シャロン准将は金でしか動かない――インサイダーは生中継で踊る 作:むーんしゃいん
≪事件から4日後。衛星アウラのEDF監査棟。第3取調室≫
「一種機密情報の漏出。君のためにEDFが
上級管理官が、シャロン准将をかなり高圧的に問い詰める。
「そもそも、アンタらが不甲斐ないからー、私がわざわざ対応したんですよ?」
それに対して、シャロン准将は取調室で軍服のタイを緩め、だらけモード一色だ。
シャロン准将はふざけた否認を続けている。
「しっかり、対応出来てないだろ!」
上級管理官は、一連の制圧の流れは聞いている。
だが、その後、何故。核ミサイルの情報が出たのかは、カバーストーリーを仕込まれていた。
コイツが知らないんだったら、上層部は。語るな。と言うことだ。
「おまえが、アウラの指示を誤なければ、欺瞞情報の流出は無かった!」
「アウラのことは、サポセンに電話すればいいでしょ」
「おい! ふざけた口を聞くな」
「お前が以前から問題を起こしているのは、わかってるんだ!」
わかってはいる。けど、決して捕まらない。小悪魔シャロンの異名の原因の一つだ。
しかし、私を尋問するのは毎回。この上級管理官である。
シャロンを初めての取り調べたのが、この監理官なのだ。
シャロンはその頃少尉だ。この理不尽な扱いに普通に腹が立った。
なので、管理官の新車の高級車に、マフラーに粘土みたいなC4爆弾を詰めて様子を見た。
エンジンを掛けると普通に壊れるので激怒する。
C4爆弾なのがたちが悪く。爆発物処理班の出動を要請し、監理官の新車ごと爆破処理させ泣かせた。
たぶん、それで、ほかの上級管理官がビビッて何も言って来なくなった。
しかし、なぜ、こいつだけが目の敵にしてるのだろう。そんなことを思い出す。
「アウラのデータを今解析中だ。お前の肉声が入ったデータを含めてな」
もし、もしもだ。と、上級管理官が勝手に話を盛り始めた。
「なにかあれば。お前は…お前はあ…っ」
本当はシャロン准将を殴りたくて仕方ないのだろ。相手は准将だ。若い頃にようにはいかない。
管理官の部下が顔を真っ青にしてノックもせず入ってくる。
「管理官。アウラが事件前後の情報を消去して、自壊しました…」
突如アウラというホストを失った
衛星のコントロール等の基幹業務には大事がなかったが。ルーンラビットの自滅など前代未聞である。
アウラ。シャロンは、一瞬、顔を下に向けふさぎ込む。
そして、椅子から立ち上がり、上級管理官を悪魔の微笑で見下ろす。
「証拠がないのに刑務所送りですか。上級管理官?」
結局、上級管理官が来るのに4日。捕縛されて3時間のスピード釈放された。
地球からわざわざ駆けつけて、ほんとおめでたいやつだ。シャロン准将は取調室でだらけた軍服をお手洗いで締め直し、人事管理棟の出口へと向かう。
シャロン准将は人事管理棟の出口で、見慣れた初老の男性が立っていた。バニラの副長だ。
「お迎えにあがりました」
シャロン准将を副長は監査棟まで、エアポートシップで乗り付けてきてくれる。
あれ。電話もしてないのに迎えに来るって、どういうことだよ。シャロン准将は副長の顔を見て立ち尽くす。
「…まてよ。副長は釈放の時間まで、ずっと待ってるつもりだったの?」
「この位の時間だと思ってました」
副長が、安心して?怖がらないで?と言いたげに微笑みかける。
それがさらに怖いんだよ。副長はたまに読心術を使ってくるツワモノだ。
「…あ、ありがとう」
ある種の恐怖を感じながら、シャロンは答える。
副長とシャロン艦長は船の下士官が操縦するエアポートシップ乗り込んだ。
「あの事件のとき。何がありましたか?」
二人の沈黙を破ったのは、いつも静かな副長だった。
なんだ。今日はやけに絡んでくるな。と思った。
シャロン准将は黙って、窓の外に流れるアウラの衛星船体を見つめながら聞いていた。
「…アウラは、あなたの罪を背負って自壊した」
「アウラが停止する前。バニラにこれが送られてきました」
プリントアウトされた正規の作戦指示書である。時刻は4日前だった。
アウラが緊急出動を掛け、迎撃作戦を行ったというものだ。
「ふーん。これをアウラがねー」
「艦長職としても無罪放免ですね」
「当然だね!」
まったく意外そうではないシャロン准将の顔を見て。副長は、誰が自壊の一連の仕業かを理解する。
ルナが悲しむだろ。と副長はタバコに手を伸ばした。
「こら。ここでタバコ吸うなよー?」
こいつ、何か言いたいことをあると、タバコ吸う癖があるな。健康優良児のシャロン准将がすぐさまに止める。
「失礼致しました」
無意識だった副長はハンドルを握り直した。
「嘘が下手ですね」
おまえの魂胆丸見えだからな。と、代わりに言葉を述べる。
「じゃあ、副長のポーカーフェイスを見習うわ」
シャロン准将は皮肉を述べながら言った。我関せずの姿勢を取った。
スペースシップは、アウラ駐屯基地と収容されていった。
《アウラ自壊から3日後。
ルナは、またひとり。大切な仲間を失った。
ルナは、バニラ艦橋のリンクシートの上でふさぎ込んでいる。
艦内のクルー仲間が連日連夜。
アイスやお菓子などを持ってきてひっきりなしに励ましにきて、やっと泣き止んだところだ。
艦橋にいつものしゃきっとしたシャロンが入ってくる。アウラが自壊してから初の対面だ。
「なんで…、なんで…!アウラを救ってくれなかったの!」
また、このパターンか。シャロンはルナにかけよる。ルナの幼い身体でシャロンの胸部を懸命に叩く。
「ごめんね。助けられなかった…」
シャロンは瞳から一滴の涙を流すし、ルナを抱きしめる。