シャロン准将は金でしか動かない――インサイダーは生中継で踊る   作:むーんしゃいん

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褐色ギャル先任伍長も心配性

《イチゴシロップ宙域 小惑星群 LCDH002-2222(貨物船バニラ) 戦闘指揮所(C I C)

 

「定時報告。異常ありません」

 

 対宙作戦士が定時連絡を行う。シャロン准将が褐色ギャル先任伍長を引き連れ、戦闘指揮所(C I C)に立っていた。通常。戦闘の指揮は戦闘指揮所(C I C)でやるのが通例である。

 

「ご苦労さ…コホコホッ」

 

 シャロン准将はトローチを舐めた。

 

「シャロン艦長。風邪ですかぁ? まじで大丈夫っすか?」

 

 この褐色ギャル先任伍長。曹士だが、尉官より恐ろしく。バニラの真の長である。バニラの父親がシャロン艦長だとしたら、褐色ギャル先任伍長はバニラの母親だ。

 

 士官は全宇宙勤務であり、三年に一度で職場が変わってしまうが、下士官は地方勤務でそのままだった。

下士官の指揮系統が全く違う。シャロン艦長でも一目置かざる負えない存在である。

ちなみにシャロン艦長のアイスのラインナップを考えているのもコイツだった。

 

「喉が痛いだけだから…だ」

 

 先任伍長が救急ボックスから取り出したマスクを手渡す、シャロン艦長はすごすご付ける。

 

「それ、大丈夫じゃないっすよね。今、ヒマですから、医務室に行きましょー」

 

「いや、大丈夫」

 

「風邪うつす前に行くっす」

 

 褐色ギャル先任伍長に連れられ、シャロン准将はすごすご医務室に向かう。

 

「シャロン艦長無理し過ぎっすね。風邪引いてまで、平時に指揮しないでいただけますか?」

 

「医者は嫌なんだよ」

 

「シャロン艦長は精神年齢詐称でもしてるっすか?」

 

 クルーが敬礼する。シャロン准将は笑顔を返す。

 

「あぁ…? どういう意味だよ」

 

「モデルみたいな見た目とガキっぽい物言い方。それにお嬢様っぽい所作。全てがチグハグで戸惑うっす」

 

「先任伍長からそんな言われ方したのは初めてだ…まじショック」

 

「あは、初めて奪っちゃいました」

 

 満更でもない先任伍長が医務室の気密ドアを開く。先に艦長を入れた。

 

「ありがとう」

 

 医官と衛生官が室内に居て薬剤の整理をしていた。二人は敬礼する。医官がシャロンの電子カルテを用意した。

 

「何か症状はありますか?」

 

「喉の痛みと咳と微熱があるみたい」

 

「いつからですか?」

 

「二日前です」

 

「基礎体温は測ってませんか?」

 

「この三日間。横になる時間がない」

 

 衛生官の持ってきた体温計で熱を測った。シャロン准将は医官に簡単に告げれる。

 

「38.4度ですね」

 

「首に触れます」

 

 医官がシャロン准将の首筋に触れる。

 

「喉の調子見ますね。くちを大きく開けてー」

 

 あー。と八重歯が輝くシャロン准将は大きく口を開けた。医官が喉の炎症を確認した。

 

「上半身脱いで下さい。あ、そのシャツならそのままで大丈夫です」

 

 2種軍服の上半身を脱ぎTシャツ姿になった。

着痩せしすぎぃー。シャロン艦長がちで細。褐色ギャル先任伍長はシャロンの背後を見ている。

 医官は聴診器をシャロン艦長の胸に当てた。

 

「Tシャツを上げて下さい」

 

 そして、シャツをめくらせ呼吸音を聞いていた。

 

「肺の音聞きますね」

 

「息を吸って」

 

「はいてー」

 

 コレを胸部と背中で確認する。

 

「服着て下さい」

 

「シャロン艦長、今の体重はいくつですか?」

 

「49.5だったかな」

 

「肺炎ではないですし、ただの風邪ではありますが」

 

「シャロン艦長の場合。摂取障害が原因の可能性が高いです」

 

「言われた通り食べてるよ。てか、摂取障害って大げさじゃないですか?」

 

「無理に食べて戻してませんか?」

 

「…いや、それはどうだろう?」

 

 てへ。とシャロン准将は微笑した。

 

「摂取障害は心労の病気ですよ。このままだと死にますよ」

 

 だから、医者にかかるの嫌なんだよ。毎回脅してくるもん。

 

「決断力も思考力低下しますし。このままだとねえ」

 

「いや、食べてる食べてる!少食なだけで拒食症じゃない」

 

「うーん…」

 

「はっきり言いますが。これ以上、体重減ったら艦長職は無理です。健康診断引っかかりますよ」

 

「分かってる」

 

「まあ、点滴打ちましょう。用意させますね」

 

 まじか。シャロン准将はコクコクとうなずく。医官と投薬を打ち合わせし新米衛生官が注射を準備した。

 

「艦長。こちらに横になって下さい」

 

 新米衛生官の指示通りシャロン准将はベットで横になり、寒くないようにとお腹に薄い毛布を掛ける。

 

「…痛くしないでね」

 

「痛くナいですよ」

 

 ガチガチに緊張しているようだ。新米衛生官の声が裏返っている。

 

「何分ぐらいで終わる?」

 

「1時間ぐらいです。艦長」

 

 アルコールでシャロン准将の手を探る。針を打つのに迷っている。シャロン准将は子供の頃から血管が見にくい体質だ。

 シャロン准将にとって定期健康診断での毎回の光景である。

 

「血管見にくくてごめんねー、いつも手の甲から血を取ってもらってるよ」

 

「えっと。じゃあ、手の甲見せてもらえますか?」

 

「ちくっとします」

 

 針を入れるが、失敗したようだ。その感覚をシャロン准将はボーッと感じていた。

 

「ごめんなさい、抜きますね」

 

 抜く時神経を逆撫でるような嫌な感覚になりシャロン准将ちょっと痛みが走る。

新米衛生官は相手がシャロン准将なのでさらに緊張しているようだ。

 

 注射道具の入ったプレートをひっくり返した隊員はあわふたしている。

 

「落ち着いてよ」

 

 シャロン准将は上体を上げた。

 

「そんなに緊張して実戦で負傷者担当したらどうするつもりだったの?」

 

「自分、准看護師資格しかないので出来ることは限られてます」

 

「戦時にその認識は辞めろ…ゴホゴホ」

 

 EDFが求めているモノが分かってない。キッとして、シャロン准将は鈍い声を飛ばした。そのせいで咳が再発する。

 

「法律の守る第一義は人命であり…ゴホゴホ、…きみには救えるだけの知識があコホ…んだか」

 

「はぁはぁ…。救うため…ゴホ。ためなら法を破れ…ゴホッ!」

 

 シャロン准将は咳をしながら言葉を続ける。

 

「私は部下のために、いくら…ゴホ、いくらでも頭は下げ…ゴホゴホ。下げるから。少し意識を…カホ…変えろ」

 

 

 咳を我慢するためシャロン准将は黙ってしまった。シャロン准将はトローチを舐める。

 

「…ありがとうございます」

 

 隊員は少し冷静になったようだった。

 

「ほら。落ち着いたならお願いするね」

 

「はいッ」

 

 集中出来たようで新米衛生官は2回目に成功させた。スルスルと輸液バックを3つぶら下げる。

輸液量と時計を見比べ、点滴が落ちる数を調整した。

 

「今から1時間ぐらいで終わります」

 

「ありがとう」

 

 医官が絶対安静をシャロン准将に伝える。

 

「これ。持ち歩くから」

 

「何してっすか」

 

 ベットから立ち上がりキャリーを掴もうとする手を先任伍長たちが止めた。

 

「いや、1時間ぐらい横になること出来るでしょ?」

 

 まてよ。戦闘報告書が溜まってる。シャロン准将は嫌な雰囲気に少し汗が出る。

 

「いや。ロウソク足が4回も変わるぐらいの長時間だけど」

 

 おまえらなんとか目を覚ませ。お互いが言葉を募る。

 

「対応が早いのは結構ですけど。何を生き急いでるんですか?」

 

 医官まで戦いまで参戦する。

 

「落ち着くっす。倒れられたら面倒なんっすよ」

 

「分かった10分だけ寝る。先任伍長は仕事に戻れ」

 

 めんどくさい褐色ギャル先任伍長を先に返す。先任伍長は命令に従い医務室を後にした。

 

「じゃあ、横になって下さい。カーテン閉めますね」

 

 シャロン准将はベットに横になるとポニーテールの紐を取った。そして目をつむる。10秒ですーすーと寝息を立て始めた。

 

 

「…やばぃ」

 

 シャロン准将はいつも通り死んだように両手を軽く手を上げて寝ている。

 

「ガチぃ寝ちゃったぁ」

 

 輸液バックは無くなっているから1時間は寝たらしい。カーテン越しに人の気配する。上体を起こしたシャロン准将は髪の毛を直す。

 

「起きられましたか?」

 

 カーテンが開かれると蛍光灯の光が入ってくる。

 

「え。え?」

 

 夜勤割り当ての熟練衛生官の見つめる顔を見たシャロン准将は思わず声を出して二度見する。

すぐさま腕時計を見る。あれから8時間立っていた。

 

「大分、お疲れだったようですね」

 

 いままで、艦でガチ寝したことなかったのに。シャロン准将は自分に苛立ちながらも、熟練衛生官を見返した。

 

「針抜きます。もう一度、横になって下さい」

 

 これ焦っても仕方ないわ。頭の中を冷静にし横になる。

 

「先任伍長と副長が、先程までお見えになっておりました」

 

「そう。まあ、副長は心配性だからさ」

 

「おでこ失礼します」

 

 衛生士がシャロン准将のおでこに温度計を当てる。

 

「点滴が効いてます。36度8分です」

 

 熟練衛生官が薬を用意していた。

シャロン准将は掛けてある毛布を払い除けるとキレイに畳む。

 

「こちらが、抗生物質と痛み止めのトローチです」

 

 熟練衛生官はシャロン准将に紙袋を手渡した。

 

「じゃあ、行くね。面倒見てくれてありがとう」

 

 はー。エリア・リスαのスタバ行ってスイーツミルクコーヒー飲みたい。シャロン准将は連携を取るため戦闘指揮所(C I C)に向かった。

 

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