ぼっちず・ろっく!   作:借りて来た猫弁慶

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なんとか間に合った……四年に一度というこの二月二十九日にどうしても投稿したかったんです……別に意味は無いけど。


042 Let's rock!

 今日は未確認ライオット二次審査であるWEB投票の中間発表の日だ。

 

 WEB投票の投票期間は二週間あり、100組の中から得票数の多い上位30組が三次審査へ進む事になる。

 

 俺個人としてはほとんど力になれなかったWEB投票だが、全体として見ればかなり順調に進んでいたのではないだろうかと思う。

 

 ひとりのおばさんの行動は言わずもがな、おじさんやふたりちゃんも色々動いていたようだし、喜多さんも俺達のクラスメイトだけでなく、他のクラスや自身の友人、SNS等で沢山宣伝していたようだ。

 

 虹夏先輩もSTARRYへのビラの貼りだしや宣伝を積極的に行なっていたようだし、リョウ先輩も自分の親がやっている病院の待合室で結束バンドの曲を流して貰っていた事を話していた。

 

 店長もSTARRYに所属するバンドへ投票を呼び掛け、PAさんも自慢のオンラインサロン()で宣伝してくれていた。

 

 他にもPVや路上ライブを見た人のSNSでの反響など、結束バンドが有名になってきつつある事で2号さんがちょっと病んでいるらしい事を除けば、かなり良い流れだったのではないだろうかと思う。

 

 今までの結束バンドの行動が実を結んでいるような良い雰囲気と手ごたえに、結束バンドのメンバーだけでなく応援する俺達にも、これは楽々三十位圏内に入れるんじゃないだろうかという空気が漂っていた。

 

 投票期間はあと一週間残っているのだが、中間発表で30位以内に入れているようであれば、二次審査突破の可能性はかなり高いといえるだろう。この手ごたえならもしかすると二十位……いや、十位以内もあり得るかもしれないと期待が膨らんでくる。もし現時点で十位以内なんて事があれば、後半戦で余程の番狂わせが起きない限りもはや当選確実と言って良いだろう。

 

 そんな勝確の雰囲気を感じ取っていた俺とPAさんは店長に誘われて、少し気が早いが結束バンド二次審査通過(予定)のお祝いサプライズパーティーを今日行なう為に、ひとり達から隠れるようにSTARRYの一室に待機していた。

 

 ドアの隙間からひとり達の様子を窺う店長からの合図を待つ俺達の手には、クラッカーやケーキと言った二次審査通過(予定)を祝う品が持たされている。

 

 PAさんが両手で支えるように持つ大皿の上には大きなイチゴのホールケーキが乗せられており、そのケーキの上には『結束バンド1位通過おめでとう』の文字が書かれたチョコレートで出来たメッセージプレートが添えられている。

 

 これは珍しく誰よりも浮かれポンチな店長が予約していた品であり、さらにこの後には寿司やピザが届けられる手筈になっている。この話だけで店長がどれだけ浮かれポンチだったのかが理解できるだろう。

 

「準備出来たか?」

 

「はい!」「うっす!」

 

「よしいくぞ!」

 

 店長は最後に一度確認する様に後ろに控えている俺達へと声を掛け、その返事に小さく頷くと、扉を勢いよく開いて虹夏先輩達が集まっているSTARRYのホールへと飛び出した――のだが、虹夏先輩達の様子はどこかおかしかった。

 

「どっどうしたお前ら!?」

 

 テーブルに四人で集まっている結束バンドの面々は皆一様に暗い雰囲気で、リョウ先輩以外の三人の顔はひとりがテンパった時のように盛大にぶっ壊れていた。見ればテーブルにはスマホが置かれており、恐らく二次審査の中間発表を確認していた事が窺える。

 

 俺は四人の様子を見て声を掛けるのに戸惑ったが、とにもかくにも結果を聞かなければ話が始まらないので恐る恐る訊ねてみた。すると虹夏先輩は壊れた顔で下を向いたまま蚊の鳴くような声を上げる。

 

「それであの……どうだったんですか……?」

 

「…………中間結果42位……」

 

 盛大に審査突破を祝おうと浮かれて突撃して来た俺達三人の顔は途端に引きつり、俺の背中には嫌な汗が流れる。

 

 完全に祝砲を上げる気マンマンだった俺は、手に持ったクラッカーを慌ててポケットに隠したが、大きなホールケーキを乗せた皿を両手で持っているPAさんはそうもいかない。

 

「あれ? なにそのケーキ?」

 

 案の定この空気に似つかわしくないやたら目出度いホールケーキの存在に気付いた虹夏先輩は、当然の如く訝し気な視線を向けて来る。

 

 虹夏先輩から尋ねられた瞬間、俺達三人は顔を青くする。中でもケーキを乗せた大皿を持つPAさんは上手く誤魔化す言い訳が思いつかなかったのか、突然これがロックだと言わんばかりの勢いで、謝りながら俺の顔面に手に持ったホールケーキをぶつけて来た。

 

「山田君すみません!!」

 

「PAさん!?」

 

 突然の事態に、ケーキをぶつけられた俺だけではなく虹夏先輩達からも困惑の声が上がる。

 

 いくら誤魔化す方法が思いつかなかったからって、これはあんまりだと思う。せめてメッセージプレートに『一位通過おめでとう』なんて文言が書かれていなければ、虹夏先輩の誕生日ケーキという事で通ったかもしれないのだが……おかげでもう顔中、生クリームまみれや。

 

 PAさんの突然の凶行にドン引きしている虹夏先輩達に心配されながら、俺は店長に促されてクリームまみれの顔を洗いに行く。勿体ないので顔に付いたクリームを舐めてみたが……なんだこれ滅茶苦茶美味いな……なんちゅうもんを食わせてくれたんや……なんちゅうもんを……

 

 何事も無かったようにぐしゃぐしゃになったホールケーキをPAさんが片付け(後で俺達三人で食べる為に一旦奥へと持って行ったようだ)、俺が顔を洗っている間、店長は虹夏先輩達と話をしていた。

 

 顔を洗いながら聞こえて来る会話では、やはり虹夏先輩もこの一週間の宣伝はこれ以上ない手ごたえを感じていたようで、足切りラインである30位から随分と落ちる42位という順位に落ち込んでいるようだった。ちなみにSIDEROSは3位らしい。

 

 店長の分析では、上位陣はともかく下位層の投票数は恐らく団子状態で、これはもう運だと言っている。だが現状で30位以内に入っていないとなると、これは中々厳しい戦いであると言わざるを得ない。この団子状態を抜け出すとなると何か起爆剤が必要になるのだが、今以上の宣伝なんて正直思いつかないからだ。

 

 顔を洗い終わった俺はこれからどうすべきか無い頭を働かせながら、STARRYの入り口から俺の事を呼ぶPAさんの元へと向かう。結束バンドも厳しい戦いをしているが、実は俺やPAさんにも差し迫った危機が近づいているのだ。

 

 STARRYの入り口へ到着すると、PAさんが寿司とピザの宅配に応対していた。

 

 そう、結束バンドが余裕で30位以内に入っていると思った店長が、祝勝パーティーをしようと頼んでいた出前が今まさに続々と届いているのだ。見れば寿司もピザも結構な量が届けられている。

 

「うわ、凄い量ですね……どうするんですかこんなに……」

 

「どうするって言われても……こんなもの見せたら余計に落ち込ませてしまうし……そうだ! 山田君ここで全部食べて下さい! 私も少しは手伝いますから! さあ早く食べますよ! その鍛えた体は飾りですか!」

 

「そんな無茶な!? 血糖値壊れる~」

 

 追い込まれ過ぎておかしくなったのか、急にムチャクチャな事を言い出すPAさんを俺はなんとか落ち着かせる。

 

 流石にこの量を二人で全部食べるのは無理だ。もう虹夏先輩達に全部正直に話して、今からでも二次審査後半戦に向けた決起会とかにした方がいいんじゃないかと思ってしまう。

 

 外に置いておくのもアレなので、取り敢えず中に運んでしまおうという事になったのだが、俺とPAさんが小声で口論しながら、届けられた出前の品を結束バンドメンバーに見つからない様にこそこそと運んでいると、その様子を見ていたであろう虹夏先輩は俺達にジト目を向けてきながら不満げな声を上げる。

 

「……なんかさ~。太郎君とPAさんって最近仲良くない?」

 

「えっ!? えっと……そう、見えますかね……?」

 

 突然の指摘に驚いた俺とPAさんは、強張った顔でお互いの顔を見合わせた。

 

 確かにPAさんの秘密である音戯アルトの事を知ってからは、PAさん本人も言っていたようにミステリアスな雰囲気が払拭され、なんとなく声を掛けやすくなったというか、親しみやすくなった様な気はする。

 

 実際音戯アルトグッズを貰った(押し付けられた)り、仕事を頼んだ秋葉原ライブの事を話す機会も増えたので、以前より仲が良くなったのは確かかもしれない。だからといってそんなに馴れ馴れしくしていたつもりは無いのだが……やはり名探偵虹夏なのだろうか……?

 

「ま、まぁ同好の士ってのが判明したからですかね……」

 

 俺とPAさんは一応表向きは二人共音戯アルトファンという事になっているので、それっぽい言い訳をしてみたが、虹夏先輩は未だになにか言いたそうな表情のまま、近くの椅子に放置してあった俺の鞄に視線を移した。

 

 俺の鞄には現在PAさんに貰った音戯アルトアクリルキーホルダーが付けられている。ファンを擬態するなら目立つ所につけるべきだとPAさんにつけられたのだが、急にVチューバーグッズなんかを付け始めた事に虹夏先輩は何かを感じ取っているのだろうか? 

 

 ジト目でアクリルキーホルダーを見つめている虹夏先輩だったが、ここで下手な言い訳をすると藪蛇になってしまいそうだったので黙って見守る事にした。

 

 虹夏先輩はしばらくアクリルキーホルダーを見つめていたかと思うと、なんとも含みのある微妙な声を上げる。

 

「へ~……ほ~……ふ~ん……太郎君こういう()が好みなのかな……?

 

「おい虹夏。今日のスタジオは十九時から別の予約入ってるからな」

 

「え? あっ、そうだった! それじゃあみんなスタジオ行こうか!」

 

 店長が声をかけると、虹夏先輩は慌てた様子でリョウ先輩や喜多さん、それに何故か虹夏先輩と同じような微妙な表情で俺を見ているひとりを連れて、スタジオ練習を行なう為にこの場から去って行った。

 

 最後に虹夏先輩が何やら不穏な事を言っていた気もするが、とにかくサプライズパーティー(失敗)はバレずに済んだのでミッションコンプリートだ。

 

 虹夏先輩達がスタジオで練習している間に、俺達は届いた寿司やピザをどうするか相談する事にした。俺が虹夏先輩の誕生日という事にしたらどうかと提案したのだが、やはりちょっと時期が早いという事で却下されたので(ケーキも無くなったし)、仕方なく俺達三人で食べる事になった。

 

「仕方ない……ちょっと遅れたが太郎の誕生日って事にするか」

 

「なんですかその投げやりな感じは……まぁこんなんでも祝ってくれるのはありがたいですけど……」

 

「そうと決まれば、ほらもっと沢山食え。まだまだ食えるだろ?」

 

「やっぱり若い子は沢山食べますね」

 

「二人してなんなんスかその『若者が沢山飯を食っている姿に喜びを感じるおっさん』みたいな反応は……ってちょっと!? なんでそんな怖い笑顔でどんどん皿に乗せるんですか!? やめ、やめて!」

 

 今の発言の何がいけなかったのか、俺の腹具合などお構いなしに怒気が混ざったような笑顔の店長とPAさんは、次々と俺の皿へと寿司やらピザやらを乗せて来る。

 

 一応前もって伊地知家が後で食べる用の分は確保してあるのだが、それでも結構な量だ。この後店長やPAさんはSTARRYの業務もあるので、いつまでもダラダラとしている訳にもいかず、俺達三人は気合を入れて食べ始めた。

 

「しっかし42位ってのは意外でしたね」

 

 自分の皿に大量に押し付けられた料理を食べながら、俺がふと先程の結束バンドの中間順位を思い出してポツリと漏らすと、もうお腹が一杯なのか早々に食べるのをやめて一息ついていた店長は難しい顔になった。

 

 結束バンドが未確認ライオットに参加を表明した時は、STARRYのチケットノルマである二十人を達成出来ない日も結構あるような人気だった事を考えると、一次審査を突破したバンド100組中42位というのは中々ようやっとると言える順位なのだとは思う。思うのだが……

 

「やっぱこんだけでっかいフェスともなると、中々簡単にはいかないんですねぇ……」

 

「……まぁそんな甘い世界じゃなかったって事だな……」

 

 ひとり達の努力や行動を近くでずっと見ていた身として、どうにもやりきれない思いを抱いた俺がテーブルに頬杖をつきながら弱気な言葉を漏らすと、店長は中々ドライな言葉を返して来た。

 

 流石に元バンドマンで現ライブハウスの店長というだけあってシビアな評価をするなと思ったが、こんなに沢山の料理やケーキをウキウキで注文していた事を考えると、店長だって順位は受け入れつつも結構ショックを受けているのだろう。

 

「……いや! でもまだ最後までどうなるか分かりませんよね!」

 

 PAさんも似た様な事を考えているのか、なんとなく重苦しい雰囲気だったので、俺は姿勢を正して気合を入れ直した。そんな俺の様子を見た店長は、少し表情を柔らかくすると呆れたような表情で言葉を返してくる。

 

「まぁな……というか、虹夏達の心配も良いがお前はどうなんだ? 夏のコミマ? だっけ? そこでなんかやるんだろ? あと作曲は? ちゃんとやってんのか?」

 

 夏まで暇になるだろうとわざわざフシロックやサマスニのフライヤーを持って来てくれた店長の事なので、俺の事を心配してくれているのだろうが、突然夏休みの過ごし方や宿題の進行状況を確認してくる(かー)ちゃんみたいな事を言われた俺は、正していた姿勢を崩して再び机に頬杖をついた。

 

「あー……まぁそっちも一応順調ですよ。全員揃っての練習はまだしてませんけど、ちゃんと個人での練習はしてます。イライザさんがやりたい曲は所謂流行りの音楽ってヤツではないんで新しく覚えなきゃならないんですけど、結構面白いですよ」

 

 俺が今までリクエストを受けて来た曲は流行りのアニメの主題歌だったりが多かったので、そこから外れている今回の選曲はほぼ全て一から覚えている。だがイライザさんが言っていた通り、アニメの曲には様々なジャンルの音楽があって、結構面白いし勉強にもなっているのだ。

 

 作曲に関しても一応続けてはいる。休日になると偶にひとりの家でギターを教えて貰ったり(ひとりがギターを二本持っている事がこんな所で役に立つとは思わなかった)、廣井さんやヨヨコ先輩にも作曲のアドバイスを貰ったりしているのだが、今の所目立った成果は無い。曲が出来たら歌ってくれなんてひとりに大見得を切ったが、完成するのは随分先になりそうだ。まぁ作曲を初めてまだ四か月も経っていないのでこれは仕方ないだろう。

 

「そういえばコミマに出るって言ってますが、山田君達が今回演奏する曲のCDとかも出すんですか?」

 

 PAさんも興味があるのか話に入って来る。

 

 確かにコミマなんだから自分達のCDを作って出すのもいいかもしれない……だが残念ながら今回の俺達の演奏する曲は著作権に保護されたカバー曲なのだ。だからCDは出せないだろうという事をPAさんに話すと、予想外の答えが返って来た。

 

「ちゃんと申請すれば出せますよ?」

 

 当然のように言うPAさんの言葉に俺は驚いた。なんでもしかるべき場所へ申請して許諾され、指定された著作権料を払えば、カバー曲でもCDにして売っても良いという事だ。

 

 申請の手間や、CDを増産する時はまた一から申請をやり直す等の面倒臭さはあるが、カバー曲でもCDという形に残る物に出来ると言うのは、予想外の発見だ。まさかBoBよりもMoeExperienceで先にCDを作る事になりそうになるとは思わなかったが……

 

 そうなると気になるのは著作権料がいくら位かかるのかだ。早速、仮に今回演奏予定のニ十曲が入ったCDを税込み1000円で100枚作った場合の著作権料を、PAさんに教えて貰った料金が計算できるサイトで計算してみると、13,420円と出て来た。CD一枚当たり約14円……思ったよりも全然安い金額だ。問題は無名な俺達のCDを買うという人がいるのかどうかだが……

 

 PAとしての知識なのか、それともVチューバーとしての知識なのか、ともかく面白そうな情報を教えてくれたPAさんにお礼を言い、この件はイライザさんに相談しようと思っていると、店長がニヤリと笑みを浮かべながら訊ねて来る。

 

「それで? コスプレしながら演奏するんだろ? お前はなんのコスプレをするんだ?」

 

 店長は俺が制服よみ瓜を勧めた時に虹夏先輩に三十路のコスプレとバッサリ斬られた事を根に持っているのか、意趣返しのように俺のコスプレを弄って来る。

 

 イライザさんの話では、衣装に関していくつか候補は上がっているみたいだが、まだ具体的には決めかねているそうだ。

 

 なんでも衣装を作ってくれる内田さんがかなり優秀で、本気を出せば一週間から長くても二週間で衣装を一着作れる腕前らしい。勿論衣装の材料の選定や買い出しなどがあるので、製作期間は少し長めに見ておかないといけないだろうが、それでも今が五月であることを考えるとまだ悩む時間はあるようだ。

 

「イライザさんはなんか合わせ? っていうのがやりたいらしんですけど、俺の顔出しNGの要望との兼ね合いに悩んでるみたいです。一応候補としてはいくつか考えてはいるらしいですけど……」

 

「なんだよ、まだ決まってないのかよ」

 

 変な格好のコスプレだったら絶対笑う気マンマンだったであろう店長は、まだ何も決まっていない事が分かるとつまらなそうに唇を尖らせた。なんて人だ、いきなり未知のコスプレをする事になった俺の事をもうちょっと労って欲しい。

 

「……そんなにコスプレが気になるなら、店長も俺達と一緒にコスプレして秋葉原のライブに出ますか?」

 

「は、はぁ!? やらねーよ! っていうかコスプレが気になってるわけじゃねーから!?」

 

 突然の提案に驚いたのか、店長はどもりながらもぶっきらぼうに言い放つ。

 

 俺のコスプレを茶化そうとしたちょっとした意趣返しのつもりだったのだが、一緒にライブに出るというのは冗談だとしても、一緒に演奏するのは正直ちょっと面白そうだと思ってしまう。廣井さんは店長のバンドを凄い人気だったと言っていたのでちょっと興味があるのだが、如何せん店長は自分からは何も言わないのだ。

 

「そういえば店長ってギターももうやって無いんですか?」

 

「あぁ? なんだよ急に……」

 

「い、いえ。前にバンドは飽きてやめたって言ってましたけど、ギターも飽きたのかなって……」

 

 俺の質問に店長はジロリと鋭い目つきを向けて来る。こわっ……こえーよ。もう反応がヤンキーなんよ。

 

 結束バンドの台風ライブの後の打ち上げで話していたので、店長がバンドを辞めた事は知っている。ただ趣味でギターは続けているのかと思っていたが、どうも今現在の雰囲気をみるにギターを続けているようには見えなかったので聞いてみたのだ。

 

 俺の質問に面倒そうな表情をしていた店長は、一度小さくため息を吐くと緩慢な動作でテーブルに頬杖をついた。それからどこを見るともなく上空へと視線を彷徨わせると、小さく口を開く。

 

「……別にそういう訳じゃねーよ……ただ……」

 

「ただ?」

 

 店長の顔を見ながら俺とPAさんが言葉の続きを黙って待っていると、店長は上空を見つめたまま言葉を続けた。

 

「ただ、今はライブハウスの店長として、お前らみたいなバンドを育てる方に回ったんだよ」

 

「……おお~」

 

「なんなんだよ……」

 

 店長の言葉を聞いた俺とPAさんが二人して感嘆の声を漏らすと、店長は少し恥ずかしそうに俺達を睨んできた。

 

 廣井さんに『どうしてバンドを辞めたのか』と聞かれた時の店長の空気が何だか不穏な物だった気がしたので気になっていたのだが、そういう事なら少し安心したし納得も出来た。ただ廣井さんも認めるようなギタリストが演奏しなくなるのは少し勿体なくも感じてしまう。

 

「じゃあギター弾くのが嫌になった訳じゃないんですね?」

 

「だからそうだって……さっきからなんなんだよ一体……」

 

「いや、なんだか店長って、自分がプレイヤー(演奏する側)になる事に一線を引いてる様な感じがしたんで」

 

 何となく感じたというか、気になっていた事を正直に話すと、店長は余程意外な言葉だったのか、呆けたような表情で一瞬言葉を詰まらせた。

 

「そ……うか?」

 

「ええ、まぁ店長がSTARRYの経営ほっぽり出して『今からメジャーデビュー目指す!』とか言い出したら、流石に俺も止めなきゃいけないと思うんですけど……」

 

「お前は私をなんだと思ってるんだよ……」

 

「でも、趣味としてギターを演奏するなら良いんじゃないですかね? 『Let's rock!(ロックしようぜ!)』ってね。いつかまた、演奏したくなった時にドラムが必要なら誘って下さい。俺で良ければ合わせますよ」

 

 呆けた様な表情で俺の話を聞いていた店長は、頬杖をついたまま柔らかい笑みを浮かべたかと思うと、楽しそうに鼻を鳴らす。

 

「……ふっ、それじゃあその時はお前に頼むかな」

 

「はいどうぞ。良ければひとりと素面の廣井さんも付けますよ」

 

「!!?!!!?」

 

 俺の提示したあまりに強力すぎるカードに、店長は突然椅子から立ち上がってあからさまに動揺し始めた。これはもしかしたら店長が再びギターを手に取る未来もそう遠くないのかもしれない。

 

 動揺する店長を見て楽しそうな様子のPAさんに「悪魔の様な提案ですね……」なんて言われながら、俺はそれ以降何も言わずに食事に戻る事にした

 

 

 

 最後に俺の顔にシュートされてぐしゃぐしゃになったホールケーキを胃袋に片付けると、予定外のカロリー摂取でお腹が一杯になった俺は、今日はSTARRYでひとりのスタ練が終わるのを待つ事にした。そんな俺のダラダラしている様子を見た店長から声がかかる。

 

「太郎。暇ならぼっちちゃんがスタ練終わるまででいいから受付してくれないか? バイト代は出すから」

 

「えぇ……またですか? まぁ今日はやりますけど、やっぱりバイト増やした方がいいんじゃないですか?」

 

 店長にこうやって突然バイトを頼まれるのはこれで何度目だろうか? その度に俺はバイトの人数を増やす事を提案している。

 

 STARRYのアルバイトは俺を含めて五人いるが、知っての通りその大半が結束バンドメンバーだ。だから当然結束バンドがスタ練などの『バンドとして』多人数で忙しくなると、どうしてもSTARRYは人手不足に陥ってしまう。

 

 俺は結束バンドのスタ練がある日は一人で先に家に帰らずに、スタ練が終わるのを待っている。これはひとりの両親からひとりの事を頼まれたからというのも勿論あるが、俺個人としてもスタ練が終わった後の暗くなった時間に、二時間かかる下北沢から金沢八景までをひとり一人で帰らせる事が心配だからだ。

 

 それならば、ひとりを待っている間に俺がバイトとして入ればよいと思うかもしれないが、中々これが難しい。

 

 では俺がバイトもせずに何をして待っているかというと、結束バンドのスタ練は大体二時間なので、STARRY近くのレンタルスタジオに行って一人でドラムの練習をしたり、入会していれば全国どこの店舗でも利用できるスポーツジムに行って体を鍛えたり、ヨヨコ先輩と時間が合えばボーカルの練習という事でカラオケに行ったりして過ごしている。

 

 これは俺が純粋にドラムを叩くのが好きだという事もあるし、一応こんなんでも俺はドラムヒーローを自称しているのでドラムの練習は欠かせないのだ。ただでさえ通学時間が長くて練習時間が取れないのに、それに加えてひとりがSTARRYで練習している時に俺がバイトをしていては実力が離される一方だ。正直それはよろしくない。

 

 そんな俺の都合を知ってか知らずか、人手が足りないにも関わらず店長が俺に無理にバイトを勧めて来る事は無い。この辺は元バンドマンである店長の理解度の高さなのか優しさなのかは分からないが、随分と自由にさせてくれるのでありがたく思っている。

 

「一応バイトの募集はしてるんだが……お前みたいな掘り出し物が来てくれねーかな」

 

「掘り出し物って……」

 

 そういう事情もあって、人手が足りない事に対して店長も一応既に手は打っているみたいだが、まだ成果は上がっていないようだ。店長の話では二名くらいの採用を考えていると言っていた。

 

 事実俺達がバイトを始める前までは、虹夏先輩とリョウ先輩の二人がいれば回っていたみたいだし、結束バンドメンバーも今すぐバイトをやめる訳では無いのであまり一気に人手を増やしても持て余してしまうに違いない。

 

 しかしそうなると採用される人がどんな人になるのか気になって来る。出来れば俺やひとりと仲良くしてくれる奴だったら良いのだが……なんて事を考えながら、俺はひとり達のスタ練が終わるまで大人しくバイトをして過ごす事になった。

 

 

 

 十九時前になると、早めにスタ練を終えたひとり達がスタジオから出てきて今日はそのまま解散する事になったので、俺も臨時バイトを終了してひとりと共に帰る事にした。

 

 虹夏先輩達との別れ際「まだ諦めずに頑張りましょう」と周りを鼓舞していた喜多さんも、帰りの最寄り駅まで俺達と一緒に向かう道中では、やはりあれだけ頑張ったのに30位以内に入っていなかった事がショックだったようで、何となく落ち込んでいる様子だった。

 

 道中喜多さんから、エゴサをしている時に高校生のコスプレをして結束バンドの音源を聴かせて来る結束バンドおばさんなる人物の事を知ったと報告されて、それを聞いたひとりが「何か怖いですね……」なんて言っていたが、この真相は墓まで持って行かないといけないかもしれん。

 

 駅に着くまで三人で結束バンドがバズる方法を模索したりもしたが、結局良い宣伝方法が思いつかないまま駅に到着すると、俺達は喜多さんと別れて帰りの電車に乗る事にした。

 

 電車に乗っている間もひとりは終始無言で、真剣に何かに悩んでいるようだった。そんなひとりを見ながら、俺は自分の考えを伝えてみる。

 

「なぁひとり、やっぱりBoBのSNSで宣伝するか?」

 

 俯きながら考え事をしていたひとりは俺の言葉に弾かれたように顔を上げる。だがその表情は困っているようだった。

 

 BoBのトゥイッターのフォロワーは三万人いるので、ここで宣伝すればそれなりの効果が期待出来ると思う。STARRYに来るようなBoBファンはもう投票してくれているかもしれないが、問題は結束バンドを知らないBoBのファンに投票してもらう事(投票してくれる前提で話す)を心情的にどう捉えるかだ。

 

 ひとりもそれが分かっているのか俺の顔をじっと見つめて随分と悩んでいたが、やがて再び顔を伏せると小さく首を横に振った。

 

「いいのか?」

 

「……うん」

 

 断ったひとりの気持ちもよく分かる。恐らくひとりはBoBのSNSで宣伝するのは結束バンドの力では無いと考えているのだろう。もしBoBのSNSでの宣伝があり(・・)なら、極論ギターヒーローアカウントで宣伝する事もあり(・・)になるからだ。ギターヒーローの正体さえ明かさなければ、宣伝するだけならギターヒーローのオススメバンドとして結束バンドを紹介するなど、やり方はいくらでもある。

 

 ただ正直に言うとこの辺りはかなり曖昧な部分で、例えば現在PAさんが音戯アルトとして宣伝してくれているが、もし彼女が零細では無く登録者100万人クラスの大物Vチューバーだった場合、恐らく今頃結束バンドは余裕で30位以内に入っていたのではないだろうかとも思う。もしかすると1位通過の可能性だってあったに違いない。勿論その場合は影響力が大きすぎるという事でPAさんも宣伝してくれなかったかもしれないが。

 

 そういう意味から言うと、影響力の大きい人物に気に入られるというのも実力の内であると考えても良いのだろう。今回の場合ややこしいのが、その人物(ギターヒーローやBoBのリードギター)がひとり本人であるという事だろう。

 

 だが再三言うが、俺は自分達の力で頑張りたいというひとりの気持ちもよく分かるのだ。でなければ廣井さんやヨヨコ先輩に覆面を付けて貰ってのライブなんてやっていない。なりふり構わずBoBが売れに行くなら二人の知名度を最大限利用するべきなのだから。

 

 だから俺はひとりがどんな選択をしたとしても、それを尊重して最後まで応援すると決めているのだ。ただそうなるとやはり俺に出来る事は無くなる訳だが……はーつっかえ。

 

 結局考えが振り出しに戻って来てしまった事を感じながら電車に乗っていると、乗り換え駅である渋谷に付いたので俺とひとりはホームへ降りる。ホームへ降りてしばらく歩くと、何処からか聞きなれた声が聞こえて来た。

 

 何気なく聞こえて来た声の方へと視線を向けてみると、すぐ目の前にヨヨコ先輩率いるSIDEROSメンバーが現れた。向こうも偶然こちらを見ていたのか、ヨヨコ先輩とばっちり目が合ってしまう。その瞬間――俺の後ろを歩いていたひとりから、木の枝が折れるような嫌な音が聞こえて来る。

 

「何の音ぉ!? って大丈夫かひとり!? 首がえらい事になってるぞ!?」

 

「ちょっと後藤ひとり! なんで毎回無視するのよ!」

 

 ひとりから聞こえて来た音に驚いて俺が慌てて振り返ると、ひとりの首が180度真後ろを向いていた。恐らく今の嫌な音はヨヨコ先輩に気付いてないフリをしようとして無理矢理真後ろを向いた時に首から出た音だろう。

 

 相変わらず無茶苦茶な事をやるひとりの首を(いたわ)るようにさすってやりながら、俺はヨヨコ先輩へと声をかける。

 

「どうもヨヨコ先輩、見ましたよ。SIDEROS中間三位おめでとうございます」

 

「! ま、まぁ? 目標はあくまで一位通過だけどね! それでその……そっちは……」

 

 俺の言葉にドヤ顔を浮かべたヨヨコ先輩だったが、しかしすぐに結束バンドの順位を思い出したのかごにょごにょと言い淀んでしまった。これが30位以内に入っていればまだ強気な態度で絡んできたのかもしれないが、30位圏外ともなると流石のヨヨコ先輩も困ってしまったのだろう。

 

 お互いどうしていいのか分からないのか、ひとりとヨヨコ先輩の両方からチラチラとなんとかしろと言った視線を向けて来られて俺も困っていると、SIDEROSドラムの長谷川さんが俺達の話に割り込んできた。

 

「そんなことよりヨヨコ先輩早くスタジオ行きましょうよ。ぼっちさんに山田さん、ウチら今からスタジオ入るんですけど良かったら一緒にどうすか?」

 

 突然のお誘いに驚きながら俺とひとりは顔を見合わせた。俺達が混ざると聞いてSIDEROSリードギターの本城さんも面白そうだと長谷川さんに同意するように誘ってくれた事もあり、頼まれると断れないひとりは微妙に嫌そうな顔をしつつも「あっはい!」なんて元気に快諾している。

 

「山田さんもどうっすか? 今から行くスタジオ、コンパクトなトラベラーなら借りられるみたいなんですけど」

 

 長谷川さんの言葉でまだ俺が同行すると言っていない事に気付いたひとりは、いつの間にか一人で大海原を漂流していた事に気付いた様な驚愕の表情で俺の顔を見つめて来た。大丈夫、俺もちゃんとついて行くからそんな泣きそうな顔で見つめて来ないで欲しい。

 

 一応俺も他所のバンドがスタジオ練習でどんな事をやっているのか興味がある。それがSIDEROSのような人気バンドなら尚更だ。それにドラムを二セット借りられないスタジオも多い中、コンパクトなトラベラーが借りられるのもありがたいので、断る理由は無い。

 

 ヨヨコ先輩は俺達の突然の乱入を最初は嫌がっていたが、五人以上なら格安で大部屋が借りられることが判明すると、余程大部屋が気になるのか手のひらを返すように態度を軟化させて俺達を受け入れてくれた。

 

 SIDEROSメンバーにくっ付いてスタジオへ入ると、俺は初めて入る大部屋の広さに驚いた。なにせ俺がスタジオへ入る時はほぼ個人練習なのでそんなに部屋が広くないのだ。SIDEROSは四人という事もあって、本城さんも五人以上の大部屋に感嘆の声を上げているし、ヨヨコ先輩は気になる機材があったのか目を輝かせながら置いてあるアンプを食い入るように見つめている。

 

 SIDEROSが和気あいあいとしている中、俺の後ろに背後霊のようにぴったりとくっ付いて気配を消しているのがひとりだ。余程この親しくない人が多い状況がストレスなのか、俺の服の裾を赤子のようにしっかりと握り締めている。

 

 そんな俺達を見たヨヨコ先輩から時間がもったいないから早く準備をしろと言われたので、俺はドラムの準備を始める事にした。ひとりも準備を始めたが早めに準備が終わったのか、一人ぽつねんと立ち呆けていると長谷川さんがやって来た。

 

 俺がドラムの準備をしながらひとりと長谷川さんの様子を窺っていると、長谷川さんはこれまでのひとりの様子から、ひとりがここに来たのを後悔していると感じたのか、誘った事を謝っているようだ。

 

 そんな長谷川さんの気落ちした様子を見たひとりは、自責の念なのかしばらく難しい顔で悩んだかと思うと、意を決したように長谷川さんに向かって一歩踏み出すと、長谷川さんの顎に指を添えた。

 

「あっかわい……っ……肌……白……ぐふっ……ロインID教えて……?」

 

「距離の詰め(かた)えぐいっすね……」「距離の詰め(かた)えぐすぎだろ……」

 

 俺と長谷川さんがひとりの行動に同時に同じ感想を漏らすと、ひとりはショックを受けたように肩を落としていた。いきなり気色の悪い顔でロインID聞いてんじゃねーよ。どんな判断だ。なんて思うが、それでもロインID交換自体は出来てるのが凄い。

 

 長谷川さんは今の一連のやり取りでひとりをやばい奴認定したのか、ひとりから距離を取ると本城さんの事を守るように自分の背中へと隠した。それを見たひとりはオロオロと辺りを見回した後、青い顔で俺の近くまで戻って来る。

 

「たっ太郎君……」

 

「おっおう……なんて言うか……ロイン交換出来て良かったな……」

 

 過程はどうあれ、ロインIDを交換出来たのは事実だ。もしかしてこいつ(ひとり)凄い奴じゃねーの? と思わなくもない。しかしそうなると俺もひとりに負ける訳にはいかないという対抗心が芽生えて来る。

 

「よし、ちょっと待ってろ。俺もロインID交換してくるから!」

 

「えっ? たっ太郎君?」

 

 頭に(はてな)マークを浮かべるひとりをその場に残して、セッションまで休んでいると言って座っている内田さんの隣に行く。正直内田さんはもう知り合いみたいな物なので、ロインID交換は楽勝過ぎてちょっとズルい気もするが……ひとりが長谷川さんに行った以上内田さんか本城さんのどちらかが候補なのだが、本城さんはガチで俺と接点が無いからね、仕方ないね。

 

 突然俺が隣に来たのを不思議そうに見つめながら鉄分サプリを食べる内田さんに、俺は自分の思い描く陽キャ(前に会った軽音部員)をイメージしながら話しかけた。

 

「うぇ~い! 君かわうぃーね! 口元のホクロがとってもセクC(スィ)! その十字架のチョーカーもイカすぅー↑↑↑ その服もやば~! あっロインID教えて?」

 

「嫌よ~」

 

「うぇ~い! ありが…………えっ?」

 

「嫌よ~」

 

「ちょっと!? なんで二回も言うんですか!?」

 

 まさか断られるとは思わず驚いた俺はしばらく難しい顔で無言で内田さんと見つめ合っていた。だが内田さんは怪しげな笑みを浮かべたまま無言でサプリを食べるだけだったので、困った俺は一時退散する事にした。

 

 肩を落として戻ってくると、一部始終を見ていたであろうなんとも言えない表情のひとりに出迎えられる。

 

「……なんだよ」

 

「あっドッドンマイ!」

 

「いい度胸じゃねぇの(ザッ」

 

 うるせーよちくしょう……しかもなんでちょっと嬉しそうなんだよお前は。しかしおかしいな? 内田さんとはあれだけ熱く語り合い(廣井さん宅でのミーティング)、深夜に食事をして(屋台ラーメン)、夜のセッションまでした(屋台ラーメン後のスタジオ練習)仲だというのに、一体何が駄目だったんだ? ひとりはドン引きされつつも交換自体は出来てたのに……あれか? やっぱり顔か? なら仕方ないね。

 

 俺が「人の痛みが分からないのはこの口かぁ?」なんて言いながら、腹いせにひとりの頬をつまんでいると、長谷川さんからそろそろ始めるとの号令がかかり、それにヨヨコ先輩が同意すると、改めて長谷川さんが開始の宣言を出した。

 

「そんじゃハチロクでいくんで、カウント6でてきとーに!」

 

 長谷川さんの合図と共にSIDEROSの演奏がスタジオ内に響き渡る。適当に、なんて言っていたが、流石はFOLTの看板バンドの一つだけあって演奏がハイレベルだ。

 

 ひとりを見れば、中間3位であるSIDEROSの息の合った演奏に圧倒されたのか、ギターを弾く手が止まっていた。だが演奏するSIDEROSを見つめていたかと思うと、すぐに俺へと振り向き、力のこもった瞳を向けて来た。

 

 今日は中間発表の順位のせいもあってかひとりの元気が無かったが、SIDEROSの演奏に触発されたのかやる気が戻って来たようでなによりだ。このままひとりが気持ちよく演奏出来るように、ちょっと本気出しちゃおうかな~なんて思ってしまう。あ、でもあくまでこの練習の主体はSIDEROSなので、くれぐれも邪魔だけはしてはいけない。

 

 俺はひとりに一度大きく頷き返すと、右手のドラムスティックをクルクルと回転させる。そうしてひとりの眼差しに応えるように、軽やかにドラムへと振り下ろした。

 




 星歌さんとBoBで共演して♡ みたいな感想を貰った時から、どうにか星歌さんを演奏関係で絡ませたいとは考えてたんです。だけど作者の勝手な解釈なんですが、星歌さんってバンドやめてから自分がプレイヤーとして演奏する事からも距離を置いてる感じがするんです。なので、共演させるならまずはそこをなんとかしなくちゃいけないんですが、星歌さんにもう一度ギターを持たせるのって結構繊細な問題な気がするって考えたら急ブレーキがかかりました。今回遅くなった理由の九割がこれです。残りの一割はPCのディスプレイが壊れたからです。

 実は「こういう娘が好みなのかな……?」発言からの、スタ練終わってスタジオから出て来た虹夏先輩やひとりちゃんの髪型が何故かツインテールになってる!? ってネタをやりたかったんですが(音戯アルトのアバターはツインテール)、30位に入れなくて落ち込んでるのにそんな事やる訳ないよねって思ってやめました。このネタはもうちょっと後で回収する事にします。

 本当は今回で二次審査終了まで行くつもりだったんですが、どうしても二十九日に投稿したかったのと、あとはなんか引きが良い感じだと思ったのでここで切りました。

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