シャロン准将は金でしか動かない――インサイダーは生中継で踊る 作:むーんしゃいん
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貨物船バニラは、ここ3日間かなり騒がしい。
EDSF第3艦隊のパトロール艦が途絶え。航路を海賊やらが闊歩しているからである。
通常は、護衛船団方式で集団になって移動するので。絶賛ぼっち船バニラは、さらに狙われまくる。
「あいつら。まじで。可燃性危険物なんて盗んでどうするんだよ」
シャロン准将はぷち怒っていた。副長が言葉を重ねる。
「乗員の身代金目的でしょう。まあ、EDSFが払うとは思えませんけど」
「来るのは
おまえら。私らに構うと関係者全員消されるぞ。恨め恨めしい表情で、ディスプレイ越しにガンを飛ばした。
『こちら
バニラの光学スキャンで民間レーダーの範囲外から発見した。
「だぁー。こちら艦長。すぐに回避航路を再選定し艦橋に上げて」
「また、遠回りですね」
「ほんと勘弁してほしい」
『こちら
回避してたら何日掛かるか分からない。ここでシャロン少将はアクションを起こすことにした。
「バレるはずてる筈はないが、運が悪い」
「海賊船に無線つなげ。私が話す」
『…誰だ』
「こちら。
相手の見えない位置からの通信に海賊船も淡々と返事を返す。
『貴船の位置を明らかにされたし』
「うっせー!海賊なんかに名乗るご身分じゃないんだよ。黙って回頭しろ」
シャロン少将の挑発に、居場所の悪い海賊も乗った。
『おまえのほうこそうっさいわ!貨物船に何が出来んだ!』
わーきゃー騒ぎ出した海賊に、シャロン准将は指揮を飛ばす。
「こちら艦長。
貨物船バニラが不感地帯を作り出した。海賊船のレーダーと通信が10秒間。阻害される。
『…ガチ?おまえ』
「
海賊船はEDSFの艦艇と悟り、尻尾を丸めて逃げていった。
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貨物船に紛れてEDSF艦艇がいると海賊に知れ渡り、貨物船バニラは静かになった。
海賊たちの情報共有力は凄まじい。シャロン准将はバニラを平時運用に戻す。
おお。と、皇女クレハは、周りを見渡した。
皇女クレハは、呼び込んだシャロン准将は浮かない顔をしている。
「なんじゃ、こっちの部屋のほうがいいではないか。今すぐ交換…」
「クレハー。アイス食べる?」
「うん。食べるのじゃ」
言葉を遮り、冷蔵庫から棒アイスを取り出したシャロン准将は、皇女クレハにアイスを手渡した。
「あ。かわいい」
皇女クレハが、コハク艦長から同意の上頂いたシャロン准将のアヒルの消しゴムに手を出した。
「…っ!私物にふれんなっ」
シャロン准将が焦って奪い返す。あまりの必死さに皇女クレハはケラケラと笑い始めた。
シャロン准将も同調し笑い返す。
「あなたは部下に私以上に可愛がられているし。こうして会って、明るい性格で安心したわ」
全く安堵してないが。シャロン准将は満面の笑みを皇女クレハに向けた。
シャロン准将はダメコンの艦内監視カメラで皇女クレハの動作を1秒コマずつ確認していた。
ハイジャック犯にお菓子やってるんじゃないよ。と思いつつ今まで黙っていた。
「初めてそんなこと言われたのじゃ」
皇女クレハは嬉しそうにしている。
「…EDFの何があなたを敵視させているの?」
「何が…全てじゃろ」
皇女クレハは呆れたように嘲笑している。
「少しだけ、あなたの話を聞きたい。聞いても他言はしない」
皇女クレハは押し黙った。
「クレハ。ブルーハワイで何があった?」
ターニングポイントはあの核爆発だ。そのすべてを見透かしたようなシャロン准将の瞳に、皇女クレハは微笑した。
「何の話じゃと言いたいところじゃが…」
車のオートロックをだったボタンを机に投げる。
「EDFから独立を勝ち取るために、余らは、新種のコンピューターウイルスを作っていた」
皇女クレハが切羽詰まったように語る。
シャロン准将は、用意していた注射器と自白剤をそっとデスクにしまった。
「コンピューターウイルスとは?」
「EDSFの艦の自由を奪い、我々の意思に従わせるものじゃ」
「それならたしかに、EDSFは手足が出来なくなるね」
「…ところがあの日、ブルーハワイの研究所へ。黒い犬のエンブレムをした部隊が強襲をしてきたのじゃ」
ああ…。アウラであった特殊部隊か。シャロン准将は、あの少尉を思い出した。なかなかのイケメンだった。
フフ…いつか、借りを返さないけないねー。と、少し感傷に浸る。
「当然、余らには歯が立たなかった」
「そこで、地下に籠城し、EDFの艦船を乗っ取るウイルスを発信し続けた」
まじか。ヘマしてんじゃないよ。あいつら。シャロン准将が、隊員たちに借りを返す機会が即座にやってきた。
「それの発信を止めるために、奴らは核を使って研究所ごと吹き飛ばしたのじゃ」
なるほど、新型のコンピューターウイルスの奪取に失敗し挙句、収拾がつかなくなって。核バンカーバスターでアズキ国の秘密の研究所もろとも吹き飛ばしたんだ。
なんだ。結局、核爆発もEDFの仕業じゃん。シャロン准将は納得した。
「なぜ亡命を?」
亡命などではない。と悲しげに顔をしかめる。
「父上は、もはや、EDFをとめられないとおもったのじゃろう」
「おぬしも人の子なら、娘を敵国へやる意味はわかるじゃろ?」
ここはアルビノ元帥の情報通りだな。シャロン准将は、ふと見せた皇女クレハ護送の真実を聞いた。
「EDFはアズキの土地も。余から大切な家族も奪う!どうして怒らずいられよう!」
しばしの沈黙が二人を包んだ。
「…ごめんなさい」
EDFにも、真面目な人間がいるんだ。シャロン准将の浮かべたウソ泣きに、皇女クレハは騙された。
「余が仕掛けたルナにウイルスは嘘じゃ。ルナに悪かったと言っておくれ」
「ルナは大丈夫。あとはクレハの良いようにするから安心して」
シャロン准将は適当に、皇女クレハの心地のいい言葉を並び立てる。
皇女クレハが、初めて話した真実に涙を流し始めた。シャロン准将は皇女クレハの背中を黙って擦った。
EDFは敵に対して、どこまでも鬼な組織である。シャロン准将も当然のこと心得ていた。