シャロン准将は金でしか動かない――インサイダーは生中継で踊る 作:むーんしゃいん
おかしいな障られているわけじゃないのに。シャロン准将は軽い悪寒に苛まれている。
「お夜食お持ちしました」
兵卒が艦橋におにぎりを持ってきた。
「ありがとう」
立って作業がし易いようにと、わざわざおにぎりを用意したにも関わらず、艦長席で机を引き出して、一口ずつ食べていくシャロン准将は育ちがいいんだろうな。というのはバレバレである。
「こちら艦長。
『こちら
いくら部下が疲弊してようが。泣こうが。喚こうが。死傷者が出ようが。自分は疲れた素振りを見せず、作戦継続の4文字を命じ続けるのが軍隊の鉄則である。
作戦継続困難は、部隊の4分の1を失うか。シャロン准将と副長が死んだ時だ。
勝っていれば戦闘継続。負け戦になれば後退作戦を展開する。
目元に浮かんだ寝不足のクマは、シャロン准将はファンデーションでひた隠していた。
「こちら艦長。先任伍長と中佐は艦橋にあつまって」
頭がぼーっとして考えがまとまらない。各長と先任伍長が集まるまで、シャロン准将は艦長席でウトウトしている。
「我々の主目的は、皇女クレハの地球圏への護送任務ね」
「障壁となっているのが。アズキ・キントキのコンピュータ・ウイルス」
「これは解析が進んでいると考える。1週間もあれば、情報システム部門からの更新パッチが当たると考慮」
「この1週間。どう対処するかが当面の問題だ。対策案を出して
ばちこーい。と掛かってこいアピールをした。
「シャロン艦長はかわいいけど。
「EDSF第三艦隊の監視網では難しいと思います。小惑星群に隠れるのはどうでしょう。あと、シャロン艦長は騒がしい」
「発見された際の対処法がない。それにシャロン准将は、まだ艦長ではましな気がする」
「おまえら。容赦無さ過ぎだろ。いいけどさ」
「このまま逃げる訳には行かないのでしょうか? あと手紙を預かってます」
自生の遺言がてらシャロン准将に、スマホのライン番号やらアドレスやらを書く若い男女はたまにいる。
「仰るとおり。対処は大事。それに伴う対策は必要ね。手紙はもらっておく」
「小惑星群に隠れる案を勧めよう。ハイドポイントはこっちでピックアップする。追って連携する」
「あの…、艦長。汗だくですけど大丈夫ですか?」
「少し空調が熱いだけだから問題ない。大丈夫」
小惑星群への航宙コースと隠れられそうな小惑星を航宙図にさらさらと上げていく。
1級航宙士。航宙通信士とか危険物取扱者免除など、多種多様な資格を取らされていていた。
一応3箇所の退避コースを視野に入れた案を仕上げる。
「こんなものか。確認してくれない?」
熱出てるから正直、自信がない。近くの航宙士に出来を聞いてみる。
「イイと思います」
「どういう点がかな」
「退避コースが確立されいる点ですかね。しかし、もっと近くに似たような地点があった気がします。なぜこちらに?」
「恒星の影響で光学スキャンに探知されづらいからだね」
「なるほど。え、そう考えると、これバレないのではないですか」
どやー。いつもなら笑いながら返すとこだがシャロン准将も余裕がない。
「確率は低いね」
「しかし、問題点が無いわけではない」
「視程と射線が取れない点ですね」
「元気ないですね、どうしたですか?」
「実戦で緊張してるの。意地悪いわないで…」
だらけ切って言ったシャロン准将の熱っぽい声に、航宙士のSっ気を大いに揺さぶった。
「コホン…。い、いい案だと思います」
こいつは小悪魔だぞ。航宙士は素数を数えて冷静になる。
「よし、ありがとう。副長見てくれー」
よく出来ました。というかと思うぐらいの笑顔で副長がシャロン准将の案を煮詰めた。