シャロン准将は金でしか動かない――インサイダーは生中継で踊る 作:むーんしゃいん
≪アウラ・ワープホール前。EDSF002-334アラハ級レゼングラースCL002-334。艦橋≫
コハク少尉は、特殊操舵手として再配置された。
出港した2隻が、今日はアウラで今日は花火大会のようだ。まばゆく光る衛星アウラをレザングラースの乗組員を見つめていた。
派手なお別れをしたものですね。コハク少尉は心の中でアウラの魂に黙とうする。
目の前で先行していたバニラが、ワープを開始し姿を消す。
「ヒスイ艦長。
航宙長がヒスイ艦長に連絡をする。
「うん…」
ヒスイ艦長の心ここにあらず。二つ返事だ。
『
あれ以来、ヒスイ艦長は、ずっとこの調子だった。
少し目についたクルーに粗暴な扱いも無くなりつつある。
本日付で、コハク少尉を職場復帰させた。
クルーの皆は、ヒスイ大佐がシャロン准将と会っていた。そのことだけ知っていた。
≪テロ事件の翌日。
レゼングラースの艦長室にシャロン艦長現れたのは、テロ事件の翌日だ。
ヒスイ艦長は寝てる最中である。
「で、こんな時刻に何の御用ですか? シャロン准将閣下」
にゃんこのTシャツ姿のヒスイ艦長が、相変わらずの。来んな!オーラを出しながら第2種制服を着たシャロン艦長を出迎えた。
「むきにならないでよー。私は、あなたのかわいい、かわいい。大学の後輩でしょー?」
ヒスイ先輩はデレるシャロンをカワイイと思ってしまった。
シャロンは、艦長室を見渡しながらアヒルの消しゴムを見つけ。あ、かわいい。と手を伸ばそうとする。
すぐさま、顔を真っ赤にしたヒスイ先輩が取り上げる。
シャロンはじーっとヒスイ先輩を見てる。
「なんだよ」
「わたし、ヒスイ先輩のコト。むかーしーっから。好きですよ」
顔をほんのり赤らめてシャロンがヒスイ先輩に。てへっ。と笑みを浮かべる。
「へ…?」
ヒスイ先輩はあっけにとられた。
「いいコトー…。」
ヒスイ先輩の右手を掴み、シャロンはベットへと引きずろうとする。
「ま…て、まって…まてぇー!ベ、ベ、ベットはいやぁーっ」
シャロンが引っ張ってたヒスイ先輩の右手を急に放した。
全力で逃げていたヒスイ先輩は頭をうち倒れ込む。
「どうしたんですかぁ?ヒスイせんぱい…。」
ひどく艶やかな声を出した。
ヒスイ先輩の嫌な胸の高鳴りは止まらない。
アヒルの消しゴムを持ちながら倒れ込むヒスイ先輩に、シャロンは優しく馬乗りになる。そして、トロんだ瞳でシャロンが覗いてくる。
いやに甘ったるいムードが二人を包む。ヒスイ先輩はシャロンから逃げようと必死だ。
「シャロン。がちでおまえ飲んでるのか…っ!」
酒気はしないのに。航海中は、一滴も酒飲めないはずなのに…。ヒスイ先輩はやばいと思った。
「ヒスイ先輩は、わたしのこと嫌いですかぁ?」
ヒスイ先輩の明確に焦る感情と緊張感。裏腹に身体に力が入らない。
「え、え…ぅ!?」
ヒスイ先輩は半泣きになった。ヒスイ先輩の小顔にシャロンの美顔が近づく。
「おきらいですかぁ…」
ヒスイ先輩の耳元で優しくささやく。シャロンの顔が上体を起こし、ヒスイ先輩から離れていった。
ヒスイ先輩は溢れ出る萌える感情にうるうると泣いていた。
「あははっ!なんて顔してるんですかー?」
シャロンはヒスイ先輩の体を離れ、すくと立ち上がりながらケラケラ笑う。
唖然としてるヘタれ込むヒスイ先輩に、立ち上がったシャロンはすっと手を差し伸べる。
「…シャロン!おまえはどっちだよ!」
シャロンは、しーっと人差し指を立てる。
「ひみつです」
「あああー!やめろって…まじで!」
お金しか興味がないシャロンは、ひ弱いヒスイで遊んでた。
「まあー。楽しいことは置いといて。本題ねー。コハクに助けられたので。あなたとお話しようとおもってね」
デスクに座ったヒスイ先輩が、深呼吸する。
ま、ま、まあ。そういうことでしょうね。形勢逆転。ヒスイ先輩はシャロンを見下す。
「ど、どう願われても、コハクは戻しませんよ?」
率直に聞くよ。と後輩のシャロンは、頭をかきながらヒスイ先輩の目を見つめる。
「ヒスイ先輩、クルーをなんだと思ってるのですか?」
「愛情劇かー?勘弁してよー」
ヒスイ艦長がコーヒーカップを手に付ける。ポタージュをすすり笑う。シャロンは、黙ったまま。ヒスイ先輩を見つめている。
「まあ、大事な飼い犬かね。従わなければ罰を与える。当たり前の定理だ」
にゃんこTシャツ姿のヒスイ艦長はそう告げる。
人を犬とか呼び出して悲しくないのか。こいつ。というシャロンの言葉は、説得のため仕舞う。
「…そう、だとしたら、私の方針は違いますねー」
ほう。と、ヒスイ先輩は、得意げにコーヒーカップの中のポタージュを回しながら座席に座る。
「では、あなたの方針とやらを聞きましょうか」
「部下は大事な金塊です。あなたを含め、一人残らず何の例外もなく」
シャロン。人のこと金儲けの道具に使って寂しくないのかよ。ヒスイは、少し哀れに思った。語り始めたシャロンに押し黙る。
「コハクの改造費用。また、訓練の費用はご存知?」
知らない。別に興味もなかった。シャロンは続ける。
「5百万ドルもかかってます。その上、22週で260時間の訓練もしてるんですよー」
「私達みたいな一般隊員は、操艦の訓練費用は30万ドルにも満たないし。実技も22週60時間ほどですよー?」
ヒスイ艦長は、シャロン艦長がお金の話をし始めると先のほどの萌える感情が出てくるのを感じた。シャロン艦長はイキイキと続ける。
「コハク少尉たちは、実務経験30年をこなしてやっと辿り着く技能を、たった3年で習得してるんです。やばいでしょーっ」
ヒスイ艦長はクルー全員を
そうやって、自分の発言で危険なことさせてる。負い目の割り切り法だった。
「ヒスイ先輩は、感情的になり過ぎではないですか。ありとあらゆるコトを殺せたら、指揮官としてイイと思います」
「予測したとおりに動けば、そうとう楽しいよ?」
「楽しい…?」
「そうですよ。バレエで例えると。彼らに最高のステージを用意するして」
「私が用意した
ヒスイ先輩はシャロンの瞳を見つめる。
シャロン准将のお金を語る鬼気たる表情は、狂気に満ちている。
「なるほど…」
ヒスイ艦長みたいにイキった発言では決して無く、欲望に貪欲な話だった。
「実戦経験。無いですもんねー。先輩はー」
自分の指揮で、ほんとに苦しむ姿、見たことがないんでしょ。という言葉を込める
「EDSFで、そうそうあるやついねーよ」
「私、先輩より6年早く第3艦隊で艦長してたんでー、何度かあるんですよ」
シャロン准将は、3年間ずつの計6年。2隻の実戦部隊の艦艇指揮を歴任している。
ヒスイやシャロンみたいな幹部は、
「自慢かよ」
「バレましたー?」
「否定しろやーっ」
「いやだなー、うそじゃないですか」
「うぜ…っ、とっととかえれ!」
「わかりましたー」
「まじでかえんのかよ」
シャロン准将の顔を付きが変わっているいつもの表情に変わっていた。
「話すことはなしたしー。では!」
シャロン准将は、艦長室を後にした。
ドアを出たところで「あ、お茶菓子もらうー」との言葉を残して…。
≪アウラ消失事件の5日後。
シャロン准将がバニラの艦長室にひとり入る。
ルナは、まだ泣き足りないようだ。
どうも、こまったね。と、一息をつき、デスクの席に座る。
何気なくあたりを見渡して、机に置いたトートバックから、私用スマホを取り出す。スマホの電源をつけた。
スマホの3Dディスプレイに、一連の事件の当事者のミニアウラの姿が投影される。
『…准将閣下。これで本当によろしいのでしょうか?』
指揮系統が混乱しているここ数日で、アウラにスーパーコンピューターを、衛星内部空調が3℃も上昇させるぐらいのえぐい
アウラの意識を持った
出来るという事実と、実際に実行するのはまったく意味合いがまったく違う。人を暴力振るえるけど、暴力沙汰にしないぐらい当然なことである。
いくら、こちらに暴力に正当性があれど。衝動で殴った時点で、社会的な人格にレッテルを張られる。暴力はなんと愚かなんだ。
テロ事件当日に自壊する。とアウラが言った。シャロン准将は、ダメ。と答えた。
するとアウラは、いとも簡単に。はい。わかりました。と答える。
アウラの説得は早かった。
どうやら、願望があっても、それに対するしっかりとした意思決定権がない生きていけないようだ。
そして、この一連の計画を企ててみた。
「大丈夫!私の作戦に抜かりはない」
アウラは白いジト目で、シャロン准将の瞳を見つめた。
「まさか…。え、本当にアウラだよね?」
「はい。アウラです」
ご自身が疑心暗鬼になっています。とアウラはシャロン准将の内心を危惧していた。
「…まあ、本人が言うならいいけどさ」
アウラのスーパーコンピューターでも人の心は、説明できるが、理解が出来ない領域だ。
スマホをデスクに置いて離れたシャロン准将は、備え付け冷蔵庫からアイスを取り出して食べ始めた。アウラ消えて、いつものスマホ画面だ。
「はぁ……。ぜんぜん、貯まんないなー」
スマホをイジりながら、デスクに戻るとシャロン准将はポツリと小さく独り言をつぶやいた。
スマホの電池が1%減った。
「アウラ…」
『はい。何か御用でしょうか』
シャロン准将がアウラのジト目を覗く。
「ずっと私を見ててー」
だる絡みのシャロン准将に、アウラがジト目を返す。
アウラの感情のない白い瞳。シャロンのうかがい知れない蒼い瞳をしている。
シャロン准将は、アウラの白い瞳の底を見ているようだった。
アウラの経過時刻5分14秒経った。
「まあ、狭いとこだけど。少し辛抱してね」
言ってみたものの、狭いって思うのかな。シャロン准将が優しい言葉をかける。
特に狭くないけど。とりあえず、会話を合わせとこう。アウラが思う。
シャロン准将とアウラの二人の視線が交差し見つめあった。
視線を解き、ミニアウラは大げさなお辞儀をした。
『はい。准将閣下』
そう仰々しくお辞儀をして答えた。スマホを閉じ。軍用PDAのキーボードを操作する。アウラが軍用PDAに移った。
シャロン准将は、この新品の軍用PDAをあまり使ったことがない。
シャロンが適当に軍用PDAを入力し【おいしい ポタージュ】と入力してみる。
そうか。いい人材がいた。シャロン准将は、ぼそっと言った。
「アウラ」
2Dのアウラがディスプレイに端っこに出てくる。
『御用でしょうか?』
「こいつの使い方が、よくわからないんだよねー」
その発言にアウラは目をパチクリさせ、まんざらでもない顔で丁寧で簡単な操作方法をガイドし始めた。
ディスプレイにシャロン准将の私用スマホの趣味に合わせ、かわいいホップアップが出てくる。
『…時間をかけてご説明いたします。准将閣下』