みたいな表情がさらに俺の精神に追い打ちをかける。うるせーお前だってダイブマンだからな。
そうこうしている内に先生が教室に入って来て、自己紹介を始めるから全員席に着くようにとの号令がかかったので俺は自分の席に戻る事にした。
自己紹介は出席番号順で始まったので、一番最後の俺は自分の番が来るまでゆっくりとクラスメイトを眺めていると、なにやらひとりが熱心にメモを見ながらニヤついているのが見えた。
こういう時のひとりは大体ろくでもない事を考えている時なので、俺は何時でもレスキュー出来る精神状態を整えておく。お前が滑ったら俺が助けてやるから、俺が滑ったら頼むぞひとり! って思って今までやって来たけど、あいつに助けられた事あったかな……? ままええわ。
自己紹介は滞りなく進み、あっという間に喜多さんまで回って来た。
喜多さんは流石の陽キャパワーで、自己紹介と共に結束バンドの宣伝や動画サイトに上げているMVの宣伝をクラスメイトとの合いの手を交えながら和気あいあいと語っている。
「ちなみに後ろの後藤さんがリードギターです! すっごく上手だから一度は生で見ないと損よ~」
喜多さんが最後にひとりの事をアピールすると、教室から感嘆するような声が上がった。
喜多さんのおかげで教室の雰囲気はかなり良い。さらに続くひとりのお膳立てまでしてくれるなんて、ホンマ喜多さんの優しさは五臓六腑に染み渡るで。出来れば俺の前に居て欲しかったんだが……
喜多さんに続いていよいよひとりが自己紹介の為に立ち上がると、先ほどの空気から一変して教室がやにわに騒がしくなる。
あまりのひとりの顔の良さにざわついた……訳では勿論無い。これは学校指定でも何でもない全身ピンクジャージに対する物だったり、佐々木さんが言っていた去年の文化祭ダイブを知っている人間の動揺かもしれない……でもまだ喜多さんがあっためた熱は残ってるぞ。
「あっ……ごっ後藤ひとりです……あだ名はぼっちです」
ひとりがあだ名を披露した瞬間、教室を困惑した空気が走った。
おっ大丈夫か大丈夫か? (教室)バッチェ冷えてますよ~……っていきなり何言ってんだこいつ!? 初めてのあだ名が嬉しかったのは分かるけど、やっぱりあだ名が『ぼっち』はヤバいんだって! 俺はこれに抗う為に戦っているが、STARRY内で改善される気配は無い。
「なっ名前の通りリアルぼっちです……へっ……あっしゅ出身は神奈川です……中学の人が居ない高校がよかったので二時間かけて通学してます。まっ毎朝寝不足でこの学校にしなきゃよかったってこっ後悔してます……」
いや、ひとりのやりたい事はよく分かる。恐らくはあいつの想像では「~後悔してます」辺りで笑いが起こる予定だったんだろう。喜多さんならもうちょっと上手く料理して笑いが起きるんだろうけど、ひとりの表情と口調も合わさって悲壮感がヤバくて笑えねーよ。
しかし俺は機会を窺ってあいつの希望通り笑いを挟んで見る事にした。俺が先陣を切れば他のクラスメイトも釣られて笑ってくれる人がでるかも知れないからな。だから俺の時はマジで頼むぞひとり!
「けっ欠点は人の目をみれない事あってつける事です……ってそっそこ笑うな……」
「あ、あはは……!」
「えっ!? あっえっと……シバくぞ!!」
「ヒェッ……すあせん……」
「えっいっいやっ……違っ……」
ここしか無いと思ってぶっこんだ俺の笑い声に、ひとりはまさかリアクションが返って来るとは思っていなかったのか一瞬驚くと、しかしすぐさま手に持ったカンペに視線を戻して俺の想像を超える大きな声でツッコミを入れて来たので俺は思わず謝ってしまった。
ふざけんなテメー……もうちょっとやりようがあるだろうが……というかツッコミなんだろうけどひとりに生まれて初めて怒鳴られてガチでビビったわ……
ひとりは静まり返る教室の空気に抵抗するように、最後に自分のギターを武田信玄の軍配に見立てたモノボケを披露して盛大にスベると、先生に促されて静かに席に着いた。
その後はひとりのような
「じゃあ最後に山田」
「ウッス!」
担任に呼ばれて俺は勢いよく立ち上がった。見とけよ見とけよ~ 。真打は最後にやって来るってな。
「右投左打、気は優しくて力持ち。山田太郎です!」
俺の自己紹介に再び教室が騒がしくなる。そりゃそうだ、山田太郎なんて名前の奴が実際に居たらそりゃ驚くだろう。もし山田花子なんて奴がクラスに居たら、俺は自分の事を棚に上げて驚く自信がある。いや、もしかしたら突然の右投左打発言に驚いただけかもしれないが……
「趣味は音楽鑑賞(ドラムヒーロー宛てリクエスト曲)。結束バンドは結成当時からのファンで、なかでも一押しは後藤ひとりです! よろしく!」
俺は最後に音楽ファンアピールとして両手でメロイック・サインを作った両手を胸の前で交差させてキメポーズを作った。ドカベンネタはやらないのかって? 去年それで盛大にスベッたからな。俺は反省出来る男なのである。
しかしどういう訳か思ったより反応が無い。皆無と言っていい。喜多さん人気に便乗した訳では無いが、結束バンドの名前を出したにもかかわらず無反応だ。何故か名前を出してアピールしてやったひとりは机にうずくまってるし。
「あっえっと……一発芸やります!」
場の空気に恐ろしくなった俺は慌てて自分の鞄を手繰り寄せると、その中から万が一の時の為に仕込んでおいた鞄と同じ位の大きさの箱をゆっくりと引っ張り出しながら決め台詞を言う。
「このカバンの中ぜーーんぶべんとう。ドカベンや」
ドカベンネタはやらないと言ったな。あれは嘘だ。しかしどうだ? このネタはウチの父さんとひとりのおじさんにはバカウケするネタなんだが……
「………………は?」
誰かは分からないが教室から困惑の声が聞こえて来た。
やばいな……ちょっとネタが難し過ぎたか? 喜多さんの背中からはドス黒いオーラが立ち上っている気がするし……仕方が無いのでさらにとっておきのネタを披露する事にしよう。大丈夫! これはマジでもうドッカンドッカンだから!
「あっ……えー、続きましてヒートショック対策に足先からゆっくりと風呂に浸かる山田太……
「はい。もう座っていいぞ山田」
「えっ? あっはい……」
俺は先生に促されて静かに席に着いた…………いやぁ今年も静かな一年になりそうだな!
結局誰とも話をする事が出来ないまま放課後を迎える事になった俺が、同じような境遇に落ち込んだ様子で帰り支度をしていたひとりに声をかけると、同じタイミングで佐々木さんもひとりに声をかけて来た。
「ひとりー、帰ろうぜー」
「うっうん……」
「後藤、ちょっといい?」
「!? ひっ……さっささささん!!」
突然佐々木さんに話しかけられてひとりは大きく肩を跳ねさせた。わざわざひとりに何の用かと思ったが、佐々木さんから出て来た言葉は少し意外な物だった。
「さっきは山田のせいで言い忘れたけど、去年の文化祭のギターかっこよかったよ。ダイブもだけど、どっちかって言うとそっちの方が印象的で後藤の事覚えてたんだよね~」
「……えっ?」
「そんじゃね~。あ、山田もさっきのネタよく分かんなかったけどちょっとおもしろかったよ」
「え?」
まさか褒められると思わなかったのか、ひとりは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているし、俺も意外な言葉にあっけに取られていると、佐々木さんはひらひらと俺達に手を振って教室を出て行った。
どうやら先程佐々木さんが言っていた
「ほーん……ひとりのギターを覚えてるとは中々見る目がある人だな」
「えっと……そう、だね?」
「さっつーナイスだわ! そうだ! クラスのグループチャット出来たみたいだから、ひとりちゃんもほらっ!」
佐々木さんの言葉に未だ困惑気味のひとりに、いつの間にか近くにいた喜多さんは出来たばかりのグループチャットに誘っていた。
「えっあっ……へへっ……みっ見て太郎君」
「おう、良かったな…………でもお前もう音ステでギャップトーク出来ないからな!」
「!?」
はにかみながら嬉しそうにクラスのグループチャットの画面を見せて来るひとりに一度頷いてみせると、俺はたまらず叫んだ。別にグルチャに誘われなかったから悔しがってる訳じゃねーし!? 俺も去年のクラスでは入ってたし!?
「何言ってるのよ山田君!? ほら! 山田君も!」
「えっ!? 俺も入っていいんですか? わァ…………ァ……」
「泣く程なの!?」
「イェーイ見ろよひとり! 俺二年連続クラスのグループチャットに入ったぜ!」
「むっ……たっ太郎君こそもう音ステでギャップトーク出来ないね……」
「おまっ……なんて事言うんだ!? 人の痛みが分かる子になりなさい!」
「!? じじじ自分だってさっき言ってたのに!?」
こうして俺達は喜多さんのおかげか、去年とは少し違う、クラスに溶け込めそうな予感のする良い滑り出しで二年生をスタートさせたのである。
そんな始業式が終わってからしばらくしたある日、恒例となった結束バンドの路上ライブが終わり、打ち上げのファミレスに同行している時の事の話である。
毎週路上ライブをしている成果か、最近は見たことの無い新しい客が増えたやら、結束バンドのMVの再生数が伸び続けていて十万再生を突破したやらと嬉しそうにリョウ先輩や喜多さんが話をしていると、まず俺のスマホからメールの着信音が鳴り、しばらく間を置いて虹夏先輩のスマホからもメールの着信音が鳴り響いた。
「ん? 何だ? 池袋の……ブッキングマネージャー?」
「えっ!? わっ私もいま、同じ人からメール来たよ!?」
俺がスマホの画面を見ながら呟いた言葉に大層驚いた虹夏先輩は自分のスマホの画面を見せてくれた。そこには俺のスマホに届いたメールと全く同じ内容のメールが映し出されていた。
メールにはBoB(虹夏先輩のメールには結束バンドと書いてある)の音源(BoBはおそらくオーチューブに上げたライブ映像だろう)にハードでロックな音楽性を感じたのでぜひウチのライブに出演して欲しいという内容と共に日程が書かれている。
「えっライブのお誘いですか!?」
「また廣井さん?」
「違う! 全然知らない箱!!」
結束バンドとBoBの両方が誘われた為か、リョウ先輩からまた廣井さんからのお誘いかと質問されたが、メールには池袋のライブハウスの柳さんなる人物の名前が書かれているので全く知らない新規の箱だ。
喜多さんは新規の箱からのお誘いに、路上ライブやMV効果のおかげで結束バンドの名前が広がっている事に喜んでいるが、俺にはどうにも引っかかる事があった。
「でもBoBも結束バンドもハードロックですかね?」
「う~ん……でもジャンルの定義なんてハードロックとヘヴィメタルみたいに人によっては結構曖昧な物だし! だから出演の返事しておくね! 太郎君たちはどうするの?」
「え? そうですね……」
「一緒に出ようよ! ブッキングライブは方向性の近いバンド同士を組み合わせて相乗効果を狙ってくものだし、それにこの箱が推してる人気バンドが沢山出演するっぽいから上手くいけば一気にファン増やせるよ!」
うわ凄い喋る。珍しく虹夏先輩が浮かれポンチだ。しかしまぁ虹夏先輩の言う事も一理ある。ジャンルの定義は人によって違うし、なによりBoBは結束バンドと一緒の方がひとりの都合上ライブがやりやすいので、廣井さんとヨヨコ先輩の予定が大丈夫なら断る理由はない。
いつの間にかバスドラ代わりのキャリーケースから出てきたひとりは、余程新しいライブハウスでの演奏が緊張するのか俺の上着の裾を握りしめながら魂の抜けた様な顔をして傍に立っていた。でもなんで俺の上着を握るんだよ、自分のを握れ自分のを。
「廣井さんとヨヨコ先輩に予定を聞いてみて問題なさそうなら
「楽しみねっひとりちゃん!」
「えっ嫌……あっはい!」
「お前いま嫌って言ったか?」
「……言ってない……」
「……まぁいいや。それにしても虹夏先輩は随分と嬉しそうですね」
メールが来てから随分と浮かれた様子の虹夏先輩が珍しかったので訊ねてみると、虹夏先輩は少し恥ずかしそうに、だが喜びを隠そうともせずに答えてくれた。
「んふふー。だって、わたし達の事全然知らない人から、BoBと一緒の箱に招待されたんだよ! これはわたし達がBoBに少しでも近づけたってことじゃない!?」
「む、確かに。もしそうなら、結構凄いかも」
虹夏先輩の言葉にリョウ先輩が唸るような声を上げた。
その後、浮かれた虹夏先輩が路上ライブの打ち上げに
その日の夜。俺は池袋のブッキングライブの日程を確認するために廣井さんとヨヨコ先輩に連絡をとった。
廣井さんからは何事も無く了承を貰った俺は、続けてヨヨコ先輩にロイン通話をかける。相変わらずワンコールで通話に出るヨヨコ先輩に若干の恐怖を感じながらメールの内容を伝えるとヨヨコ先輩は訝し気な声を上げた。
『……池袋のライブハウスの柳さんだっけ?
「え? そうなんですか? もしかしてなんかヤバイ人とかですか?」
『そういうのじゃないけど……スケジュール埋め優先の適当ブッキングばかりしてるって噂は聞くわ。まぁ、あくまで噂で、実際はよく知らないけど……』
「マジすか……今回結束バンドも誘われてて出るみたいなんですけど……」
『ああ、なるほど……まぁ実態は分からないけど、出てもいいんじゃない?』
俺が結束バンドの名前を出すと、ヨヨコ先輩は驚くほどあっさりと出演の了承をしてくれた。まぁヨヨコ先輩も別に反対していた訳では無いし、一応BoBの都合と言うかひとりの事を考えてくれているのかもしれない。
『それに適当ブッキングだろうとBoBが一番になれば関係ないわ!』
前言撤回。めちゃめちゃ個人的な理由だったわ。というか一番ってなんだよ? とはいえやる気になってくれたのなら心強い。
電話を切るのを渋るヨヨコ先輩との通話を終えると、俺は廣井さんとヨヨコ先輩両名の同意を得たのでブッキングライブに出演する旨の返事をする事にした。
返事のメールを送った後はいつも通り部屋で日課のドラムの練習やらなんやらを消化しながら過ごし、そろそろ寝るかという時間がやってくると虹夏先輩からロイン通話がかかって来た。
「もしもし虹夏先輩? どうしました?」
『あ、太郎君! ちょっと聞いてよー!』
電話に出ると何となく不機嫌そうな虹夏先輩の声が聞こえて来た。この時点で少し嫌な予感がしたのだが、結論から言うとこの電話は取らずにさっさと布団に入って寝るべきであった。
虹夏先輩の話を聞くと、どうやら今日届いたブッキングライブのお誘いの事で店長と意見が対立したらしい。
『それでさー、お姉ちゃんったら新しい箱でのライブ喜んでくれると思ったのに、煮え切らない態度で「ウチでやってるだけでいいんじゃない?」とか「BoBならまだしも、お前らじゃまだ下北以外じゃ客足伸びねぇよ」とか言うんだよ!』
「まぁ店長も心配してるんじゃないですか? いうてSTARRYやFOLT以外で知り合いもいない初めての箱ですし……」
虹夏先輩の話を聞く限り、店長もライブハウスの経営者としての情報網で、ヨヨコ先輩の様に今回の池袋のライブハウスの事を何か知っていて心配しているのかもしれない。ただ誘いを受けてあまりにも嬉しそうな虹夏先輩を見て言い出せなかった……とかか? 実際俺もヨヨコ先輩に噂を教えて貰ったが、イマイチ実態が分からず適当な事も言えないので、今まさに言い出せずにいるしな。
『え~! そうかなぁ……お姉ちゃんってたまに意地悪言うしなぁ……でもBoBも出るんでしょ!? なら一緒にお姉ちゃんを見返しちゃおうよ! あ、そう言えば毎日やるよう教えてくれたストーンキラーだけどさ……』
ようやくブッキングライブの話から逃れられたと思ったら、今度はドラムの話になった。しかしもう随分な時間話してるぞ……いや、マジこれ寝、寝ちゃいそうな勢いなんですけど、これは大丈夫なんですかね?
「あ、あの……どうして俺に連絡を? 結束バンドの方針的な物はリョウ先輩とかに言った方が……」
『え~……リョウはこういう話ちゃんと聞いてくれないし、喜多ちゃんもよく分からないだろうし、ぼっちちゃんはほら……ね? その点太郎君は同じドラムでリーダーだし! そ、それにドラム教えてくれるって言ったじゃん!』
ね? って何だ……ひとり、お前の評価アレな事になってるぞ。あとドラム教えるとは言ったけど、こういうのは想定してないんだよなぁ……まぁいいけど。
その後も俺は枕元にスマホを置いて虹夏先輩の話を聞いていると、何時の間にか寝落ちしてしまったのだった。
『それでさー……あれ? 太郎君? おーい……もしかして寝ちゃった? あっもうこんな時間!? ありゃりゃ……悪い事したかな? あたしもそろそろ…………あの、太郎君? ……寝てる、んだよね? …………本当に寝てるんだよね? …………たっ…………すーはーすーはー……よしっ……おっおやすみ、太郎…………君…………ひゃー、恥ずかしー……なんでリョウも大槻さんも、あんなに平然と名前の呼び捨て出来るんだろ?』
BoBの新曲のイメージの元ネタはLinkin ParkのSomewhere I Belongです。佐々木さんがヒップホップ好きなんで完全なヒップホップにするか迷ったけど、いきなり主人公が一人で歌うのもアレなのでツインボーカル仕様の曲でラップが混じっててロックな曲って事を考えたら元ネタになりそうなのこれしか知りませんでした。
今のうちにヨヨコ先輩の中の人の予想を書いとけば預言者になってちやほやされるんですか!?
私の希望は『佐伯伊織さん』です!
でも中の人に関しては名前上げられるとイメージがついて嫌だって人もいると思うので、申し訳ないけど具体的な名前は感想で出さないようにオネシャス(横暴)。