シャロン准将は金でしか動かない――インサイダーは生中継で踊る 作:むーんしゃいん
《B81Fアウラ統合管理センター》
核弾頭到達まで残り8分だ。
シャロン准将達が覗く外部監視ディスプレイに映し出された、衛星アウラにガラスの破片で宙域に輝いている。衛星軌道からズレたためにソーラーパネルがいくつも破断されている。
見事に避難艦隊が核攻撃外へと避難している。軍艦だけのようだ。
シャロン准将麾下部隊は、テロリストたちを制圧した。それなのに助けが来ないし。核ミサイルも自爆しない。なんなら、避難艦隊臨時の旗艦が
何故ならテロリストがアウラに落とされるのを軍部が黙認したからだ。諜報部はテロリストが入る事すら予見しているのは確実である。
核攻撃は、落下してたんで迎撃しましたよ。というポーズだ。
衛星アウラが堕ちれば火星圏に有害物質が飛散し、予算の口実になる。資金は軍部を潤す。
お前らが!嫌われるのそういうとこだぞ…っ!シャロンがため息をつく。
金のために生きるのであって。金のためで死ぬなんてまったく冗談ではない。短絡的な計画にシャロン准将はげんなりした。アウラに指示を飛ばす。
「アウラ。調整用スラスターで衛星を全力で軌道に戻せ。救援信号を繰り返せ」
了解致しました。アウラは手を掲げアウラの操作を始め、巨大衛星の軌道計算とダメージコントロールの確認する。
「アウラ、バニラはいるか?」
「まだ停泊しています」
忠犬のごとく、ギリギリまでシャロン准将を待っているようだ。
え、え?あいつらやるじゃない…!副長を心の中で褒めちぎる。
「有線通信で呼び出せ!」
シャロン准将は、近くの航行管制官からヘッドセットを奪い取る。
「こちら
『こちら
通信に出たのは副長だ。
「お前らだけで逃げんなよー?」
シャロン准将の元気の良い。ありがとうの思いを副長に告げた。
『シャロン艦長でしたか。艦長以外のクルーは揃っています』
副長も。いいよ。あなたは世話が掛かる人だし。という感情を押し殺して話す。
「あー、そういえば、アイスは?」
サイゼに行き損ねたシャロン准将は素直に欲望を告げる。
『ご用意していますが、そんな事を言ってる場合でしょうか?』
「るっせーなぁっ!今すぐ脱出してミサイル郡を迎撃しろ」
第三戦速。脱出開始しろ。副長は素早いすぐに指示を出す。
シャロン准将は、自分の意見が二転三転してることに気が付かない。
『そんなことだと思ってまし…』
断線で乱暴に回線は途切れた。
「海兵ども!衝撃波が来るぞ。最後の仕事をしろよー」
海兵共は事態鎮圧と同時にコントロールセンターを設置し機材に有線をつなげる。
「イエッサー!関係各所に情報共有を密にしろ」
「アウラ、軌道に戻せるか?」
「はい。大丈夫です。損傷個所はありますが
それに合わせ、アウラが、避難誘導のアナウンスを流す。
≪非常事態発生。職員の指示に従い所定のシェルターへ避難してください…≫
破損するであろう予測箇所を計算に入れての。演算を終わらした。
直ちにスラスターを起動する。アウラの金属が割れ奇声を上げた。
妙に明るい口調のアナウンスが鳴り響く中、衛星は火星軌道へと戻り始める。
「バニラ迎撃を開始します」
外部監視ディスプレイに巡洋艦バニラの白い船体が無数のミサイル群を連続発射している。
ミサイルを迎撃するためのミサイルを迎撃するミサイル。という自分の使命が一瞬分からなくなりそうなアンチミサイルの子機ミサイルが、バニラの対宙ミサイルを全弾迎撃する。
「核ミサイル周辺に展開するアンチミサイルが迎撃を開始。バニラ。第一波。全弾迎撃されました。到達まで30秒」
シャロンは、避難艦隊を映し出したディスプレイを凝視した。
バニラに触発され多数の艦船が、迎撃ミサイルを発射した。
「…複数艦も、各自迎撃を開始しています」
どういうことだ!?やった!援護だ!と、管制室内からどよめきかえると同時に歓声が上がる。
アウラの脱出指示で離脱は艦隊からは、EDF管轄の火星基地付近から発射されたミサイル郡がアウラを攻撃している光景しか映っていない。
旗艦も何も言わないし。アウラ攻撃しているし。これ自衛の範囲で迎撃していいだろ。という勘定になった。
この行動に至るには、バニラの行動が転換点になる。
迎撃ミサイルが連続発射され、それがさらに続き。結果、避難艦隊の全艦船から迎撃活動が行われている。
「第一波核ミサイル郡を撃破。しかし他基地からの次弾が発射されました。カウント修正残り到達まで1905時です」
戦闘の敗北は、一言で片づけられる。すべてが遅すぎたのだ。
「アンチミサイル150発を同時に発射を確認。避難艦隊では計算上は迎撃不能です」
アウラのスパコンがちょいと演算し、すぐにさじを投げる。
いや、機械ごときがあきらめんなよ。シャロン准将は次の手をアウラに語る。
「アウラ。通信障害回復と同時に、現状を全艦隊・民間船・基地に広域送信」
ドンパチが始まったアウラを火星から見ている一般市民。光子無線の周波が撮影されるからって、そのうち無線で艦隊連携取るだろ。という憶測があった。
「…核の機密作戦情報も含めだ」
核と聞いたアウラは、また、感情一切無いジト目でじーっとシャロン准将の顔を見つめる。
アウラが、この命令を承諾するのか。それはいささか疑問だ。
核の情報の民間レベルへの情報開示は、軍事委員会の最終決断でしか開示出来ない。
ルーンラビットの運営者も設計者も、実際。アウラがどういう法則で動いているのか分からない。語るには、あまりにもプログラムが膨大過ぎて、作った時点でロストテクノロジーと化している。
アウラのAIがスパコンとなって軽く演算をする。承諾する。承諾しない。0か1だ。
「…わかりました。准将閣下」
アウラは事案の緊急性を鑑みて規則を破ることにする。
アウラは、すぐに視線を中空に移す。情報統制に関する規約には大きく離反したアンドロイド行く先は、アウラやルナには分かっていた。
『こちら
おまえら、空気読んで爆破されるの見てろよ。ありがたいお叱りが入る。これで、バニラも迎撃をやめざる負えない。
短縮通信より速く。演算速度の上回ったアウラのメールが秘匿情報とともに全火星地区へ一斉送信される。
「一部軍用回線の通信障害解除されましたので一斉送信しました」
次弾…、核ミサイル到着まで残り2分。
火星基地からの核ミサイル自己破壊信号を確認しました。と、感情のないアウラの言葉に歓声があがる。
「ふっはっは…! EDFめー!っざまーみろ!私のいないときに爆破するべきだったなぁ!」
勝ち誇ったテロリストのように高らかに笑う。
コハク少尉は。はぁ。疲れた。ため息もらした。歓喜に沸きあがる室内。その一方で、ルナは泣いていた。
「アウラ…。なんで、なんで…」
ルナは大粒の涙を流していた。
【衛星ルーンラビットの誤報】と【衛星爆破?EDFまさかの暴挙】
どちらの見出しが朝刊に乗るのか。火を見るよりもあきらかだ。
アウラは、諮問委員会の採択に任され、良くて初期化。悪ければ破棄だ。
どのみち、アウラに未来はない。
ルナの予期せぬ反応に、アウラの何かで何かが変わった。
「きっと、貴女を助けたかったから…」
アウラは初めて逢った同胞のルナにそう告げる。
無表情で冷たい瞳のジト目をシャロン准将の顔に向ける。
コイツ、自分の進退がわかった上で破ったんだな。じーっと見つめるアウラの瞳でわかった。
シャロン准将も手回しはするが。事があまりに大きくなりすぎている。
「アウラ、何とかするわ」
シャロン准将も居心地が悪そうに小声で言った。
「准将閣下。アウラを救って頂き。ありがとうございました」
シャロン准将に一言。大げさな御辞儀をした。