シャロン准将は金でしか動かない――インサイダーは生中継で踊る 作:むーんしゃいん
<<火星・地球圏の中間宙域
――軍隊の食事って、なんでこんなに多いんだろ?
シャロン准将は、サイコロステーキの山にため息をつきながらフォークを手に取った。残すわけにもいかないのがつらいところだ。
「宇宙軍のサイコロステーキって、材料なに使ってんのか怪しいんだよなあ…」
そう思いながらも、准将として胸襟を正さねば
――というわけで、炊事長に文句を言いに行く。
「もっと少なめにしてよ」
シャロン准将はサイコロステーキの鉄皿を調理場に持ってきて抗議する。
それを炊事長はまた来たか。と応対する。
「シャロン准将は、痩せすぎですよ。絶対60キロないでしょ?」
――痛いところを突かれた。
190㎝を超える高身長に、57㎏というモデルより遥かに絞った体重は軍隊においては致命傷である。しかし、シャロン准将は昔から太れない体質で、防衛大入学試験でも一番苦慮したところは太ることだ。
「んなわけない。いや…あるけどさー」
シャロン准将は
そんな、シャロン准将に年下、炊事長は意地悪をする。
「190cmはあるのに60キロ無いって、献血を拒否されるレベルですよ」
こいつ、このままにしておけば、この艦での沽券にかかわる。シャロン准将は語尾を強め、静かに反抗を行う。
「私は艦長だ。いいね?」
――はぁ…。この人はまったく。炊事長は、参ったように目を横に泳がし、シャロン准将の持ってきたサイコロステーキに目をやった。
「じゃあ、今度。シャロン准将が好きな料理を出しますから食べてください」
炊事長はシャロン准将のサイコロステーキの皿を少なめにし、金耀のロングヘアの美形なシャロン准将は喜色をオーラで表した。
「え、イケメン。じゃあ、コーンスロー出してね」
イケメンなんて初めて言われたわ。シャロン准将は炊事長を軽く
士官食堂にシャロン准将が戻ると褐色の女性機関長が、サイコロステーキをほおばっていた。
シャロン准将が褐色女性機関長に目配せをすると、女性機関長は、持っていたフォークを止めてステーキを飲み込む。
「機関長。例のあれするから頼むね」
褐色機関長の瞳孔がわずかに開く。シャロン准将は軽やかな表情を崩さない。
――あれっスか。
褐色機関長が目を見開き、フォークを置き腕を組む怪訝な顔をする。
「そろそろエンジン壊れるっスよ?」
シャロン准将は、手を軽く振った。
「持てばいいよ。次の改修まで」
シャロン准将サイコロステーキを一口ずつ小さな口で食べていく。
「ならいいんっスけど…うちはシャロン艦長に従うんで」
元ハイウェイ族の族長上がりかつ、無謀な事も事も許容できる褐色ギャル機関長だ。そういうとは思っていた。
甲板長が絡みに入ってくる。
「そういえば、うちもついに対人機械化改修に移りだすって噂を聞きましたか?」
相方艦であるアラハ級巡洋艦レゼングラースは、新鋭艦でありながら、対人機械化改修がされているのは周知の事実だ。対人機械化により生産効率が500%上昇するらしい。
――人殺しの生産効率とはいかにと思うが。
「どうだろうね。地球圏の上層部の考えはわからんよ」
シャロン准将が言葉を濁すと、下士官からお呼びがかかる。
『シャロン艦長。地球司令部から緊急通信です。艦橋までお戻りください』
シャロン准将は、核兵器の使用時以外なる事のない緊急通信システムがシャロン准将を呼び出した意味を知っていた。
「ついに来てしまったか…」
もちろん、他の全員の士官もそういうことだろうな。とは知っていた。
「諸君すまないけど。先に艦橋に戻ってるよ」
士官が起立してからの総敬礼には皮肉がこもっていた。
<<火星・地球圏の中間宙域
「…NERE-X計画は絶対上手く行きますから。…ええ。…はい、億は軽く。それはお約束します」
ヘッドセットでシャロン准将は熱く政治家と甘い声で約束を量産している。
予算が消化されていく現実を目の当たりにする。
当の本人は、ルーン巡洋艦バニラの艦長で、
腰まで伸びた金髪のストレートロングヘアーに第二種軍服がよく似合う。
こんな美人な准将がいたら部下になりたい。思わせるのは最初だけ。
年度業務計画にこの2隻
これでひとまず借金の催促からは逃げ出す事ができる。クルーたちの休暇と迷惑を
シャロン准将は、まいったね。ほんと参るよ。と軽々と
副長が艦橋の電磁ディスプレイに表示された座標を確認し、シャロン准将に声をかける。
「シャロン准将。これより演習宙域です」
「ではー、後日掛け直しますのでーはーい」
巡洋艦レゼングラースのクルーたちから恐れられているシャロン准将が、電話を切ると、あくびをしながら間抜けな声を上げる。
「さて、オッズが気になるとこだ」
シャロン准将が恒星地図台に視線を向ける。
作戦立案の緻密な計算式と同時に、シャロン准将と相手艦のどちらの艦が勝つか。オッズが記入されている。
シャロン准将のことだ。八百長のためには自分の艦も、…犠牲にできる確信が全員にある。
なので、もちろんのこと。シャロン准将以外の士官全員がレゼングラースに賭ける。
副長は眉をひそめる。
艦内の指示は全て准将の気分次第。士官たちは慌ただしく動き回っていた。
そんな、シャロン准将は、ヤマモ大将をスナイパー救った英雄として近く勲章が授与される。
副長がその件について軽く触れると。
「あの事件で何かを失ったのは私だけではない…」と言っていた。
副長は苦笑いを浮かべつつ、兎耳パーツを揺らす幼女――いや戦術アンドロイドに声をかけた。こんな幼い姿のAIを信用しろという方が無理な話だが、今は背に腹は代えられない。
「ルナは椅子へ」
「ルナ。ちょっと耳を貸して」
シャロンが穏やかな表情でルナの兎耳に耳打ちをする。
「フッフッフ…ッ、分かりました~。おまかせあれー」
漫勉の笑みでルナがルーンラビットが全天ディスプレイの専用シートに座する。
副長の嫌な予感が冷や汗となって出てくる。その根幹、視線を送るが。
俄然、やる気の宿ったシャロン准将が、艦橋の准将席へ鎮座し命令を下した。
「…戦闘配置。第三戦速」
艦橋クルーたちが動き出す。
『こちら艦橋。総員戦闘配置に付け!』
副長の艦内放送と同時に、アラームが鳴り響き。艦内の自然光のライトが戦闘中を示す赤いライトに切り替わる。
「第三戦速。方位60に転進します」
HUD航行ヘッドセットをつけた操縦士が握られたボール状のハンドルを操艦する。
「こちら准将。
シャロン准将が
『こちら
「さてさて、諸君…。我々の力を見せてやろう」
悪魔ならかわいいほうで副長には魔王に見えている。