シャロン准将は金でしか動かない――インサイダーは生中継で踊る 作:むーんしゃいん
皇女クレハ
≪ブルーハワイ事件から5日後。
「指定宙域です」
「うわ…」とクルーが声を上げる。
火を噴きダメージを受けたアズキ軍のフリゲートが一隻だけ宙を浮いていた。
そして、満身創痍のフリゲートから、一機の脱出艇が射出された。
「こちら艦橋。救難班を出動」
20分して、その脱出艇を回収した救難班が返ってくる。
すぐさま、第二班が出動の準備をし始める。
ひどい光景に絶句しているクルーを安心させようと、明瞭なシャロン准将は口を開く。
「ま、火が出てるだけ大丈夫だよ」
シャロンが言った瞬間。フリゲートが爆散し、宇宙の塵なる。
「…まあ、こういうこともある」
シャロン准将は、トーンを落とし、言葉を付け加える。
幸いこちら側には怪我人は一人もいない。
さらに6分して、脱出艇から射出された少女が、艦橋へと上がってきた。
何、要救護者を艦橋にあげてんだよ。シャロン准将は怒鳴りたかった。
「救助隊をさげてよいぞよ。乗っていたのは余だけじゃからのー」
和服の雅な少女は自分の船が吹っ飛んだというのに、扇子で口元を隠し、不敵な笑みを浮かべていた。
「初めまして。自分はEDSF第一艦隊所属の准将シャロンと申します」
「失礼ですが、あなたさまは?」
「余か。余は。そうじゃなー。皇女のクレハじゃ。よろしく頼む」
皇女クレハは、シャロンに手を差し出す。シャロンは握手に応じる。
「それでは、クレハ様。身分を証明するものをご提示願えますか?」
「なんじゃ、疑り深いやつじゃの」
皇女クレハが、和服の袖をまくると、光り輝く文様が光、浮かび上がる。血族の証?とやらで光を宿した。
皮下LED光らせて何いってんだ。もちろん、
「分かりました。では、ほかに何かご身分を明かすものは、お持ちではありませんか?」
「…これから始まる戦争。おまえらは、我々には勝てぬ!」
何か言い出したー。艦橋と警備の一同が目を丸くする。シャロンだけ、ちょっとだけ、おもしろそうにしていた。
「我が国はEDFに対抗するための手段を開発しておったのじゃ」
皇女クレハは、いきなり我が国の新兵器を自慢し始めた。
「そう、これじゃ」
皇女クレハが、高級車のオートロックみたいゴッツイボタンを取り出し押す。
「自爆だ、離れろ!」
それを見たクルーの一人が叫び声をあげる。
艦橋のクルー全員が、皇女クレハから離れ、艦橋の機器の陰へと隠れた。
ん?と。棒立ちしていたシャロンは周りを見渡した。
「ほっほっほ、心配せずともよい。爆弾ではない」
いや。人間に対してではない。というべきじゃがな。という言葉を続ける。
「どういう意味ですか?」
お前ら、覚えとけよ。と。パワハラ睨みをクルーに向けつつ。
シャロン准将が、クレハを問い詰める。
「我々が開発した新型のコンピューターウイルスじゃ」
「そして、そこのルーンラビットにそのウイルスを仕込んだのじゃ」
ルナの体に先程の文様が浮かび上がった。驚愕の一同。
「おまえ、何をする!」
警備のクルーが、ハンドガン抜きをクレハに向けた。
「余を撃つと、そこのモノが自壊するぞよ」
緊張が走る。シャロン准将は、じーっとクレハ皇女を見ていた。
「…それで、クレハ様は何をしてほしいの?」
保護したはずの亡命者に、逆にバニラを乗っ取られた。
ミイラも取りに行ってない、一般市民が無理やりミイラにされた。そんな気分である。
「そうじゃな。とりあえず、銃を納めさせるのじゃ。余はそんな物騒なものを見とーもない」
「どうするのじゃ。シャロンとやら」
それを聞いて、二つ返事で。即答する。
「分かった。銃を納めろ」
「EDFの軍人にしては、素直ではないか」
皇女クレハは少し驚いた様子だ。
「では、地球へ亡命する間。一番いい部屋を空けてもらおうかの」
亡命する気は満々なのに、周りに喧嘩売るってお里が知れますわよ。
「おい、今すぐ副長の部屋を片付けろ」
シャロン准将は的確に指示をした。
皇女クレハが艦橋を去って。すぐにEDSF秘匿通信の呼び出し音が鳴る。
「はい。シャロンです」
『ご苦労さまです。
いやだー。ボスじゃないですか。地球の地球防総省の絶対安全圏から、部下にも、です・ます口調の抜けない器質の
シビリアン・コントロールの精神は遠い過去に消え去り、EDF幹部は内勤の軍人で構成されている。
『アウラ事件の首謀者についての案件で電話しました』
まじで。アルビノ元帥のそういう話やめてよ。絶対いいコト無いからさあ。シャロン准将は自分がドス黒いEDFの凶行に巻き込まれているのを感じた。
「どこでその情報を?」
そもそも、わたくし、他の人に聞いたんですけど。シャロン准将は喋んなオーラを発動した。
『私にも、色々とご縁がありましてね』
『貴女には色々面倒を見て頂いています。厚意だと思って下さい』
普遍的に思える作戦も、
「そうですか。それは、閣下からお聞きしてよろしいんでしょうか?」
『貴女が守秘義務の話ですか。お門違いでしょう』
「これは痛い所を付かれました」
『本題です。EDSF第3艦隊のパイル中将に聞き馴染みは?』
火星基地からアウラを攻撃した責任者である。
「存じ上げておりますが。交流はありません」
お金持ちに生まれながらも、金儲けを是としない。筋骨隆々の武人だった。
本当の軍人ってこういうのだとシャロン准将は思う。
『アウラでの関与を疑われたアズキ・キントキ政府は苦境に立たされています』
アルビノ元帥は、パイル中将を示唆はするが名言はしない。
『地球政府は開戦を望んでいません』
まあ、政府は戦費かかるからね。シャロン准将の個人的には戦争特需で儲けるのもあると考える所存。こういう国のために立てる人間がいるから、EDFは回っている。
「
そりゃ、腹立てるだろ。本人がちで激おこだぞ。シャロン准将は、頭痛がいたいと頭を抱える。
『…そこはほら、空気読んでね?』
世間体は、アズキ・キントキの関係者が、アウラを落とそうとした。だから、おまえのせい。
幾重にも敷かれた原型さえ残さない
EDFがケンカを売って。政府はケンカしたくない。だから、おまえのせいという超理論。
EDFは鬼である。
『私は貴女の裁量権に委ねます。個人的には期待していますし応援しています。では』
こいつも現場に丸投げじゃん。パイル中将の首でも取ってくれば満足なのか。シャロン准将は切れた電話を置くと深い溜め息を付いた。